投資の基本

実質利回りの計算に必要。初心者が押さえるべき賃貸物件の諸費用とは?

賃貸物件を所有していると税金など毎年かかる諸費用があります。これらは、物件の収益を見通す実質利回りを計算するうえで非常に重要です。本記事では、諸費用にはどのようなものがあるか、基本的な項目とその役割を解説します。

実質利回りの計算に必要。初心者が押さえるべき賃貸物件の諸費用とは?

不動産を所有しているとかかる税金

毎年1月1日時点で不動産を所有していると課税されるのが固定資産税です。固定資産税は、土地と建物の両方にかかり面積や建物評価によって変わります。税率は、東京都をはじめ多くの自治体で1.4%です。土地および建物の固定資産税評価額に対してそれぞれに1.4%を乗じて算出されます。区分マンションの場合、土地の固定資産税は土地の総面積に対する各戸の持ち分割合で課税されることが特徴です。

多くの物件では、建物の分譲総面積に占める専有面積の割合が持ち分割合になっており建物は所有する専有部分にのみ課税されます。一方アパートやマンションの1棟すべてを所有していれば土地と建物の両方の固定資産税を支払うことになり、物件の購入金額だけでなく税金という諸費用も大きくなりがちです。

万一に備える火災保険料

火災保険の保険料は、投資物件に火災などが発生した場合に備えるための諸費用です。保険料は、毎年払う方法と一定の年数をまとめて払う方法があり、まとめて複数年払ったほうが割引されます。また、火災保険には以下のような家賃を補償する特約もあるのが特徴です。建物のトラブルで空室になった際の家賃収入の損失を補ってくれます。

家賃補償特約

家賃補償特約は、所有物件に火災などが発生し被害の修繕を行う間、入居者に他の場所へ移ってもらうことで失われる家賃を補償します。また火災に限らず台風などの自然災害によって部屋が損傷を受けた場合も対象です。さらにそのまま入居者が退去してしまったり家賃を値下げすることになったりした際の家賃損失を補償するものもあります。

家主費用特約

家主費用特約とは、所有している物件で自殺や病死、事件などで入居者が亡くなったときに部屋の清掃や消臭、内装の張り替えなどの費用を補償してくれる特約です。さらに遺体の引き取り手がないときの葬儀費用や次の入居者が決まるまでの家賃を補償するものもあります。それほど頻繁に起きることではないかもしれませんが万一発生すれば当面の間は空室となる可能性があるでしょう。

家賃収入が途絶えるリスクを回避したい場合は、加入を検討することが必要です。

管理会社や不動産会社に支払う手数料

物件を管理する管理会社や入居者を仲介する不動産会社に支払う手数料も把握しておきたい諸費用の一つです。主に以下の3つの種類があるため、しっかりと準備しておきましょう。

管理委託費用

管理委託費用とは、主に入居者への対応と建物の維持を管理会社に任せる費用です。入居者対応とは、主に以下のようなものがあります。

  • 契約の手続き
  • 退去の手続き
  • 家賃の集金
  • 滞納の督促
  • 入居者からの問い合わせ
  • クレーム対応など

建物の維持は、区分マンションであれば内装の修繕や設備の修理交換、入居者が退去した後のクリーニングや原状回復などです。建物1棟をまるごと所有する場合は、この他に外壁や屋根の補修、共用部の廊下や階段、玄関などの清掃および補修が加わります。

入居者の仲介手数料

物件の入居者を不動産会社が仲介すると仲介手数料を支払う場合があります。宅建業法では、入居者と貸主の一方から受け取れる仲介手数料の上限を家賃の0.5ヵ月分と定めていますが、事前に承諾を得られれば入居者が1ヵ月分を負担し所有者にはかからない場合もあるため、この点は仲介の不動産会社に確認が必要です。

もし所有者が負担する場合、入居者の出入りが頻繁な物件では、その都度支払うことになり諸費用の出費が大きくなってしまいます。できるだけ入居者に長く住み続けてもらえる魅力的な物件にすることでそうした出費は抑えられるでしょう。

入居者募集費用

物件が空室になると入居者を募集するための広告掲載料やチラシ作成費などがかかります。空室になれば家賃収入が途絶えてしまうため、早急に次の入居者を決める必要があり避けられない費用です。こちらも退出されなければかからない費用のため、入居者にとって価値のある物件を提供し長く住んでもらうことで回避できます。

入居者募集費用

建物の修繕費用

中古物件であれば建物の劣化具合によって修繕費がかかります。しかし区分マンションと1棟物件ではかかる項目や資金の準備方法が異なります。諸費用を見通すうえで非常に大切になるため、しっかりと把握するようにしましょう。

区分マンションの修繕費用

区分マンションの修繕は、大きく分けると「専有部分」「共用部分」の2つです。専有部分の修繕は、所有する物件の内装や照明、キッチンやエアコンなどの設備、専用の給排水管などで、この修繕費用は物件所有者が負担します。「どのタイミングでどの程度の修繕を行うか」は所有者次第です。しかしあまりに汚れた内装では入居者に敬遠されてしまいかねません。

また設備が故障したままでは入居者に退去されてしまう可能性が高まってしまうでしょう。悪化してしまう前に適切な修繕を行うことが必要です。しかし費用がかかるため投資経験の浅い人には、判断が難しいかもしれません。そのため委託している管理会社とあらかじめ修繕計画を立てておくことが大切です。

一方共用部分となる外壁や屋上、外廊下や階段、エントランスなどは計画的に各所有者から修繕積立金が集められ修繕計画に沿って適時修繕が行われます。そのため予想外の費用がかかる可能性は低くなっています。

一棟物件の修繕費用

建物一棟全体を所有し運営する一棟物件では、部屋の中だけでなく建物外部などすべての修繕時期と内容、費用を所有者が判断しなくてはなりません。当然金額も大きくなるため、諸費用を計画的に準備する必要があります。しかし建物全体の修繕時期やその項目、費用の見通しを立てるのは、ある程度の建築知識と賃貸物件の投資経験が必要です。

見誤ってしまうと収支に大きな影響を与えてしまうため、慎重な判断が求められるでしょう。

リフォームやリノベーション

物件の集客力や入居者の満足度を上げるために有効なのがリフォームやリノベーションです。部屋の内装や設備、一棟物件なら外装などを改修してより一層入居者に選ばれる物件にするために行います。こういった費用も諸費用に盛り込んでおくとより高い家賃設定ができたり、空室を回避できたりするなどのメリットが期待できるでしょう。

リフォームとリノベーションの違い

ただしここでしっかりと分けて考えておきたいのがリフォームとリノベーションの違いです。リフォームは、主に原状回復の意味合いが強く新築当時の状態に回復させることが主な目的となります。もちろん古びて劣化したままよりは入居者に好印象を与えますが、時代や需要に合わせた付加価値を加えることができません。

一方リノベーションは、元の状態に回復するだけでなく入居者のニーズに合わせて付加価値を加えより一層競合に強く高い家賃設定を狙える物件に変えることが可能です。例えば内装を入居者層にマッチしたデザイン性の高いものに変えれば、他の物件との差別化ができ空室を防ぐことが期待できます。単なるリフォームに比べて費用はかかりますが、より積極的に高い利回りを狙えるのです。

リフォームとリノベーションはそれぞれに諸費用を計画することが大切ですが、その効果には大きな違いがあることを理解しておきましょう。

実質利回りを見通すうえで諸費用は重要

賃貸運営の成否を考えるうえで利回りは重要な指針です。単に年間の家賃収入を購入金額で割った表面利回りではなく、ここまでに紹介してきた諸費用を差し引いた実質利回りが現実的な数字になります。実質利回りを算出するためにも今回紹介した諸費用の基本をしっかりと理解しておきましょう。諸費用のうち税金や火災保険料、不動産会社の管理委託料などは、ある程度毎年の金額を見通すことができます。

しかし想定しにくいのが入居者募集費と建物の修繕費です。物件の購入段階からしっかりと対策を講じておかないと突然費用が必要になる恐れがあります。賃貸需要の落ちにくい都心の駅近物件を選んだり、当面の修繕費用が必要ないリフォームやリノベーション済みの物件を選んだりすることで予想外の出費で利回りが落ちてしまう事態を防ぐことが可能です。

購入時は、不動産会社のアドバイスを受けながら諸費用をできるだけ抑えられる物件を選ぶようにしましょう。

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