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不動産投資コラム

民法改正によって、原状回復に対する考え方はどう変わる?

民法が明治以来120年ぶりに大改正されます。改正民法は2017年6月に公布され、施行は2020年までにとなっています。今回の改正は契約に関するルールを定めた債権規定を抜本的に改めるもので、改正項目は約200にも及びます。この中に、賃貸オーナーにも関わる変更点がいくつかあります。今回は、原状回復義務の範囲が明確化されたことに着目してみましょう。

「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」おさらい

原状回復義務とは、住居の賃貸借契約において、契約終了、または途中解約する際に、借り主・入居者が部屋に設置したものを取り除いてから部屋を返すべき義務のことをいいます。

これは、契約前の状態に戻して返すということではありません。なぜなら、部屋に人が住んで通常に使用していれば、時とともに劣化・消耗するのは当然のことであり、その消耗によって価値が減少した分は部屋を貸した側が負担すべきだと考えられているからです。一方で、故意にせよ、過失にせよ、借主の責任で部屋に生じた損耗の修復は、借りた側が負担すべきとされています。

ただ、そうはいってもどこまでが自然に生じた損耗なのか、どこからが借主の責任になるのかの明確な線引きは難しく、トラブルの種になりやすい状況がありました。それを受けて、1998年3月に国土交通省(当時の建設省)がとりまとめて公表したのが、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」です。

このガイドラインでは、原状回復の定義が明確にされ、「通常の使用」をより具体的な事例を用いて説明しています。トラブルを予防する具体策や、解決に向けて参考にできる指針が示された形です。

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120年ぶりの民法大改正、どう変わった?

今回の民放改正では、その「原状回復義務」と「敷金」について、法律に明記されることになりました。これまで敷金は、商習慣としてあっただけで、その定義や敷金の返還義務などに関しては法律上で規定されていませんでした。改正後の民法では、敷金の定義がこのように記されます。

「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」(改正民法 第622条の2)

敷金とは、借主の賃料の滞納などがあった場合に、その弁済に充てるものであるということです。そして、弁済に充てた後に残った敷金は、借主に返還しなければならないということになります。また、「いかなる名目によるかを問わず」とありますので、「敷金」ではなく「保証金」などのような呼び方をしても、上記のような性質の金銭は同等に扱わなければなりません。

また、改正民法では「原状回復義務」の範囲について、下記のように、通常の使用によって生じた物件の損耗、経年劣化は借主が回復する義務を負わないことが改めて明示されました。

「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」(改正民法 第621条)

これまではガイドラインに過ぎなかったものが、今後はルールとして明確に定められたことになります。

改正に対して賃貸オーナーが備えておくべきこと

これまでも、ガイドラインに沿わない賃貸借契約が個別に結ばれるケースはありました。例えば、「物件の損耗が通常の使用によるかどうかにかかわらず、借主は退去時に修繕費を負担する」といったような特約です。

今後も、契約にそのような特約を盛り込むこと自体は認められます。しかし、そのような契約を結んだとしても、消費者契約法の10条に照らして「消費者の利益を一方的に害するもの」として無効にされる可能性があるということは、賃貸オーナーとして認識しておく必要があるでしょう。

また、関西や九州の一部には「敷引き」という習慣があります。敷引きとは、契約時に保証金から差し引かれるお金のことで、退去時の修繕費が敷引きの額よりも小さくても、残りは返金されません。しかし、改正民法が施行された後は、借主の責任による損耗にかかる修繕費以外は返還しなければなりません。敷引きとして得ていた分を礼金として受けるようにするなどして、体制を整える必要があります。

貸主は、物件の経年劣化や通常の使用による損耗の修繕費を支払う必要があるため、投資家としてはその費用を考慮した収支管理をすることが求められるでしょう。

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