不動産投資

アパマンローンの連帯保証人不要で何が変わるのか?

令和2年4月、連帯保証人保護の厳格化を含む改正民法が施行されました。それによって、不動産投資用ローン(通称アパマンローン)を組む際、連帯保証人が求められなくなる可能性があります。このことは、今後の不動産投資にどのような影響を与えるのでしょうか。

アパマンローンの連帯保証人不要で何が変わるのか?

不動産投資と連帯保証人

一般的に不動産投資では、ローンを組んで物件を買います。ローンの返済に家賃収入を充てることで、キャッシュアウトすることなく資産形成ができます。

ただし、金融機関は誰にでもお金を貸してくれるわけではなく、購入物件の収益性や借入者の返済能力が厳しく審査されます。物件の収益性が高ければ、配偶者や成人している子ども、親族を連帯保証人として、不動産投資ローン(アパマンローン)の審査を通していました。なおローンを組む人の返済能力は、勤務先の規模や勤続年数で判断される場合が多く、いわゆる零細企業に勤めている人やフリーランス、転職回数の多い人などは不利だと言われています。

民法改正で、連帯保証人の保護が厳格化

日本の民法は120年以上前の明治31年(1898年)に制定され、近年まで大きな変更がありませんでした。しかし、時代に沿わない部分が多くなってきたため、2017年に国会でその一部改正が可決され、一部の規定を除いて令和2年(2020年)4月1日に改正民法が施行されることになりました。

その中には、連帯保証人の保護に関する規定も含まれています。不動産投資ローンに限りませんが、これまでは連帯保証人の負担が大きすぎて健全な経済活動を阻害しているという批判が多く、その状況を改善するために今回の改正が行われました。

例えば賃貸借契約を結ぶ際、これまで賃借人は保証人を立てていました。今後は保証人が法人でない場合、保証の極度額を定めることになります。

また、借金を肩代わりする可能性のある保証人になる場合は、公証人に対して引き受けの意思があることを示さなければならなくなりました。これは事情を詳しく理解しないまま保証人になって、想定外の負債を負うことがないようにするためです。

民法改正で、連帯保証人の保護が厳格化

相続税対策を意識した不動産投資のトラブル防止が狙いか

この改正には、相続税対策のための不動産投資に関するトラブルも背景にあると考えられています。2015年に相続税の基礎控除引き下げや最高税率引き上げが行われてから相続税対策がブームになっていますが、節税方法の1つに現預金や上場株式などを収益不動産に組み換え、相続税法上の財産評価を引き下げるという方法があり、多くの資産家が利用しています。不動産は現預金や上場株式に比べて流動性が低いため、相続・贈与では財産評価が低くなり、課税額が抑えられるという特性があるのです。

さらに節税効果を高めるためには、金融機関からお金を借り、借金の割合を高めて不動産投資をすることが有効ですが、空室の可能性を考慮せずに始めてしまい、節税はできたものの投資としては手痛い失敗に終わるケースも少なくありません。

もし不動産投資で失敗しても相続放棄をすれば、財産がもらえなくなる代わりに借金などを引き継ぐ義務もなくなります。これまでは金融機関が相続人を保証人にすることが多く、相続を放棄しても借金から解放されずトラブルになっていました。

これを受けて、今回の改正民法を契機に三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行といったメガバンクや一部の地銀で、個人の新築不動産に対するアパマンローンでは、法定相続人による保証を原則求めないことになりました。相続税対策を主な目的としたアパマンローンで、相続人以外の保証人を立てることは難しいため、基本的には保証人不要となるでしょう

今後のローン審査で重視されること

個人で組む場合のローンを中心に説明してきましたが、保証人の設定に公証人が必要となったことで、中古不動産のローンでも保証人不要となっていく可能性が高いと言えます。これによって、物件の収益性がより厳しく見られるようになります。

今後の不動産投資では、安易な物件購入や事業拡大に走るのではなく、人口増加エリアに投資を集中させたり、より安定した収益が期待できる入居者に人気の中古リノベーション物件を活用したりするなどの工夫が求められるでしょう。

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