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仮想通貨で話題になったブロックチェーン、不動産取引での応用の可能性

過熱気味に推移していたビットコインをはじめとする仮想通貨の取引や運用は 2017年末にバブルが崩壊しました。2019年も価格が乱高下して、「投資」というよりは「投機」といった表現のほうが適切かもしれません。ある種の「マネーゲーム」として楽しむにはよいでしょうが、安定的な資産運用を希望する人には、おすすめできる投資方法とはいえないでしょう。

ただ基幹技術となったブロックチェーンは、将来性のある技術です。不動産投資も含めて多くの分野で応用が期待されています。そこでここではブロックチェーンの概要や不動産における活用の可能性について解説します。

仮想通貨で話題になったブロックチェーン、不動産取引での応用の可能性

ブロックチェーンという技術

ブロックチェーンはビットコインや仮想通貨そのものと考えられがちですが、同じものではありません。ブロックチェーンとは、仮想通貨の仕組みを支えている基幹技術のことです。仮想通貨の仕組みは、サトシ・ナカモト氏がビットコインを開発したことで生まれました。特定の中央集権的な機関を必要とせず外部からの改ざんに強く迅速な取引を実現するための仕組みとして、ブロックチェーンが開発されます。

仮想通貨が成立するためには、取引情報や所有者情報などが記録された信頼できる台帳の存在が不可欠です。ブロックチェーン技術は、複数のコンピューターで同時に台帳を処理・管理することで中央集権的な管理者がいなくても台帳の管理と運用を可能としました。このことから「分散型台帳」とも呼ばれています。

台帳で処理される取引履歴のデータが「トランザクション」です。ブロックチェーンではこのトランザクションを一定のブロックにまとめ、さらにそれを鎖のようにつなげて処理するため、「ブロックチェーン」という名称になっています。この技術の応用範囲は、仮想通貨に限定されていないのが特徴の一つです。信頼できる台帳管理の技術は、例えばホテルのような宿泊施設と旅行者のマッチングもできます。
また食品や医薬品の流通過程の記録台帳を誰でも閲覧できるようにするサービスなどでの応用が可能です。

ブロックチェーンという技術

ブロックチェーンの可能性

このように広い分野でブロックチェーン技術の応用が期待されています。金融業でも物流・小売業でも取り扱う情報が膨大になっており、さまざまな課題が高度化・複雑化しています。その解決のために、より一層の情報処理技術の進化が求められていますが、現在のように複数の企業が情報管理の台帳を個別の形式で保管していると統合的な情報処理に課題が生じかねません。

そこで活躍が期待できるのがブロックチェーンの分散型台帳の仕組みです。ブロックチェーンなら組織の垣根を越えて複数の企業で情報管理ができます。そのため多くの分野でこれまでできなかったような問題の解決が期待されているのです。

ブロックチェーンの不動産への活用

不動産業界で注目されているのがブロックチェーンの不動産投資や不動産取引への活用です。まず賃貸契約の分野が大きく変わる可能性があります。賃貸契約では入居希望者の審査が重要になりますが、現在は本人の所得申告や身元、勤務先などの情報をもとに、各大家や不動産会社ごとに個別で判断を下しています。しかし賃借人の居住履歴を台帳化してブロックチェーンで管理できるようになれば、賃貸人はそれを閲覧することで審査の役に立てることができるかもしれません。

この仕組みは、2017年に積水ハウスとブロックチェーン技術を有する企業であるbitFlyerとの提携事業として進行中です。サービスは、当初積水ハウスが提供するサービスにしか利用できないという話ですが、いずれは運用範囲の制限をなくして、すべての賃借人と賃貸人が利用できることを目指しています。また物件の管理や入居者の安全性確保にもブロックチェーンが使われるかもしれません。

ブロックチェーンのセキュリティーの高さが、ピッキングに強い電子錠の開発や民泊などで活用できるスマートロック(遠隔での鍵の開け閉めや、スマートフォンを鍵代わりに使用できるようになる)に役立てられる可能性もあるでしょう。また防犯カメラの運用・管理にもブロックチェーンの技術を活用することも期待されています。

このようにブロックチェーンによって従来の煩雑な不動産手続きが簡素化されたり、コスト削減やセキュリティー強化が実現すれば、それに伴い不動産の流動性が高まり不動産取引が活発化することが期待されるのではないでしょうか。

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