不動産投資(管理)

インターネットを使ったIT重説で何が変わる?そのメリットは?

「IT重説」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。賃貸住宅にお住まいの人は経験があると思いますが、不動産の賃貸契約を結ぶ際、入居者は宅地建物取引業者から対面で重要事項説明を受けなければなりませんでした。

しかし2017年(平成29年)10月からは、対面でなくてもインターネットを介したビデオ通話で重要事項説明を受けることができるようになりました。これが「IT重説」です。その結果、遠方に引っ越す人や忙しくて時間が取れない人は賃貸契約を結ぶ際の手間が減り、便利になります。物件のオーナーにとっては契約のチャンスが増えるため、空室率の改善が期待できるでしょう。

特に、2020年から始まった世界的な新型コロナウイルスのパンデミックで、対面で何かをすることに抵抗を感じる人が多くなりました。賃貸住宅の重要事項説明も対面で行うことが前提になっていましたが、身近ではない人と相対して説明を受けることに抵抗を感じる方は少なくないと思います。

その点、IT重説であれば対面ではなくリモート形式で重要事項説明を完結することができるため、アフターコロナ時代のニューノーマルにも対応した形になっているとも思われます。

インターネットを使ったIT重説で何が変わる?そのメリットは?

1.重要事項説明とは?

新規でマンションやアパートの賃貸契約を結ぶ際には、契約の細かい条件をお互いに確認しなければなりません。部屋の利用に関するルールや家賃の支払い、敷金の扱い、退去時の原状回復義務などを事前に確認し合意しておかなければ、後々トラブルになりかねません。また物件の設備などについても、入居者に十分説明しておく必要があります。

そのため、不動産の賃貸契約を結ぶ際は、宅地建物取引士が賃借人に説明を行うことが義務付けられています。これを重要事項説明といい、説明の後で賃借人に重要事項説明書に署名と捺印をしてもらいます。これをもって重要事項説明を受け、その内容に納得したとして書面が法的な効力をもちます。

なお、この重要事項説明は宅建業法第35条に法的な定めがあります。法律の文面には、賃貸だけでなく売買や交換の場合であっても義務付けるとあるので、不動産取引の際には重要事項説明が必要になると考えておいたほうがよいでしょう。

重要事項説明とは?

2.IT重説の方法とメリット・デメリット

ビデオ通話などリモート環境で重要事項説明を行うのが、IT重説です。
IT重説には多くのメリットがありますが、その一方で知っておくべきデメリットについても解説します。

2-1.IT重説のメリット

重要事項説明は、宅地建物取引士の資格を持つ人しかできません。これまでは対面での説明が義務付けられていたため、入居者は不動産の管理会社(部屋探しを依頼した仲介会社ではなく、物件の管理をしている会社)に出向く必要がありました。

近くに引っ越す人や時間に余裕のある人にとって、重要事項説明はあまり負担ではなかったかもしれませんが、転勤などの事情で急に遠方へ転居しなければならなくなった人や、忙しくて時間がなかなか取れない人にとって、重要事項説明は大きな負担となっていました。

しかし「IT重説」の登場で、この状況が大きく変化しました。直接対面しなくてもビデオ通話を使って重要事項説明を行えることになったため、賃借人の負担が大幅に軽減されました。運用は2017年(平成29年)10月1日に始まっており、IT重説を取り入れる不動産管理会社は増えています。

そもそもIT重説は説明時間を短縮したり、簡素化したりするためのものではありませんが、重要事項説明のためだけに不動産管理会社を訪れなければならなかった頃と比べて、入居者は時間を節約することができるようになりました。

急ぎで遠方に引っ越さなければならない人が2つの物件で迷っていて、片方がIT重説に対応していたら、それが契約の決め手になることも十分考えられます。

IT重説を行うためのツールについて、高度なテレビ会議システムなどは不要です。SkypeやLINEのような動画に対応した無料通話サービスで十分です。管理会社側はWebカメラ付きのパソコンを使用することになると思われますが、賃借人側はスマートフォンがあれば問題ないでしょう。通信環境が用意できたら、IT重説を行う日程を調整し、それに間に合うように重要事項説明書を郵送すればいいのです。

こうした利便性に関するメリットに加えて、やはり外せないのが新型コロナウイルスのパンデミックによって「ニューノーマル」と呼ばれる新しい生活様式が意識されるようになったことです。室内で人が密集することが感染症の感染リスクを高めることが広く知られるようになり、重要事項説明にもリスクを感じる人が少なからずいます。

その点、IT重説であればリモート環境なので感染リスクはありません。しかも自宅など自分が慣れ親しんでいる環境でやり取りができるので、不動産会社や管理会社に出向くことに抵抗を感じる人にとってはとても安心感のある仕組みといえます。

重要事項説明に抵抗があるために賃貸住宅の契約をためらっている人はそれほど多くはないと思いますが、IT重説を導入してコロナ禍特有のハードルを低くすれば集客力アップにつながることは十分考えられます。

2-2.IT重説のデメリット

次に、IT重説のデメリットについても解説しましょう。IT重説を始める段階で最初に考えられるデメリットが、入居者側の環境整備です。IT重説をするには説明をする側だけでなく説明を受ける側もビデオ通話やリモート会議ができるシステムを用意する必要があります。これがない人は新たに用意しなければならず、設定などの手間を嫌がる人は一定数いると思います。

うまく環境を整えることができた人、すでにビデオ通話ができる環境をもっている人であればIT重説の恩恵を受けることができますが、通信品質によっては頻繁に画面が止まってしまったり通信が途切れてしまったりといったトラブルが頻発することもあります。

回数によっては許容できるものですが、あまりにも頻繁に起きると入居者もイライラしてしまうかもしれません。通信状態が良好であってもビデオ通話の機器類の性能が低かったり通信速度が遅いといった理由でうまくコミュニケーションを取れないこともあります。これだと説明が伝わりにくいですし、理解してくれているのかもわかりにくいため、これもIT重説のデメリットです。

また、リモートで行っているために内容を軽視していたり、ちゃんと聞いていないといったことも起きがちです。

3.IT重税で必要なものと流れ

実際にIT重説を始めるのに必要なものと、IT重説を行う流れについて解説します。

3-1.IT重税で必要なもの

対面による重要事項説明であれば特に必要なものはありません。入居者に不動産会社のオフィスまで出向いてもらうか、不動産会社の担当者が入居者のもとへ出向いて説明するだけで完了します。

IT重説はこのプロセスをリモート形式に置き換えるので、ビデオ通話やリモート会議をするための設備が必要になります。

パソコン環境でIT重説を行う場合は、パソコン本体とWebカメラ、そしてビデオ通話をするためのアプリやサービスが必要です。

ノートパソコンでIT重説を行う場合はノートパソコンの液晶画面上部付近にカメラが付いている可能性があるので、Webカメラを別途用意する前にカメラ付きのパソコンではないか確認してみてください。ノートパソコン本体にカメラが付いている場合は、ビデオ通話のためのアプリやサービスを用意するだけで問題ありません。

なお、ビデオ通話で使うアプリやサービスは、リモート会議で有名になった「Zoom」や、「Microsoft Teams」、「Skype」、「Google Meet」などが定番です。

IT重説は、スマホでも可能です。スマホにはインカメラといった自分を撮影するためのカメラが付いているので、スマホ用のリモート会議やビデオ通話アプリをインストールします。

パソコンで定番になっている「Zoom」や「Google Meet」はスマホ版もあるのでお手軽ですが、スマホの場合はLINEを利用するのが最も手っ取り早いでしょう。すでにLINEを利用している方は、そのアプリ内の機能だけでビデオ通話が可能なので、IT重説にも利用できます。

3-2.IT重税の流れ

IT重説をスムーズに行うには、事前に流れを知っておくのがベターです。IT重説は以下のような流れで進められるので、大まかな流れとそれぞれのプロセスで何をやるのかを押さえておくようにしましょう。

①事前に書類一式を入居者に送付する

IT重説は説明をリモート化できますが、記名や捺印などについては従来と同じく書面で行う必要があります。そこでIT重説を行う前に書類一式を入居者に送付しておきます。

②IT重説の日取りを決めて事前にテストをする

IT重説はおおむね小一時間程度で完了するので、その程度の時間を取ってもらえる日取りを決めます。日取りが決まったら、入居者側の通信テストを行っておくと当日慌てずに済みます。お互いに通信ができるかを事前テストしてもよいですが、そこまでしなくてもお互いのビデオ通話ツールでカメラ映りや音声のチェックなどを行うことができます。

③IT重説を実施

取り決めをした当日に、IT重説を行います。事前に通信品質を確認しているのであれば、スムーズに進められると思います。

④送付されてきた書類に入居者が記名、捺印をして返送

IT重説によって説明したことを入居者が理解し納得できたら、事前に送付した書面に記名、捺印の上、返送してもらいます。これで重要事項説明はすべて完了となります。

4.Web集客のために説明資料の充実を

不動産投資では、どの物件に投資するかだけではなく、どの不動産会社に物件管理を依頼するかも決めなければなりません。今後は、IT重説に対応しているかどうかも管理会社選びの重要な判断基準となってくるでしょう。

不動産投資は入居者を獲得してはじめて収益が生まれます。これからの時代は、IT重説に対応しているかに加え、Webでの集客も得意とする管理会社を選ぶことも有効な戦略となります。

物件を確認せずに、Web上の情報だけで契約を決めてしまうケースは稀でしょうが、不動産のポータルサイトで情報収集をすることが当たり前の時代になりました。

不動産と並ぶ高額商品の代名詞となっている車についてはネット上のやり取りだけで購入する人が増えており、こうした流れが賃貸住宅にも押し寄せてくることは十分考えられます。そのため、正確かつ十分な情報の提供は必須と言えるでしょう。また、入居希望者の目に留まるような工夫も必要です。

不動産投資では、パートナーとしての不動産会社選びも重要なポイントになります。見栄えが良い写真や360度の撮影動画を活用するなど、時代のニーズにあった方法で積極的に物件をアピールしてくれるような管理会社をパートナーとして選び、アドバイスを受けながら不動産投資を始めてみてはいかがでしょうか。

5.不動産投資の情報収集をするなら

IT重説が普及していく時代において、WebなどITを活用した集客に強いことは不動産会社選びのポイントになっていくと述べました。そんな時代に向けてREISMでは常にITを活用した不動産投資のあり方を模索し、形にしてきました。情報力が大きな差につながる今どきの不動産投資において、情報で負けない不動産投資家を目指しましょう。

REISMでは、最新の不動産市況や物件選びのポイント、不動産投資のメリット・デメリットなどをセミナーでご案内しています。ぜひ活用してみてください。

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