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購入する物件の防犯対策は万全ですか?「防犯優良マンション認定制度」とは

空き巣や独り暮らしの女性を狙った犯罪が後を絶ちません。原状回復のことを考えると、賃貸マンションでは、入居者が防犯設備を取り付けたり、複製しにくい鍵に交換したりすることが難しい傾向です。そのため、あらかじめ万全な防犯対策が備わった物件であることが、他物件との差別化のうえで有効といえます。そこで、防犯性に優れたマンションを認定する公的制度がありますので、参考にしてみましょう。今回は不動産投資家の方に向けて「防犯優良マンション認定制度」について解説します。

知らない人に入られただけで不快

2017年7月に警察庁が発表した「平成28年の犯罪情勢」によると、空き巣・忍込み・居空きの認知件数は2007年から減少傾向です。2016年の認知件数は、空き巣が約2万7,000件、忍込み約1万件、居空きは約2,000件であわせると約3万9,000件になります。1日あたりとして計算すると毎日107件も住居侵入が発生していることになるのです。

その手口もかつてのピッキングやサムターン回しなどによる侵入だけにとどまりません。ドライバーを使って窓ガラスにひびを入れて音を出さずに割ったり、バーナーで熱した後に水をかけて割ったりなど巧妙化しています。また、マンションの屋上からベランダを経由して侵入する事件も発生しており、高層階に住んでいるからといって、住居侵入リスクがないというわけではありません。

犯人と入居者が鉢合わせしてしまうと、傷害事件が起きたり、最悪、殺人事件にまで発展したりすることもあります。たとえ、無傷で済んだとしても、留守中に他人が侵入したとなれば、非常に不快な思いをしますし、引っ越しを考える人も出てくるでしょう。

対策が講じられた「防犯優良マンション」がある

住宅侵入の防犯対策として、オートロックやダブルロック、防犯カメラ設置など、手立てを講じるオーナーが増えてきました。しかし、防犯対策をより確実なものにするためにも、専門家にチェックしてもらうのが安心といえます。

こうした需要へ応えるために用意された公的認定制度が、「防犯優良マンション認定制度」です。公益財団法人日本防犯設備協会などの3法人が、警察庁と国土交通省の指導を受けて作成した認定基準をクリアしたマンションに対して、「お墨付き」を与えます。認定されたマンションは、認定機関(各都道府県の住宅関係公益法人など)のウェブサイトで公表され、認定マークやプレートを表示することができるのです。

防犯優良マンションは22都道府県にとどまるので確認が必要

認定基準は、共用部分で11ヵ所40項目、専用部分で4ヵ所8項目あります。このほか、都道府県によって付け加えても良い基準が共用部分に9項目、専用部分に4項目です。例としては以下のようなものがあります。

〈共用部分〉
・共用玄関は、道路およびこれに準ずる通路からの見通しが確保された位置に配置されていること
・共用玄関には、オートロックシステムを備えた玄関扉およびその玄関扉を通過する人物を写す防犯カメラが設置されていること
・エレベーターかご内には、防犯カメラが設置されていること
・共用廊下および共用階段の照明設備は、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、床面において20ルクス以上の平均水平面照度が確保されていること
・共用廊下および共用階段は、乗り越え等による侵入が困難な構造となっていること
・防犯カメラを設置する部分の照明設備は、当該防犯カメラが有効に機能するため必要となる照度が確保されていること

〈専用部分〉
・住戸の玄関扉は、外部の様子を見通すことが可能なドアスコープ等が設置されているともに、錠の機能を補完するドアチェーンまたはドアガードが設置されていること
・住戸内には、住戸玄関の外側との間で通話が可能な機能等を有するインターホンまたはドアホンが設置されていること
・バルコニー等に面する住戸の窓のうち侵入が想定される階に存するものは、防犯建物部品等のサッシおよびガラスその他の建具が設置されていること
・住戸のバルコニーは、縦樋、階段の手摺等を利用した侵入が困難な位置に配置すること

これらの基準をクリアしていると防犯優良マンションとして認定してもらえます。

防犯優良マンション制度導入自治体は全国で24

なお、2017年3月時点で、この認定制度を導入している都道府県は全国で24です。購入予定の物件がある自治体が実施しているかどうかは、ご自身での確認が必要になります。それぞれの認定項目を見てみると、「それほど特別なことは求めていない」というのが正直な印象です。投資用マンションを購入する際、防犯優良認定マンションを選べば、少なくとも、防犯対策の最低基準はクリアできているということになるでしょう。

結果として、防犯設備について、ご自身であれこれチェックしなくてもよいということはメリットです。セキュリティー設備に対する入居者の関心は高い傾向といえます。賃貸物件といえどもオートロックや防犯カメラの設置のみならず、カメラ機能の付いたインターホンを求める入居者も増えているのです。防犯優良マンションであれば、他物件との大きな差別要因になるでしょう。入居者から一目置かれる不動産オーナーを目指すのであれば、一度「防犯優良マンション認定制度」を検討してみてはいかがでしょうか。

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