不動産投資

中古マンション×リノベーション投資のメリットとデメリット、物件選びのポイント

中古マンションをリノベーションし、魅力的な物件に生まれ変わらせることで入居率を高め、安定的な不動産投資を目指す手法があります。この手法はリノベーション投資とも呼ばれますが、単に「古くなったマンションを新築マンションのようにする」というだけではリノベーション投資とはいえず、それだけで入居者から支持される物件づくりに近づくのは難しいでしょう。

ならば、どうするべきなのでしょうか。中古マンションをリノベーションして入居率を高める方法について、リノベーションのメリットやデメリット、リノベーションに関連する費用などの解説をしつつ、選ばれる物件づくりをするためのチェックポイントについても紹介します。

目新しさだけで選ぶと危険!選ばれるリノベーション物件のポイントとは

1.リノベーションとリフォームは全く違う

リフォームは、古く劣化した部分を修繕し、あくまでも元の姿に近づける回復工事です。もちろん何も手を加えないよりは良いですが、そこに入居者を引きつけるものが感じられなければ集客力を高める効果は期待できないでしょう。

例えば駅から近いことや家賃が安いなどの付加価値がない限り「マンションの古くなった部分を修繕した」と捉えられる可能性が高く、結局は新しい物件に負けてしまいます。

リノベーションは単に劣化した部分を原状回復させるだけでなく、その部屋に新しい価値を加える工事です。リノベーションの業界団体であるリノベーション協議会は、リノベーションのことを「中古住宅を現代のライフスタイルに合った住まいによみがえらせること」と定義しています。

例えば壁紙や照明をスタイリッシュなデザインに変えたり、内装にカフェ風やリゾート風などの新しいテイストを加えたりします。入居者の住みやすさにつながるように間取りを使いやすく変えるなど、さまざまな価値を生み出すこともリノベーションなら可能です。

また、床材などの素材を経年劣化に強い本物素材へ刷新するロングライフリノベーションを行えば、より長く価値が変わらない物件へと生まれ変わらせることもできます。

入居者の感性に訴え「住みたい」と感じてもらえる価値を加えることが、リノベーションがリフォームと大きく異なる点です。付加価値が心に響き「少し高めの家賃を払ってでも住みたい」と感じてもらえれば、常に入居者の絶えない理想的な賃貸物件になります。

リノベーション投資を成功させるにあたって、まずはこのリフォームとリノベーションの決定的な違いを十分に理解するようにしましょう。

2.中古マンションをリノベーションするメリット・デメリット

中古マンションをリノベーションする不動産投資には、メリットとデメリットがあります。それぞれを項目別に解説します。

2-1.中古マンションをリノベーションするメリット

中古マンションを仕入れてリノベーションをすることによって得られるメリットは、主に3つあります。

  1. リノベーション工事をしても新築マンションよりも安くなる

    多くの人が中古マンションに対して真っ先に感じる魅力といえば、価格の安さでしょう。新築より安く購入できることは容易に想像がつくと思いますが、その中古マンションにリノベーション工事をしても新築よりも費用を抑えられることが多く、「中古でありながら新築よりも安く新築に近い物件を仕入れられる」ことは投資家目線でとても重要なメリットです。

  2. 利回りを高くしやすい

    不動産投資の利回りは、以下の計算式で求めることができます。

    年間の家賃収入 ÷ 物件取得費用 × 100 = 表面利回り(%)

    ここで表面利回りとなっているのは、年間の家賃収入を取得費用で割った最もシンプルな指標だからです。物件を維持するための諸経費やローン返済などを差し引いてから計算する実質利回りもありますが、ここではあえて話をシンプルにするために表面利回りを用いて解説します。

    上記の計算式を踏まえると、分母にあたる物件取得費用が大きくなると利回りは低くなります。逆に分母が小さくなると利回りは高くなります。中古マンションはリノベーション工事をしても新築マンションよりも安くなることが多いのですから、リノベーション投資は利回りを高くしやすい手法といえます。

  3. 入居者の趣向に合わせた物件づくりができる

    マンションに入居する人の趣向にも、トレンドや価値観の変化があります。数十年前に建てられたマンションが古く見えるのは、単に建物や設備が古くなっているだけでなく「流行遅れ」に見えてしまっていることも大きな理由です。

    例えば、いくら内装を美しく再生したとしても古いマンションの一部で見られるような和式トイレであれば、やはりそれを理由に敬遠する人は多いでしょう。

    現在では技術的な向上によって、リノベーションの選択肢はとても広くなっています。高いレベルで構想を形にすることができるので、今の入居者に支持されるように柔軟な物件づくりが可能です。

2-2.中古マンションをリノベーションするデメリット

中古マンションをリノベーションすることによって起こり得るデメリットとして、留意しておくべき点は3つあります。

  1. 建物の状態によってはリノベーション費用が高くなる可能性がある

    中古マンションが新築マンションと決定的に異なるのは、その物件が建てられてから誰かが使ってきたことです。人が使うことによって摩耗や破損する部分はありますし、時間の経過によって劣化する部分もあります。

    中古マンションを選ぶ際、素人には分からないような不具合や劣化が見えない部分に隠れていることもあります。表面上は「まだまだ現役」に見える中古マンションであっても、いざリノベーション工事をすると予想外の傷みが見つかって、その修繕を含めるとリノベーション費用が高額になってしまったという事例もあります。

    建物のリスクは中古マンションを投資対象にする以上避けられないものなので、確かな目を持ったプロが選んだ物件を購入するなどの対策が必要で、素人判断だけで購入するのは危険です。

  2. ローンの審査で不利になることがある

    新築マンションと比べて中古マンションは担保価値が低いと見なされるため、金融機関の融資審査では不利になることがあります。融資期間についても注意点があるので、これについては後述します。

    また、金融機関のローンはあくまでも物件を購入するための費用が対象です。リノベーション工事の費用は含まれていないので、不動産投資向けローンでリノベーション工事の資金を調達することはできません。

  3. リノベーション工事中は賃貸物件として活用できない

    新築であれ中古であれ、購入したマンションをすぐに賃貸物件にして入居者が付けば、すぐに家賃収入が得られるようになります。

    しかしリノベーション投資の場合は購入した中古マンションにリノベーション工事を施す期間を考慮する必要があります。規模や工事の内容にもよりますが、リノベーション工事には数ヵ月間を要します。この期間は入居者を募集することができないため、無収入になります。

    リノベーション工事の費用を負担しつつ無収入の状態が少なくとも数ヵ月は続くので、この期間の返済などについて入念な計画を立てておく必要があります。

3.中古マンションのリノベーションでかかる費用

中古マンションを購入してリノベーションをするリノベーション投資は、中古マンション購入後すぐに賃貸経営をするわけではないので、リノベーション投資特有の費用を知っておく必要があります。

ここでは、リノベーション投資を始めるのにあたって必要になる3つのプロセスで発生する費用の目安について解説します。

3-1.中古マンション購入費用

リノベーションをする「土台」となる中古マンションの購入費用は、中古マンションの築年数によって大きく異なります。

以下は、公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が発表した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」レポートの2021年版に掲載されている、中古マンションの築年帯別平均価格です。首都圏の中古マンションがどれくらいの価格で取引されているかを知る目安になります。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が発表した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」(2021年版)

このグラフを見ると、築年数が進むにつれて中古マンション価格が低下している様子が見て取れます。築30年以降は横ばいになっていますが、それまではおおむね築年数が進むと価格は安くなると考えて良いでしょう。

例えば築20年であれば4,000万円程度が中古マンションの平均価格ということになりますが、これはすべての物件タイプが含まれているため、高額になる傾向があります。ワンルームマンションなど他のタイプよりも安く購入できる物件タイプだと、これよりも安く購入できると考えられます。

3-2.リノベーション費用

リノベーション費用については、物件によってどこまで手を入れる必要があるのか、リノベーションによってどこまでの価値再生を求めるのかによって費用は大きく異なります。その目安を知るために、リクルート住まいカンパニーが2017年に調査・発表した「大型リフォーム実施者調査」から平均値を引用してみたいと思います。

同調査では「大型リフォーム」と表現していますが、一部の修繕やリフォームではなく物件全体のリフォームをした費用を調査しているので、リノベーション費用の目安になると考えられます。

この調査によると、大型リフォーム費用の全体平均は610.4万円です。物件のタイプや工事の規模はさまざまですが、おおむねこれだけの費用を要するという目安にしていただければと思います。他社が紹介している費用目安を見ても、これよりもやや高い程度の金額が提示されており、おおむねこの水準であると考えて良いでしょう。

3-3.入居後のメンテナンス費用

投資物件を購入した後で発生するメンテナンス費用については、中古マンションを購入して何もしないより、リノベーションをしたほうが安くなります。なぜなら、リノベーションによって室内の設備を更新しており、それらの劣化が進むのは先のことだからです。

管理会社に管理を委託する場合の管理費や修繕積立金の支払いがありますが、これらの費用負担は新築であってもリノベーションをした中古マンションであっても違いはありません。

4.中古マンションリノベーションでローンを利用する際の注意点

不動産投資向けローンの融資期間は建物の法定耐用年数によって決まります。ほとんどのマンションは法定耐用年数が47年なので新築マンションの残存耐用年数はそのまま47年ですが、築20年の中古マンションは残存耐用年数が27年になります。

金融機関のローンは原則として法定耐用年数内の融資期間になるため、築年数が進んでいる中古マンションほど融資期間は短くなります。融資期間が短くなると毎月の返済額が大きくなり、それを返済できるか否かの判断基準もおのずと厳しくなります。

中古マンションをリノベーションするリノベーション投資では、ローンの利用時に以下の3つの注意点があることを押さえておきましょう。

  • 新築と比べて担保価値が低いと見なされ、ローンの審査で不利になる
  • 残存耐用年数が短いと融資期間も短くなる
  • 借り入れできるのは物件の購入費用でありリノベーション工事費用は含まれない

5.リノベーション投資を成功させるための物件選びのポイント

中古マンションをリノベーションしたからといって、どの物件でも成功できるわけではありません。すでに述べているように、不動産投資では入居者が付き家賃収入が発生してはじめて成功への道筋が見えてきます。そして、成功させるために重要になるのが、リノベーションをする価値のある物件選びです。

ここでは、6つのポイントでリノベーション投資向けの物件を選ぶ際のポイントを紹介します。

5-1.デザインはマッチしているか

入居者から支持されるデザインであるかどうかは、リノベーション物件の生命線ともいえる部分です。例えば、若年層の多いエリアであまりに落ち着いたテイストの内装デザインは、物足りなく感じられてしまうでしょう。また女性入居者が多い場合は、デザインだけでなくキッチンや浴室などに手を加えてより清潔感のある部屋にすることも大切です。

リノベーションは漠然と凝ったデザインをすれば良いわけではなく、ターゲットを明確にしなければ入居者の心には響きません。リノベーション物件を検討する際はそのエリアの入居者層などを不動産会社に確かめ「入居者のニーズにマッチしているか」という目線で見るようにしましょう。

5-2.ニーズのある部屋タイプか

賃貸の部屋タイプには、ワンルームタイプとファミリータイプがあります。安定した賃貸運営を目指す場合は「そのエリアでどちらの部屋タイプの需要があるか」についてしっかりと調べて購入しましょう。的が外れた部屋タイプでは、入居者の候補となる人数自体が少なくせっかくリノベーションした物件でも空室となるリスクが高まります。

単身者の多い都心では、ワンルームタイプが当然有利です。郊外や地方都市であればファミリータイプの需要が高いエリアもあるかもしれません。ただし、ファミリータイプを検討する際は「マンションか」「アパートか」「戸建てか」など多角的に検討することが必要です。賃貸は、借りてもらってこそ収益になることを忘れず、ニーズのある部屋タイプを選ぶようにしましょう。

5-3.都心の安定した賃貸需要は有利

東京カンテイの2022年2月14日のプレスリリースによると、東京都の2022年1月の分譲マンション賃料は、前月に比べわずかに弱含みとなったものの他の地域に比べ高い水準で推移しています。1年を振り返ってみても、1平方メートルあたりの賃料は2021年1月の3,198円から3,297円へと上昇しており手堅い需要があるといえるでしょう。

こうした賃貸需要の落ちにくいエリアであれば、リノベーションした物件のニーズも十分にあると考えられます。しかし逆に賃貸需要のないエリアで中古マンションを購入してリノベーションをしたとしても、入居者が現れず空室になるリスクが高まりかねません。リノベーションで付加価値のある物件を手に入れても借りる人がいなければ単なる負債になってしまいます。

「借り手が豊富にいるエリア」ということをしっかりと確認したうえで物件を購入するようにしましょう。

都心の安定した賃貸需要は有利

5-4.交通の便は良いか

交通の便が悪ければ、いくら部屋の魅力が高くても居住意欲は下がってしまいます。特に賃貸需要の高い都心で注意しておきたいのが最寄駅までの距離です。

賃貸物件を探す人は駅からの徒歩時間で物件を選別する傾向があり、最寄駅から10分以上かかるようだと候補から除外されやすくなります。賃貸物件の検討初期段階では部屋の状態が注目されますが、実際の絞り込みでは交通の便も重視されるため、物件選びでは注意するようにしましょう。

5-5.生活しやすい環境か

実際に生活するとなれば周囲の環境も非常に大切で、より選ばれる物件にするためにもしっかりと確かめておく必要があります。例えば、入居者が単身者と想定されるならコンビニが近くにあると非常に有利です。コンビニは買い物だけでなくATMの利用や公共料金、税金の支払いなどもできる生活ハブの機能を持っているため、それらをアピールすれば大きなメリットと捉えてもらえます。

また近くに公園や遊歩道などがあれば、運動不足解消や在宅ワークの気分転換などさらなる付加価値を訴求できるでしょう。物件選びでは、周囲に生活のしやすさにつながるポイントがないか、十分にチェックすることが大切です。

5-6.建物状態も確かめる

室内がニーズに合ったリノベーションを施されていた場合でも、必ず建物全体の状態まで確かめるようにしましょう。

なぜならいくら部屋の付加価値が高くても、あまりに建物外観や共用部分が劣化していたり汚れていたりすれば内見に訪れた人に敬遠されてしまうからです。「エントランスが破損している」「階段の掃除が行き届いていない」「廊下の電気が切れている」などがないか確認しておくと安心です。

またゴミ捨て場もぜひ確認しておきたい部分で、ゴミ出しの日が守られず汚らしいようであれば入居者の素行も疑われかねません。そうした物件ではせっかく入居してもらっても不満がつのり早々に退去され空室となってしまう可能性もあります。

内見に訪れた人に好印象を持ってもらい長く快適に住んでもらうために、部屋以外の建物状態をしっかりと確かめるようにしましょう。

6.リノベーション投資を成功させるために

中古マンションのリノベーション投資は、コスト面やニーズに合致した物件づくりができることなどメリットが多く、すでに多くの成功例があります。

しかしながら、中古マンションをリノベーションすれば必ず成功するというわけではありません。中古マンションのリノベーション投資をするにあたって留意しておくべき注意点や物件選びのポイントなども押さえた上で、計画を練るようにしましょう。

3年以上勤めた会社員へ。
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