投資の基本

経済学の理論がバイブル!不動産投資での行動を見直そう

経済学のさまざまな理論は、人間が合理的に行動することを前提に構築されています。しかし、人は時として非合理的な思考をしたり、行動を取ったりすることがあります。

それは経済学的な限界なのかというと、そんなことはありません。人は時として非合理的な行動をするものという前提に立ち、さまざまな行動パターンがすでに体系化・理論化されています。

そこには人間の深層心理や、投資・金銭に対する脆さのような部分も見え隠れします。不動産投資家も人間なのでこうした非合理的な行動を取ることがあるわけですが、それはどんな心理によるもので、どんな結果につながるのでしょうか。

投資に関する心理学的理論を学び、非合理な行動を客観視できる目を養いましょう。

投資に関連する心理学的理論を紹介。非合理な行動を客観視できる目を養おう

1.投資に関する心理学的理論を知って失敗を回避しよう

投資に関する心理学的理論を知って失敗を回避しよう

ここでは、投資に関連する心理学的理論を5つ紹介します。いずれも不動産投資に当てはまる部分があるので、「戒め」も込めてご自身にも心当たりがないか、意識しながら読み進めてみてください。

1-1.プロスペクト理論

プロスペクト理論は不動産投資だけでなく、すべての投資に当てはまる有名な理論です。人間は利益よりも損失の回避を優先するという心理を示しています。

これをいかした典型的な販促手法が、「期間限定」「数量限定」による動機付けです。今しか買えない、今あるものが売り切れたら同じ値段では買えないという心理を煽り、購買意欲を高めるわけです。

不動産投資には、「今買わなければ二度とこんな物件に出会えない」という心理が当てはまります。不動産会社のセールストークに乗せられてしまい、「このチャンスを逃すと損するかもしれない」と考えて冷静な判断をすることなく物件を購入してしまいます。

しかし、仮にその物件が二度と出会えないような物件だったとして、それを買わなかったとしても損をするわけではありません。利益を逃しただけで、マイナスではないのです。この事実を客観的に理解できれば、安易にセールストークに乗ってしまうことはありません。

1-2.認知バイアス

認知バイアスとは、先入観や直観など合理的ではない影響によって本来の判断が捻じ曲げられてしまうことです。つまり、端的に言い換えると「思い込み」です。

私たちは育ってくる過程や日々の生活で、多くの認知バイアスに囲まれています。近年ではその概念が変わりつつありますが、「男らしい」「女らしい」という概念も、どこで生まれたのかよく分からない常識に引き寄せられたものです。

これまでもそうだったから、これからもそうに違いない。そう思うことは認知バイアスそのもので、不動産投資で認知バイアスに引っ張られた投資判断をすると大きな失敗の原因になります。

すでに過去のものになっている常識、例えばバブル期に人気を博したリゾート地のリゾートマンションには価値があるとして購入したとしても、苗場など廃墟のようなリゾートマンションが並ぶ地域があるのも事実です。

1-3.フォン・レストルフ効果

フォン・レストルフ効果とは、目立つものに関心を奪われやすい心理的な傾向です。同じようなものが並んでいるなかで1つだけ異質なものがあると、そのもの自体の優劣よりも目立っていることがよいことであるように感じてしまい、投資をしてしまうことがあります。

投資の世界でいえば、IPO株がその典型です。新規公開株なので目立ちますが、その企業の事業内容や収益性、将来性などをしっかり精査して購入している投資家ばかりではないでしょう。IPOは目立ちますし、「IPO=儲かる」という認知バイアスによる影響も受けていると考えられます。

不動産投資においては、流行している地域、鳴り物入りのタワーマンションプロジェクトなどが当てはまります。もちろんこうした物件が悪いわけではありませんが、目立っているという事実だけで投資判断をするのは危険です。

1-4.参照点依存性

物事の判断をする際に絶対的な評価ではなく、ある参照点を基準に相対的な判断をしがちな心理のことを、参照点依存性といいます。

近年では100円ショップに300円、500円の商品が売られていることがあります。その商品にはしっかりと500円の価値があるにもかかわらず、100円ショップで見つけた500円の商品を高いと感じたことはないでしょうか。もし同種の商品で100円のものがあれば、そちらを買いたいと思うかもしれません。

しかし、500円の商品と比べると価格は5分の1なので、安さゆえにすぐに壊れてしまったとしたら、「安物買いの銭失い」です。そのことを分かりつつも500円の商品ではなく100円の商品を選んでしまうのは、「100円」を参照点にしている参照点依存性が働いているからです。

投資の世界には、値ごろ感という言葉があります。不動産投資の世界も、同様です。近隣の相場と比べて著しく安い物件を見つけたら、掘り出し物だとして飛びついてしまいたくなるものです。しかし、不動産の世界に掘り出し物はありません。仮にあったとしても広く周知される前に誰かが買ってしまいます。そんな世界で格安物件が売り出されていて他の人が買っていないということは、何か理由があるはずです。

絶対的な視点があれば「何かあるに違いない」と考えられるのですが、近隣の相場が参照点になってしまい、さらに「これを逃したら誰かが買ってしまう」というプロスペクト理論が働いて購入してしまうと、実は問題だらけの物件だった……ということになりかねません。

1-5.決定麻痺

投資など利害が関係する判断をするためには、情報が多いほど合理的な判断を下せるはずです。しかしそれは、情報の取捨選択に長けた人の話であって、大多数の人は情報が多すぎるとかえって考えすぎてしまい、判断を遅らせたり思考が停止してしまったりします。こうした心理現象のことを、決定麻痺といいます。

もちろん不動産投資でも、情報は命です。よい情報に恵まれればよい投資機会にも恵まれやすくなります。しかし、逆に情報が多すぎるとどれが本当なのか分からなくなってしまい、「もうちょっと考えてからにしよう」と結論を先送りにしがちです。

不動産投資が資産形成や安定的な収入源として有用であることは分かっていても、さまざまな意見や情報に触れるごとに判断できなくなってしまい「機が熟したら始めよう」という“結論”に至ってしまいます。その結果、機会損失が拡大してしまっていることには、なかなか気づきません。

1-6.サンクコスト

経済学に、サンクコスト効果という用語があります。「ここまでがんばったから、ここでやめたらもったいない」という、誰もが一度は経験するであろう心理状況のことです。サンクコストとは「埋没費用」ともいい、取り戻すことができない時間やお金、労力のことを指します。

例えば、法律家を目指して司法試験の勉強に3年間費やしながら、試験に落ち続けた人がいたとします。「ここまでがんばったのに、あきらめてたまるか」と、もう1年、また1年とチャレンジし続けるも、結局、合格することができず、いつの間にか、企業に就職するには難しい年齢になってしまうというケースなどが挙げられます。

自分の人生ですから選択の自由があるため、自分の思う通りに生きることは悪いことではありません。しかし、どんなに努力を重ねても、報われないことも世の中にはあります。ある一定のラインを越えた場合は、「勇気を持って撤退する」ということも、実は最も合理的な選択のひとつです。

不動産投資でも、似たような状況が考えられます。「欲しい物件の価格交渉に失敗したが、交渉に時間や交通費をかけたので、高値でも買うことにした」など、交渉にかけた手間やお金、時間を取り戻そうとする行為は、非合理なで経済学の観点からは避けて通るのが賢明です。

1-7.心の会計

普段は1,000円のランチを我慢して、500円のお弁当で済ませる人が、旅行先では1,500円の高級駅弁を買ってしまったり、2,000円もするホテルの朝食を食べてしまったりすることはないでしょうか。

また、「額に汗して得た100万円はなかなか使えない」にもかかわらず、「宝くじで当たった100万円は、パーッと使ってしまう」など、普段はやらないようなお金の使い方をしてしまうこともあるものです。このように心理状況によって物の価値や判断が変化することを、「心の会計」といいます。

不動産投資では、投資金額が数千万円から億単位というように高額になりがちです。そのため、修繕費や手数料は、投資金額と比較すると少額に思えて、つい軽く考えてしまうかもしれません。

例えば、ホテルの宿泊で1泊3万円の部屋と5万円の部屋があったら、「3万円の部屋にしよう」と堅実に考える人がいたとします。そんな人でも不動産業者を変えれば、明らかに2万円も修繕費が抑えられるような状態に「まあ、いいか」と杜撰になってしまうこともあるのです。さらに、家賃収入は「不労所得」と考えて、つい浪費してしまうことも十分考えられます。

2.迷った時、弱さを感じた時こそ思い出すべき各理論

不動産投資における非合理的な判断や行動を、各種理論で紐解いてみました。これをお読みになって、人間はいかに弱くも脆い生き物なのかと思われたかもしれません。しかしそれは誰もが同じであって、こうした心理から逃れられる人はいません。

そのことを踏まえて、ここで解説した理論を学び、理解しておけば、重要な判断を求められる場面で合理的な判断に行きつける可能性は飛躍的に高まります。

判断に迷ったり、自分の弱さを感じたりした時に、「あの記事にそんなことが書いてあったな」と思い出していただき、判断に役立てていただければ幸いです。

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3年以上勤めた会社員へ。
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