不動産投資(管理)

家賃保証は人から会社にシフトしている

大学時代や単身赴任先で賃貸物件に住んだときに、入居審査で連帯保証人を求められた経験をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。連帯保証人になってくれる人に書類を送り、自署してもらうなど、いろいろと手間がかかった記憶があるのではありませんか。最近はこうした傾向に変化が出てきています。連帯保証人を取らないかわりに、家賃債務保証会社(以下、保証会社)を使うケースが増えているのです。その動向の背景や保証会社を利用するメリットについて考えてみましょう。

連帯保証人の有資格者が減っている

日本賃貸住宅管理協会の調査によると、2017年の連帯保証人と保証会社の利用状況は、「保証会社のみ」とする回答が49.8%と最も高い結果になりました。一方、連帯保証人と保証会社の両方を求めたケースが19.6%、連帯保証人のみは13.9%でした。なんらかの方法で保証会社を利用している割合は約75%だったそうです。

2007年の国土交通省の調査では、保証会社を使う割合は40%、連帯保証人のみの割合は58%でした。この10年で入居者に連帯保証人を求めるよりも、保証会社への加入を求める方向にシフトしていることがうかがえます。少子高齢化が急速に進み、これまで子どもたちの連帯保証人となってきた両親が年金受給者となったり頼れる兄弟や親類縁者がいなかったりと、保証人の「なり手」が減ってきたためと推察されます。

また、連帯保証人がいても滞納した家賃などを実際に支払ってもらうまでにはかなり時間がかかりますし、相手が支払いを拒絶すれば裁判沙汰になることもあり、別途費用がかかる恐れがあります。連帯保証人がいればすべて解決するわけでもないのです。

保証会社の仕組み

一方、保証会社にはこうしたデメリットはありません。保証会社の仕組みは、家賃の何割かを保証会社に支払うことで、家賃滞納などが発生した場合、保証会社が入居者に代わって支払ってくれる(立て替え)という仕組みです。家賃だけでなく、更新料や退去時の残置物の処理費用、明け渡し訴訟における法的手続き費用、原状回復費用などに、一旦、保証会社が対応してくれます。その後、保証会社は入居者から債権を回収します。

このように保証会社は入居者が発生させるかもしれないリスクに対応してくれるため、オーナーの心理的負担はかなり軽くなります。この点は保証人を取るよりもはるかに優れていると言えます。

しかも、保証会社に保証料を支払うのは入居者側であり、オーナーは支払う必要はありません。ただ、入居者にとっては実質的な賃料アップになります。保証料がかかるため、理解を求める必要があるでしょう。連帯保証人を立てられる入居者にとっては不要な支払いでもあるからです。敷金同様に初期費用の負担が増えるので、なんらかの配慮があると入居者にとってはうれしいかもしれません。

このほか、オーナーチェンジで取得した物件でそれまで保証会社を利用していなかった場合、入居者を説得して加入してもらうことになります。加入には同意が必要だからです。交渉方法については、不動産会社と相談しながら検討するようにしましょう。

保証会社の倒産に気をつけよう

入居者が家賃滞納するリスクよりもはるかに可能性は少ないと思いますが、保証会社が倒産することもあります。

保証会社は定期的に保証料が入ってくるので、滞納者が出ないうちは経営は好調に推移します。しかし、滞納者が予想以上に増えて債権回収が追いつかなくなり、資金力の限界を超えたときは保証会社といえども倒産します。過去にもそういう倒産事例は存在します。倒産リスクの高い保証会社を見分けるのは容易ではありませんが、一般的に審査が甘い保証会社はリスクが高い入居者を通してしまうため、倒産リスクは高くなると言えるでしょう。

賃貸経営において家賃収入は「命」です。リスクを抑えて、毎月確実に回収することが求められます。入金がなければ、金融機関への返済が自己資金からの持ち出しになります。そういう事態が頻発すれば、賃貸経営に悪影響を及ぼします。今後、少子高齢化はさらに進みます。そのときに、賃貸経営のリスクを軽減してくれる家賃債務保証会社の活用は欠かせなくなるでしょう。

3年以上勤めた会社員へ。
あわせて読みたいおすすめコラム