不動産投資

再生した中古ワンルームを活用、コワーキングスペース運営のススメ

不動産投資は「アパマン経営」という言葉があるようにアパートやマンションを経営することとイコールだと思っている人も少なくありません。しかし不動産を活用したビジネスはこれがすべてではありません。交通アクセスに恵まれた駅前などに「コワーキングスペース」と銘打ったサービスを目にすることが多くなりましたが、これも立派な不動産投資の一つです。


コワーキングとは、特定のオフィスや作業場所にこだわることなく働く場所を自由に変えながら仕事をするスタイルのことです。コワーキングスペースは、コワーキングに必要な設備とスペースを提供するサービスのことを指します。もとより働き方改革の一環でリモートワークなどコワーキングに近い働き方が推奨されており、国もその流れを加速させるための施策を打ち出しています。

その流れのなかに起きたのが「コロナ禍」です。これまでコワーキングとは無縁だったような企業や業界でもリモートワークやサテライトオフィス、さらにはコワーキングといったさまざまな働き方が模索されるようになりました。不動産投資家がこうした時代の流れにうまく乗ることができる可能性を秘めているのがコワーキングスペース運営なのです。
実際のところコワーキングスペースにどの程度の投資妙味があるのでしょうか。本記事では、コワーキングスペースに投資するメリットやデメリットを交えて解説します。

1.コワーキングスペースの需要は、なぜ増えているのか

働き方改革の進展やフリーランサーの増加により従前のような特定のオフィスに常駐するのではなく、出先や自宅などで仕事をする人が多くなっています。またITツールの発達で容易にリモートワークが可能になったことや経費削減の一環でオフィスをスモール化した結果、必要に応じて貸会議室を借りて会議や研修、勉強会や作業をする会社も増加傾向です。

こうしたスペースを提供するシェアリングエコノミーもさまざまな分野で大きな広がりを見せています。以前は、社外で会議をしたくてもなかなか適切な場所がなく喫茶店やカフェなどを利用するケースが多い傾向でした。ただこうしたオープンスペースは、騒がしくて大事な内容を話したり電話をしたりすることもできないなどさまざまな制約があったのです。

やはりビジネスには、ある程度静かで落ち着いた質の高い空間が適しています。一方、ビジネス以外でも汎用性の高いスペースへの需要が高い傾向です。SNSが発達したことで同じ趣味を持った人たちが集まるワークショップや個展、オフ会が主催されることが増えてきました。教室や習い事も固定された場所ではなく駅前の貸スペースで行えば生徒も集まりやすく便利です。

こうした時代の流れを加速させているのが新型コロナウイルスの感染拡大です。感染予防の観点から半ば強制的にリモートワークを導入した企業も多く、その動きにインフラが追い付いていない状況も見られました。

そのためコワーキングスペースには、まだまだ成長余地があるといえるでしょう。今後さらにさまざまな人たちの働き方やライフスタイルが変化することでコワーキングスペースの可能性はより一層広がると考えられます。

2.コワーキングスペース運営のメリット・デメリット

不動産投資家がコワーキングスペースを運営することによりどういったメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれに整理してみましょう。

2-1.コワーキングスペース運営のメリット3つ

  • 初期費用が安くリピーターが多い
    すでに家賃8万~10万円のワンルームマンションを借り、コワーキングスペースに必要な備品を購入して貸し出すことで成功を収めている投資家もいます。もちろんすでに所有しているワンルーム物件を活用することもできるでしょう。暗証番号やカードをかざすことで施解錠できるスマートロック、防犯カメラなど設備にかける費用は、かけようと思えばいくらでもかけることができます。

    しかし必要最低限のものに絞れば50万円程度でコワーキングスペースに必要なものをそろえることも可能です。居住用と異なり物件の築年数はあまり関係がありません。内装も殺風景では困りますがシンプルなもので十分のため、最低限のリフォームで済みます。さらにコワーキングスペースのメリットは、リピーターが期待できることでしょう。

    使う側もあちらこちらと試すよりも安くて使い勝手の良いところが見つかれば継続して利用するようになります。継続してくれるリピーターには特典をつければさらに顧客として囲い込むことが可能です。

  • 規模の小さい物件でも大きく稼げるチャンスがある
    コワーキングスペースは、オフィスや住居ではありません。誰かが常駐をしたり生活をしたりするわけではないため、ワンルームマンションなど規模の小さな物件でも十分「使えるスペース」にすることができます。しかもワンルームマンションは、そもそも生活のスペースとして建てられているため静粛性にも優れているのが特徴です。

    そのためノマドワークだけでなく勉強や創作活動などに利用するニーズも期待できるでしょう。ワンルームマンションとして提供すると入居者は一人のため、収入源は最大でも一人です。しかしコワーキングスペースの場合は、大勢の人が利用するため、収入を拡大するチャンスが格段に広がります。

  • さまざまなプラン、サービスで差別化しやすい
    一般的にコワーキングスペースの料金体系は「ドロップイン」と「月額制」の2本立てになっています。ドロップインとは、会員資格がなくてもスポット的に利用できる料金プランで、おおむね最初の1~2時間が500円程度というのが相場です。ドロップインで1日利用をする場合は、1,500円前後となります。

    もう一つの月額制は、文字通り月額料金の会員システムで毎月2,000~1万円程度と提供企業によって利用料金に幅がある傾向です。料金の差は、利用できる時間帯の違いなどによって細かく決められているため、不動産オーナーが自由に設定することができます。もちろん「同じ料金プランでなければならない」という決まりはありません。

    料金プランは設備、提供サービスなどによっても変化するため、差別化しやすいことも大きなメリットです。

2-2.コワーキングスペース運営のデメリット3つ

コワーキングスペース運営は、メリットだけでなく以下のような3つのデメリットもあります。

  • 物件探しと収入が限定的な点が課題
    ビジネス用途や趣味の集まりのためのスペースであっても少々物件探しが難しいのがネックです。居住用の物件よりもはるかに立地が重要で立地条件に恵まれていないワンルームマンションだとコワーキングスペースとしての集客力が劣る可能性も出てくるでしょう。また居住用としては、防犯のためにオートロックが必須です。

    しかしコワーキングスペースでは、利用者の利便性を考えるとオートロックではないほうがむしろ便利なため、居住用とは異なる視点が求められます。区分所有の居住用マンションをコワーキングスペースとして利用する場合は、管理規約の確認も必要です。利用目的の内容次第で各種届出が必要になる場合もあります。

    収入面では、時間単位で貸し出すことが居住用と大きく異なる点です。居住用は、月単位なので毎月決まった金額が収入となりますが時間単位で貸し出すとどうしても細切れになってしまい日によって収入額にばらつきが出る可能性があります。例えば1室1時間500円で貸し出した場合、1日に3~4件、2時間程度の利用だと1日の収益は1万円を満たせないでしょう。

    経費などを差し引いた1ヵ月の利益は10万~20万円程度ではないでしょうか。またコワーキングスペースやフリースペースは不動産投資というよりもサービス業に近いイメージです。工夫次第で手間や経費を省ける余地はありますが、住居用とは収益を上げるためのポイントも異なります。しかしノウハウをしっかりと身につければ高利回りで運用することも期待できるでしょう。

    特に市場調査や潜在ニーズの把握がコワーキングスペース運営で利益を上げる重要な鍵を握っています。

  • 収益が安定するまでに時間がかかる
    ワンルームマンションであれば「そのマンションに住みたい」と思う人が見つかればその瞬間から稼働させることができます。1戸単位の区分所有であれば入居者を一人見つけられれば稼働率は100%です。しかし不特定多数の人を顧客とするコワーキングスペースの場合、開業してすぐに多くの人が利用してくれるかは分かりません。

    集客するためには、コワーキングスペースとして営業していることを広く宣伝したり市場調査をしたうえで的確な料金設定などのマーケティングをする必要があります。コワーキングスペースは、リピーターがついてはじめて収入が安定するビジネスのため、投資家にとってはワンルームマンション経営よりも軌道に乗るまでの経営努力がより大きな負担になるかもしれません。

  • 入居者の選定に注意が必要
    不特定多数の人が利用するコワーキングスペースは、善意でそのスペースを利用する人だけでなく「招かれざる客」が利用する可能性も否めません。多くのコワーキングスペースでは、バーチャルオフィスといってコワーキングスペースが所在する住所を貸し出すサービスを提供しています。本来は、支店の準備段階にある企業が連絡先として使用したり、ビジネスで自宅以外の住所を使うために使用したりするものです。

    しかし犯罪やそれに近い行為に使用される可能性は否定できないため、コワーキングスペースの入居者はしっかりと審査したうえで選定する必要があります。

3.中古ワンルームを活用してコワーキングスペース運営

この記事では、不動産投資の新たな選択肢としてコワーキングスペース運営の提案をしてきました。コワーキングスペース運営に最も適しているのは、中古のワンルーム物件です。中古物件は新築よりも価格が安いため購入しやすく、その分リノベーションに予算をかけて物件を再生することで付加価値をつけやすくなり、この点は大きなメリットとなります。

先述したように住居ではないため築年数はあまり問題になりません。それよりも立地条件や室内のコワーキングスペースとしての使いやすさが重視されます。そのため立地条件に恵まれた中古ワンルーム物件を購入しリノベーションによってコワーキングスペースに再生することは、非常に現実味のあるビジネスといえるのではないでしょうか。

3年以上勤めた会社員へ。
あわせて読みたいおすすめコラム