市況

オリンピック終了でも不動産市場が期待できる理由とは

不動産投資家の最大の関心事は、東京オリンピック終了後に、不動産価格が下落するのか、それともしないのかということでしょう。気の早いオーナーの中には、不動産価格下落を懸念し、高値のうちに売り抜けようと、すでに不動産を売却して利益を確定している方もいると聞きます。しかし、果たして本当にその判断と選択は正しいのでしょうか。

日本の不動産価格は上昇している

国土交通省は2018年9月18日、2018年7月1日時点での全国の地価調査の結果を公表しました。それによりますと、全国の全用途平均が1991年以来27年ぶりに、対前年比で下落から上昇に転じたそうです。つまり、東京や名古屋、大阪のような3大都市圏だけでなく、地方でも地価上昇の傾向が広がったということです。

中でも地方4市は住宅地・商業地ともに3大都市圏を上回る上昇を示したとしています。地方4市とは、札幌、仙台、広島、福岡で、なかなか興味深い結果です。国土交通省は、その背景について以下のように分析しています。

1)全国的に雇用・所得環境が改善する中で、交通利便性や住環境に優れた地域を中心に住宅需要が堅調だった
2)外国人観光客の増加による店舗・ホテル需要の高まりや再開発事業などの進展を背景に、投資需要が拡大していること

私たちがここで注目すべきなのは、2)の外国人観光客の増加と店舗・ホテル需要の高まり、再開発事業による投資需要の拡大です。

訪日外国人は増加の一途

海外から日本にやってくる外国人の数は増加の一途をたどっています。日本政府観光局が9月19日に発表した8月の訪日外国人旅行客の人数は、前年同月比4.1%増の257万8,000人で、前年8月の247万7,000人を10万1,000人も上回る過去最高の記録となりました。大阪は7月に外国人観光客から人気の高い場所です。

しかし、大きな地震や豪雨による影響で東アジアからの観光客が減少しました。それにもかかわらず、こうした結果を出しています。また、今年になってから8月までの累計が2,130万9,000人で、これまでで最も速いペースで2,000万人を超えたそうです。つまり、これまでなかったほどに、外国人がたくさん日本にやってきているというわけです。

日本経済を押し上げるインバウンド効果

そして、何よりも大切なのが、訪日外国人がもたらす、いわゆる「インバウンド効果」です。国土交通省の観光庁が発表した訪日外国人消費動向調査に基づく、「訪日外国人消費動向」の年次報告書によると、訪日外国人の旅行消費額は4兆4,162億円で、前年の3兆7,476億円に比べて17.8%の増加と2桁台の成長率となりました。

内訳をみると、宿泊料金が28.2%、飲食代が20.1%、買い物代が37.1%です。こうした訪日外国人たちを受け入れるための宿泊施設がまだ足りないとする予測も出ています。事業用不動産サービスおよび投資企業のCBREは、今後の日本におけるホテル市場の見通しを2018年7月26日に発表しました。東京のホテル市場では2020年までに、3,500室程度が不足すると指摘しています。

政府目標の訪日観光客数4,000万人を前提とすると、2016年時点の既存ストックの31%にあたる約3万室が供給されたとしても追いつかない計算です。また、すでに多くの訪日外国人が多く訪れ、宿泊施設の高稼働率が続いている札幌、名古屋、福岡では、同様に札幌18%、名古屋31%、福岡30%の供給増が予定されているものの、札幌で約3,500室、名古屋で2,100室、福岡1,400室足りなくなるだろうとしています。

オリンピック後、訪日外国人は減るのか

問題はオリンピック後もこのインバウンド効果が続くのかどうかです。みずほ総合研究所が2017年7月「インバウンドの現状と展望」を発表しました。2000年のオーストラリア大会から2012年のイギリス大会までの4大会のデータをもとに、オリンピック開催決定前のトレンドよりも、その増加傾向はさらに強まると分析しています。つまり、オリンピックが終わっても、観光客数は増え続け、インバウンド効果も高まると考えて良さそうです。

インフラの開発・整備はオリンピック後も続く

こうしたインバウンド効果が何をもたらすかといえば、インフラの開発・整備でしょう。東京ではオリンピックのために、選手村や競技施設の建設が急ピッチで進んでいます。また、試合の観戦に来た訪日外国人を受け入れる宿泊施設のみならず、空港や交通機関などの大規模なインフラ整備が進められています。品川駅と田町駅の間には、新しい駅が2020年春に開業の予定です。

また、みずほ総合研究所が7月に発表した報告書「不動産市場は転換点にあるのか」によると、過去に建てられた建設設備の老朽化による潜在的な建て替え需要が強まっている傾向です。オリンピック建設などによる現在の建設労働者不足から、それらの建て替え計画の進行が遅れています。そのため、オリンピックの建設ラッシュがピークアウトするタイミングで、建設需要が大きく変動することが是正されるだろうと指摘しています。

実際、大手町、渋谷などでは、超大型の開発が進行しており、完成は2027年度の予定です。これから10年近く工事は続きます。また、リニア中央新幹線の開通(品川〜名古屋間)も2027年を予定しています。こうしたインフラ整備や開発が不動産価格にプラスの影響を与えることは間違いありません。こう考えると、冒頭でご紹介した気の早いオーナーは利益確定のタイミングを早まったのかもしれませんね。

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