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投資の基本
不動産投資家とは?年収やメリット・デメリット、向いている人の特徴3つ
個人投資家が取り組みやすい投資のひとつに、不動産投資があります。不動産投資は「投資」と呼ばれているものの株やFXなどとは異なる点が多く、そのことが個人投資家にとって大きなメリットにもなり得ます。
本記事では、個人が不動産投資家になることで得られる標準的な年収モデルや、メリット・デメリット、不動産投資家になるための手順などについて解説します。
1.不動産投資家とは?
不動産投資家とは、アパートやマンションなどの収益物件を所有し、そこから得られる家賃収入や売却益などを狙う投資を実践している人たちのことです。
かつて「不動産オーナー」といえば相続で物件を取得した人など、資産家の人たちを連想することが多かったと思いますが、今では「サラリーマン大家」という言葉もあるように、会社員などこれまでに不動産を所有したことがない人が自ら不動産を購入し、オーナーとなるケースが増えています。
今や不動産投資は標準的な収入クラスの人であっても無縁ではなく、個人投資家にとって身近な投資といえます。
2.不動産投資家の年収
不動産投資家というとお金持ちのイメージを抱く人は多いと思います。実際のところ、不動産投資家はどの程度の年収クラスの人たちなのでしょうか。
総務省統計局が発表した「平成30年住宅・土地統計調査」の結果から、不動産投資家の年収クラスを探ってみたいと思います。まずは、その結果からご覧ください。
このデータは現住居以外の住宅を所有している世帯数を、年収クラス別に集計したものです。右端にある「貸家用」が、不動産投資に供する不動産を所有している世帯数(赤い囲み部分)です。
このデータを見る限り、最も世帯数が多いのは「500~700万円未満」で、僅差で2番目が「700~1000万円未満」です。以降は「300~400万円未満」「1000~1500万円未満」が続きますが、このデータを見て分かることが1つあります。
それは、不動産投資家の年収が突出して高いわけではなく、それぞれの年収クラスにまんべんなく不動産投資をしている世帯があることです。
「不動産投資はお金持ちの専売特許」というのは今や昔話で、標準的な年収クラスの人にとって無縁なものではないことがデータからも明らかになっています。
3.不動産投資家になるメリット・デメリット
不動産投資家になるメリットとデメリットについて、それぞれ解説します。これから始めようとお考えの方は、メリットだけでなくデメリットについてもしっかり理解しておくようにしましょう。
3-1.不動産投資家になるメリット
株やFXなど他の投資と比較して、不動産投資家になることで得られるメリットは以下のとおりです。
① 日々の値動きに一喜一憂する必要がない
株やFXで儲けるには、差益が必要です。つまり株価や為替の値動きを日々ウォッチしていなければなりません。また価格に影響を及ぼしそうな政治、経済、国際ニュースや要人発言なども常にチェックしておく必要があるでしょう。このような作業は本業で毎日忙しく働くビジネスパーソンにとっては負担が大きくなるかもしれません。
また、株やFXは短期・中期・長期などの投資方法によっても異なりますが、高い利益を求め「いかに安いときに買って高いときに売るか」というところに目がいきがちです。価格変動が大きい傾向があるため、損失が出たときのリスクも大きくなるでしょう。
その点、短期的な差益よりも長期的な家賃収入を狙うのが不動産投資です。日々の激しい値動きがあるわけでもありませんし、チャート画面に張り付いて売買チャンスを探す必要もありません。
② 業務の大半を外注できる
不動産投資では「物件探しや物件管理」「金融機関とのローンの交渉」「確定申告」など、やらなければならないことも多々ありますが、毎日何かの作業に追われるわけではありません。
物件の清掃や家賃回収などの管理業務もありますが、そのすべては管理会社に委託することも可能です。退去後の原状回復工事や定期的なリフォーム、物件の資産価値を維持するための工事なども同様です。
このように、日常的にかかる不動産投資のための時間や手間が株やFXと比べて圧倒的に少ないことが、多くのサラリーマンが「副業」として不動産投資を始める理由のひとつです。
③ 融資を利用できる
不動産投資が株やFXと根本的に異なるのは、現物を用いた事業であることです。事業なので、銀行など金融機関の融資を利用することができます。物件を購入するための初期投資額が大きくなることに抵抗を感じる人は多いと思いますが、金融機関の融資を利用すればその問題を解消できます。
また、返済原資は家賃収入になるため、他人資本をフル活用しながら資産形成を行える点もメリットです。
3-2.不動産投資家になるデメリット
次に、不動産投資家になるデメリットについても株やFXと比較しながら解説します。
① 現物資産特有のリスクがある
不動産は現物資産なので火災や台風、地震などによってダメージを受けるリスクがあります。これは株やFXにはないリスクなので、現物資産特有のものです。
こうした物理的なダメージがなかったとしても、建物は時間の経過とともに劣化します。それに伴って修繕やメンテナンスの費用も考慮しておく必要があります。これも株やFXの投資では考慮されない概念です。
② 入居者がいなければ無収入
不動産投資は、入居者という「お客さん」がいてはじめて成立するビジネスです。収益物件を所有していても入居者がいなければ無収入なので、「投資するだけ」で利益が得られるわけではありません。所有している物件が空室になって無収入になるリスクは空室リスクと呼ばれ、不動産投資家にとっては大敵です。
さらに、入居者がきちんと家賃を支払ってくれることも重要です。入居者がいても滞納をされてしまうと利益は上がらないため、これも滞納リスクとして不動産投資家が留意しておくデメリットです。
4.不動産投資家に向いている人は?
それではどんな人が不動産投資家向きといえるのでしょうか。以下のポイントで1つでも多く該当する方は不動産投資家に向いている可能性が高いので、一度セルフチェックしてみてください。
4-1.投資、資産形成に長期的な視点を持っている
不動産投資は長期目線で取り組む投資です。株やFXにはデイトレードやスキャルピングといった短期投資の手法もありますが、不動産は長期的に物件を保有して家賃収入を狙うのが基本線です。そのため、投資に目先の利益を求めない、長い目でトータルリターンを狙う視点を持てる人は、不動産投資家に向いています。
4-2.真面目、几帳面な性格
不動産投資は入居者という「お客さん」あってのビジネスなので、顧客目線で丁寧に取り組めることも重要な資質です。
例えば空室になっている物件に内覧の希望が入ったとします。その時は室内をきれいに清掃して、少しでも気に入ってもらいやすくする努力も必要でしょう。こうした細かい部分にも真面目に向き合える人は、不動産投資家として成功しやすいといえます。
4-3.収入、勤務先が安定している
先ほどまでの2点はいずれも性格や資質についての適性ですが、こちらは不動産投資を始めるための「実力」に関する部分です。
収入や勤務先が安定している人が不動産投資家向きなのは、金融機関の融資審査に通りやすいからです。多くの場合、収益物件の購入資金は金融機関からの融資で調達することになります。審査では収入や勤務先が安定していることが有利に働くため、こうした属性の人は不動産投資家になる「実力」を備えているといえます。
5.不動産投資家になる手順
収益物件を購入して入居者が付けば誰でも不動産投資家になれるのかというと、そうではありません。もちろん基本的な流れに相違はないのですが、それぞれのプロセスで重要なことがあるので、それも交えて大まかな手順、流れを以下に示します。
手順 | 意識しておきたいポイント |
---|---|
①物件探し | 長期間にわたって資産価値が下がりにくく、家賃収入が安定しやすい物件を選ぶ必要があります。そのためには収益物件に強い不動産会社を選ぶことも重要で、物件探しはパートナーとなる不動産会社探しと言い換えることもできます。 |
②資金計画 | 購入する物件が決まったら、自己資金をいくら用いるのか、融資をどれだけ利用するのか、その融資をどれだけの期間で返済するのかといった資金計画を立てます。 |
③融資 | 融資の審査に通れば物件の購入が可能になりますが、審査に通りやすくするにはさまざまなノウハウがあるので、不動産会社と綿密に連携することが重要です。 |
④物件購入 | 資金の調達が完了したら、売主との売買契約を締結して不動産のオーナーになります。 |
⑤入居者の募集 | 不動産会社や管理会社を通じて入居者を募集します。入居者がいなければ不動産投資は成り立たないので、入居者の募集業務に強い業者を選ぶことも重要な経営判断です。 |
⑥物件の管理 | 入居者が付いたら、以後は物件の管理をします。ほとんどの場合、物件の管理は専門の管理会社に委託することになります。 |
6.不動産投資家を目指すなら長期目線が大切
不動産投資の魅力を株やFXとの比較で解説しました。個人投資家にとって不動産は決して縁遠いものではなく、身近かつメリットの多い投資であることをお伝えできたのではないでしょうか。
特に不動産投資は長期目線で取り組むことが大切なので、本文中で解説した「手順」も参考にしつつ、まずは長期的な計画を立ててみることから始めてみてはいかがでしょうか。