市況

オリンピックと不動産の”Win-Win”な関係

2013年9月7日、アルゼンチンで開催された国際オリンピック総会で、2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会の開催地が東京に決まりました。1964年の東京オリンピック以来、約半世紀ぶりのオリンピック開催に、多くの国民が喜びで沸いたことは、記憶に新しいと思います。その東京オリンピックまで、いよいよ1,000日を切りました。

オリンピックは単なるスポーツの祭典ではありません。開催国の政治や経済、社会にも大きな影響を与えます。開催決定後、東京の不動産価格は大きく上昇しました。この価格が開催後も維持されるかどうか、東京に不動産を持つ人たちにとっては大きな関心ごとでしょう。そこで今回は、前回の東京オリンピックや、2012年のロンドンオリピックのことなども踏まえて、どうしてオリンピックで不動産価格が上がるのか、また2020年以降の市況について予測してみました。

オリンピックで地価が上昇する理由

そもそもオリンピックで不動産価格が上昇する主な要因はインフラ開発です。選手村や競技施設の建設はもちろん、大量の観光客に備えて、空港や道路など交通機関、各種宿泊施設などの開発が行われます。実際に羽田空港や成田国際空港の年間発着枠数は増加され、首都高速中央環状線が開通、晴海地区などでは選手村(オリンピック以降は住宅地に転用)の建設が行われています。

大手町、渋谷などでは大型の開発が進行しており、品川駅と田町駅の間には、新しい駅が2020年春に開業の予定です。こうした開発の結果、都市としての利便性はさらに向上や、公共投資による景気浮揚効果で、オリンピック開催地である東京の不動産価格は上昇しています。

東京同様に、先進国の首都であるロンドンで開かれた前々回オリンピックでも、開催地周辺の不動産価格に3割程度の上昇がみられました。1964年の東京オリンピックでも、東京の不動産価格は、全国平均を大きく上回った上昇が観測されています。

オリンピックのためのインフラ開発、そうしたことの影響を狙った海外投資家からの資金流入もあり、オリンピックのための競技場や選手村が整備される豊洲や晴海などの湾岸エリアを中心に、東京の地価は大きく上昇したのです。

オリンピック終了後の地価は?

多くの人たちが、一番気になるのは、オリンピック開催後にどうなってしまうのかということでしょう。確かにロンドンオリンピックや北京オリンピックでは、オリンピックの開催に合わせて、一時的に賃料は数倍に高騰するバブル的な現象が起きた後、すぐに収縮してしまいました。

しかし、オリンピックに向けて上昇したロンドンの不動産価格自体は、開催1年前に上昇幅は縮小したものの、オリンピック終了後も取引量は減少せず、5年以上に渡り価格は上昇を続けました。そして、現在のロンドンは、世界で最も不動産価格が高い都市です。

確かにオリンピック観戦が目的の観光客の増加や、競技場や選手村関連のインフラ開発などの効果は、オリンピック終了後に無くなってしまいます。しかし、オリンピックをきっかけとしたインフラ開発による都市の価値向上や、景気浮揚効果の影響はその後も続いたと言えます。

東京の再開発のゴールは、オリンピックではありません。大手町、品川、虎ノ門、渋谷などは、利便性の高い街として生まれ変わり、さらなる価値向上を遂げることでしょう。

訪日外国人の増加がポイント

もうひとつ、オリンピックと関連して東京の不動産価格を占う上で、訪日外国人の動向が重要になります。近年の東京の不動産価格上昇は、オリンピックなどによるインフラ開発のみならず、訪日外国人の増加により、ホテル需要や商業地の収益性が高まったことにも起因しています。

2018年1月に発表された国土交通省のデータによれば、2017年の訪日外国人数は2,869万人で、これは2016年と比較すると、19.3%増加しています。また、5年前の2012年が約836万人だったことを考えると、近年の急増ぶりがうかがえます。

特に中国人、韓国人観光客の数が多く、ロシアなどからの観光客数も増えています。訪日外国人は消費意欲も旺盛で、2017年の外国人旅行者消費総額は4兆4,161億円となり、こちらも前年比で17.8%の成長です。

現在、日本政府は訪日外国人数を2020年に4,000万人、2030年に6,000万人にする目標を掲げています。東京オリンピックは国際都市としての東京の知名度をさらに上昇させ、政府目標の達成に大きく貢献するでしょう。ロンドンの例も考えると、東京の不動産市場には、まだまだ大きな期待が寄せられそうです。今後の動向に注目が集まります。

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