投資の基本

このツボさえ押さえれば不動産投資の決算と確定申告は難しくない

毎年2~3月は、確定申告の季節です。事業を営んでいる人にとっては年が明けるのと同時に確定申告を強く意識するようになる時期の始まりですが、それは不動産投資家にとっても他人事ではありません。

副業で不動産投資を行っており、年間20万円を超える所得がある人は確定申告の義務があります。また仮に不動産所得が20万円を超えなくても、確定申告をしたほうがメリットとなる場合も多い傾向です。実質的にほとんどの不動産投資家に確定申告は関わりのあるものと考えたほうが良いでしょう。

しかし、不動産投資以外に事業を営んだ経験がない人にとって確定申告や税務は未知の世界です。経験がなく、しかも多くの専門用語が登場する分野だけに「難しそう」と感じてしまうのも無理はありません。そこで当記事では、不動産投資家が最低限知っておくべき決算と確定申告の知識について解説します。

ここで解説する知識を理解してツボさえ押さえていれば、不動産投資における確定申告をしっかりと乗り切ることができるのでぜひマスターしてください。

不動産投資家の決算と確定申告の考え方、進め方

1.不動産投資の決算と確定申告

決算とは、一般的に法人が一定期間(基本的には12ヵ月)の「収益や費用」「利益や損失」「資産状況」などを計算してまとめることです。そのため事業者は自社の決算期に応じて毎年1年間分の決算を行わなければなりません。例えば3月決算の会社であれば、毎年4月~翌年3月までの1年間の利益を精査して利益を確定させます。

一方で確定申告とは、個人や個人事業主が1月1日~12月31日までの1年間の所得を確定し所得にかかる税金を計算して税務署へ申告・納税をすることです。決算および確定申告のどちらも利益や所得に応じて国や自治体に対して行う義務があり、違反すると延滞税などのペナルティもあるため十分に注意しましょう。

一般的に公務員やサラリーマンなどの給与所得者は、給与や賞与から勤務先が所得税を源泉徴収して本人に代わり納税しているため、副業収入などがなければ確定申告は不要です。ただし給与所得者でも副業で不動産投資をしている場合は、給与所得以外の所得が発生するため確定申告が必要になります。また独立して事業をしている個人事業主も確定申告が必要です。

なお確定申告は、所得のあった年度の翌年2月16日~3月15日(休日の場合は翌営業日)の間に行います。そのため期限に間に合うよう前もって確定申告や納税の準備をしておきましょう。

1-1.不動産投資における3つの主要な決算書

確定申告に必要なのは、以下の3つの書類です。これらの書類は、事業者が確定申告をする際に用意するもので「財務3表」と呼ばれています。

  • 損益計算書(P/L)
  • キャッシュフロー計算書(C/F)
  • 貸借対照表(B/S)

不動産投資も事業となるため、確定申告時にはこの3つの書類を用意することになります。それぞれの役割と概要について解説しましょう。

  • 損益計算書(P/L)
    不動産投資においてどれだけの利益が上がったのかを決算によって確定しそれを記載する書類です。「P/L」とも呼ばれる理由は、英語表記が「Profit and Loss Statement」となっているからです。企業における損益計算書では「本業でどれだけの利益があるのか」を知ることができるため、株式投資家などはその企業の利益構造を知るのに利用しています。

    不動産投資における損益計算書は、不動産収入から経費を差し引き計算対象となる1年間に得られた利益額(赤字の場合は損失額)を確定し記載します。

  • キャッシュフロー計算書(C/F)
    損益計算書は1年間の収入と経費を記載するものですが、そのうち現金(キャッシュ)の流れ(フロー)だけを記載するのがキャッシュフロー計算書です。不動産投資では、物件の取得や融資の利用といった資金の流れがありますが、「現金ベースで資金がどのように動き収支がどうなっているのか」を記載します。キャッシュフロー計算書では、経営の健全性を知ることができます。

    資金不足によって起きる資金ショートは経営の重大なリスクです。しかしキャッシュフロー計算書によって資金の流れを把握すれば現状を正確に知ることができるため、適切な資金計画を立てるのに役立ちます。

  • 貸借対照表(B/S)
    貸借対照表は、プラスの資産とマイナスの資産(負債)をすべて書き出し決算時の状況を示すものです。左に資産、右に負債と自己資本を書き出して左右のバランスを見るような構造になっていることから「Balance Sheet(バランスシート)」といわれています。それを略して「B/S」と呼ばれることもあります。

    損益計算書とキャッシュフロー計算書は、いずれも決算時の対象となる1年間の財務を示す書類です。しかし貸借対照表は決算時点での資産状況を示しているため、1年間だけの結果を示しているわけではありません。

不動産投資の決算と確定申告

2.不動産投資の決算で気をつけるべきポイント

確定申告のときに提出する決算書は、金融機関に融資を申し込む際にも提出を求められます。経営状況や財務状況を金融機関の担当者へしっかりと説明する必要があるため、自分自身で決算内容をよく理解しておくことが重要です。また決算書作成の段階では、とにかく正確さを心がけましょう。以下のような行為は粉飾決算となるため絶対にしてはいけません。

  • 税金を安くするために所得を低く改ざんする
  • 融資を受けやすくするために所得を大きく見せかける

大規模な粉飾決算を行うことでさまざまな刑事事件に発展していることは、ニュースなどでも周知の事実でしょう。大切なことは試算表(決算書になる前の集計表)を毎月作成し、きちんとお金の流れを把握しておくことです。その試算表を参考にして将来のリフォームやリノベーション費用を積み立てておきましょう。

金融機関へ融資を申し込む場合は最新の試算表の提出を求められることが多いため、毎月試算表を準備しておけば急に良い物件に巡り合ったときでもバタバタせずに申し込みができます。

2-1.試算表の作り方と作成例

試算表とは「今の状況で決算を迎えたらどんな内容になるか」を試算したものです。決算は年1回ですが、試算表を作っておくことによって決算時以外でも逐一経営状態を把握することができます。試算表の作り方に明確なルールはありませんが、最低限必要になるのは以下の情報です。

  • 賃料収入
  • 必要経費(物件の維持費以外にも管理費、広告費など)
  • 融資返済額
  • 税金
  • 減価償却費

賃料収入から必要経費、融資返済、税金、減価償却費を差し引いたものが不動産所得です。これらの数値を把握しておけば大まかな決算内容を把握することができます。ネット上には、こうした情報を網羅したうえで空室率によってキャッシュフローがどうなるのかをきめ細かく計算してくれるシミュレーションツールが配布されています。

多くはExcel上で利用できるようになっているため、そういったツールをダウンロードすることも方法の一つです。

試算表の作り方と作成例

3.確定申告の準備と進め方

毎年の確定申告の流れは、主に3つです。

  1. 必要書類を集める
  2. 決算を行いつつ税額計算と申告書類の作成
  3. 提出・納税

必要書類は「家賃収入が分かる預金通帳などの写し」「経費が分かる領収書やクレジットカードの明細」「金利を含めたローンの支払状況が分かる書類」などです。専業投資家の場合は、不動産投資のみの確定申告をすることになります。しかし本業が別にある人の確定申告は、不動産投資単体で行うのではなく給与所得など他の所得も損益通算して総合的に計算することが必要です。

そのため給与所得がある人は源泉徴収票も用意しておきましょう。医療費の控除を受ける場合には、医療機関などの領収書もすべて忘れずに用意しておく必要があります。

次に決算や申告書類などの作成ですが給与所得がある人が提出する主な書類は「収支内訳書(不動産所得用)」と「確定申告書B」です。「収支内訳書(不動産所得用)」では、減価償却費の計算も必要なので注意しましょう。

青色申告をする人は「青色申告決算書」を提出します。2019年度の申告分までは、青色申告を行うと65万円の特別控除がありましたが、税制改正により2020年度分からの控除額は55万円です。ただしe-Taxによる電子申告や電子帳簿保存を行うことによりプラス10万円、つまり従来の65万円の控除を受けることができます。

また控除を受けるには、アパートがおおむね10室以上、貸家はおおむね5棟以上に相当する「事業的規模」となっていることが必要です。控除金額が最大65万円とメリットが大きいため、複数の不動産を保有する人は青色申告の選択も検討すると良いでしょう。確定申告書は、AとBの2種類のフォーマットがあります。

  • 確定申告書A
    所得の種類が給与所得・公的年金などの雑所得・配当所得および一時所得のみの人のための申告書
  • 確定申告書B
    所得の種類にかかわらずだれでも使用できる申告書

不動産投資家は、確定申告書Bとなるため間違えないようにしましょう。これらの書類が用意できたら郵送または電子申告で管轄の税務署へ提出します。納税は、指定した金融機関の預貯金口座から「振替納付」「電子納付」「クレジットカードで納付」「コンビニ」「現金で納付」のいずれか都合の良い方法を選ぶことが可能です。

提出期限ぎりぎりでの申告はミスの原因になりかねません。また申告の遅れにはペナルティが発生する場合もあるため、時間に余裕を持って事前にある程度まとめておきましょう。提出前に慌てないように日ごろからお金の流れをしっかりと把握しておくことが大切です。

4.基本的な知識や市況、エリアの最新情報を得るには?

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