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不動産投資で節税できる仕組みとは?所得税や住民税を圧縮できる理由を解説

不動産投資には多くのメリットがありますが、そのひとつに節税があります。何となく「不動産投資は節税ができる」という情報を見聞きしたことがある方は多いかもしれませんが、それではなぜ不動産投資で節税ができるのか、その仕組みはどうなっているのか、どの税金を抑えられるのか、こういった詳細については分からないという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、不動産投資の節税メリットにスポットを当て、節税ができる仕組みや関わりのある4つの税金、そして節税効果を最大化するためのノウハウを解説します。

不動産投資で節税できる仕組みとは?所得税や住民税を圧縮できる理由を解説

1.不動産投資で節税できる仕組み

不動産投資における節税効果は、多くの投資家が魅力に感じるポイントです。実際に、不動産投資でどのように節税が可能なのか、その仕組みを詳しく見ていきましょう。

まず、所得税は個人が得た所得の合計に応じた税率を乗じて計算されます。不動産投資を行っている場合、家賃や礼金などの収入からローン金利や修繕費用、賃貸管理委託料などの経費を差し引いた金額が所得となります。

日本では、所得が多くなるほど税率が高くなる「累進課税制度」が採用されています。具体的な税率一覧は以下のとおりです。

課税対象の所得額 税率 控除額
1,000円 から 194万9,000円まで 5% 0円
195万円 から 329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円 から 694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円 から 899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円 から 1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円 から 3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円 以上 45% 479万6,000円

出典:国税庁 No.2260 所得税の税率

ご覧のように、所得が増えるほど税率も上がる仕組みです。そのため、会社から給与を受け取っている人が不動産投資を始めると、給与所得に不動産所得が加算され所得税率の区分が上がってしまう可能性があるので注意が必要です。

それではなぜ、不動産投資では節税ができるのでしょうか。解説を進めていきましょう。

1-1.所得税・住民税の節税

不動産が所得税や住民税の節税になるといわれている理由は、所得の「損益通算」ができるからです。例えば、ある年の給与所得が900万円で不動産所得がマイナス100万円だったとします。年度内に大規模なリフォームを施して経費として計上した場合は、不動産投資では不動産所得が赤字になることも珍しくありません。この場合、その年の所得税の損益通算を行います。

給与所得の900万円から不動産所得のマイナス100万円を引いて総所得を800万円とし、所得税を計算します。損益通算して確定申告を行えば、給与所得900万円を前提に源泉徴収で納付していた所得税の一部が還付されるのです。

住民税は前年の所得額に応じて税額が決まるため、不動産投資によって所得額を圧縮することができれば、住民税の節税にもなるわけです。

1-2.贈与税の節税

不動産投資では、贈与税の節税効果も期待できます。毎年110万円まで認められている基礎控除を超える財産の贈与をすると税金が発生し、税率は相続税よりも高いことが特徴です。

こちらは贈与税の税率一覧(一般税率)です。

基礎控除後の課税価格 一般税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

出典:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

贈与税にも累進性があるため、贈与額が大きくなるほど税率は高くなります。しかし、現金を贈与するよりも不動産を贈与するほうが評価額は低くなるため、同じ財産額であっても不動産を贈与するほうが税金は少なくなります。

1-3.相続税の節税

不動産投資は相続税対策としても有効です。現金で相続する場合、そのままの額面で評価されますが、不動産の場合は、評価額が市場価値よりも低くなるため、相続税の負担が軽減されます。相続税は「資産の評価額×税率」で計算され、累進課税制度に基づいて税率が段階的に高くなる仕組みです。

以下は相続税の税率一覧です。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円

出典:国税庁 No.4155 相続税の税率

逆に、資産の評価額が下がれば相続税も少なくなるというわけです。もちろん相続税が下がったからといって市場価値が下がるわけではないので、不動産投資は相続対策として有効です。

1-4.法人税の節税

不動産の賃貸事業を法人化するのも、有効な節税スキームです。すでにご覧いただいたように所得税の最高税率は45%ですが、法人税の最高税率は23.2%です。つまり、所得額が「900万円 から 1,799万9,000円まで」以上のカテゴリーに該当する人は、法人化したほうが税率は低くなります。

さらに、法人化をしたうえで将来財産の相続をする予定の人を役員とし、家賃収入を役員報酬として支払うと低コストで生前に段階的な財産の移転が可能になります。

あくまでも所得額や財産規模の大きな人に適したスキームですが、これらに該当する人にとっての節税メリットはとても大きくなります。

2.不動産投資による節税効果のシミュレーション方法

不動産投資の節税では、経費の計上がポイントになります。不動産投資では主に以下の項目を経費として計上可能なので、年間の合計経費額を課税所得から差し引くことができます。

①保険料(火災保険、地震保険)
②固定資産税
③管理費(管理会社に支払った管理委託料)
⑤修繕、メンテナンス費
⑥修繕積立金
⑦減価償却費

このうち、①から⑥までは金額を簡単に知ることができますが、⑦についてはその意味と計算方法を解説します。

減価償却費とは、不動産の建物部分が経年劣化していく分を損金として処理できる経費のことです。実際にキャッシュが出ているわけではないのに経費として計上できるため、高い節税効果が期待できます。

不動産の建物や設備といった経年劣化する部分にはそれぞれ、法定耐用年数が定められています。取得費用をこの法定耐用年数で割ると、1年あたりの減価償却費が決まります。例えば、不動産を購入するのにあたって建物や設備部分の費用が1,000万円として、その耐用年数が10年の場合は毎年100万円ずつ減価償却費を経費にすることができます。

ほとんどのマンションは鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造で、これらの建物は法定耐用年数が47年です。仮に新築でマンション物件を購入した場合、建物部分の取得費用を47で割った金額が毎年の減価償却費になります。

こうして求められた減価償却費を含めた①から⑦までの経費を合計した金額を年間の課税所得から差し引き、先ほど紹介した所得税の税率一覧のいずれかに当てはめると所得税額を知ることができます。

3.不動産投資で節税すべきなのはこんな人

不動産投資の節税効果は、給与所得など不動産以外の収入が高い人ほど大きくなります。その境界線は、課税所得900万円と言われています。その理由は、先ほど紹介した所得税率の累進性にあります。

不動産投資で節税すべきなのはこんな人

年間の課税所得が「695万円 から 899万9,000円まで」の場合は所得税率が23%ですが、その1つ上の「900万円 から 1,799万9,000円まで」では33%です。実に10%も税率が高くなるため、このラインを超える人は不動産投資による節税効果が高くなります。

4.物件選びで節税効果は変わる

年間の課税所得が高い人ほど節税効果が高くなる不動産投資ですが、どんな物件でもよいわけではありません。その理由は、先ほど解説した減価償却費です。

減価償却費が大きいほど会計上の経費を大きくできるため、不動産投資を赤字にすることも可能でしょう。不動産投資を赤字にすれば損益通算で本業の課税所得を少なくできるため、節税効果が見込めます。

そこで注目したいのが、「1年あたりの減価償却費」です。1年あたりの減価償却費は取得に要した費用を法定耐用年数で割って求めるため、「取得費用が高い」もしくは「償却年数が短い」ことで1年あたりの減価償却費が大きくなります。

先ほど新築マンションは法定耐用年数が47年と述べました。これだと取得費用が高いとはいえ割り算の分母も大きいため、1年あたりの減価償却費が少なくなりがちです。

それに対して中古の不動産の法定耐用年数は以下のルールで決まります。

不動産の種類 法定耐用年数の求め方
法定耐用年数がすでに全部経過 法定耐用年数の20%
法定耐用年数の一部を経過 法定耐用年数から経過年数を差し引いた年数に経過年数の20%を加算

例えば築17年の中古マンションであれば、法定耐用年数である47年から17年を差し引いた年数は30年です。この30年に対する20%は、6年です。最初に差し引いた年数である30年に6年を足して、耐用年数は36年になります。新築マンションの47年と比べると11年短いため、その分「1年あたりの減価償却費」は大きくなります。

不動産投資の節税効果は中古物件のほうが大きくなると言われますが、これがその理由です。

5.不動産投資で節税を行う際の注意点

不動産投資で節税ができるのは、会計上の赤字によって損益通算ができるからです。この「会計上」という点が重要で、それを実現できるのは減価償却費があるからです。

会計上だけでなく実際の不動産投資が赤字経営だと、キャッシュの流出を伴います。節税にはなるかもしれませんが、それが長く続くと「持ち出し」によって懐事情が苦しくなってしまう恐れがあります。あくまでも「会計上の赤字」が重要であることを留意しておきましょう。

実際の赤字を避けるために重要なのは、物件選びです。長期にわたる収益性や資産価値の維持が期待できる物件を購入することは節税目的だけでなく、不動産投資の本質です。

6.不動産投資は税金との関わりが避けられない

当記事では節税の視点から不動産投資と税金の関係について解説しました。節税を実現するためには税金の仕組みをしっかり理解する必要がありますし、それを踏まえた投資行動が求められます。

所得税や法人税、贈与税、相続税といった不動産投資と関わりの深い税金についてしっかりと理解した上で、節税効果の最大化を目指しましょう。

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