不動産投資

会社員は住宅ローンと不動産投資ローンを併用できる? その可否と注意点

マイホームを購入し住宅ローンを返済している途中で「不動産投資を始めたい」と思い立った場合、住宅ローンと不動産投資ローンは併用できるのか?という疑問がまず思い浮かぶでしょう。

結論からいうとローンの併用は可能ですが、住宅ローンを返済している最中の人が不動産投資ローンを利用するとなると両方に返済をしていくことになります。仮に審査に通ったとしても、会社員がローンの併用をすることに無理はないのか?と心配になる人もいるかもしれません。

そこで今回は、住宅ローンと投資ローンの併用について最新事情を交えながら解説します。

会社員は住宅ローンと不動産投資ローンを併用できる? その可否と注意点

1.不正融資のスキャンダルと新型コロナウイルスの影響

2020年時点での不動産投資を取り巻く状況を読み解くキーワードは、2つあります。1つは何といっても世界的な感染拡大で経済にも重大な影響をもたらした新型コロナウイルスの感染拡大で、もう1つは不動産投資業界に激震をもたらした不正融資問題です。

2020年に端を発した新型コロナウイルスの感染拡大によって経済へのダメージが懸念される中、不動産を含む投資の世界では興味深い現象が起きています。それは全体的な投資意欲の向上です。「コロナショック」と呼ばれる株の大暴落もありましたが、意外にも同時期にはネット系証券会社の口座開設数が増えたことが明らかになりました。不動産投資についても一時的な落ち込みはあったものの2020年6月には投資意欲が改善してきているデータもあり、「衣食住」の一角をなす不動産の底堅さが改めて浮き彫りになっています。

もう1つ考慮しておくべきなのが、2019年に発覚したスルガ銀行のスキャンダルです。シェアハウスオーナー向けにスルガ銀行が不正な融資を行っていたことが明らかになり、その後さらにアパート施工管理大手の「TATERU」における融資書類の改ざん問題が起き、こうした流れを受けて金融機関の融資審査が厳格化されました。

ただし、これらの問題はいずれもアパート向けローンであり、マンション向けローンではありません。全く影響がないというと語弊がありますが、マンション投資向けであれば従来のように融資を利用できると考えてよいでしょう。

2.住宅ローンと不動産投資ローンは違う

ここで押さえておきたいのは、住宅ローンと不動産投資ローンの違いです。住宅ローンは「個人が住むための物件購入」に対して融資を受けますが、不動産投資ローンは「投資用ワンルームマンションやアパート一棟の新築など投資事業」に対して融資を受けます。

融資の目的が違うため、審査基準や貸付枠などが当然異なってきます。住宅ローンは、本人の年収や勤続年数など返済能力が重視されますが、不動産投資ローンは事業の採算性や継続性などが求められます。

2-1.融資額の違い

住宅ローンは自己居住用の不動産を購入するためのもので、不動産投資ローンは事業のための融資です。自分が住む家で収益を上げることはできませんが、投資用に購入する物件には収益性があります。購入する物件の価格も投資用物件だと「一棟もの」を購入する可能性もあるため、融資金額は一般的に住宅ローンよりも不動産投資ローンのほうが高く設定されています。

2-2.ローン金利の違い

住宅ローンと不動産投資ローンを比較すると、住宅ローンのほうが金利はかなり低めです。住宅ローンは個人向けであり事業用ではないため貸し倒れのリスクが低く、その分金利が低めに抑えられています。

その一方で不動産投資ローンは高額になりがちで事業用です。不動産経営の行く末によっては貸し倒れのリスクもあるため、金利設定は高めとなっています。

住宅ローンの「フラット35」で「新機構団信付き、融資率9割以下」だと金利は1.3%ですが、不動産投資ローン大手のオリックス銀行が提供している不動産投資ローンの「変動金利型」だと3.675%です。実に3倍ほどの差がありますが、これは決してレアケースではなく標準的な差です。

2-3.年齢制限の違い

年齢制限については、両者にあまり違いがありません。重要なのはローンを完済したときの年齢で、住宅ローン(フラット35の場合)、オリックス銀行の不動産投資ローンともに80歳までに完済できることが融資年齢の上限となっています。

不動産向けローンはほとんどが最長35年なので、80歳から逆算すると45歳が実質的な年齢制限の上限ということになります。

2-4.ローン返済期間の違い

ローンの返済期間についても、住宅ローン、不動産投資ローンともに最長35年というのが一般的です。先ほどから比較に挙げているフラット35、オリックス銀行の不動産投資ローンも両方とも借り入れ最長期間は35年となっています。

2-5.審査方法の違い

サラリーマンや公務員など、収入が安定している人であれば一般的に住宅ローンは通りやすい傾向です。審査では、年齢、勤続年数、年収などが対象となります。一方、金融機関にとってリスクの高い不動産投資ローンは審査が厳しく、金利も住宅ローンに対して高くなります。

それではサラリーマンが住宅ローンの支払いを抱えていても、新たにこの投資用の不動産投資ローンを受けることはできるのでしょうか。

結論からいうと、これは融資を受ける人の信用次第です。もちろん住宅ローン以外の負債がないほうが望ましいでしょう。しかし「信用」は、クレジットカードの使い方にも表れます。

例えば予定外の急な出費が出たときに利用できる、クレジットカードのリボ払い。月々の支払いが少ないというメリットがあるものの、使っている感覚が鈍くなり、限度額一杯まで使ってしまう危険もあります。クレジット会社は顧客の支払い状況等を信用情報機関に登録していますので、直接的ではないにせよ「信用」に関わります。

一方、不動産投資ローンの審査基準は、建物の耐用年数による融資可能額や担保の評価による融資限度額、キャッシュフローの算定方法などに分けられます。一般的な投資用ローンの限度額は借入比率が35%程度、限度額にすると年収の6倍前後と言われています。具体的にサラリーマンだと、年収500~700万円以上が銀行から融資を受ける場合の条件となります。

そのため投資用ローンを利用する場合は比較的利回りの大きい物件を選択するか、自己資金として頭金を多めに入れてローンの返済を少なくしておくのが賢明です。ローンを利用した経験者は審査基準について「ほとんどの金融機関の審査基準は同じようなもの。本店で断られても支店で通ったケースもあり自身の信用を高めることが重要」と話しています。

2-5.審査方法の違い

3.住宅ローンがあっても融資は可能

結論として、住宅ローンがあっても不動産投資ローンを利用することは可能であると述べました。その理由は、そもそもローンの性質が異なるからですが、だからといって借金であることに変わりはないので、両者を併用する際の注意点もしっかり押さえておく必要があります。

3-1.住宅ローンと不動産投資ローンは返済原資が違う

住宅ローンと不動産投資ローンの違いについて、ここまではお金を借りる際のお話をしてきましたが、ここでは返済をする際の違いについて解説します。

住宅ローンは自己居住用の不動産を購入するためのローンなので、それが収益を生むことはありません。マイカーローンは自動車を買うためのローンですが、これと同じです。こうしたローンのことを消費性ローンといいます。

一方で不動産投資ローンはお金を借りる目的が事業であり、投資用不動産からは収益が得られます。それが返済原資になるため、この点が返済原資の100%が労働による収入である住宅ローンとの大きな違いです。条件によっては入居者から得られる家賃収入でローン返済の全額をまかなうことも可能なので、その場合は「持ち出し」なしでローンを完済し、最終的に自分のものにすることもできます。

3-2.住宅ローンと不動産投資ローンを併用する場合の注意点3つ

最後に2つのローンを併用する場合に注意しておきたい点を3つ解説します。

①住宅ローンで投資用不動産は購入できない

住宅ローンと不動産投資ローンでは金利に3倍ほどの差があることを踏まえて、「それなら住宅ローンで投資用不動産を買えないものか」と考える人も出てくるでしょう。実際にそのような事例もありましたが、これは違反行為です。最悪の場合は詐欺に問われる恐れもあるので、絶対にしてはいけません。

そもそも両者に金利の差があるのは、貸し倒れのリスクに差があるからです。なぜ金利にこれほどの差があるのか、そこにはしっかりとした理由があるのです。

②不動産投資が100%うまくいくとは限らない

住宅ローンを返済しつつ、家賃収入を充当しながら不動産投資ローンを返済するというモデルには、1つ重大な落とし穴があります。それは、不動産投資が成功することが前提になっている点です。不動産投資が事業である以上、うまくいくときもあればいかないときもあります。購入物件が空室がちで思っていたとおりの収入がないと赤字になる恐れもあります。赤字になると住宅ローンと不動産投資ローンの両方を本業収入から返済することになり、決して楽なことではありません。投資用物件を手放したり、最悪のケースでは破産に追い込まれることもあるので、そのリスクを十分理解しておく必要があります。

③無理に審査を通そうとしない

すでに住宅ローンを返済中の人が不動産投資ローンに申し込む際には、他社の借入状況を正確に伝えることになります。当然ながら住宅ローンの返済がない人のほうが審査には有利になるわけですが、ここで審査で有利になるために無理をしてはいけません。仮に審査に落ちてしまったとしたら、それは金融機関としても事業の収益性や将来の返済能力に疑問符がついたからです。

申し込み時の情報を「盛る」ことによって無理に審査に通ったとしても、その後返済が苦しくなってしまっては意味がありません。併用の場合はすべてをありのままに伝えて、それで審査に通らないのであれば投資プランや資金計画を再度見直してみることも必要です。

理論上は住宅ローンと不動産投資ローンの併用が可能であるとはいえ、「何でもあり」というわけではありません。住宅ローンと不動産投資ローンを併用する場合は、これらの注意点を事前にしっかりと押さえておくようにしましょう。

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