投資の基本

不動産投資は節税のためではなく、しっかりと収益を狙うべき

投資用マンションなどの営業で特に高所得層を対象とした物件の場合、「節税になります」という言葉が常套手段のように使われています。「不動産投資で節税」というセールストークは、たしかに間違ってはいません。ただ下手をすると節税額以上の損が出てしまうこともあるため、営業担当者のいうことをすべて鵜呑みにはしないほうがいいでしょう。

不動産投資を行う場合は「具体的にどういう場合に節税になるのか」という点を投資家自身が十分に理解したうえで、物件を購入することが大前提です。

不動産投資は節税のためではなく、しっかりと収益を狙うべき

不動産投資が節税になる理由

まず不動産投資が節税になる仕組みについて確認していきましょう。

所得税や住民税の税額は課税対象となる所得額に応じて計算されます。不動産所得は給与所得や事業所得などの所得と「損益通算」することができるため、不動産所得が赤字だった場合は他の所得から赤字額を差し引くことが可能です。損益通算した所得額が少なくなれば結果的に税額も少なくなるわけで、これが株式などの金融商品と不動産の違いであり「節税できる」というセールストークの根拠になります。

マンションやアパートのような高額な資産を購入して行う不動産投資では、物件の購入価格のうち土地を除いた建物や設備の費用を購入年度の一括ではなくその後の何十年に渡り分割で経費計上できるようになっています。なぜなら建物や設備などは資産性が高く、購入直後にすべて消費されるものではないからです。資産の経年劣化とともに少しずつ消費されていくと考えられており、この仕組みを「減価償却」といいます。

ただし前述した通り土地は減価償却の対象にはならないため注意が必要です。工場などの生産設備として購入された機械などについては、同じような考え方から会計処理されます。なお減価償却期間は、投資家の好き勝手に決めることはできません。減価償却における耐用年数は資産の種類によって以下のように定められています。

  • 木造:22年
  • 木骨モルタル造:20年
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造:47年

上記は新築の場合です。中古の場合は、以下のようになります。

  • 新築時の耐用年数を過ぎていない場合
    取得時の耐用年数=(新築時の耐用年数-経過年数)+(経過年数×0.2 )
  • 新築時の耐用年数を過ぎている場合
    取得時の耐用年数=新築時の耐用年数×0.2

上記の期間は実際に現金の移動は発生しないものの、減価償却費として経費計上できるためその分を不動産所得から差し引くことができます。つまり家賃収入からその他の費用を差し引いた金額よりも減価償却費が大きい場合、現金が手元に残るのです。しかし会計上は赤字となるため、その他の所得と損益通算することで「節税」ができます。

不動産投資が節税になる理由

節税よりも収益をあげよう

源泉徴収を前提とする日本の課税制度では、個人事業主などに比べるとサラリーマンが合法的に行える節税は少ない傾向にあります。高額所得者の場合、累進課税制度(所得の高い人ほど税率も高い)が適用されるため所得税や住民税の負担の重さに悩まされる人も多く、不動産投資による「節税」が流行のようになった時期もありました。

しかし節税することばかりに目を奪われていると、本来の不動産投資の目的を見失ってしまい「気がついたら損をしていた」ということになりかねません。「高額な新築マンションを購入したけれども入居者が見つからず売却価格も大幅に下がってしまった」ということになってしまっては本末転倒です。最初から「節税」を考えるのではなく、投資物件数や家賃収入を増やして税金が気になりはじめてから「節税」を考えるぐらいの心構えがいいのかもしれません。

そのためにはリスクを抑えた投資が重要になります。地方の過疎化と東京圏への人口流入の大きな流れが今後も続くということを前提に考えると、やはり賃貸需要が旺盛な東京都市部での中古マンション投資が狙い目です。その場合、以下のような2つの方法をおすすめします。

  • 質の高いリノベーション済みの物件を選択する
  • 程度の良い物件を購入して、その後タイミングをみてリノベーションを行って付加価値を高める

この方法は新築物件を購入するよりも費用が安くなるため十分な利回りが期待できるでしょう。

リノベーション費用の会計処理

購入時に大規模なリノベーションを行った場合の費用はどのように会計処理されるのでしょうか。建物の資産価値を高めたり耐用年数を延ばしたりする効果があるとすれば、資本的支出と認識され単年度で経費処理されず建物価格に上乗せして同じように減価償却されます。つまりリノベーション費用にも「節税効果」があるというわけです。

単に「節税」を目的に不動産投資を始めるのはおすすめできません。しかしリノベーションなどで物件の資産価値が上がり得られる家賃も増えるのであれば、それは理想的な「節税」といえるのではないでしょうか。

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