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退職金を運用しないことがリスクになる理由とおすすめの運用方法5選

サラリーマンなど給与所得者として働いている多くの方にとって、退職金は生涯で最後かつ最大の一時収入になるかもしれません。それだけに、しっかりと運用して老後資金の足しにしたいと考える方は多いでしょう。

日本人の平均寿命は年々延びており、国が発表した2021年のデータを見ても男女ともに80歳を優に超えています。長寿は喜ばしいことですが、老後資金の観点では長生きが資金のひっ迫を招き、リスクになることもあります。老後破産という言葉が脳裏によぎる人も少なくないと思いますが、そうならないためにも退職金は適切に運用して豊かな老後生活を送りたいものです。

本記事では退職金の運用について、その必要性や具体的な運用方法、注意点などについて解説します。

退職金を運用しないことがリスクになる理由とおすすめの運用方法5選

1.退職金の使い道のトップは貯金

「ダイヤモンド・ザイ」の2020年1月号に掲載された退職金の使い道に関する調査結果によると、退職金の使い道として1位になったのは「貯蓄」でした。2位以下は「生活費の取り崩し」「株や投信などで運用」と続きます。

ここで注目したいのは、「貯蓄」と回答した人がとても多く、2位以下を大きく引き離していることです。「貯蓄」というのは言い方を変えると、運用をせずに現金のままで持っておくということです。2位にランクインしている生活費の取り崩しも意味合いは似ていて、退職金を貯蓄に回した人はその後貯蓄している退職金を取り崩して老後資金に充てることを想定しているものと思われます。

退職金を受け取った直後であれば貯蓄にそれほど大きな問題はありませんが、問題になるのは長生きをして老後の期間が延びた場合です。取り崩しだといつか資金が枯渇してしまうので、それ以上に長生きをした場合はお金に困る老後生活を余儀なくされることになります。それを回避するために重要なのが、退職金の運用又は、現役世代中に退職金の運用準備です。

参考:ザイ・オンライン

退職金の使い道のトップは貯金

2.退職金を運用すべき理由

まとまった金額の退職金を貯蓄に回しても、お金はほとんど増えません。老後生活が始まるとそのお金を取り崩して生活費に充てる可能性が高いわけですが、それだといつか退職金が底をついてしまいます。そのほかにも、退職金を運用すべき理由には以下のようなものがあります。

2-1.退職金が想定より少ない可能性もある

予定通り退職金をもらえたとしても、想定していたより金額が低い可能性も十分に考えられます。必ず想定通りの金額をもらえる保証はないことも、心得ておきましょう。このような場合は、特に退職金の運用が重要になります。

なお、サラリーマンとして定年退職まで勤め上げれば、誰でも退職金を受け取れるわけではないというのも忘れてはいけません。特に従業員数が100名以下の中小企業の場合は、退職金制度がないケースが見受けられます。

2-2.日本人の平均寿命は延び続けている

退職金への不安要素が複数ある一方で、日本人の平均寿命は延び続けています。厚生労働省が発表した資料「主な年齢の平均余命の年次推移」によると、2021年の日本人の平均寿命は、男性81.47歳、女性87.57歳です。2000年は男性が77.72歳、女性が84.60歳だったので、21世紀に入ってからも大幅に延びていることが分かります。

先ほども述べたように、寿命が延びることは老後資金の増大につながります。貯蓄による備えだけだといつか資金が底をつく時がくるでしょう。運用益だけで元本を減らさずに老後資金をまかなえることは理想ですが、それが無理でも運用によって資産寿命を延ばすことができれば、長生きがリスクではなくなります。

3.退職金の運用方法5選

退職金を運用する必要性を感じていただいた上で、次に「それならどうやって運用するべき?」という疑問にお答えしたいと思います。ここでは退職金の運用に適していると考えられる運用方法を5つ厳選して紹介します。

3-1.個人向け国債

国債とは、国が発行する借金の証文です。指定の期日に元本と利息が償還(返済)されるため、利息分が運用益になります。日本では個人向けに国債が販売されており、銀行や郵便局、証券会社などで手軽に購入することができます。

1万円から購入可能であることや元本保証であることなど、失敗が許されない退職金の運用に適したスペックだといえます。ただし、金利は実質的に0.05%なので、仮に1,000万円分を購入しても年換算の利息は税抜きで5,000円です。

「増やす」という観点では力不足が否めないので、使う時期が決まっているお金を安全に保管しつつ若干の利息を得るという用途に適しています。

3-2.投資信託

投資信託は、投資家から集めたお金を専門家であるファンドマネージャーが運用し、投資家は運用益や分配金を手にすることができる投資商品です。株式や債券、不動産などさまざまなものを運用対象としており、多彩な銘柄のラインナップがあります。

分散投資といって、投資では運用対象を分散することはリスク管理の基本とされています。投資信託はそれぞれの銘柄1本だけでも複数の運用対象を組み合わせているので、銘柄によっては高い分散効果があります。

例えば、日経平均株価などの株価指数と連動するように運用されている投資信託の場合、その株価指数の構成銘柄全部に分散しているのと同じ効果が得られるため、比較的安全に退職金を運用することができます。

3-3.株式投資

ひと口に株式投資といっても、いくつかの投資スタンスがあります。退職金の運用では短期売買で利益を狙うスタンスではなく、配当利回りが安定している銘柄を長期保有するなど、安定型の運用が適しています。

例えば、大手生活用品メーカーの花王は2021年時点で32期連続の増配(配当を増やすこと)を継続しており、日本一の連続増配年数です。こうした配当性向の高い株式を保有しておくことで、配当収入を老後資金に充てることができます。

3-4.ファンドラップ

ファンドラップとは、銀行や証券会社などの金融機関に資産運用を一任するサービスのことです。投資家に代わってプロが運用するという点では投資信託と似ていますが、投資信託はあらかじめ設定された運用方針に沿って運用されているものを投資家が選ぶため、あくまでも投資判断は投資家本人が行います。

それに対してファンドラップは投資家の意向に沿って運用方針を構築し、後は金融機関が投資判断を行いながら資産を運用します。退職金の運用であることを伝えて運用を依頼すると、それにふさわしい形の運用方針を構築してくれるので、投資に関することはプロに一任したいという場合に適しています。

3-5.不動産投資

アパートやマンションなどの収益物件を所有し、家賃収入や物件価格の値上がり益を狙うのが不動産投資です。収益物件という現物を所有する投資なので比較的リスクが低く、退職金のようにまとまった資金の運用方法としては有効な選択肢です。また現役世代中にローンを組んで不動産投資を開始し、退職までの間は家賃収入でそのローンを少しずつ減らす。退職金が入った時に、完済・一部繰上げに活用(運用)することでできるだけ自己負担を減らしながら家賃収入を得ることができます。

ただし、不動産投資であれば何でもよいわけではありません。入居者が安定的に付く集客力のある物件を選ぶ必要がありますし、適切な管理を行うことで収益を安定化させるノウハウが必要になります。初心者がいきなり自分の判断で物件を選ぶのはリスクが高いので、収益物件に強い不動産会社を見つけてプロの知見を借りながら進めることをおすすめします。

不動産投資

4.退職金を運用する際の注意点

退職金を運用するにあたっては、以下の注意点もしっかり留意しておく必要があります。他の資金とは性格が異なるため、無理な運用をして資産を大幅に減らしてしまうことがないよう、しっかりと押さえておいてください。

4-1.主目的は資産寿命の延長

退職金を含む老後の資産運用では、元本を減らすことなく運用益だけで生活費をまかなえるのが理想です。しかしそれを実現するには億単位の元本が必要になることもあるため、すべての人に現実味がある話ではありません。

そこで持つべき視点は、資産寿命の延命です。退職金を含む資産が2,000万円あるとして、公的年金だけでは毎月の生活に10万円不足しているとします。毎月10万円ずつ取り崩すことになるので、運用しなければ16年8ヵ月で底をつきます。しかし、年利4%で運用すれば27年1ヵ月に延長されるため、資産寿命が11年ほど延長されたことになります。

老後期間が何年になるかは誰にも分かりませんが、豊かで安心できる老後生活を送るためにも、資産寿命をいかに長くするかを意識しましょう。

4-2.リスクの高い運用は避ける

運用利回りを高くすることは資産寿命を延ばすのに有効ですが、だからといってリスクの高い運用はおすすめできません。退職金ほどの収入が今後何度もある人であれば失敗できる余地がありますが、そうではない場合は虎の子の退職金を高すぎるリスクにさらすわけにはいきません。

先ほど紹介した退職金の運用方法5選に、FXや仮想通貨などは登場していません。それはハイリターンが期待できる一方でハイリスクだからです。「増やす」という視点よりも資産寿命を「延ばす」ことが重要なので、過度なリスクは避けて退職金の大半を失ってしまうようなことがないようにしましょう。

5.適切な運用で資産寿命はどんどん延ばせる

本文中で何度も資産寿命という言葉を用いてきました。退職金を含む老後資金の運用では最も重要な視点だからです。

公的年金だけで老後資金をまかなえると考えている人は少数でしょう。それならば、まとまった金額の退職金が見込まれる場合はそれを運用することで資産寿命を延ばし、豊かな老後を迎えていただきたいと思います。

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