資産運用

インフレに強い実物資産の特徴と種類、その中でも王道といわれる資産とは?

2022年は世界各国でインフレが進行し、さらにウクライナ戦争などが金融市場にも多大な影響を及ぼしました。そこで株価の暴落や為替の乱高下などを目の当たりにした投資家が注目したのが、これらの金融資産と対極にある実物資産です。

保有資産を分散、多様化することはリスク管理上有効ですが、金融資産の中での多様化だけでなく実物資産も含めた多様化が有効であるとして、金(ゴールド)や不動産といった実物資産、さらには絵画やウイスキーといった少々風変わりな実物資産にも注目が集まりました。

本記事ではインフレの環境下で注目を集めやすい実物資産について、その定義や種類、実物資産を保有することのメリットやデメリット、さらには実物資産の王道ともいわれる不動産について王道といわれる理由とともに解説します。

インフレに強い実物資産の特徴と種類、その中でも王道といわれる資産とは?

1.そもそも実物資産とは

「実物資産」とは、土地、建物、金やプラチナのような貴金属、絵画やワインなど、実際に形があり、それ自体に価値がある「現物」のことを指します。こうした実物資産を購入・所有して、その値上がりを期待する投資方法を実物資産投資といいます。実物資産は現物資産と呼ばれることもあることから「現物投資」とも呼ばれます。

一般的に投資といえば、株や債券、投資信託などの「金融資産」への投資を思い浮かべますが、これらの金融資産は証券などの紙や電子データ上に存在し、文言としてその価値が担保されているので、実物投資との対比として“ペーパー投資”などと呼ばれることもあります。

冒頭でも述べたように2022年はインフレの進行やウクライナ戦争によるエネルギー高などにより、貨幣や金融資産と対極にある実物資産に注目が集まった年でした。

この傾向が今後も続くことを想定すると、実物を資産として所有することは分散投資の観点からも有効です。この考え方は富裕層も同様にとっており、資産防衛の意味合いもあって富裕層は必ずといってよいほど保有資産のポートフォリオに実物資産を組み入れています。

1-1.実物資産と金融資産の違い

実物資産と金融資産の最大の違いは、その資産自体に価値や用途があるか否かです。金であれば宝飾品や工業製品の材料として利用することができますし、石油や天然ガスなどはエネルギーとなります。そのほかにも不動産は居住や事業に利用することができるように、実物資産にはそのものに利用価値があります。

これに対して金融資産は通貨や証券など、その資産自体に価値や用途はありません。通貨であればそれぞれの発行国、株式であれば発行元の企業といったように、発行元の信用があるからこそ成り立つのが金融資産です。

株式を保有しているとその企業に対して株式保有分の権利を持つことができますが、株券を何かに使えるかというと、メモ紙にもならないでしょう。このように資産自体に実体や利用価値があることが、実物資産の定義です。

2.実物資産のメリットとデメリット

実物資産投資をお考えの方に向けて、知っておくべきメリットとデメリットについて解説します。特にデメリットはしっかり留意しておく必要があるので、ここでの解説を理解した上で検討するようにしましょう。

2-1.実物資産のメリット

実物資産のメリットは、金融資産とは異なる価値を持っているため金融市場の不安定化に強いことです。金融市場が不安定化すると実物資産の安全性に注目が集まりやすくなるため、コロナ禍によって金融市場が不安定化した時には金の価格が大きく上昇する局面がありました。「株は今後不透明なので、安全資産である金を持っておくべき」と考える投資家が多くなったのが最大の理由です。

以下は、日経平均株価と金価格の推移を示す2020年4月から2022年12月までの日足チャートです。オレンジ色の線は日経平均株価、水色の線はGLDという金価格と連動するETFの価格です。

実物資産のメリット

引用:TradingView

100%ではありませんが、ほとんどの局面で両者は逆相関の値動きをしています。上記はコロナ禍が深刻化した時期のチャートなので株価が大きく下げる局面がありましたが、株価の暴落に相反して金価格が上昇していることが見て取れます。株価が上昇すれば金価格は下落し、その逆も然りです。この特性を踏まえて、株式と金をそれぞれ資産ポートフォリオに組み込んでおくと、資産全体の大幅な目減りを防ぐことができます。

また、実物資産にはインフレにも強い特性があります。インフレでは貨幣の相対的な価値が低くなるため、それに対して実物資産の価値が高くなります。富裕層が不動産や貴金属だけでなく絵画やウイスキーなどにも注目しているのは、インフレ対策が深く関係しています。

2-2.実物資産のデメリット

実物資産の最大のデメリットは、流動性が低いことです。金融資産は売買をするための市場や取引システムが確立しているので手軽に売買ができますが、実物資産はそうはいきません。すぐに現金化したいと思っても買い手がつかなければ売れないといった問題が起きる可能性があります。

また、金融資産は市場での価格が日々変動しているため、細かい売買をして利益を狙うことができますし、株式や投資信託など配当や分配金などのインカムゲインが得られる金融資産もあります。

こういった金融資産のメリットを実物資産に期待することはできないので、この点でも実物資産と金融資産は対極にあるものといえます。

3.実物資産の王道は不動産

不動産も、実際に土地や建物を購入することから、実物資産のひとつです。貴金属やワイン・ウイスキー、美術品との大きな違いは、「家賃収入」というインカムゲインが得られる点でしょう。先ほど金融資産では配当や分配金といったインカムゲインが得られるものの、もう一方の実物資産にその期待はできないとも述べました。不動産は実物資産でありながらインカムゲインを狙うことができる数少ない資産です。

また、家賃は物価に連動して上昇するので、インフレが進行すると長期的にみれば家賃相場も高くなります。つまりインフレになると収益性にあまり影響がないため、不動産はインフレに強い資産とされています。もちろん他の資産と同じように、値上がりによる売却益も狙えます。

その一方で、不動産投資にも保管コストが発生します。固定資産税や建物の修繕費などです。ただし不動産投資の場合は家賃収入が得られるので、インカムゲインを維持コストに充当することができます。

また、建物が年月とともに劣化するというデメリットはありますが、基本的に土地は経年劣化しません。不動産は株式などの金融資産とは異なる値動きをすることが多いので、ポートフォリオに組み込むと、高い分散投資効果が得られます。

リスク管理の観点からも、資産運用では異なる種別の資産を持って資産の多様化を図ることが極めて重要です。先ほど解説した株価と金価格の逆相関性からも分かるように、ある種類の資産が値下がりすることがあっても、別の種類の資産の値動きと相関性がなければ、資産全体での値下がり率は少なくなります。

このことから、実物資産と金融資産をバランス良く保有することが大切です。中でも不動産という実物資産には他の実物資産にはないインカムゲインがあり、金融機関から融資を受けて投資ができるという“レバレッジ”効果も利用できます。

もし、不動産という実物資産をお持ちではないのなら、資産ポートフォリオを見直すタイミングで、不動産投資について検討されることをおすすめします。

3-1.不動産が王道といわれる理由

実物資産でありながらインカムゲインが得られる不動産は、実物資産と金融資産がそれぞれ有しているメリットを併せ持っており、「いいところ取り」ができる資産です。

景気の変動による影響が少なく、また2022年以降進行するといわれているインフレへの対策としても有効なので、資産形成や収入を狙うだけでなく資産防衛の観点からも不動産のインフレ耐性は強い味方になります。

2022年、米国では急激なインフレが進行しており、CPI(消費者物価指数)が8%や9%といった水準で高止まりをしました。それに対して日本では3%台の水準にとどまっているため、米国ほどの深刻さはありません。しかし、米国経済の影響を強く受ける日本経済でいつ急激なインフレが発生しても不思議ではなく、インフレ耐性に強い不動産への注目が集まるのは自然な流れといえます。

インフレ対策だけであれば、金などの貴金属や絵画、ウイスキーなどに投資をしても同じ効果が期待できますが、不動産以外の実物資産ではインカムゲインが期待できず、将来的な値上がりを狙うことが本筋です。インフレ耐性がありながらインカムゲインが期待できるのは、数ある実物資産の中で不動産だけです。

不動産が王道といわれる理由

3-2.不動産投資の始め方

不動産投資を始めるには、賃貸物件にするための不動産を購入する必要があります。資金を全額自分で用意できるのであれば手持ちの資金で不動産を購入してもよいですが、全額を用意できなくても不動産投資の場合は融資を利用できます。

不動産投資も「投資」と呼ばれているため、株式投資やFX投資など他の投資と同様に見られがちですが、不動産投資は賃貸物件という実物資産を用いる事業です。投資のための資金調達に融資を利用することはできませんが、事業資金であれば融資の対象になります。物件の購入に必要な金額のうち1割や2割といった自己資金があれば残りを融資で調達できるため、不動産投資は多くの人に門戸が開かれています。

物件を購入したら客付けといって入居者を募集する必要があるわけですが、多くの場合、不動産を購入した不動産会社が入居者の募集業務を行っているため、こうしたサービスを総合的に提供している不動産会社であればあまり手間をかけることなく不動産収入を手にすることができます。

不動産投資を「始める」と表現しているように、不動産投資は物件を購入して終わりではなく、そこがスタート地点です。長く続く賃貸経営を成功させるためにも、物件選びから入居者の募集、賃貸経営のさまざまなサポートを受けられる不動産会社を選ぶことが成功のカギです。

4.不動産投資で重要なのは不動産会社選び

当記事では注目を集める実物資産について押さえておくべき知識を網羅し、その中でも王道といわれる不動産投資について解説しました。実物資産投資を始める方は不動産投資を選ぶ方が多いと思われますが、その場合は物件選びの前に不動産会社選びを重視するようにしましょう。

不動産投資に強い不動産会社をパートナーとすることができれば、初めての不動産投資であっても成功する確率は高くなり、インフレに強い資産形成が可能になります。

iDeco、NISAの次は 不動産投資?いいえ、リノベ 不動産投資です。
あわせて読みたいおすすめコラム