不動産投資(管理)

スマートロックの概要と利用価値を考える

不動産テックという言葉をご存じでしょうか。その不動産テック業界で、特に注目されているのが、物理的な鍵を用いずスマートフォン(以下スマホ)で鍵の開け閉めを行う「スマートロック」です。しかし残念ながら日本では普及が進んでいる状況とはいえません。ここではスマートロックの概要や、導入の是非について解説します。

スマートロックの概要と利用価値を考える

スマートロックとはどういうものか

スマートロックとは、スマホのアプリを使って鍵の開閉が行われる電子錠のことです。一般的な鍵は、鍵穴に鍵を差し込み手動でその開閉を行います。一方、電子錠は専用リモコンやカードキーなどで認証されるとモーターにより自動的に鍵の開閉が行われるものです。それをスマホとネットワークで行うと「スマートロック」ということになります。

旧来的な電子錠との違いはネットワーク化されていることです。鍵の開閉履歴を簡単に保存・記録・閲覧できるため、外出時でも施錠を行ったか否かが簡単に確認できます。また「入居者不在時に空き巣やストーカーなどによる不審な鍵の開閉が行われていないか」を確認することも可能です。製品によっては、既存の鍵にマグネットなどで取り付けるだけのものもあります。

セキュリティー機能を簡単に実現できるメリットに加えて、スマホさえあれば解錠できるので鍵を持つ必要からも解放されます。もしスマホを忘れて外出しても製品によっては指紋や暗証番号などの認証で解鍵が可能です。物件の管理会社にとっては入居者への鍵の受け渡しや転居時の鍵交換の負担から解放されるため大きなメリットになるでしょう。また入居希望者の内見の際にも一時的な鍵の付与が簡単に行えます。

一方、電子的なシステムのため、システムをアップデートすると不具合が発生したりバグによるトラブルが発生したりする可能性があることがデメリットです。またハッキングなどの危険性はゼロではありませんし、単純に電池切れのリスクもあります。信頼できる会社の製品を選び予備バッテリーなども常備することでこれらのデメリットは解消されますが、その分のコストはかかってしまうでしょう。導入コスト以外に通常の鍵と違って月額の利用料が必要になってきます。

スマートロックとはどういうものか

普及が進んでいるとまでは言えない

2019年現在日本国内でスマートロックの普及はそこまで進んでいるとは言えないでしょう。その理由として費用の問題が挙げられます。一般的な鍵は約1万~1万2,000円です。ディンプルキーでも約1万5,000~2万円で交換することが可能です。一方のスマートロックは、1人暮らしを前提とした場合、導入費用は工事費や製品で数万円、毎月の利用料は1,000~1,500円ほど発生します。

一概には言えませんが目安として1年以上利用する場合は、一般的な鍵を使ったほうがコストは押さえられるでしょう。ファミリー向け物件で鍵のアカウントを複数発行する場合は、月額利用料はさらに高くなります。この費用は基本的に入居者の負担ですが、あまりセキュリティーを重視しない人たちには、費用が高くなるだけでメリットが感じられないかもしれません。

また、単純にスマートロックの知名度があまりにも知られていないことも普及を遅らせている原因の一つにあるとも言えるでしょう。

スマートロックの導入に効果があるのは

あまり普及が進んでいるとはいえないスマートロック。このスマートロックを導入するか否かの判断ですが、物件のマーケティングやターゲットと合わせて考えるといいでしょう。例えば単身女性などを対象にセキュリティー性能を訴求したい場合、スマートロックは大きなアピール要素となるでしょう。

また単身高齢者向けに大家による見守りサービスを提供する場合にも有効です。なぜなら大家や管理会社から各入居者に都度連絡を取らなくともスマートロックで鍵の開閉記録を確認することで迅速に異変に気付くことができるからです。

このようにセキュリティーや見守りなどを重視される人たちにスマートロックをアピールできれば、競合物件と比較した時に大きなアドバンテージとなるのではないでしょうか。

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