不動産投資

株式投資と不動産投資はどっちがいい?始めやすさや利回りなど様々な角度から比較

「株」と「不動産」は、いずれも投資の代名詞のような存在です。ネット上には膨大な関連記事がありますし、書店に行くと株式投資や不動産投資の本を簡単に見つけることができます。しかし、よく並び称される両者ですが、その中身にはかなりの違いがあります。

本記事ではこれから投資を始めたいとお考えの方に向けて、株式投資と不動産投資の比較をしつつ、それぞれのメリット・デメリット、さらにはそれぞれに適している人物像についても解説します。自分に向いているのはどっち?と迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

株式投資と不動産投資はどっちがいい?始めやすさや利回りなど様々な角度から比較

1.株式投資と不動産投資を様々な角度から比較

最初に、株式投資と不動産投資を様々な角度から比較してみましょう。比較する項目は、以下のとおりです。

  • 始めやすさ
  • 利回り
  • 安定性
  • 分散のしやすさ
  • 流動性
  • 節税効果

1-1.始めやすさ

資産運用といえば株、というくらい、株式投資はよく知られています。会社員のように本業を持っている人が取り組みやすい理由としては、注文や管理に時間を要さない、少額からでも投資できる優待狙いや短期投資などいろいろな取り組み方ができる、などが挙げられます。

一般的には価格変動の大きいリスク資産と位置づけられる株式ですが、派生する金融商品も多くあります。例えば、プロが株式を売買し、その収益を受け取る権利を買う株式投資信託や、TOPIXなどの株価指数を企業の株と同じように売買できるETF(上場投資信託)、特定の日に株を売買する権利を取引するオプションなどが挙げられます。

個人がポケットマネー程度の金額で購入できる銘柄も多く、始めやすさにおいては株式投資に軍配が上がります。

1-2.利回り

株式投資の収益は主に2つで、売買益と配当です。優待や貸株金利などもありますが、おまけのようなものと考えておきましょう。不動産投資にも物件の売却益と家賃収入の2つがあるというのと似ています。

株価の変動は激しく、1日で20~30%上下することも珍しくありません。時には数ヵ月で2倍3倍になることもあります。もちろんその逆もまたしかりで、50万円で買った株が1週間後には半分の25万円になるリスクもあります。ただしタイミングよく売買できれば、大きな利益(キャピタルゲイン)が狙えます。

不動産価格の値動きは比較的緩やかなため、売却益を狙った投資はあまり一般的ではありません。それどころか、宅建業免許を持っていない人が転売目的で住宅を繰り返し売買するのは違法です。

株の配当は企業の業績次第で年に1回から2回ある権利確定日に株を持っている人に対して支払われますが、出ないこともあります。東証一部上場企業の平均的な利回りは1%後半~2%くらいとなっています。

不動産投資でメインとなる収益源は家賃収入です。いったん入居者が決まれば引っ越しするまで年単位の継続が見込めるので、比較的安定しています。例えば区分マンションの利回りは2017年以降、おおむね7%台で推移しています。

1-3.安定性

前項で述べたように、不動産は一度入居者が決まると頻繁に入居者が変わることは少ないため、家賃収入は比較的安定しています。「衣食住」の一角でもあるため、景気変動の影響も受けにくいといわれています。

その一方で株式投資による利益は投資している企業の業績にも左右されるため、不動産と比べると安定性には劣る部分があります。ただし、大型株や高配当株を長期保有するスタンスであれば、長期間にわたって安定的な利益が期待できます。

1-4.分散のしやすさ

投資にはリスクが付き物で、それをいかに抑えるかが重要なポイントです。1つの資産だけでなく、異なる資産にまたがって投資をすることでリスクを分散するのが一般的なリスク管理法です。

株式投資であれば業種や企業規模、国籍などで幅広く分散投資が可能です。さらに投資信託は「詰め合わせパック」のような金融商品なので、投資信託やETFを1本保有しているだけで一定の分散効果が得られます。
これに対して不動産は簡単に2件、3件と購入するわけにはいかず、分散投資をするのは簡単ではありません。そもそも不動産投資は株式投資と比べるとリスクが低い投資といわれていますが、個人投資家が複数の物件を所有してリスク分散を図るのは簡単ではないでしょう

1-5.流動性

流動性とは「現金化のしやすさ」と言い換えてもよいでしょう。株や不動産はいずれも資産ですが、現金化のしやすさにはかなりの差があります。

株は証券取引所の取引時間内であればいつでも自由に売買が可能なので、簡単に現金化できます。この流動性の高さは、そもそも株式投資のメリットの1つです。その一方で不動産を現金化するには買主を見つける必要があり、そのためには不動産会社に仲介を依頼する必要もあり、実際に不動産が売れるまでにもある程度の時間がかかります

1-6.節税効果

株式投資に節税効果はありませんが、不動産投資にはいくつかの節税効果があります。まず知っておきたいのは、減価償却費です。不動産は所有していると時間の経過によって価値が目減りしていきます。それを経費として計上すれば所得の圧縮が可能で節税になります。マンションは法定耐用年数が47年なので、最長で47年間にわたって減価償却費を計上することができます。

他にも不動産は相続税対策としても活用できるため、節税効果で比較すると圧倒的に不動産に軍配が上がります。

2.株式投資と不動産投資のメリット・デメリットを比較

続いて、株式投資と不動産投資のメリットとデメリットを整理してみましょう。先ほどの両者比較と重複する部分もありますが、より分かりやすく整理したいと思います。

2-1.株式投資のメリット・デメリット

株式投資のメリットは、以下のとおりです。

  • 株価の値上がりによる利益を狙える
    安い時に買った株の価値が上昇して売却すれば、差額が利益(キャピタルゲイン)になります。株式投資の利益として多くの人は、この株価変動による差益をイメージしていると思います。
  • 銘柄によっては配当金収入がある
    配当金を出している銘柄を保有していると、配当金収入が期待できます。先ほどの株価変動による差益がキャピタルゲインであるのに対して、配当金収入はインカムゲインの一種です。
  • 銘柄によっては株主優待を受けられる
    日本特有の仕組みに、飲食チェーンの株を保有していると食事券がもらえるなどの株主優待があります。この株主優待を目的として株を保有する人もいます。
  • 不動産と比べると手軽
    株式投資は証券会社の口座を開設して必要な資金を入金すれば、すぐに始めることができます。10万円以下で買える銘柄も多く、不動産投資と比べると圧倒的に手軽です。
  • 流動性が高い
    株式投資は買いやすいのと同時に売りやすいのもメリットです。証券取引所の取引時間内であれば、保有している株式をいつでも簡単に現金化できます。

一方で株式投資のデメリットは、以下のとおりです。

  • 株価変動によって損失を被ることがある
    株価変動による利益を狙える一方で、思惑が外れて株価が下落してしまうと損失になります。
  • 保有株が無価値になるリスクがある
    可能性は低いですが、保有している銘柄の企業が経営破綻をするなどの理由で株が無価値になるリスクがあります。
  • 会社員はリアルタイム取引が難しい
    会社員にとって、日本株の取引時間(9時から11時30分、12時30分から15時)は勤務時間と重なります。この時間帯にリアルタイム取引ができないのは、機動的な取引をしたい人にとって不利になる可能性があります。

2-2.不動産投資のメリット・デメリット

続いて、不動産投資のメリットを見ていきましょう。

  • 金融機関の融資を利用できる
    物件の購入に必要な資金の全額を用意しなくても、金融機関の融資を利用することで資金の調達が可能です。「投資」と名のつくもので融資を利用できるのは不動産投資だけです。
  • 現物資産の裏付けがある
    不動産投資ではアパートやマンションなどの物件を所有します。不動産は景気変動の影響を受けにくい現物資産なので、物件選びを間違えなければ資産形成に役立ちます。どうしても入居者がつかない場合であっても「自分が住む」という選択肢があるのは、現物資産ならではです。
  • インフレに強い
    2022年から世界の主要国ではインフレが進行しています。米国では特にその傾向が顕著ですが、日本でもジワジワとインフレが進行しており、物価上昇が始まっています。不動産は現物資産なのでインフレ進行時には不動産の価格も上昇し、現金で保有しているよりも資産防衛効果を発揮します。
  • 節税効果がある
    先ほど解説したように、不動産には所得税や相続税の節税効果があります。これも、不動産という現物資産に対して投資するからこそ得られるメリットです。
  • 生命保険効果がある
    不動産投資で金融機関のローンを利用すると、団体信用生命保険に加入できます。これは生命保険の一種で、契約者が死亡したり返済不能になったりすると保険が適用され、以後の返済は不要になります。つまり、借金のない家賃収入が発生する資産だけが残されます。これにより、不動産投資には実質的に生命保険と同様の効果があるといわれています。

一方で、不動産投資には次のようなデメリットもあります。

  • 空室リスクがある
    入居者がいなければ、家賃収入はゼロになります。空室リスクは不動産投資の大敵です。
  • 物理的な破損のリスクがある
    自然災害によるダメージや経年劣化など、不動産投資には現物資産特有のリスクがあります。
  • 流動性が低い
    先ほど解説したように不動産は流動性が低く、現金化するには売却の手順を踏む必要があります。今すぐ現金化したいと急ぎすぎると買主に足元を見られてしまう可能性もあるため、「売らなければならない事態」にそもそもならないようにすることが重要です。
  • 維持コストが発生する
    建物の管理や入居者の管理など、不動産投資で物件を維持管理するコストが発生します。
  • 税金がかかる
    不動産を所有すると、固定資産税や都市計画税が発生します。株を保有しているだけで税金が発生することはないので、これも不動産投資特有のデメリットです。

3.株式投資と不動産投資、それぞれ向いている人は?

株式投資と不動産投資のメリット・デメリットを踏まえた上で、それぞれに向いている人物像を浮かび上がらせてみましょう。

3-1. 株式投資に向いている人

株式投資に向いている人の要件を挙げると、以下のようになります。これらに当てはまるものが1つでも多い人は、株式投資に向いているといえます。

  • 最初は少額から始めたい
  • 経済や政治に関心があり、トレンドに敏感
  • チャート分析に関心がある
  • 平日の日中時間に投資に割ける時間がある
  • 「放ったらかし」ではなく積極的に投資に関わりたい
  • 投資の目的に節税が含まれていない

3-2.不動産投資に向いている人

不動産投資に向いている人の要件は、以下のとおりです。こちらに当てはまるものが1つでも多い人は不動産投資向きといえます。

  • 長期的な資産形成が目的である(短期的な損益にあまりこだわらない)
  • 少なくとも数百万円の自己資金を用意できる
  • サラリーマンなど安定的な職業に就いている
  • 税金対策を何か実践したいと考えている
  • 基本的に「放ったらかし」の投資を志向している
  • 行動力、決断力がある
  • 他人の意見を鵜呑みにせず自分で勉強し、判断できる

4.それぞれの違いを理解し、「いいところ取り」を

株式投資と不動産投資は、どちらも「投資」と名のつく経済活動ですが、当記事の解説をお読みになるとかなりの違いがあり、それぞれに向いている人物像も異なることがお分かりいただけたと思います。

もちろんどちらか一方だけを選ぶ必要はなく、両方を実践している投資家も多くいます。重要なのは、この2つの投資は性質や目的が異なることを理解した上で実践することです。そして「いいところ取り」をするのが投資家としてのセオリーといえるでしょう。

関連記事:今すぐ始められる資産運用方法6選。サラリーマンに最もおすすめなのはどれ?

3年以上勤めた会社員へ。
あわせて読みたいおすすめコラム