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公務員が不動産投資を行うためのガイド:副業規制、メリット、リスク対策を徹底解説

「公務員だから副業はできない」といわれますが、実は、公務員でも一定の条件を満たせば不動産投資ができます。公務員という安定した属性を活かし、将来のための資産形成を目指す人も増えています。

この記事では、公務員が不動産投資を行う上でのルールや、公務員ならではのメリット、そして失敗しないためのリスク管理術まで、幅広く解説します。ぜひ、賢い資産形成の第一歩としてご活用ください。

副業禁止の公務員でも不動産投資はできる!むしろ始めるべき2つの理由

目次

1.公務員の不動産投資が「副業」と見なされないための3つの絶対条件

公務員が不動産投資を行う際、国家公務員法や地方公務員法に基づく副業規制に抵触しないためには、以下の3つの条件を厳守する必要があります。これらの条件は、本業である公務に支障をきたさず、公務員としての信用を損なわないためのものです。

不動産投資が「副業」と見なされないための3つの条件

1-1.条件①:不動産の規模は「5棟10室未満」に収めること

国家公務員の場合、人事院規則によって「事業的規模」と見なされる不動産投資の基準が定められています。独立家屋(戸建て)であれば5棟未満、区分所有(マンションやアパートの一室)であれば10室未満が目安とされています。

具体的には、戸建て物件なら4棟まで、ワンルームマンションなら9室までの運用が認められます。

また注意が必要なのは、区分所有の物件は2室を独立家屋の1棟として計算するため、戸建てと区分所有が合計して5棟未満に収めなければいけないことです。

地方公務員の場合も原則として人事院規則を基準としますが、各地方自治体によって独自の副業禁止規定や判断基準を設けている場合があるため、必ず所属部署や担当部署に確認を取りましょう。

1-2.条件②:年間の家賃収入を「500万円未満」に抑えること

物件数だけでなく、年間の家賃収入も重要な判断基準で、家賃収入の合計が年間500万円を超えると、副業と見なされる可能性が高まります。この500万円という基準は、経費などを控除する前の「総収入額」で判断されますので注意が必要です。

たとえば、月額6万円の区分マンションを運用する場合、7室を所有すると年間収入が504万円となり、この基準を超えてしまうため、6室以内にとどめる必要があります。駐車場の賃貸収入もこの500万円に含まれるため、収益計算時にはすべて含めて確認しましょう。

1-3.条件③:管理業務は専門業者に委託すること

公務員は職務専念義務があるため、不動産投資に関連する管理業務を自身で行うことは原則として認められていません。入居者募集、家賃回収、建物の修繕・清掃、入居者からの問い合わせ対応といった管理業務は、外部の専門業者に委託することが必須条件です。

これにより、本業である公務に支障が出ることなく、安定した不動産経営を行うことが可能になります。信頼できる管理会社の選定が、公務員の不動産投資成功の鍵となります。

公務員の不動産投資と副業規制

2.そもそもなぜ公務員の副業は禁止され、不動産投資は例外的に認められるのか

公務員の副業が法律で禁止されているのは、公務の公正性や信頼性を保つためです。しかし、不動産投資は特定の条件下で認められています。その背景には、他の副業とは異なる不動産投資の特性と、法律の解釈があります。

2-1.公務員の副業が法律で禁止されている理由(3つの服務原則)

国家公務員法や地方公務員法では、公務員の副業(兼業)が原則として禁止されています。これは、以下の3つの服務原則を守るためです。

  • 信用失墜行為の禁止:職務の公正性を疑われるような行為や、公務員全体の信用を損なう行為を禁じます。
  • 守秘義務:職務上知り得た秘密を漏らさない義務です。副業によって利害関係が生じ、秘密が漏洩するリスクを避ける目的があります。
  • 職務専念の義務:公務員は、勤務時間中に職務に専念する義務があります。副業によって職務に支障が出ないようにするためです。

2-2.株式投資などが「資産運用」として原則許可される理由

株式投資やFXなどの資産運用は、一般的に公務員の副業禁止規定に抵触しないとされています。これは、これらの活動が「労働を伴わない投資」であり、本業の職務遂行に直接的な影響を与えにくいと判断されるためです。公務員であっても、将来の資産形成のための自己努力は認められています。

2-3.不動産投資にだけ明確な「事業的規模」の基準がある背景

不動産投資は、株式投資などとは異なり、賃貸経営という「事業」の側面を持つことがあります。しかし、親からの相続や転勤中の自宅貸し出しなど、やむを得ない事情で賃貸経営を行うケースも少なくありません。

そのため、一律に禁止するのではなく、賃貸経営の規模が小さく、本業に支障を与えない範囲であれば認められるよう、明確な「事業的規模」の基準が設けられています。これは、公務員の財産権を保障しつつ、公務の適正な運営を両立させるための配慮と言えます。

3.不動産投資が公務員に「向いている」と言われる理由。見逃せない3つの強み

公務員が不動産投資に向いていると言われるのには、その安定した社会的属性が大きく関係しています。

3-1.強み①:社会的信用力による「有利な融資条件」の獲得

不動産投資では、物件購入にローンを利用することが一般的です。公務員は身分が安定しており、定期的な収入が保証されているため、金融機関からの信用力が非常に高いと評価されます。この高い信用力によって、以下のような有利な融資条件を引き出しやすいという大きな強みがあります。

  • 低金利:返済能力が高いと見なされるため、民間企業勤務者と比較して低金利でローンを組める可能性が高まります。
  • 高融資額:安定した収入が評価され、より高額の融資を受けやすい傾向にあります。
  • 長期の融資期間:長期間にわたる返済計画が立てやすいため、月々の返済負担を軽減できます。
  • フルローン・オーバーローンも可能:頭金なしのフルローンや、諸費用まで含めたオーバーローンを組めるケースもあります。これにより、手元資金を温存しながら投資を始められます。

とはいえ、公務員だからといって無条件に常に最高の融資条件が得られるわけではありません。金融機関の審査基準は多岐にわたり、個人の年収、勤続年数、金融資産、これまでの借入履歴、さらには購入する物件の収益性や担保評価なども総合的に判断されます。

また、近年は不動産投資への融資姿勢が慎重になっている金融機関も増えており、以前ほど「公務員=超優遇」という図式が当てはまらないケースもあります。複数の金融機関に相談し、ご自身の状況に合った最適な条件を見極めることが重要です。

3-2.強み②:安定収入による「盤石な返済計画とリスク耐性」

公務員は景気変動に左右されにくい安定した給与収入があるため、不動産投資の運用中においてもその安定性が大きなセーフティーネットとなります。

  • 空室や急な出費への対応力:もし一時的に空室が発生したり、予期せぬ修繕費が必要になったりしても、本業の給与収入でカバーできるため、破たんのリスクが低めと考えられます。
  • 返済計画の安定性:安定収入があることで、無理のない返済計画を立てやすく、長期にわたるローン返済を確実に進められます。

3-3.強み③:退職金や年金制度が充実しており、長期的な資金計画を立てやすい

公務員は、民間企業と比較して退職金制度や年金制度が充実しているという特徴があります。これにより、将来の資金計画を非常に立てやすくなります。

  • 長期投資との相性:不動産投資は一般的に長期的な視点で行うことで真価を発揮します。公務員は定年までのキャリアプランが見通しやすいため、不動産投資と組み合わせることで、より確実な老後資金の形成や資産形成が可能になります。
  • 金融機関からの評価:退職金や年金という確実な将来の資金計画は、金融機関が融資を判断する際のプラス材料となり、さらに有利な条件を引き出すことにつながります。

4.【実践ガイド】公務員がルールを守って不動産投資を始める8ステップ

公務員が不動産投資を始めるには、一般的な投資家とは異なる注意点があります。以下のステップを踏むことで、ルールを遵守し、安全かつ確実に投資を進めることができます。

4-1.ステップ1: 目的設定と学習:なぜ投資するのかを明確にし、基礎知識を学ぶ

まず、なぜ不動産投資を始めるのか、その目的を明確にしましょう(例:老後資金の確保、資産形成、節税など)。また、家族の理解を得ることも重要です。その上で、不動産投資の基礎知識、特に公務員に関する法規制や基準を徹底的に学習することが不可欠です。

4-2.ステップ2: 資金計画と融資相談:自己資金を把握し、金融機関に相談する

自己資金がどの程度用意できるのかを把握し、無理のない資金計画を立てましょう。公務員は属性が高いため融資に有利ですが、だからといって無計画な借入は禁物です。複数の金融機関に事前に相談し、自身の属性でどのような融資条件が得られるのかを確認することが重要です。

4-3.ステップ3: パートナー選定:公務員の実績が豊富な不動産会社を見つける

信頼できる不動産会社の選定は、不動産投資成功の重要な要素です。特に公務員の不動産投資実績が豊富で、公務員の法規制に詳しい会社を選ぶと安心です。複数社を比較検討し、管理体制やサポート体制なども含めて総合的に判断しましょう。

4-4.ステップ4: 物件選定と調査:「5棟10室未満」のルール内で物件を厳選する

設定した目的と資金計画に基づき、収益性が見込める物件を選定します。この際、必ず「5棟10室未満」という規模のルールを厳守できる物件を選びましょう。現地調査を綿密に行い、立地、築年数、建物の状態、賃貸需要などを多角的に評価することが成功への鍵です。

4-5.ステップ5: 【重要】職場への報告・申請手続きの要否を確認する

所属する省庁や自治体の服務規程を改めて確認しましょう。自身の投資規模や家賃収入が見込みの範囲内であれば原則として許可は要りませんが、不明な点があれば、この段階で担当部署(人事課など)に相談し、「自営兼業承認申請書」などの提出が必要かどうかを判断します。無許可での投資は懲戒処分の対象となる可能性があるため、必ず確認を怠らないでください。

4-6.ステップ6: 契約と融資実行:売買契約とローン契約を進める

物件が決まり、融資の目処が立ったら、売買契約とローン契約を進めます。ローンは事前審査、本審査を経て、金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。売買契約時には、ローン特約など、万が一の事態に備えた特約の確認も重要です。

4-7.ステップ7:不動産会社との関係値構築:長期的なパートナーシップを築く

物件の契約が無事に完了したら、購入をサポートしてくれた不動産会社や、これから管理を委託する管理会社との関係値をさらに深めていきましょう。

不動産投資は長期にわたる事業であり、信頼できるパートナーの存在が成功を左右します。定期的に連絡を取り、市場の動向や物件の状況について情報交換を行うことで、より良い関係を築くことができます。これにより、将来的な物件の買い増しや売却、あるいはトラブル発生時にも、迅速かつ的確なサポートを受けやすくなります。

単なる顧客と業者という関係にとどまらず、共通の目標を持つビジネスパートナーとして、互いに協力し合える関係を構築することが重要です。

4-8.ステップ8: 運営開始:管理会社への委託と確定申告の準備

物件の引き渡しが完了したら、いよいよ賃貸経営のスタートです。事前に選定した信頼できる管理会社と委託契約を締結し、管理業務を一任します。また、不動産所得が発生した場合は、原則として確定申告が必要となりますので、早めに税理士に相談するなどして準備を進めましょう。

5.公務員が不動産投資で失敗しないための4つのリスク管理術

公務員が不動産投資で成功するためには、リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。

5-1.服務規程の確認と、職場への誠実な対応

最も重要なのが、所属する職場の服務規程やコンプライアンス・マニュアルを徹底的に確認することです。もし不明な点があれば、必ず上長や人事担当部署に相談し、ルールを遵守した上で投資を行う姿勢が求められます。無許可で規模を拡大したり、報告を怠ったりすると、減給や懲戒免職といった重い処分を受ける可能性があります。

5-2.時間的制約のリスク:異動・転勤・多忙期に備える

公務員は異動や転勤が多く、職務が多忙になる時期もあります。不動産投資は管理会社に委託することで本業への影響を最小限に抑えられますが、それでもオーナーとしての確認事項や判断が必要になる場面はあります。信頼できる管理会社との密な連携を保ち、トラブル発生時にも迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。

5-3.規模拡大のリスク:相続等で「5棟10室」を超えた場合の対処法

不動産投資を進める中で、相続などによって意図せず「5棟10室」の基準を超えてしまうケースも考えられます。このような場合は、速やかに以下のいずれかの対策を検討する必要があります。

  • 物件の一部売却:規模を基準内に収めるために、一部の物件を売却します。
  • 法人化:投資規模が大きくなり、事業的規模と見なされる場合は、不動産管理法人などを設立し、法人として経営を行うことを検討します。ただし、法人化には税務や法務の専門知識が必要となるため、専門家への相談が必須です。
  • 職場への申告:やむを得ない事情で基準を超える場合でも、許可が得られるケースもあるため、まずは勤務先に誠実に申告し、指示を仰ぎましょう。

5-4.「慢心」のリスク:融資に有利という立場を過信しない

公務員は金融機関からの融資に有利な立場にありますが、その立場を過信しすぎると失敗につながる可能性があります。

  • 業者任せにしない:不動産会社の提案を鵜呑みにせず、自身でも物件の調査や収支シミュレーションを綿密に行うことが重要です。
  • 高値づかみや空室リスク:立地が悪く賃貸需要の低い物件を高値で購入してしまうと、空室が発生し家賃収入が減少、最悪の場合ローン返済が困難になることもあります。常にシビアな経営意識を持ち、慎重に物件を選定しましょう。

6.公務員の強みを活かし、ルールを守って賢く不動産投資を始めよう

公務員が不動産投資を行うことは、適切な知識と準備があれば十分に可能です。安定した属性という大きな強みを活かし、有利な条件で融資を受けられる点は、公務員ならではのメリットと言えるでしょう。

しかし、副業規制という特殊なルールがあるため、「5棟10室未満」「年間収入500万円未満」「管理業務の委託」といった条件を厳守することが非常に重要です。また、所属する組織の服務規程を事前に確認し、必要に応じて職場への報告や申請手続きを怠らないようにしてください。

解説した実践ガイドやリスク管理術を参考に、公務員という立場を最大限に活かし、賢く不動産投資を始めて、将来のための盤石な資産形成を目指しましょう。

7.【Q&A】公務員の不動産投資に関するよくある疑問と回答

Q1.結局のところ、不動産投資は副業として許可されるのですか?

公務員の副業は原則として禁止されていますが、不動産投資は一定の条件(規模5棟10室未満、年間家賃収入500万円未満、管理業務の外部委託)を満たせば、副業と見なされずに認められます。

ただし、地方公務員の場合は各自治体によって独自の規定がある可能性があるので、必ず所属部署に確認しましょう。

Q2.規模や収入がルールを超えそうになったら、どうすればいいですか?

意図せず規模(5棟10室)や収入(年間500万円)のルールを超えてしまいそうな場合は、速やかに以下のいずれかの対策を検討してください。

  • 物件の一部売却
  • 法人化の検討
  • 所属部署への相談と申請手続きの確認

ルールを超えてしまうと、懲戒処分の対象となる可能性があるため、注意が必要です。

Q3.不動産所得の「確定申告」は必ず必要ですか?

公務員は年末調整があるため、原則として確定申告は不要ですが、不動産投資による家賃収入(経費を差し引いた不動産所得)が年間20万円を超えた場合は、確定申告が必須となります。

不動産所得で赤字が出た場合、給与所得と損益通算することで所得税・住民税の還付を受けられるメリットもありますので、税理士に相談することをおすすめします。

Q4.共済組合から融資を受けることはできますか?

共済組合によっては、組合員向けの住宅ローンや教育ローンなどの制度はありますが、不動産投資を目的としたローンは一般的に提供していません。

不動産投資ローンは、民間の金融機関(銀行、信用金庫など)を利用することになります。公務員の高い信用力を活かし、複数の金融機関を比較検討することをおすすめします。

Q5. 公務員の夫(または妻)の扶養に入っていますが、不動産投資はできますか?

公務員の配偶者の扶養に入っている場合でも不動産投資自体は可能です。ただし、不動産所得(収入から経費を引いた金額)が一定額を超えると、扶養から外れる可能性があります。

税金や社会保険料の扶養控除に影響が出るため、事前に税理士に相談し、慎重に計画を立てることが重要です。

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