不動産投資

不動産投資の借金地獄ってどういう状態?事例や回避するポイントも解説

不動産投資は金融機関の融資を利用できることがメリットの1つですが、この「融資」は借金と言い換えることもできます。

しかし、不動産投資のための借金は生活苦によるものではなく、事業のための資金調達です。前者とは明確に性質が異なる借金ですが、これを混同してネガティブな印象を持ってしまっている人も少なくありません。

ただし、資金計画がうまく機能しておらず、賃貸経営そのものが不調の状態だと、借金が重くのしかかり失敗につながる恐れがあるのも事実です。そこで、不動産投資と借金の関係、そして借金地獄になってしまうパターンや事例などを交えながら、有効な対策を解説します。

不動産投資の借金地獄ってどういう状態?事例や回避するポイントも解説

1.不動産投資のレバレッジの仕組み

レバレッジとは、てこの原理における「てこ」のことです。小さな力で大きな力を生み出すことができる仕組みになぞらえて、少額であっても大きな規模の運用ができることをレバレッジ効果といいます。

資産運用にはさまざまなレバレッジの方法が存在します。それらを活用することで、より大きな収益を得られる可能性があります。例えば株式投資の場合、信用取引と言って、所有する株式や現金を担保に、預けた担保の約3倍の取引が可能です。FX(外国為替証拠金取引)では、差し入れた証拠金の25倍までの取引が可能です。

こうしたレバレッジ効果は、不動産投資にも存在します。投資対象物件を担保にして金融機関でローンを組み、物件を購入して、賃料収入をその返済にあてるスキームです。

投資家の社会的な信用が高い場合や、すでに行っている不動産投資が好調だった場合は、さらに多額のローンを組める可能性があり、元手となる自己資金が少なくても、大規模な不動産投資を行うことが可能です、当然のことですが、その結果、毎月の賃料収入は増えますし、保有する資産規模も大きくなります。

ただし、冒頭で述べたように資金計画がうまく機能しておらず、賃貸経営そのものがうまくいっていない場合は、この借金がマイナスに作用してしまいます。

2.不動産投資で借金地獄に陥る2パターン

不動産投資における借金地獄とは、どのような状態を指すのでしょうか。「地獄」という言葉が入っていることから好ましくない状況であることは想像がつくと思いますが、どうなったら借金地獄なのかについて定義しておきたいと思います。

2-1.利子すら返済できない状態

金融機関から融資を引くと、元本に利子を加えた金額を返済することになります。それを月々少しずつ返済していくわけですが、その利子すら返済できない状態は、明らかに借金地獄といえます。

「利子すら返済できない」という状況は、消費者金融などの借金苦でよく聞かれるフレーズです。不動産投資の融資は2~3%台の金利であることが多いため、15~20%になる消費者金融などの金利と比べるとはるかに低利です。それすら返済できないというのは、かなり不動産投資が行き詰っていると考えてよいでしょう。

2-2.多重債務に陥っている状態

多重債務とは、複数の金融機関から借金をしている状態のことです。もっと分かりやすく言い換えると、「借金で借金の返済をしている」状態のことです。すでに不動産収入や自分の資金で返済ができていないので、他社から新たな借金ができなくなった時点でパンクしてしまいます。

3.不動産投資で借金地獄になった事例

ここでは、不動産投資で借金地獄になってしまった2つの事例を紹介します。これらのパターンで実際に破綻してしまった事例は数多くあるため、くれぐれも同じ轍を踏まないようにしてください。

3-1.事例1:高額な新築物件でキャッシュフローが慢性赤字

2024年はすでに高止まりの状況ですが、それよりも以前から首都圏など大都市圏の新築マンション価格の高騰が続いています。2023年には、東京23区の新築マンション価格の平均が1億円の大台を突破したことで話題を集めました。

物件価格が高額になると、融資額も大きくなります。その一方で家賃を大幅に高くしてしまうと、入居者が集まりにくくなります。かくして家賃収入を返済金が上回ると毎月のキャッシュフローが赤字になってしまい、投資で利益を上げるどころか手持ちの資金を持ち出しての返済を余儀なくされます。

この赤字が続いて手持ちの資金が底をついたときに、借金地獄が始まります。

3-2.事例2:購入時と状況が変わってしまい空室リスクが増大

不動産投資は長期目線で取り組むものです。それゆえに購入時と10年後や20年後とでは状況が変化していることもあります。

近隣にあった大企業の工場や大学のキャンパスなどが移転したことで空室率が高まる事例はよく見られますが、こうした事情も含めて将来を見据えた物件選びが欠かせません。購入時は需要があると思える物件であっても、将来も同じとは限らないのです。

空室がちになるとキャッシュフローが赤字になり、手持ち資金からの持ち出しを余儀なくされます。この状況が続くとやがて資金が枯渇し、借金地獄に陥る恐れがあります。

4.不動産投資で借金地獄になったら売却(損切り)の検討も

不動産投資で借金地獄になっていると認識したら、どうするべきなのでしょうか。ここでは2つのポイントを解説します。

4-1.借金を残さず売却はできる?

所有物件を売却して、不動産投資の損切りをする方法があります。赤字物件を売却してしまえば以降の赤字は発生しなくなります。そこで気になるのが、借金を残さずに売却できるか否かです。

購入価格が高いほど売却時の残債が大きいことが多いため、借金を残さずに売却するのは難しくなります。損切りが目的で売却する場合は早く売ってしまいたいという心理が働き、買主に足元を見られるリスクもあります。あまり売り急がず、ゆっくりと売却活動をすることで売却価格を少しでも高くする工夫をしてみるのも有効です。

4-2.オーバーローン時の対応方法

オーバーローンとは、物件の売却価格がローンの残債を上回っている状態のことです。前項で述べたように物件を売却しても借金が残ってしまう状態ともいえます。オーバーローンの状態で物件を売却すると借金だけが残る状態になるため、それだけは避けたいとの思いが働きがちです。

しかし、赤字物件を所有しているとさらに手持ち資金からの持ち出しが続き、税金もかかり続けます。また、一定の年数が経過するとメンテナンスや修繕の費用も発生するでしょう。オーバーローンであっても損切りの決断は早いほうが損失を最小限に食い止めることができます。

オーバーローンであることを気にしすぎるあまりに、損切りの機会を失わないようにしましょう。

5.不動産投資で借金地獄に陥らないポイント

不動産投資で借金地獄に陥らないポイント

損切りは早めに決断するべきと述べましたが、そもそも損切りをせざるを得ない状況に陥らないようにすることが重要です。不動産投資による借金地獄を回避するポイントは、3つあります。

5-1.物件選びと資金計画

不動産投資の成否は最初の物件選びでほぼ決まるといわれています。今だけでなく将来にわたって需要が見込まれる立地条件で、ニーズに合致した物件であることが基本です。単身者が多い地域であれば、交通アクセスが良好なワンルームマンション物件といった具合です。

そして、もう1つは資金計画です。余裕のある資金計画で臨まなければ、思わぬ出費で資金ショートを起こしてしまいます。将来必要になるお金もしっかり考慮した上で、資金計画を立てましょう

逆にいえば、十分安全といえる資金計画を立てられないのであれば、まだ不動産投資は始めるべきではありません。

5-2.キャッシュフローを見極める

不動産投資ではキャッシュフローを常に意識する必要があります。キャッシュフローが赤字になるようだと持続性に黄信号が灯りますし、投資である以上利益を残さなければ意味がありません。

購入前に収支のシミュレーションをしっかりと行い、キャッシュフローが黒字になる物件を選ぶことは基本です。そして購入後も、そのシミュレーション通りになっているかどうかの精査を続けましょう。

5-3.高額なローンを避けるための投資戦略

そもそも不動産投資で借金地獄に陥ってしまう最大の原因は、借入金が多すぎることです。物件価格が高額になると借入金も多くなるため、できるだけ初期投資額を抑えて借入金を不必要に膨らませない戦略が求められます

そこでおすすめなのが、中古物件です。中古物件の中でも東京など大都市圏の都心にある好立地の物件を選び、需要の高いワンルームマンションを軸に区分マンションを選ぶのがよいでしょう。

ただし、当然ながら中古物件には古さがあるので、これを克服するためにリノベーションをするのが有効です。高騰している新築マンションよりも中古物件をリノベーションするほうが投資額を抑えやすく、また画一的なデザインのマンション物件と差別化もできます。

6.借金地獄を回避するためにもプロの知見をいかそう

不動産投資で借金地獄になってしまうことには、必ず理由があります。しかもその理由のほとんどは、事前の入念な物件選びやシミュレーション、資金計画に起因しています。つまり、事前に入念な戦略を立てることによって回避できるということです。

その際、不動産投資に強い不動産会社の力を借りれば、成功する物件選びや資金計画のアドバイスを得られます。プロの知見をいかしながら、成功する戦略を描いていきましょう。

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