不動産投資

新型コロナで進むテレワーク、それでも不動産投資は東京な理由

2020年4月30日時点における世界の新型コロナウィルスの感染者は約319万人、死者約22万7,000人と依然として収束が見えてこない状況です。日本では新型コロナウィルスへの対策として、テレワークの導入が強く推進されています。当初はインフルエンザと同じように春までどうにかやり過ごせれば……という認識の人も多かったのではないでしょうか。

しかし、なかなか収束する気配を見せず、感染爆発(オーバーシュート)を避けるために2020年5月6日までの「緊急事態宣言」が発令され「ステイホーム」の掛け声のもと外出自粛要請は全国的なものとなりました。そのため多くの企業が、従業員の安全確保のためにテレワークに取り組んでいます。緊急事態宣言が全面解除が見えてきた現在においても、感染拡大防止のための細かな対応方針が示されている状況を見ても「コロナ禍」は長期化する可能性も否めません。

2019年から本格的に推進されてきた「働き方改革」の流れと相まって、新型コロナウィルスが沈静化し通常出勤が可能になってからもテレワークが定着するのではないかといわれています。こうしたことから「職住接近」の必要がなくなり「東京の不動産需要が減少するのではないか」という見方が出ていますが、果たして本当なのでしょうか。

新型コロナで進むテレワーク、それでも不動産投資は東京な理由

完全なテレワークは難しい

もともとテレワークという言葉は、古代ギリシャ語に語源を持つ「テレ (tele)=遠方の」という接頭辞に仕事を意味する「ワーク(work)=働く」を合わせてできた言葉です。オフィスに出勤することなく離れて仕事をすること意味しています。テレワークの普及・啓発活動を行う日本テレワーク協会によれば「ICT(情報通信技術)を用いて場所や時間にとらわれず働くこと」と定義しています。

「外出自粛要請」が出されている2020年5月現在では、ほぼ「在宅ワーク」を指す言葉として使われている傾向です。新型コロナウィルスの感染を防ぐために人間が密集するような環境を避けることが求められています。都内では大手企業を中心にテレワークの導入が進められました。例えば出勤の抑制だけでなく、社内外を問わず会議や打ち合わせはZOOMなどのオンライン会議システムが使われています。

オンライン会議システムは、コロナ禍が終息してもおそらく活用されることになるでしょう。ただそれを理由に職場のある東京に暮らすことのメリットがなくなると考えるのは早計です。なぜなら一部の職種を除き100%のテレワークは実現が難しいからです。サービス業や製造業など、テレワークでは仕事にならない業種もあります。

オフィス業務でもセキュリティーや勤怠管理などが難しくなることは間違いありません。もともとテレワークが導入しやすいはずのIT系技術職でもセキュリティーが課題となり導入が進んでいませんでした。また稟議書など日本企業特有の決済文化がいきなりなくなるとは思えません。それらを踏まえるとオフィスで業務をこなすほうが効率的である場合も少なくないのです。

このような理由から多くの人たちが今後も「職住接近」を求めると考えられます。

完全なテレワークは難しい

勤務地としてだけではない東京の住環境の魅力

東京の魅力は勤務地としてだけではありません。2015年に東京都が都内在住者に行ったアンケート結果によると、東京都が魅力的な都市だと思う理由のTOP3は「交通網が充実している」「物や店が豊富である」「芸術や文化に触れる機会が多い」でした。このように交通網、芸術・文化に触れる機会の充実、治安の良さなど暮らしたいと思う魅力が東京にはあふれています。

一方で、ネット通販やネットバンキングなどネット経由のサービスが充実したことで地方と東京の暮らしやすさの格差は大幅に改善されはじめています。しかし衣食住の充実度合いにおいて東京は群を抜いており、これらの優位性は今後も下がりにくいといえるでしょう。

都心に回帰する学校で人口集中が止まらない

東京に全国からたくさんの人が集まる大きな理由の一つは、大学など高等教育機関の集中です。高校までは地元で勉強してきた人たちが進学を機に上京してくる傾向があります。例えば全国には2019年5月時点で国公立大学179校、私立大学607校、計786校の大学があり、そのうちの約2割の大学が東京にあるのです。

また東京にある大学は学生数が多く、全国における大学生のうち約3割が東京の大学に通っているといわれています。そして進学を機に上京した学生の多くは、地元に戻らず東京の会社に就職する傾向があります。企業も多い東京のほうが地方よりも就職機会に恵まれているのも事実で、若者たちの選択は極めて自然なものといえるでしょう。

こうした傾向が急激に変化するとは考えにくいため、新型コロナウィルスの問題にかかわらず東京の人口が減少する可能性は低く、不動産賃貸市場の需要は続くと考えられるのです。

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