不動産投資

不動産投資における大規模修繕の意味。修繕積立金の相場と実施の時期

不動産投資物件で行われる大規模修繕工事は、物件価値を高め空室を防ぐ効果も期待できる重要な工事です。しかしその意味を十分に理解せず、請求されるがまま修繕積立金を払い続けている所有者の方も少なくありません。
そこで今回は、投資物件の価値を維持するための大規模修繕の役割を改めて見直し、さらに費用負担の相場や実際の周期を国土交通省の調査から読み解きます。

不動産投資における大規模修繕の意味。修繕積立金の相場と実施の時期

不動産投資における大規模修繕の意味とは

マンションで行われる大規模修繕は単に建物の痛みを直すだけでなく、不動産投資においても重要な役割を持っています。例えば、外壁塗装をすれば外見が良くなり新規の入居者を募るうえで有利に働くことでしょう。また、照明が切れて暗かった廊下が修繕されて明るくなれば、防犯に不安を感じていた入居者の退去を引きとめられるかもしれません。

物件売却でも有利に働く

さらに出口戦略である売却においても大規模修繕工事は有利に働くことが期待できます。購入を検討する人の多くは入居率を確認するため、建物状態が良く入居率も高ければ購入を前向きに考えてもらえるはずです。実際に見たり物件情報サイトに掲載されたりしたときに外観がきれいであれば多くの人の目に留まることになり問い合わせの件数が増えるかもしれません。

大規模修繕が行われれば物件の修繕履歴に記載されるため、「物件の価値をしっかりと見極めたい」という人にもしっかりアピールできます。このように大規模修繕は、物件売却においても有利に働く工事といえるでしょう。

大規模修繕の費用相場

2017年に国土交通省が行った「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」の資料に大規模修繕の費用相場が記載されています。これは2017年の直近3年間にマンション大規模修繕工事に関する設計コンサルタント業務を受注した134社944の事例から集計された実際のデータです。同調査によると1戸あたりの工事金額の平均は、1回目が100万円、2回目は97万9,000円、3回目以上が80万9,000円となっています。

毎月の修繕積立金の相場

大規模修繕の費用は毎月集金され積み立てている修繕積立金から支払われます。2018年に国土交通省が行った「平成30年度マンション総合調査結果」によると、2018年度における1戸あたりの修繕積立金は1ヵ月1万1,243円、駐車場の使用料から充当される駐車場の修繕を含む修繕積立金は、1ヵ月1万2,268円でした。

修繕積立金の段階増額積立方式に注意

修繕積立金で注意をしたいのが積立方式です。同調査にある2018年時点の物件完成年次別1戸あたりの修繕積立金を見ると、古い物件ほど修繕負担金が多く新しい物件では平均を下回る額になっています。なぜなら新しい物件ほど修繕積立金が段階的に増える段階増額積立方式になっているからです。同調査によると2010年以降の物件では67.8%の物件が段階増額積立方式でした。

そのため築年数の浅い物件を購入する際は、その時点での修繕積立金だけでなく段階増額積立方式かどうかも確かめるようにしましょう。

修繕積立金の段階増額積立方式に注意

実際に大規模修繕が行われる時期を確かめる

区分所有マンションの購入を検討している人にぜひ確かめてもらいたいのが大規模修繕工事の実施される時期です。購入を検討している物件が大規模修繕をすることになれば、価格が上昇したりすぐに買い手が付いたりすることが考えられます。またすでに物件を保有している場合は、大規模修繕が行われ付加価値が上がった後に売却するなど出口戦略の検討材料にすることもできるでしょう。

いずれの場合も大規模修繕の時期を確かめることは、投資のタイミングを図る一つの指標となるため、ぜひ確認することをおすすめします。

当初の計画時期から変わることもある

分譲マンションでは建築時に大規模修繕の計画が立てられていることが一般的です。しかし建物の劣化状況や積立金の残高などを考慮し管理組合などの協議によって時期が変わることがあります。実際に実施される時期についても先の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」に記載があるため確認してみましょう。

同調査によると大規模修繕の1回目は16.3年、2回目は29.5年、3回目が40.7年の築年数で行われています。今後実施される時期の見通しを立てる際や売却のタイミングを測る際の参考材料になるでしょう。

修繕積立金が不足している物件がある

分譲マンションでは建築時に大規模修繕の計画が立てられていますが、そのための積立金が不足している物件もあります。「平成30年度マンション総合調査結果」によると、調査対象の34.8%が積立金の不足があると回答。原因は建築費の上昇や入居者の減少などが想像されますが、いずれにしても大規模修繕やその他中小規模の修繕が延期されたり十分に行われなかったりする可能性があります。

区分所有マンションの購入を検討する際は、物件ごとの積立金不足がないかだけでなくマンション全体の積立状況も確かめてみると良いでしょう。

大規模修繕で行われる工事

区分所有マンションでの大規模修繕は、建築当初の計画を元に管理組合で決められた工事内容で行われます。しかし1棟所有の場合は、オーナーがどういった工事をするのか決めることが可能です。いずれ1棟所有の不動産投資も視野に入れているのであれば大規模修繕にどのような工事があるか早めに知っておくことをおすすめします。

大規模修繕で行う主な工事

  • 外壁修繕
    外壁の塗装、タイルの補修や張り替え、各ジョイントの防水シーリング打ち替え
  • 屋上防水
    屋上床防水の再塗装、あるいは防水シートの張り替え、雨水排水口の清掃
  • バルコニー床
    各部屋のバルコニーは共用部分のため、床防水の再塗装と雨水排水口の清掃</li>

  • 廊下、階段、鉄部
    共用部の廊下や階段の床再塗装、手すりなど鉄部の再塗装
  • エントランス
    エントランスの床再塗装やタイル補修、入り口ドアの補修や入れ替え
  • 電灯設備
    エントランスや廊下、階段、外部などの電灯の入れ替え
  • アンテナ
    共用アンテナの補修や入れ替え
  • インターホン
    インターホンが共用設備の場合は補修や入れ替え
  • 消火設備
    消火器や消火栓、火災報知器などの点検や入れ替え
    ※法定で時期が定められているため、大規模修繕と時期が異なることもある
  • エレベーター
    詳細点検や部品交換、本体の入れ替え
  • 駐車場、車道、歩道、植栽
    路面の整備、機械式立体駐車場では機械整備や入れ替えや植栽の入れ替え

大規模修繕は費用相場や時期、積立金不足も確かめる

大規模修繕は物件の価値を高め空室回避や売却価値を高めるうえで大切な工事です。建物の外観が汚れていたり共用部に損傷があったりすると、たとえ部屋のリノベーションによって物件価値を高めていてもその魅力を下げてしまいかねません。積立金の相場や積立方式を確かめてしっかりと支払いを行い、大規模修繕が確実に実施されるよう協力をしましょう。

また実際に大規模修繕が行われる時期や建物全体での積立金の不足がないかも確かめたいところです。これらはネットに掲載されている情報だけでは分からないため、気になる物件があれば電話やメールで問い合わせをしてみましょう。

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