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投資の基本
青色申告と白色申告はどこが違うのか
不動産投資はサラリーマンと違って自分で「商い」をする立場になりますが、必ずしも開業届の提出を必要としていません。しかし開業届を出して「青色申告」で確定申告をすると税金面でさまざまなメリットが受けられます。その一方で確定申告には「白色申告」というものもあります。では青色申告と白色申告はどこが異なり、それぞれにどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
そこで今回は関連性の高い事業的規模の認定とともに青色申告と白色申告について考えてみます。
青色申告と白色申告の違い
一般の会社員や公務員などサラリーマンの多くは、勤務先が本人の代わりに税金の源泉徴収を行い年末調整によって最終的な税額の計算を行ってくれます。つまり自ら税額を計算し申告・納付する「確定申告」をする必要はありません。しかし不動産投資家など給与以外の収入がある人は、確定申告が必要です。確定申告は青色申告と白色申告の2種類があります。
確定申告のなかでも「青色申告」は複式簿記で帳簿をつけ仕訳帳と総勘定元帳を作成、さらに損益計算書や貸借対照表、青色申告決算書などを作成して一緒に提出する必要があります。一方「白色申告」は普段の経理から簡易帳簿で問題なく収支内訳書や控除を証明する書類を添付するだけで十分となっています。
なおどちらの申告方法でも提出する申告書は「確定申告書(B)」という同じ申告書です。しかし以前は文字通り青色申告の申告書が青色で白色申告は申告書が白色だったために、このような呼称で区別されるようになりました。青色申告は経理が複雑で用意する帳簿も多く作業は大変ですが、以下のような税務上のメリットが受けられます。
- 65万円、55万円、10万円いずれかの青色申告特別控除
課税対象となる所得額が減額される所得控除を受けられます。なお控除額は基本的に65万円ですが、65万円の控除を認めてもらうためには、後述する「事業的規模」が認定されることが条件のほか、電子申告または電子帳簿の保存を行う必要があります。 - 家族への給与を経費にできる青色事業専従者給与
事業的規模として認定されている場合、年齢が15歳以上の生計を一にしている家族に対して例えば不動産投資の実務を手伝ってもらい給与が発生した際に、その給与を必要経費に算入することができます。 - 赤字の3年間繰越
事業的規模として認定されていると赤字を3年間繰り越せます。黒字が出た年は、その年の所得と相殺し税額を抑えることが可能です。 - 30万円未満の減価償却資産を一括で経費に
白色申告では、一括で経費算入が可能な資産は10万円までです。それ以上の金額になる経費は減価償却で処理します。一方の青色申告は30万円まで一括で経費計上ができます。
開業届の提出方法
青色申告を行うためには、「確定申告の時期にだけ書類を用意して税務署に提出すれば良い」というわけではありません。管轄の税務署に対して事前に青色申告承認申請書とともに開業届を提出しておく必要があります。この書類はどちらも国税庁のホームページからダウンロードできます。税務署に行けば書き方を親切に教えてくれます。ただし提出時期は注意が必要です。
原則として開業日から2ヵ月以内に申請をしないとその年の所得は青色申告ができません。ただし1月1日~1月15日の間に開業した場合は、3月15日が提出期限になります。またすでに開業していて「これまでは白色申告をしていたけど次回から青色申告に切り替えたい」という場合も3月15日まで提出をしないとその年の所得に対する申告で青色申告をすることはできません。
この書類は1度提出すると以降は提出が不要です。不動産投資をこれから始める人で青色申告の利用を考えている人は、覚えておいてください。
事業的規模の認定
サラリーマン投資家が青色申告のメリットを十分に得るためには、必ず「事業的規模」として認定されなければなりません。一般的には、「5棟10室基準」といわれており、一軒家など独立家屋なら5棟、マンションやアパートなら10室以上の場合、事業的規模と認定されます。ただしこれより物件数が少なくても規模が大きい物件で5棟10室の基準と同等以上に収益が上がっている場合は、事業的規模として認定されることがあります。税理士や税務署に相談するようにしましょう。
青色申告と白色申告のどちらが良いのか
ざっくりとした説明になりましたが、青色申告の概要について解説してきました。青色申告をするべきか否かについては、事業的規模でなくとも経理作業が得意で申告が苦にならない人であれば青色申告がいいかもしれません。しかし事業的規模がなく自分で帳簿や申告書類の作成ができず税理士に確定申告書の作成を依頼する場合、依頼する費用のことを考えると青色申告のメリットがなくなってしまう可能性があります。
そういう場合は、無理に選択する必要はありません。本当に事業的規模が大きくなり専業大家としてやっていけるレベルになったタイミングが来たときに切り替えるのが一番合理的だといえるでしょう。