更新日 :
不動産投資
不動産投資に「東京郊外」は検討してもいいのか
不動産投資ではよく「立地がすべて」と言われます。そのため人気エリアの駅近にある物件を選ぶことが成功のカギだとされてきました。なぜならたとえ物件価格が割高になったとしても、賃貸需要が旺盛で入居率が高く収入が途切れにくいからです。ただし、新型コロナウイルス感染症拡大後からは従業員を守るべく大企業などでテレワークが推進されているため賃貸需要に変化が見えています。
また最近は「手狭なマンションから郊外の戸建てが見直されている」といった一部報道も散見される状態です。そこで今回は、「東京郊外」の物件が投資対象として検討に値するかどうかを考えてみます。
都心と郊外の境目はどこなの?
まず東京の「郊外」とはどこを指すのでしょうか。実は「都心」や「郊外」には以下の通り明確な定義はありません。
- ブリタニカ国際大百科事典
都心とは「都市の中心部に位置し、政治、経済、文化など中枢的機能が集積している地区」 - デジタル大辞泉
郊外とは「都市に隣接した地域。市街地周辺の田園地帯」
このように具体的にどこかのエリアを指しているわけではないため「都心」と聞いたときに「東京23区」をイメージする人もいれば千代田区や港区、中央区といったいわゆる「都心3区」をイメージする人もいます。一方で「郊外」というと23区外を考える人もいれば足立区や杉並区など山手線の外にある区を含めて考える人もいます。
2016年8月8日付の「東洋経済ONLINE」の記事では、都心と郊外の境目について以下のように記載されています。
「都心からの絶対距離はおおむね25キロ前後、急行等の速達列車に乗って30分前後で都心駅に行ける距離」
その根拠として挙げられている郊外か否かの判断ポイントは「マンション事業が可能なエリアか」「難しいエリアか」です。駅ごとに新築および中古マンション供給量や取引価格を見ていくと、傾向ががらりと変わる駅があることなどが挙げられています。その結果、JR線や私鉄では以下のような駅が郊外になるようです。
JR線 | 私鉄 | ||
---|---|---|---|
路線 | 駅名 | 路線 | 駅名 |
中央線 | 立川駅 | 京王線 | 聖蹟桜ヶ丘駅 |
東海道線 | 藤沢駅 | 小田急線 | 向ヶ丘遊園駅 |
京浜東北線・根岸線 | 石川町駅 | 東急田園都市線 | 江田駅 |
一般的な「都心」や「郊外」のイメージはこんなところでしょうか。
都心はローリスクローリターン、郊外はハイリスクハイリターン
不動産市場調査会社のタス株式会社が2020年8月末に発表した「賃貸住宅市場レポート」によると、2018年7月の空室率TVIは東京23区が13.11%、市部が17.65%と4.54ポイントの差がありました。2019年12月までは東京23区の優位が続きます。また首都圏で見ると2020年6月の東京都が13.35%なのに対し神奈川県は17.04%、埼玉県は15.68%、千葉県は15.48%です。
過去2年のデータを見ても東京都の空室率TVIは首都圏で最も低い数値を維持しています。やはり都心の空室率TVIが低くなる傾向にあることは間違いないようです。ただ都心は地価が高いため、どうしても利回りは低くなりがちです。しかし買い手がつきやすく売却しやすいため、リスクは低くなると言えます。つまり「ローリスクローリターン」ということです。
逆に郊外は地価が安いこともあり物件価格は都心より安くなります。都心と比較すると利回りは高くなりますが、郊外特有の空室率の高さというデメリットがあるため都心の物件よりも売却がしにくい傾向にあります。つまり「ハイリスクハイリターン」ということになるでしょう。
新型コロナの影響で郊外が優位になる?
2020年に入ってからは、空室率TVIが東京23区と東京市部で数値逆転し始めるなど少し様相が変化してきています。2020年1月、空室率TVIは東京23区が13.32%と東京都市部の13.18%をはじめて上回りました。その差は広がり同年6月の空室率TVIは東京23区内が13.46%なのに対し東京都市部が13.07%となっています。
この傾向は、2020年8月時点でも猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響でさらに顕著になる可能性があるでしょう。新型コロナウイルスをきっかけに多くの企業はテレワーク導入を余儀なくされました。大企業の一部やIT企業などでは、今後もテレワークが継続される見込みです。そうしたことから「郊外への移住が進むのではないか」と報じるメディアも増えました。
通勤不要になれば「本当に住みたい場所に住む時代がやってくる」という論もあります。しかし、現状を分析すれば都心の物件を選ぶほうが手堅い不動産投資が行えるでしょう。今後、不動産投資を検討する場合は以下のような内容に注視しておくことも重要です。
- 今のような生活スタイルを私たちは続けなければならないのか
- 今後も企業がテレワークを続けるのか
- それとも一過性のものなのか
新型コロナウイルスの収束が見えない状態においては、識者の間でも意見が割れています。情報収集をこまめに続けて「どのような方向に進むのか」についてしっかりと見極められるようにしましょう。