市況

不動産業界で警戒論もささやかれる「2022年問題」とは?その影響を考える

1年延期された東京オリンピックは、2021年に無事閉幕しました。コロナ禍のインパクトが大きすぎるあまりに多くの人が忘れつつあることかもしれませんが、東京オリンピックに向かうまでの不動産市場は「イケイケ状態」でした。

インバウンド需要や不動産投資ブームにも支えられて不動産市場は活況となっており、その活況は東京オリンピックまで続くという意見が多く見られました。

もしコロナ禍がなかったとしても、東京オリンピックを過ぎると不動産市場はピークアウトすると見る向きが多かったため、不動産業界ではこれが「2020年問題」としてささやかれてきた経緯があります。実際にはコロナ禍の影響で東京オリンピックにピーク感がなく、いつの間にか2020年問題についても言及されなくなったように感じます。

しかし、不動産業界ではコロナ禍の有無に関係なく首都圏を中心に、2022年、全国で土地や住宅の供給が過多になるのではないかという「2022年問題」が取り沙汰されています。

その原因は「生産緑地の指定が解除されるから」ということなのですが、そういわれても、いったい何のことなのかよくわからないという方もいると思います。そこで、今回は不動産業界の「2022年問題」について解説したいと思います。

<目次>
1.不動産2022年問題とは

2.生産緑地とは
2-1.戦後の街づくりと生産緑地法
2-2.生産緑地は不平等の象徴
2-3.指定解除で土地と物件の供給が進む

3.不動産2022年問題で不動産価格はどうなる?
3-1.価格が暴落する可能性のある不動産は?
3-2.影響を受けない不動産は?

4.不動産2022年問題の影響を受けず安心して賃貸経営を行うために
4-1.影響を受けにくい立地の物件を選ぶ

1.不動産2022年問題とは

2022年になると不動産価格が大きく下落するかもしれない、というのが不動産の2022年問題です。その理由は生産緑地の指定解除ですが、これについての詳細は後述します。

不動産は高額商品の代表格だけに、すでに指摘されている2022年問題のリスクが現実になると価格下落の影響は大きなものになるでしょう。かつて日本は不動産バブルの崩壊を経験しており、その「悪夢」がよぎる人もいるのではないかと思います。

2.生産緑地とは

2022年問題の大きな鍵を握っている生産緑地について、その根拠となる法律と併せて解説します。

2-1.戦後の街づくりと生産緑地法

戦後の日本は、高度経済成長を背景に都市圏での都市化が急速に進みました。ただ、無秩序な開発は効率的な都市の発展の妨げとなります。国や自治体は「国民が健康で文化的な生活ができるよう、しっかりと都市整備を行わなければならない」として、1968年に都市計画法を定め、住みやすい街づくりを目指しました。

この都市計画法ではまず、街づくりをする区域が決められます。そして、市街化を推進する区域(市街化区域)を、住居系、商業系、工業系など12種類に用途地域を分けて、目的に沿ったそれぞれのルールに従い、開発が行われてきました。しかし、この「市街化区域」に指定された地域でも、農業の継続を希望する農家が多く存在していたのです。

また、多くの緑地が次々と宅地に転用されたことで、都市部の住環境の悪化や、発生する公害や災害を防ぎ、農林漁業と調和した都市環境を維持する必要が生じました。そのため、「市街地の例外」として、自治体が残すべき農地や緑地を指定できるようにした法律が、1974年に制定された「生産緑地法」です。

生産緑地法により、0.2ヘクタール以上の農地や緑地で、自治体から指定を受けると、固定資産税の減免措置(農地の宅地並み課税の適用除外)が受けられ、一定期間を経たら、自治体に買い取りを求めることができるようになりました。

この生産緑地法が施行されたのが、1992年です。そこから30年後にあたるのが2022年です。この「生産緑地法の施行から30年」というのが、2022年問題の本質です。

2-2.生産緑地は不平等の象徴

1992年に改正生産緑地法が施行されました。市街化区域にある生産緑地で農業を続けてきた農家の多くは兼業農家です。その人たちが持つ農地が、宅地並み課税の提供除外であったことに対する住民からの不満の声があがったのです。また、80年代後半のバブル経済による地価高騰から、特に東京、大阪、名古屋の3大都市圏で宅地供給を促進させるべきだとの機運が高まりました。

法改正のポイントは、敷地面積が500平方メートル以上で農業に専念する人は、「生産緑地」として自治体に届ければ、今後30年間、従来通りの優遇税制が受けられるということです。(※)つまり、「保全すべき農地」と「宅地かすべき農地」を改めて選別し直したのです。

こうして、対象となった生産緑地は首都圏、近畿圏、中部圏のいわゆる都会に約1万3,187ヘクタールあります(平成28年 国土交通省「都市計画現況調査」)。このうち、東京都内には3,330ヘクタールの生産緑地があります(平成26年東京都都市計画公園緑地等調書)。

※目黒区は300平方メートル以下など自治体によっては面積要件を引き下げている

2-3.指定解除で土地と物件の供給が進む

1992年から30年経った2022年。まさに、この生産緑地の指定は期間満了となり、その優遇措置が終了するのです。これまで農業を続けてきた人も高齢化しており、そのタイミングで農地売却が加速するのではないかと考えられています。

コロナ禍や東京オリンピックなどを織り込んだ首都圏の公示地価推移を見てみましょう。特に東京都の地価が突出して上昇しているのが見て取れます。

首都圏の公示地価推移

出典:【2021年】過去10年間の公示地価推移から読み取る今後の住宅地価動向(三菱UFJ不動産販売)

しかし、2020年を境に下落に転じているのがわかります。これはコロナ禍による「東京脱出」などが影響していると思われますが、このように不動産市場が弱含んでいるところに生産緑地の一斉解除が到来したら、多くの地主の中には今のうちに売り抜けようとの心理が働くかもしれません。そう考える人が増えると、農地を売却しようとする人は続出するでしょう。大都市とはいえ、その真ん中で1万ヘクタールもの土地が供給されれば、地価は下落するはずです。

その一方で、相続対策のために農地に投資効率の良いワンルームの賃貸アパートなどを建設して、不動産投資を始める人が急増するのではないかという見方があります。東京のみならず、神奈川や千葉、埼玉にも生産緑地はたくさんあるのです。首都圏での賃貸住宅の供給は急増して、需要を上回り、物件価格も賃料も下がっていくのではないかといわれています。

こうした状況から、週刊誌などでは、すでに「2022年まで待てば、広々とした一戸建てが買える」というような記事も出てきました。「郊外では驚くほど安い値段で買えるようになる」「賃貸アパートやマンションも借り手市場になる」との予測です。

不動産を所有している人にとっての2022年問題は価格下落を引き起こすリスク要因ですが、これから不動産を買いたいと思う人にとっての2022年問題はチャンスでもあるわけです。それはもちろん、自己居住用の不動産を求める人だけでなく、投資用の不動産を求めている人にとっても同じです。

3.不動産2022年問題で不動産価格はどうなる?

いざ2022年が到来して不動産の2022年問題が現実のものとなった場合、不動産価格にはどんな影響があるのでしょうか。その影響を考察してみましょう。

3-1.価格が暴落する可能性のある不動産は?

生産緑地の一斉解除によって価格が暴落する可能性がある不動産として真っ先に挙げられるのが、近隣に多くの生産緑地があるエリアのマンションやアパートでしょう。

なぜなら、生産緑地の多くは都市部の中でも住宅地に近接する場所に多く見られるため、こうした地域で大量に土地が供給され、さらにその土地にアパートやマンションが建つようなことになると、過当競争による価格の下落は必至です。

例えば、東京23区内では練馬区と世田谷区だけが100ヘクタールを超える生産緑地を擁しており、この両区では農地が住宅用地として大量に供給される可能性があり、2022年問題のリスクが顕在化するかもしれません。しかも1位の練馬区は2位の世田谷区と比べても倍以上の生産緑地面積があるので、東京23区のなかでは最も暴落リスクが高いといえます。

しかし、東京23区内とその他の市部とでは生産緑地の面積が大きく異なっており、東京都内にある生産緑地のほとんどは23区内ではなく市部に集中しています。特に八王子市、町田市、立川市はいずれも市内の生産緑地面積が200ヘクタールを超えています。こうしたエリアと比較すると東京23区内は比較的2022年問題の影響を受けにくく、それ以外の市部で近隣に生産緑地が多くあるような不動産は最も影響を受けやすいと考えられます。

3-2.影響を受けない不動産は?

2022年問題の影響を受けにくい不動産として考えられるのは、近隣に生産緑地があまりなく、2022年を迎えても大量に土地が供給される可能性が低いエリアのアパートやマンション、さらにはオフィスビルなどでしょう。

生産緑地は元から農地であるため、都心部にはほとんどないのも大きな特徴です。つまり、元から農地が少ない都心部や古くから市街化が進んでいるエリアについては生産緑地が宅地として大量に供給されるとは考えにくく、2022年問題の影響を受けにくいといえるでしょう。

4.不動産2022年問題の影響を受けず安心して賃貸経営を行うために

2022年問題のような「〇〇問題」は、今後もさまざまなものが登場するでしょう。こうした問題の影響を受けず長期目線で資産形成をしていくのが不動産投資の本質なので、ここでは2022年問題の影響を受けることなく安定的な賃貸経営を実現するための道筋を考えてみましょう。

4-1.影響を受けにくい立地の物件を選ぶ

不動産市場を一変してしまう可能性のある生産緑地の指定解除。その影響を回避するために、不動産投資家はどうすればよいのでしょうか。

ちなみに東京23区では、生産緑地が練馬区と世田谷区だけで多くの面積を占めています。さらに市部では八王子市、町田市、立川市の3市にそれぞれ200ヘクタールを超える生産緑地があると述べました。こうしたエリアで不動産投資を検討している方は、どこに生産緑地があるのかを確認しておきましょう。

近くに生産緑地があると、どうしてもその影響を受けやすくなります。東京23区の場合、練馬区と世田谷区以外の区では、生産緑地の割合が1%以下ですので、それほど気にする必要はないと思われます。

首都圏の市街化区域で物件を購入するときは、必ず生産緑地の場所を確認し、指定解除後にどのような開発が行われるかを想定したうえで、投資判断をするという視点はとても重要になります。

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