不動産投資

サラリーマン不動産投資家が知っておくべき確定申告の特性と注意点

マンション投資で家賃収入を得ている人は、1年間の収入と経費を計算し、そこで得られた利益に応じて税金を収めなくてはなりません。そのために必要なのが、毎年の確定申告です。

サラリーマンなど会社に勤務している人の場合、会社が源泉徴収をして税金を納めてくれるため自分で申告や納税をする必要がなく馴染みが薄いと思いますが、マンション投資を始めるとなると、サラリーマンであっても確定申告と納税を避けて通ることはできません。

それでは確定申告とはどんな仕組みで、どのような手続きなのでしょうか。会社に勤務しながらマンション投資をしている人にとって必要な確定申告と納税の知識をまとめました。

1.確定申告とは?申告の流れと必要な手続き

確定申告とは、国や地方に納める税金額を算出する元となる収入と支出を申告する手続きのことです。毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得を計算して翌年に申告し、確定後に税金を納めます。

毎年2月中旬~3月中旬の約1ヵ月間が、確定申告書の提出期間として設定されます。納付期限までに税金を納めなかった場合には、延滞税が加算されますので注意が必要です。

会社員の場合は、会社がその人の給与から所得税などを源泉徴収(天引き)し、会社が社員の代わりにまとめて確定申告を行います。

しかし、会社勤めの傍ら不動産投資をして家賃収入がある場合は、給与所得と不動産所得の合計から課税対象の所得額が決まるため、給与だけの場合とは異なる所得税額になります。そのため、サラリーマン不動産投資家であっても個人で確定申告を行う必要があるわけです。

具体的には、収支が分かる必要書類を集め、決算書と確定申告書を作成し、管轄の税務署へ提出するという流れです。

1-1.確定申告の目的

確定申告は納税のための課税対象額を確定する手続きです。納税は国民の義務なので、所得があるのに確定申告をしなければ脱税となり、罰則の対象になってしまいます。

しかし、サラリーマンなどの給与所得者は確定申告とあまり縁がありません。その理由は、勤務先が本人に成り代わって源泉徴収をしているからです。

確定申告をしていないからといって納税をしていないわけではないことは、サラリーマンの方であればよくご存じだと思います。給与明細を見ると、納税をしている事実をしっかり確認することができるためです。

ところで確定申告には、納税以外の目的もあります。あくまでもその1年の所得から経費を差し引いた課税対象額を「確定」させるためのものなので、所得よりも経費が大きければ赤字となり、他の所得と損益通算をすることによって税額を減らすための手続きでもあります。

マンション投資が赤字の決算になると確定申告をすることによって損益通算が適用され、本業の給与所得にかかる税金を少なくすることができます。この経費の概念は節税に欠かせないので、詳しくは後述します。

1-2.サラリーマンの副業も確定申告が必要

マンション投資だけでなく、本業以外の収入が年間で20万円以上あると確定申告の義務が発生します。年間で20万円というと、月間で約1万6,600円です。

マンション投資に限らず、ちょっとしたお小遣い稼ぎ程度の副業であっても課税対象になる可能性は十分にあるので注意しましょう。

1-3.申請の流れ

確定申告の手続きは、毎年2月から3月にかけて設定される申告期間内に申告書および必要書類を提出するだけです。また、現在は確定申告の手続きをオンラインで完結できるe-Taxという制度も導入されているので、税務署まで行かなくても申告を済ませることが可能です。

税務署で行うにしても、e-Taxを利用するにしても、確定申告にはそのための情報を収集しておく必要があります。以下は、情報収集のための大まかな流れです。

  • 12月までに1年間の収入と支出(経費)を集計しておく
  • 1月になったら必要書類を準備する
  • 2月の申告期間になったら管轄の税務署もしくはe-Taxで書類を提出する

税務署で申告を行う場合、前年までに申告をしている人は確定申告に必要な確定申告書は申告時期になると税務署から届きますが、それ以外にも国税庁のホームページからダウンロードが可能です。

1-4.青色申告と白色申告の違い

確定申告には青色申告と白色申告がありますが、どういった点に違いがあるのでしょうか。それぞれのメリットとデメリットを見比べながら、その違いを確認してみます。

【青色申告のメリット】

青色申告の場合は自分で帳簿付けなどを行う必要がありますが、いくつか白色申告にはない特典を受けることができます。

「白色」と「青色」の一番の違いは、収支が黒字だった場合に適用される10万円または55万円、もしくは65万円の「青色申告特別控除」でしょう。

従前は青色申告特別控除額が65万円でしたが、2020年の税制改正からは55万円になりました。その一方でデジタル化の流れからe-Taxによる申告をすることで10万円の増額になるため、従前どおりの最大65万円の特別控除が受けられます。一方の白色申告には特別控除の適用がありません。

さらに青色申告だと、青色事業専従者給与が経費として認められるメリットがあります。同居している家族を従業員として見なし、給料を支払う会計処理をすることで、その給与を経費に算入(つまり利益から差し引く)ことができます。

白色申告にも同様の経費がありますが上限があるので、青色申告のほうが節税効果は圧倒的に大きくなります。

【青色申告のデメリット】

節税メリットの大きい青色申告ですが、その適用を受けるためには複式簿記で帳簿をつけ、貸借対照表や損益計算書も添えて提出しなければなりません。

もう一つ、最大65万円の控除を受けるための条件として、不動産投資が「事業的規模」でなければならないというものがあります。

事業的規模とされるラインは「5棟10室」と言われていますが、簡単に言えば戸建てで5棟、区分所有で10室という意味です。基本的にそれより小さい規模は、青色申告でも10万円の控除となります。

会社勤めの人が副業で始めるマンション投資で、最初から5棟10室の規模となるケースはほとんどないでしょう。しかし、10万円控除でも、節税効果は小さくはありません。将来、投資規模を大きくすることを考えている人は、青色申告にチャレンジするのも悪くないでしょう。

また、税制上の優遇がある青色申告の適用を受けるには承認が必要なので、事前に「青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。

これには提出期限があり、原則として青色申告をする年の3月15日までです。なお、1月16日以降にマンション投資を開始した場合は、物件購入から2ヵ月が提出期限となります。忘れずに提出するようにしましょう。

【白色申告のメリット】

青色申告は厳格な会計処理が求められるのに対して、白色申告はそこまで厳格な処理を必要とせず、帳簿づけもシンプルな作業で済みます。何も申請をしなければすべての申告者は白色申告扱いになるので、青色申告のように申請書を事前に提出する必要もありません。

【白色申告のデメリット】

シンプルな会計処理で済むため副業でマンション投資をしているような小規模投資家であれば白色申告でも十分かもしれませんが、白色申告は手続きがシンプルである反面、デメリットもあります。

最も大きなデメリットは、青色申告で適用される特別控除がないことです。マンション投資家にとって最大で年間65万円の特別控除があることは大きな意味を持つので、節税を重視するのであれば白色申告を選択するべきではありません。

また、白色申告では損失の繰り越しに制約があります。ルール上マンション投資をしている人は制約を受けることになるため、白色申告だと損失の繰り越しはできないと考えておいたほうがよいでしょう。

2.確定申告で必要になる書類

次に、確定申告で必要になる書類について解説します。これらはいずれもお金の流れを証明するための書類なので、確定申告をすることを想定して普段からいつでも出せるようにしておくことをおすすめします。

2-1.売買契約書

売買契約書とは、不動産投資に供している物件を購入した際に不動産会社から受け取った契約書のことです。これは物件を購入した時にだけ受け取るものなので、それを大切に保管しておいてください。物件の売買契約を締結したことを証明するために必要です。

2-2.賃貸契約書

現在の借主が入居者した際、不動産投資家である貸主と入居者である借主が取り交わした契約書です。これも賃貸契約が成立した時にだけ作成するものなので、大切に保管しておきましょう。

2-3.送金明細書

物件の管理や家賃の回収などを管理会社に委託している場合は、管理会社にその対価を送金しているはずです。この対価は不動産投資の必要経費として計上できるため、管理会社から受け取った送金明細書を保管しておきましょう。

また、物件の管理や入居者の対応、家賃の回収などをトータルで委託するのも一般的です。この場合、入居者からの家賃は管理会社に支払われ、管理会社は自社の管理委託費を差し引いた分を家主である不動産投資家に支払います。

お金は単なる一方通行ではなく相殺される形になるため、それをすべて記録した明細書が必要になります。

2-4.納税通知書

公租公課といって不動産投資では不動産取得税や固定資産税といった税金が発生します。この税金は経費として計上することができる(つまり利益から差し引くことができる)ので、それを証明するために固定資産税や不動産取得税などの納付通知書を保管しておきましょう。

ただし、経費として計上できるのは「不動産投資に関連して納税した分」であり、投資家本人の所得税や住民税は対象とはなりません。

2-5.ローン返済表

ほとんどの場合、マンション物件を購入するために金融機関のローンを利用することになると思います。ローンを利用すると金利が発生し、毎月のローン返済には利息が含まれています。

この利息分は不動産投資のために発生したコストと見なされるため、経費として計上ができます。これを証明するために、確定申告の対象となる1年間のローン返済表を用意しましょう。

なぜ経費として計上できるのはローン返済の利息分だけなのかというと、ローン元本は投資家にとって資産の出入りがないからです。お金を借りたときに現金を受け取っても売上にはならず、返済は受け取ったお金を少しずつ返しているだけです。

つまり借りたお金は投資家にとっての収入ではなく、いつか返すべきお金なので、利益に対する税金が発生しないのと同時に元本返済は経費になりません。

2-6.火災保険などの控除証明書

不動産投資では、所有している物件のリスクを管理する目的で火災保険や地震保険に加入します。これは不動産投資のために要したコストなので、対象となる1年分の保険料を経費とすることができます。

これもしっかり経費として計上しないと損になってしまうので、保険会社から受け取った保険料の領収証、もしくは控除証明書を用意しましょう。

2-7.源徴収票

会社などに勤めている場合は、年末調整の時期に勤務先から源泉徴収票を受け取ります。不動産投資で家賃収入からローン返済などのコストを差し引いた収支が赤字になった場合、本業の給与所得と相殺をすることで課税所得額を減らすことができます。

不動産投資では原価償却費というキャッシュの流出を伴わない経費によって収支が赤字になることがあるため、この赤字分を給与所得と損益通算をすることで節税が見込めます。

損益通算で不動産投資の赤字分を給与所得から差し引くと課税対象額が変動し、所得税額も変動します。税額が少なくなると源泉徴収によって納めた税額が「払いすぎ」になるため、払い過ぎた分の還付を受けることができます。

2-8.その他経費の領収書

不動産投資家が不動産投資のために要した費用は、他にもあります。経費として計上できるものについては次章で詳しく解説しますが、上記で挙げた経費以外にも経費計上できるものがあるのであれば、それらの領収書も用意しておきましょう。

3.何を申告する?押さえておきたい経費のポイント

確定申告書は、12月から1月末までの間に管轄の税務署から送られてきます。「個人事業の開業届出書」を提出していない場合は送られてきませんが、管轄の税務署で用紙をもらうこともできますし、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」から用紙を印刷することも可能です。

不動産投資をしており青色申告をする人は、「確定申告書B(第1表、第2表)」および「所得税青色申告決算書(不動産所得用)」の2つの書類が必要になります。

「所得税青色申告決算書(不動産所得用)」に、1年間の収入と支出を記載して、所得を算出します。「収入金額」には、家賃や礼金、更新料などが含まれます。敷金は預り金ですので、収入には入りません。

「必要経費(支出)」には、管理委託費や損害保険料、修繕費、減価償却費、ローンの利息などが含まれます。経費として計上できる支出についての詳細は後述します。

決算書を作成したうえで、算出した所得額をもとに「確定申告書B(第1表、第2表)」に必要事項を記入します。この時、会社からもらう源泉徴収票も必要になるので、作成までに入手するようにしましょう。

なお、2016年分の確定申告以降、確定申告書にマイナンバーの記載が必要となりました。マイナンバーカードの提示または添付、あるいは、マイナンバーが確認できる書類と身元確認書類の提示、または添付が必要となります。

3-1.経費とは

事業による収入がある一方で、その収入をあげるために要したコストがあります。こうしたコストが事業収入を得るために必要なものだと判断されると、経費として収入から差し引き、課税対象額を減らすことができます。

3-2.経費計上が認められる副業所得は?

経費計上が認められる副業所得には、以下のようなものがあります。

  • 雑所得
  • 事業所得
  • 不動産所得

3つめにある不動産所得には当然、マンション投資に関連する経費も含まれます。つまり、マンション投資で発生した経費はマンション投資による収入から差し引くことができるわけです。

3-3.サラリーマンの副業で経費にできるもの、できないもの

それでは、サラリーマンの副業で経費として認められるものには、どんなものがあるのでしょうか。以下のようなものが経費として認められます。

  • 公租公課(マンション投資に関連する税金)
  • 損害保険料(マンション物件の火災保険、地震保険)
  • 管理費(管理会社に物件管理を委託している場合の委託料)
  • 仲介手数料(入居者付けをした不動産会社に支払う手数料)
  • 広告宣伝費(入居者付けのために支払った場合)
  • 管理組合費、修繕積立金(管理組合に支払っている場合)
  • 修繕費(20万円以内の簡易な修繕)
  • 減価償却費(建物部分の価値に対して毎年2.2%)
  • ローン保証料(融資を利用した場合の保証料)
  • 借入金利子
  • 通信費、旅費交通費、接待交際費、新聞図書費、消耗品費
  • 立ち退き料(立ち退きに際して金銭を支払った場合)
  • 青色事業専従者給与(青色申告の項目を参照)

サラリーマンの副業であってもこれだけ多くの経費が認められます。特に減価償却費についてはキャッシュの流出を伴わない会計上の経費なので節税効果が高く、節税効果が目的でマンション投資をする人もいるほどです。

3-4.副業で経費計上する時の注意点

副業ではきちんと経費計上をして、認められるものはしっかりと経費として算入したいところです。そのためにも、以下のポイントは押さえておくようにしましょう。

  • 経費に関連する領収書はしっかり保管し、その時の状況を記録しておく
  • 領収書の保存期間である7年間は処分しない
  • 申告対象の1年間に支払い、債務が確定しているものだけを計上する
  • 個人的な費用をむやみに計上しない(解釈の違いにより認められない恐れがあります)

4.確定申告は税理士にお願いするべき?

税務のプロといえば、税理士です。企業の税務にプロの税理士がついているように、個人の不動産投資でも税理士に依頼するべきなのでしょうか。確定申告は税理士に依頼せず個人でも行うことは可能なので、自己完結できるのであれば税理士を雇うコストを節約したいと思うのが人情です。

不動産投資の確定申告で税理士に依頼するべきかどうか、その判断材料を見ていきましょう。

4-1.確定申告を外注するメリット・デメリット

確定申告を税理士に外注するには、メリットとデメリットがあります。それぞれを整理すると、以下のようになります。

【税理士に依頼するメリット】

  • 漏れやミスがなくトラブルを防止できる
  • 節税できるものはしっかり節税できるのでオトク
  • 本業が忙しい人は確定申告のことを考えずに済む
  • 税務や数字が苦手な人にとっては安心
  • 今後不動産投資の規模を拡大していくのに有効
  • 税務調査が入るリスクを低くできる


【税理士に依頼するデメリット】

  • 税理士への報酬が発生する

税理士に依頼するメリットはとてもたくさんある一方で、デメリットは報酬だけです。コストを支払っても確実性や省力化を求めるのであれば、税理士に依頼するのが得策でしょう。逆に税理士に依頼するべきではない人は、「とにかくコストを抑えたい」と考えている人だけです。

4-2.確定申告を外注すべきか悩んだ時の判断基準

確定申告を税理士に外注するデメリットは、報酬のみです。この報酬を必要なコストと考えることができる人は、迷わず税理士に依頼するのがよいでしょう。

逆にこのコストに見合うのかどうか判断に迷った場合は以下のチェック項目に照らし合わせてみてください。1つでも多くの項目が該当するのであれば、税理士に外注するのが得策です。

  • 税務の知識が乏しく自分でできる自信がない
  • 税務調査に入られるのが怖い
  • 節税ができるものはしっかり節税したい
  • 今後不動産投資の規模を拡大していく意向である
  • 不動産投資は副業で、本業がかなり忙しい

少なくとも2つ以上該当するものがある場合は、税理士に依頼するべきでしょう。特に今後規模を拡大していく意向なのであれば、どのみち税理士に依頼することになることを考えると、今のうちから付き合いをしておくのがよいかもしれません。

5.念のため、勤め先の社内規程を事前にチェック

最後に一点、会社勤めの人が注意すべきことをお伝えしておきましょう。確定申告を行うと、会社に何かしらの副業をしていることが知られる可能性があります。

最近は国が副業を奨励する流れになっていることもあって副業の規定が緩やかになっている傾向があり、副業はダメでも不動産投資は「可」という会社もありますが、まだまだ副業を禁止している会社も少なくありません。後々大変なことにならないように、あらかじめ勤め先の規程を確認しておくことをおすすめします。

また、禁止されていなくてもマンション投資をしていることを勤務先に知られたくない場合は、申告書にある住民税の納付方法について、「普通徴収」に丸印を入れて提出することで勤務先からの天引きである「特別徴収」ではなくなるため、住民税額の変化によって副業の存在が発覚する心配はなくなります。

馴染みのない手続きなので、「確定申告」などと聞くと、難しく考えがちですが、実際はそう難しいものではありません。マンション投資の収入や経費として計上できる費目は、それほど多いわけでもないので、慣れてしまえばさほど手間もかからないでしょう。

確定申告は税金の納付に必要な手続きです。年に一度、自分が行っている投資の収支を振り返る意味でも有益です。そこから費用やリスクを抑える方法を考えたり、新たな投資を検討したりするよい機会になるでしょう。

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