リノベーション

不動産投資家を目指す方に「リノベーション」と「リフォーム」の違いを解説

「リノベーション」と聞くと、「リフォームとどこが違うの?」と思われるかもしれません。実際のところ同じ意味で使われていることもあるのですが、二つの言葉が持つニュアンスの違いについて理解しておくと、不動産投資をする際にとても役に立ちます。

そもそも「リフォーム」と「リノベーション」は、目的が大きく異なります。詳しくは後述しますが、「リフォーム」の目的は原状回復であり、「リノベーション」の目的は付加価値の創造による物件価値の再生です。

不動産投資家や不動産投資を始めたいとお考えの方が特に知っておくべきなのは、「リノベーション」が物件価値の再生を目的としている点です。なぜこのことが不動産投資と深く関わっているのかはとても重要なので、「リノベーション」のメリットやデメリットなども併せて投資家目線で解説します。

1.「リノベーション」と「リフォーム」の違い

最初に「リノベーション」と「リフォーム」について、それぞれの言葉がもつ意味の違いについて解説します。

1-1. 「リフォーム」とは、古くなった建物・部屋を新築の状態に戻すこと

一般的に「リフォーム」は、老朽化した建物や部屋を新築の状態に戻すことを指します。マンションやアパートで住人が退居した後の部屋を、入居前の状態に戻すことを「原状回復」と言いますが、それを指してリフォームと言うことも多いのです。

ゼロを起点にすると、退去時に部屋の内部に傷んでいる箇所や古くなっている箇所はマイナス部分です。原状回復はこのマイナスをゼロに戻す作業なので、「リフォーム」によって物件の価値を入居前の状態、つまりゼロに戻すことが第一の目的です。

もちろん、「リフォーム」までをしなくても原状回復ができることもあるでしょう。傷んだ部分を修繕するだけでゼロに戻せるのであれば、「リフォーム」の工事を伴わないこともあります。

例えば、汚れてしまった壁紙を新しいものに張り替えたり、老朽化した設備を取り替えたり、建て付けが悪くなった戸などを直したりなどといった作業は、いずれも「リフォーム」です。

ただし、先ほど言及したようなそれほど大きな改修にならない範囲で前とは違う壁紙に張り替えたり、キッチンの設備を新しいものに入れ替えたりという場合でも、「リフォーム」と呼ばれることがあります。そのため、必ずしも「新築時と全く同じにする」という意味ではないと言えます。

「使用した結果、マイナスの状態になったものをゼロの状態に戻す」というのが「リフォーム」の本質なので、その目的を押さえておいてください。

1-2.「リノベーション」とは、大規模改修により物件価値をより高めること

「リノベーション」とは、古くなった建物や部屋に大規模な工事を行うことによって、物件価値をより高めることを言います。英語の「renovation」は「革新・刷新」と日本語に訳されるように、「リノベーション」には「元に戻す」というよりも「変える」というニュアンスがあります。

先ほどのようにゼロを起点にすると、「リフォーム」がゼロに戻す作業であるのに対して「リノベーション」はゼロに戻すだけでなくさらにプラスとなる付加価値を創造するところに主目的があります。

「室内や建物全体をリフォームすること」を「リノベーション」だとする解釈がありますが、これは単に規模感の話であって工事箇所が物件全体に及んだとしてもその目的が原状回復であれば、「リノベーション」ではなく「リフォーム」です。

具体的には、内装のデザインや間取りをその時々の市場に受け入れられやすい傾向のものに変えたり、それに合わせて水回りや電気・ガスなどの配管を全面的に刷新したりすることによって、建物・部屋の性能を向上させ、物件としての価値を高める作業が「リノベーション」です。

投資物件で「リノベーション」をする目的はもちろん、物件価値を高めることによって集客力を向上させることです。それによって稼働率を上げて収益力を高めれば、不動産投資の成功につながります。

なお、「ここまでの規模の改修ならばリフォームで、これより大規模ならばリノベーション」といったような明確な基準があるわけではありません。「マイナスの状態からゼロではなく、プラスの状態にまでする」工事や改修を施し、本来の物件よりもさらに価値を高めるのが「リノベーション」ということなのです。

1-3.リノベーションによって、なぜ価値が高まるのか

最近では、自宅用に中古マンションを購入し、自分自身でリノベーションをする人も増えているようです。確かに、安く購入できて自分好みの部屋に改装し、そこに住めるということは大きな魅力かもしれません。

では、不動産投資先としてのリノベーション物件はどうなのでしょうか。

普通、中古マンションなどの物件は、リフォームをしていたとしても価値評価において経年変化が全くないものとすることは難しいでしょう。築年数が経てば経つほど、賃料を下げることはあっても上げることは難しくなります。しかし、リノベーションを行うことで古さをカバーすることができ、物件価値を高めることができます。それによって、賃料が下がるということも防げるかもしれません。

しかも近年では画一的なコンセプトや内装になっているマンションではなく、自分のこだわりや主張を反映できる個性的な物件を好む人が多くなっています。価値観の多様化は住居選びにも波及しているので、「リノベーション」によって差別化を図ることが集客力に直結する時代なのです。

新築のデザイナーズマンションにも高い集客力がありますが、新築物件は価格も高いので費用対効果の面では中古マンション投資にかないません。このように中古マンションと「リノベーション」は親和性が高く、他にはない価値観やコンセプトを打ち出すことができればその価値観を好む人たちから支持される物件になります。

投資物件の場合はそこに自分が住むわけではないので、自分好みの部屋を造る必要はありません。効果的に収益を上げるためには、入居してもらいやすい部屋にする必要があります。

賃貸用マンションでも、部屋の内装やデザインにトレンドがあります。マンションのデザインも時代とともに変化しているので、中古物件が現在のトレンドに即していないことは少なくないのです。全面的なリノベーションは、トレンドに合わせた人気の高いデザインに刷新することも可能です。また、時代とともにライフスタイルも変わります。だからこそ、住む方のニーズに合わせたリノベーションは、投資物件としての価値を高めるのです。

東日本大震災以降、耐震性・防災性への関心が高まっています。耐久性や耐震性を高めるために壁の補強や難燃素材の使用など、リノベーションの内容をセールスポイントにすることも可能です。デザインなど見た目の価値を創造することだけが「リノベーション」ではなく、安全性を高めることも有効な差別化です。

「リフォーム」ではなく、「リノベーション」をした物件が投資対象として注目される背景には、「リノベーション」が「マイナスをプラスにする」「物件価値をより高める」ものであるからなのです。

2.「リノベーション」のメリット

「リノベーション」による物件の再生には、どんなメリットがあるのでしょうか。ここでは投資家目線で得られる4つのメリットについて解説します。

2-1.ゼロから自由に設計できる

「リフォーム」は原状回復が目的なので、工事の内容や仕上がりについてもマイナス状態のものをゼロに戻すだけです。新しい要素や付加価値を加えることはできませんが、「リノベーション」ではそれが可能です。

近年では「リノベーション」工事の技術が飛躍的に進歩しており、以前であればできなかったことが可能になっています。こうした技術をいかせばゼロベースで物件を設計し、それを具現化することができます。

極端にいえば和室だった部屋をアーリー・アメリカン風に変更するといった根本的なコンセプトの変更も可能なので、「リノベーション」の工事をするときに支持されやすいコンセプトに合わせて物件づくりができます。

2-2.新築より物件の選択肢が豊富

「リノベーション」をする対象は、中古マンション物件です。年数を経ることで劣化が進んでいたり、どこか古ぼけて見えるような物件を再生するのは「リノベーション」の出番といっても過言ではないので、「リノベーション」を活用したマンション投資では中古物件を購入することになります。

公益財団法人東日本不動産流通機構が調査、発表した2020年の「首都圏不動産流通市場の動向」によると、2020年の1年間で中古マンションは3万5,000件の成約 がありました。同年の新築マンション販売件数は2万7,228戸 だったので、その差は約1万戸です。単純に数だけを比較しても中古マンションのほうが選択肢が多いことがわかりますが、中古マンションは築年数や物件の種類、形状など千差万別なので、とても広い選択肢から選ぶことができます。

新築マンションは言うまでもなく築年数が同じですし、物件のコンセプトや種類も分譲時に人気を集めそうなコンセプトに合わせたものが多いため、どうしても似通った物件から選ぶことになります。

選択肢の広さは投資を成功させる意味でも重要なので、新築マンションよりも中古マンションのほうが成功しやすいといえます。

2-3.資産価値を一気に高められる

不動産は時間の経過とともに劣化していきます。これは避けられないことですが、「リノベーション」ではこの劣化を解消し、物件の価値を再生することができます。売りに出されている不動産物件の情報に「リノベーション」の記載があること がありますが、これは「リノベーション」をしていることによって価値が再生されていることを売りにしていることを意味します。

つまり、「リノベーション」をすることによって一度は資産価値が下がってしまった物件であってもそれを再生し、資産価値を高めることができます。

2-4.新築に比べて低コスト

中古物件を購入して「リノベーション」の工事をするのであれば、最初から新築マンションを購入した方が確実なのでは?と思われた方もいるかもしれません。しかし、中古マンションに「リノベーション」の工事をしたとしても新築マンションより安く上がるケースが大半です。

なぜなら、新築マンションには「新築プレミアム」と呼ばれる価格の上乗せがあるからです。中古マンションが市場価格で売買されているのに対して新築マンションはまだ市場流通していないため、マンションディベロッパーが売りたいと思う価格で販売されます。その価格にはマンションの建設費用だけでなく広告宣伝費なども含まれているため、どうしても割高になってしまいます。

中古マンションに「新築プレミアム」はありませんし、それに「リノベーション」の工事費用を上乗せしても新築の価格を超えることはありません。

3.「リノベーション」のデメリット

メリットの一方で、「リノベーション」のデメリットについても解説しましょう。考えられるデメリットは、3つあります。

3-1.人が住める状態になるまで時間がかかる

「リノベーション」の工事は物件の全体に及ぶことが多いため、どうしても工事の期間が長くなります。一部の修繕や「リフォーム」程度であればすぐに入居者を迎え入れられるようになるかもしれませんが、「リノベーション」の工事が長くなるとその期間は賃貸物件として稼働させることができません。

凝った「リノベーション」をするほど工事期間が長くなりがちなので、稼働できない期間があること、工事の内容が複雑になるほど工事期間が長くなることを念頭に置いて「リノベーション」の計画を立てましょう。

3-2.築年数が古すぎると耐久性に問題がある場合も

日本が地震大国であることは多くの方が認識されていると思います。それを受けて日本の建物には耐震基準が定められており、マンションを含む建物はその基準を満たすことが義務づけられています。

この耐震基準は1981年(昭和56年)に改正 されており、この年よりも前に建てられた建物は旧耐震基準に準拠しています。1981年以降の新耐震基準のほうが厳しい基準になっているため安全性が高く、中古マンション物件を選ぶときには1981年より前の建物かどうかをチェックする必要があります。

旧耐震基準だと万が一大地震が起きたときに重大なダメージを受ける可能性がありますし、入居者からも安全ではない建物と見なされてしまう可能性があるので、古すぎる物件には注意しましょう。

3-3.ローンの金利が高くなる傾向がある

不動産投資では物件の購入費用を調達するために銀行など金融機関の融資を利用するケースが大半です。「リノベーション」を活用した不動産投資でも融資の利用は可能なのですが、新築と比べると資産価値に対する評価が低くなりやすく、ローンの審査に通らなかったり、通ったとしても金利が高めになるなどのデメリットが考えられます。

4.「リノベーション」の実績が豊富な不動産会社に相談しよう

中古マンションを購入して「リノベーション」によって価値を再生し不動産投資に活用するというのは、新築マンション投資ほどシンプルな作業ではありません。それゆえにプロの知見が重要になるので、「リノベーション」に豊富な実績を有する不動産会社に相談するのが得策です。

3年以上勤めた会社員へ。
あわせて読みたいおすすめコラム