不動産投資(管理)

サブリース契約をレオパレス問題から再考してみよう

2018年に発生した「レオパレス問題」は大きな社会問題になりました。施工不良問題やサブリース契約においてのオーナーとのトラブルで訴訟にまで発展してしまったことは記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。不動産投資家はレオパレス問題を通じて学ぶべきポイントがたくさんあります。そこで今回は、レオパレス問題で表面化した重要な注意点について改めて考えてみましょう。

サブリース契約をレオパレス問題から再考してみよう

レオパレス問題を分析する

レオパレス問題は「施工不良」「サブリース契約」の2つから構成されていました。

  • 施工不良
    同社の賃貸アパートで“屋根裏の延焼を防ぐ壁が設置されていない”などといった法令違反物件が全約4万棟のうち約3万棟(2019年11月時点)で発覚。その結果、多くの入居者に転居してもらわなければならない騒動に発展し同社の経営に大きな打撃を与えました。
  • サブリース契約
    同社のビジネスモデルは土地所有者にアパートを建築してもらったうえでサブリース契約を結び、一括で借り上げて“また貸し”するというものです。サブリース契約を結ぶとサブリース会社が賃借人、オーナーが賃貸人になります。同社は「一括で借り上げることにより家賃収入が最長で30年間まったく変わらない」と伝えてオーナーとの間にサブリース契約を結んでいました。

ところが「契約条件にかかわらず、賃借人は家賃の増・減額を請求できる」とする借地借家法第32条を盾にしてオーナーに減額を迫っていたことが明らかになりました。「30年間家賃収入額は変わらない」という説明が、そもそも借地借家法の観点から無効であることをオーナーが知らないケースが多かったのです。

また報道機関が問題を伝える過程で、サブリース契約の解約を辞さない強気の姿勢で家賃を大幅に減額するように本社が命じた内部資料が暴露され、一方的で強引な手法が明らかになっています。こうしたことに納得ができないオーナーの一部が全国で少なくとも12の訴訟(2019年9月時点)を提起しました。

当初は敗訴か和解となるケースもありましたが2020年3月に初めてオーナーが勝訴。判決では、同社の説明でオーナーが勘違いをして賃料減額に合意してしまった点を指摘しています。さらにオーナーが誤解していることをレオパレスが知りながら、誤解を解くための説明をしなかったことに対して厳しく批判しました。

レオパレス問題を分析する

セールストークにだまされるな

レオパレス問題では、オーナーに同情すべき点は多々あります。しかし忘れてはならないのは、オーナーは消費者ではなく賃貸経営事業者ということです。そのためサブリース契約を結ぶにあたり内容を十分に理解しておかなかったことは、オーナー側にも落ち度があったとされてしまう場合もあるでしょう。ただ法的知識や情報力、資金力の面でオーナーとレオパレスは対等ではありません。一審でオーナーが勝訴したケースでは、同社がその差を埋めようとしなかったことが追及されました。

ただし、この点は裁判官によって判断が分かれる部分でもあります。不動産投資が「賃貸経営」である以上、不動産投資家は先方のセールストークを「鵜のみ」にしてはいけません。「30年間家賃を保証します」というセールストークは「家賃をゼロにすることはありませんが、こちらの判断でいつでも減額します」という意味なのです。

不動産投資は利益を得ることが目的であり損をするためにやるものではありません。相手の説明をきちんと理解できる程度の知識は、事前に仕入れておくべきでしょう。また家賃の減額交渉では、居丈高な態度で迫った担当者もいたそうです。冷静なやりとりができなくなったと感じたときは、いったん交渉を凍結したり弁護士などの第三者に相談することで自身の身を守ることにつながります。

最も危険なのは「サブリース会社にすべてを任せきりにしてしまう」という受け身の姿勢でしょう。レオパレス問題でもそうした態度のオーナーがいたとされています。投資は自己責任であるということを忘れてはいけません。

サブリースは有益な仕組み

レオパレス問題だけを見てしまうとサブリース契約は「悪い仕組み」のように思ってしまうかもしれません。ただ上述したことに注意すれば実はオーナーにとってメリットの多い契約形態ともいえます。なぜなら管理する労力は通常よりもはるかに少なくなり、賃貸経営の最大リスクである空室の発生を恐れる必要もないからです。言い換えれば収入が安定することになります。

入居者トラブルなど余計な手間に忙殺されることもありません。そのため「安心を買いたい」という人には向いています。セールストークやサブリース契約の落とし穴に十分気をつけて、賢く活用していきましょう。

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