市況

2020年の不動産市況、コロナショックで下落か、再浮上か

近年、不動産価格は都心を中心に上昇傾向にあり、2020年は東京オリンピック開催による景気回復を追い風に、不動産市況はおおむね安定して推移すると見られていました。

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、取り巻く環境は一変してしまいます。政府の「緊急事態宣言」は2020年5月末で解除され、コロナ打撃を受けた事業者に対してあの手この手の救済措置が取られていますが、景気減速は避けられないとの声もあります。

景気と密接な関係にある不動産市況は、今後どうなるのでしょうか。

2020年の不動産市況、コロナショックで下落か、再浮上か

新築も中古も上昇トレンドだった

2019年の首都圏における新築マンションの平均価格は、不動産経済研究所の「全国マンション市場動向」によると前年比1.9%アップの5,980万円となり、バブル期の1990年(6,123万円)に次ぐ高水準を記録しています。新築マンションに牽引される形で中古マンションの平均価格も上昇し、不動産価格は新築も中古も上昇トレンドにありました。

2020年7月に開催される予定だった東京オリンピックが終わるまでは、この上昇トレンドは続くという見方が大多数を占める一方で暴落説などもささやかれていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大と東京オリンピック延期という不測の事態が発生したにもかかわらず、2020年7月現在「不動産価格は下落する」というネガティブな予測は必ずしも当たっていません。

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物件価格は変わらず推移するか

不動産経済研究所が発表した2020年5月の首都圏マンション発売戸数を見てみると、5月は4月実績をさらに下回った前年同月比82.2%減の393戸となり、単月の発売戸数では1973年の調査開始以来、最小となっていることが分かります。

ただし、物件価格は下落していません。5月の平均価格は前年同月比+6.4%の6,485万円です。需要、供給ともに下がったことで、結果的にバランスが取れていたのかもしれません。

中古マンションにおいては東日本不動産流通機構の「月例速報Market Watch」によると、4月の成約件数は前年同月比で-52.6%の1,629件と大幅に落ち込んだものの、翌5月は1,692件と前年同月比-38.5%となり、徐々に持ち直していることが分かります。価格も4月の㎡単価は前年同月比-4.5%でしたが、5月は+0.4%に転じています。

新型コロナウイルス感染拡大により現在もまだ先行き不透明感はあるものの、これらのデータから物件価格には大きな変化はないと見られています。住宅ローンが支払えなくなり、住宅を手放す人が増えることが価格の下落圧力となるという見方もありますが、現状を見る限りすぐに下落する可能性は低いと言えるでしょう。

物件価格は変わらず推移するか

コロナ対応で日本が評価されれば再び投資マネーが流れ込むのか

実態経済の動向も、不動産市況を左右する要因です。景気が悪化すれば私たちの収入は減少し、住宅が購入できない人が増えると、それが価格下落圧力になります。

内閣府と財務省が発表した4~6月期の法人企業景気予測調査では、大企業全産業の景況判断指数(BSI)は-47.6でした。これは2004年の統計開始以降、リーマンショック直後の2009年1~3月期(-51.3)に次ぐ低さです。中小企業の同指数においても-61.1と、過去最低水準にまで低下しています。このように景気に関する指標では悪い数字が並んでいるため、油断はできません。

一方で、景気が回復する可能性も十分あります。日本政府の「初動」について、世界は批判的でした。都市封鎖も行わず、国民に対する「自粛要請」というやり方を酷評するメディアもあったほどです。しかし、結果的に感染者数や死者数は先進主要国の中ではかなり少なく、人口当たりの死亡率がイギリスは日本の100倍、アメリカは44倍となったことに世界は驚きました。

「日本は安全」「東京は安全」という評価が続けば、海外からの投資マネーが大量に入ってくる可能性も考えられます。十分な感染対策が実施できれば、“インバウンド”も戻ってくるでしょう。景気が回復すれば、不動産市況は安定します。

また、コロナ禍にもかかわらず、2020年5月1日時点の東京の人口は1,400万人を超えて過去最高となりました。このような状況下でも、東京一極集中の傾向に変わりがないことが明らかになったと言えるのではないでしょうか。政府と国民が不況対策や感染対策で協力し合い、新型コロナウイルスの被害を最小限に抑えられるかどうかが、今後のカギとなりそうです。

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<参考>
マンション価格は下落する?これまでの推移どおりにいかない2020年
都心の空室率は16.4%。空室リスクを減らすために首都圏を選ぶべき理由

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