不動産投資(管理)

外国人の賃貸需要と貸し出しを考える

東京を中心とした大都市圏では、外国人居住者の人数が年々増加しています。一方、日本の人口は少子高齢化の影響で、日本人の人口だけでなく若年人口も減少傾向です。これから不動産の賃貸市場において外国人の存在感は、今以上に高くなっていく可能性があるでしょう。そこで今回は外国人向けに不動産を貸し出す場合のポイントなどを解説します

外国人の賃貸需要と貸し出しを考える

日本で暮らす外国人が増えた理由

近年、インバウンド(訪日外国人旅行者数)が大幅に増加しています。不動産投資家の間でも、この現象が注目を集め、民泊物件などにチャレンジする人も増加傾向です。また、実は外国人旅行者だけではなく日本に居住する外国人も増えています。2013年末に約206万人ほどだった在留外国人数は、2018年末には約263万人を超えるまでになりました。

中国やフィリピンなどのアジア出身者が中心で、なかでもベトナム人が急増しています。2013~2018年の5年間、外国人の数は年平均で10万人近い増加となっている一方で、日本人の数は年平均20万人弱の減少となっているのです。つまり人口減少のスピードを半分にしているのは、日本に居住する外国人たちの増加ということになります。

このような在留外国人増加の要因ですが、一番大きいのは技能実習生と留学生や、それらを経た永住者の増加でしょう。こうして日本を訪れる外国人たちは、実習や学業を経て母国よりも給与水準の高い日本企業での就職を目標としている場合が多い傾向です。近年は日本語学校の整備、大学などの外国人留学生受け入れ体制の充実などが背景にあります。

2018年12月の臨時国会で外国人材の受け入れ・共生を目的に、新たな在留資格「特定技能」を創設(2019年4月より運用開始)する出入国管理法改正が行われました。そのため今後さらにこの傾向は加速する可能性が高いでしょう。また2018年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」(通称「骨太方針」)の中でも、外国人労働者受け入れ拡大のための規制緩和が盛り込まれています。

日本で暮らす外国人が増えた理由

首都圏など利便性の良い物件が好まれる

外国人の増加は、東京をはじめとした首都圏で顕著です。2018年6月末時点で約263万人のうち5分の1に近い約55万人が東京に居住しています。外国人留学生向けの日本語学校が東京に集中していることや、地方よりもはるかに活発な東京の経済活動が、多くの人をひきつけているからでしょう。外国人を対象とする不動産投資をするのなら、東京を中心とした首都圏で行うことをおすすめします。

そもそも東京は、年率7~8%で居住者が増加しています。ターゲットとする外国人の層で物件のスペックやエリアを変えましょう。日本に駐在する外資系企業の駐在員や外交官などのエグゼクティブと、留学生などの一般外国人では、求めている物件が大きく異なります。前者は家賃が高くても良いので、間取りが広くハイグレードの高級物件が良いでしょう。

エリアも大使館やインターナショナルスクールなどが多い、港区や渋谷区などの都心を検討したいところです。一方で一般外国人向けは、すぐに生活できる家具・家電付きの物件が人気。なお東日本大震災の被害が、世界中で報道されたこともあって地震のない国から来た外国人は、建物の耐震性や免震構造などを気にすることが多い傾向です。

外国人の入居審査や物件管理の注意点

外国人向け不動産投資の最大のリスクは家賃の回収でしょう。留学生や技能実習生は、収入の基盤が安定していないことが多く、安心できる保証人も見つけづらい状況です。また文化や生活習慣の違いによる近隣トラブルや、契約者以外の人間が勝手に出入りして無届けで規定を超える人数が居住してしまうリスクも考えられます。

こうしたリスクへの対応ですが、まず家賃回収については保証会社を活用し管理会社のサポートも最大限に利用しましょう。また家賃不払いから突然退去した場合は、母国の大使館もしくは入国管理局に連絡する旨を賃貸借契約書でうたい、かつしっかりと内容を伝えることで抑止効果が期待できます。知り合いを勝手に住まわせるような不法行為などには、毅然とした態度で対応しましょう。

近隣トラブルなどは、契約段階からコミュニケーションに力を入れて相手が理解するまで説明を繰り返すことも必要です。英文で図解付きの説明書類を準備するなど、相手が安心して暮らせるような配慮を検討しておきましょう。

3年以上勤めた会社員へ。
あわせて読みたいおすすめコラム