投資の基本

分散投資でポートフォリオを考える際のポイント。投資スタイル別、年齢別の例も

資産運用は長いスパンで取り組むものだけに、適切なリスク管理が重要です。投資におけるリスク管理方法はすでに確立しており、その代表的な手法が分散投資です。性質が異なる金融商品に資産を分散することによって特定の資産との「心中」を回避すれば、長期的かつ安定的な運用が実現します。

分散投資をする上で重要なのが、ポートフォリオとアセットアロケーションです。本記事ではこれらの言葉の意味を解説した上で、年代別のおすすめ運用法なども紹介します。

1.分散投資、ポートフォリオ、アセットアロケーションの意味

長期的な資産運用では欠かせない3つの概念、分散投資とポートフォリオ、そしてアセットアロケーションについて解説します。

1-1.分散投資とは

分散投資とは、投資対象の資産を多様化させて、資産の価格変動リスクを低減し、資産全体の運用成績で良い成果を出そうという考え方です。投資対象となる資産は、株式や投資信託などの金融資産だけではなく、FXのような外国為替や不動産といったさまざまな種類がありますが、分散投資では、それぞれに対して一定の割合を投じるということになります。

「卵を1つのかごに盛るな」というのは、有名な投資格言です。1つのかごにすべての卵を盛った状態でそのかごを落としてしまったら卵が全部割れてしまいます。そうではなく複数のかごに卵を分けることで想定外のことが起きてもダメージを一部に留めることができるという例えで、分散投資の重要性を説いています。

具体的にいうと、分散投資の方法は4つあります。投資対象を日本国内に限定せず、海外の複数国の株式や国債、為替、不動産に投資する「地域分散」、株式や不動産など、種類の異なる複数の資産に投資する「資産分散」、日本円だけで運用するのか、ドルやユーロなどの外貨建てで運用するのかという「通貨分散」、定期的な積立を行うことで、資産の購入時期を分散する「時間分散」です。

実際の分散投資では、これら4つの概念を組み合わせて自分に合った運用資産の組み合わせを構築します。

1-2.ポートフォリオとは

先ほど述べた「自分に合った運用資産の組み合わせ」のことを、ポートフォリオといいます。投資に求める期待値や目的は人それぞれ異なりますし、運用する資産の規模もさまざまです。そういった個々の意向や事情に合わせて最適なポートフォリオを組むことが、投資の成功につながります。

ちなみに、ポートフォリオには本来「紙ばさみ」などの意味があります。欧米では資産の明細書を紙ばさみにはさんで保管する風習があり、それが語源となっているそうです。

1-3.アセットアロケーションとは

アセットアロケーションとは、日本語で「資産配分」という意味です。具体的には、投資対象となる地域や資産、通貨などを、どのような「配分」で分散させるかということです。

多くの投資初心者は、最初に「〇〇会社の株式を購入しよう」「〇〇にあるマンションを買おう」というようなことを考えると思います。しかし、アセットアロケーションの考え方では、最初に、自分の投資目的を明確に設定し、自分が許容できるリスクの限度を決めてから、実際に投資する資産の配分を決定します。

例えば、「国内株式30%、先進国株式20%、新興国株式10%、国内債券10%、国内不動産30%」という内容で分散投資した投資家がいるとします。この投資家が決めたアセットアロケーションでは、国内資産は70%、海外資産は30%に「地域分散」と「通貨分散」がされて、株式60%、債券10%、不動産30%に「資産分散」がされています。

どのように市場を読むかは、投資家によって個人差がありますが、一般的に債券よりは株式、先進国よりは新興国という順番で、投資リスク(とリターン)は高くなると考えられています。投資目的を達成するためには、年間の目標利回りを定め、どの程度までリスクを許容できるかを前提に、どの資産に、どの程度の投資をするのかを、前もって決めてしまうのです。

そのアセットアロケーションに従って投資する資産を選び、具体的に購入するのが、本来の正しい順序です。

2.分散投資でポートフォリオを考える時のポイント

それでは、自分のポートフォリオを構築するにあたって、知っておくべきポイントの解説に進みましょう。ポートフォリオは投資の具体的な行動を起こすためのロードマップなので、最初にどれだけのリスクを取れるのか、どれだけ資産を増やしたいのか、そして年齢などの固定的な要素を考慮します。

2-1.許容できるリスクを明確にする

投資にリスクは付き物です。そのことを前提として取り組む必要があります。そこで最初に、自分が許容できるリスクはどれだけあるのかを明確にします。1,000万円の資産を運用する人が投資で100万円の損失を出すのと、資産100万円の人が100万円の損失を出すのとでは、意味がまるで違います。この場合、1,000万円の人と100万円の人とではリスク許容度が異なります。

仮に失ったとしてもリカバリーできる金額、失ったとしても人生に致命的なダメージを与えることはない金額がいくらなのかを考え、リスク許容度の目安を導き出します

リスク許容度が大きい人ほどリスクの高い投資(つまりハイリターンが見込める投資)を組み込むことができます。重要なのは、リスク許容度からの視点でポートフォリオやアセットアロケーションを組み立てることです。

2-2.いつまでにいくら増やしたいか整理する

投資の目的は、「資産を増やすこと」です。しかし、その中身は人によって異なります。今ある資産を、いつまでに、いくらに増やすのか。これを決めることにより、それだけの資産増効果のある投資対象に絞り込んでいきます。

例えば、500万円の資産を10年で倍の1,000万円にしたいとします。かなり強気の目標ではありますが、このために必要な利回りは約7.1%です。7.1%程度の利回りで10年間運用できれば元本は倍になりますが、7%を超える利回りの投資はハイリターンに分類されます。ハイリターンであることはハイリスクと表裏一体なので、失ってはいけないお金でこれだけの投資をするのはリスクが高すぎます。

一般的に投資では4%の利回りが確保できれば適切といわれています。これを目安に資産を増やす目標を立てると、現実味のある計画を立てやすくなるでしょう。

2-3.自分の年齢に合わせて投資割合を変更する

ポートフォリオやアセットアロケーションを構築するにあたって、年齢は大きな意味を持ちます。一般的に、年齢が高くなるほど投資の損失をリカバーする時間が少ないことから失敗が許されない(つまりリスク許容度が低い)ため、ハイリスク投資よりもリスクの低い投資の比率を高めるのがセオリーです。

こうした年齢とリスク許容度の関係について理解しておくと、最適なポートフォリオを構築するのに役立ちます。

3.分散投資のポートフォリオ例

投資の方針によって、適切なポートフォリオは異なります。ハイリスク・ハイリターンをどこまで志向するのか(許容できるのか)によってポートフォリオの内容は変わりますし、年齢によっても適切なポートフォリオは変化します。

それでは、リスク許容度と年齢別でポートフォリオの一例を紹介しましょう。

3-1.投資スタイル別ポートフォリオ例

投資スタイルを、リスク許容度で3つに分類しました。ハイリスク、ミドルリスク、そしてローリスクです。ポートフォリオなので単一の投資商品だけに投資するわけではなく、リスク別にポートフォリオの内訳を変えます。

3-1-1.【ハイリスク・ハイリターン】スタイルの場合

ハイリスク・ハイリターンの投資をしたい場合は、外貨建ての商品や暗号資産など、リスクが高い一方で大きな利益を狙える商品を組み込むのが良いでしょう。

筆者が組み立てたポートフォリオの一例は、以下のとおりです。

米国株式型インデックス投資信託:50%
新興国(インドなど)インデックス投資信託:20%
現物株(国内もしくは米国):20%
ビットコイン:10%

インデックス投資信託とは、株価指数と連動する投資信託のことです。長期的に成長が続いている米国の株価指数に半分を投じ、残りは今後の成長が期待できるインド株や個別の成長株で運用するポートフォリオです。

ビットコインはあくまでも番外編に近い位置づけですが、2024年は半減期やETF承認などで需要が急増しており、大きな価格上昇が期待できる状況です。ただし暗号資産はリスクも高いので、10%よりもさらに比率を低くしても良いかもしれません。

3-1-2.【ミドルリスク・ミドルリターン】スタイルの場合

ミドルリスク・ミドルリターンの投資では、さらに分散性が高い投資商品や不動産など現物資産の裏付けがあるものを組み入れたいところです。そこで構築した一例が、こちらです。

全世界株式型インデックス投資信託:30%
東証REIT指数型インデックス投資信託:30%
不動産投資:40%

世界の主要国の株価指数を幅広く組み込んだ「オールカントリー」と呼ばれる投資信託を30%、そして不動産投資信託の総合指数である東証REIT指数の投資信託を組み込みました。

また、40%は資金規模や融資を受けられるかどうかの問題はありますが、現物の不動産投資を組み込んでいます。

3-1-3.【ローリスク・ローリターン】スタイルの場合

最もリスクを抑えてディフェンシブに投資をするのであれば、元本保証やそれに近い投資商品が主体になります。

個人向け国債(元本保証):50%
東証REIT指数型インデックス投資信託:20%
貯蓄型保険:20%
外貨預金:10%

安全な投資商品を中心に組み立てています。4つめの外貨預金は元本保証ではありますが、為替リスクがあります。しかし、日本よりも金利の高い国で運用すると高い利回りが期待できるため、10%だけリスクを取る商品を組み入れました。

3-2.年齢別ポートフォリオ例

次に、年齢別のポートフォリオの一例を紹介しましょう。

3-2-1.【20~30代】の場合

20代や30代といった人たちは十分な投資期間がありますし、リスクを取った結果資産の一部が毀損しても、リカバーできる時間もあります。そのため、ここで紹介する3つのポートフォリオ例の中では最も積極的にリスクを取るポートフォリオにしました。

米国株式型インデックス投資信託:30%
新興国(インドなど)インデックス投資信託:20%
現物株(国内もしくは米国):30%
FX:10%
ビットコイン:10%

積極的にリスクを取って長期的なハイリターンを狙う意味で、株式の比率が高めです。特にインドなど新興国の高い経済成長に乗るのは若い世代の人たちに適したポートフォリオといえます。

また、FXと暗号資産を10%ずつ組み入れました。いずれもリスクは高いですがハイリターンが期待できるので、「すべてを失っても資産全体への影響が少ない」レベルに抑えつつ投資に面白みを加えています。

3-2-2.【40~50代】の場合

40代から50代は、老後を意識し始める年代です。投資によって資産形成を進める重要性が高まってくる一方で、資産を過度なリスクにさらすことには慎重になるべきです。

そのため、ミドルリスク商品とローリスク商品を組み合わせるのが適切でしょう。

全世界株式型インデックス投資信託:40%
日本株式型インデックス投資信託:20%
東証REIT指数型インデックス投資信託:20%
個人向け国債:20%

半数より少し多めに株式を、そして不動産型の投資信託と元本保証の個人向け国債を組み合わせました。

3-2-3.【60代以降】の場合

60代以降はリスク許容度が低く、投資で失敗できない世代です。お金を増やすことよりもお金を減らさないようにして資産寿命を少しでも長くすることに重点を置きましょう。

ローリスク商品を中心に構成し、残りは分配金支払いがある商品を組み入れて公的年金に上乗せできる収入源を確保できるポートフォリオです。

個人向け国債:50%
日本もしくは米国高配当ETF:30%
東証REIT指数型インデックス投資信託:20%

4.分散投資では定期的なリバランスも重要

実際にアセットアロケーションに従って資産運用を行うと、最初に決めた資産のバランスが、時間の経過とともに崩れてしまうことを経験します。しかし、これは仕方がありません。自分の想定以上に保有資産が値上がりすることもあれば、想定外に株式が値下がりすることもあるのです。各資産がそれぞれ値動きした結果、当初に決めた配分は崩れていきます。

そのため、アセットアロケーションに従って資産運用する場合は、最初に設定したアセットアロケーション比率に現状が合うように、資産の組み替えや買い増しを行います。これを「リバランス」といいます。

例えば、株式市況が不調で保有株式の価格が下落し、年前の半分になってしまった一方で、J-REITなどの不動産投資信託が値上がりしていた場合は、アセットアロケーションの比率を戻すために、必要な額のJ-REITを売却し、その資金で、必要な分の株式を買い増します。

こうすることで、自分が定めた資産運用の戦略は維持されます。さらに、市場環境が回復した時に、安く買い増した資産の評価額が大きく伸びることになります。

自分自身が置かれた経済状況や、市場の見通しや投資に対する考え方が変化すると、当初定めたアセットアロケーションそのものを見直す必要が出てきます。こうした場合、各資産で分配比率を変えることになりますが、そうした行為を「リアロケーション」と呼びます。

5.最適なポートフォリオは人それぞれ

投資は長い時間をかけて取り組むものだけに、いかにリスクを抑えながら資産形成効果を最大化するかがポイントです。そのために最適なポートフォリオを組み立てることは必須です。本文中で解説した方法を理解しつつ、自分に合った最適なポートフォリオを組み立ててみてください。

また、最適なポートフォリオは時間の経過とともに変化していきます。常に自分自身の資産状況や市場環境をチェックしながら、柔軟にリバランスをすることで資産の健全性を維持していきましょう。

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