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資産形成
実物資産とは?種類一覧とメリット・デメリット、初心者向けの始め方を解説
将来に備えた資産運用の重要性が高まる一方で、物価上昇によって資産の実質的な価値が目減りしてしまうリスクも無視できません。こうした状況の中で、インフレに強い特性を持ち、資産を守りながら増やすことが期待できる「実物資産」への投資が、有力な選択肢として注目されています。
本記事では、「実物資産とは何か」という基本的な考え方から、不動産や金など代表的な資産の種類、さらに実物資産ならではのメリット・デメリットまでを網羅的に解説します。
目次
1.実物資産とは?金融資産との違い
資産運用を考える上で、まず「実物資産」と「金融資産」の違いを正しく理解することが大切です。両者の性質を押さえることで、自分に合った運用スタイルを見極めやすくなります。
1-1.実物資産の定義:「モノ」そのものに価値がある資産
実物資産とは、文字通り「実体のあるモノ」であり、それ自体に価値が認められる資産を指します。代表的な例には、住むことや貸すことができる土地・建物(不動産)、宝飾品や工業用途としての価値を持つ金(ゴールド)、希少価値のある美術品などがあります。
これらの資産は物理的な存在として価値を持ち、私たちの生活や経済活動の中で実際に使用されたり、保有されたりする点が特徴です。
1-2.金融資産との決定的な違い:仕組みとリスクの構造
株式や債券、投資信託などの「金融資産」と、不動産や金といった「実物資産」とでは、価値の成り立ちやリスクの性質が大きく異なります。
1-2-1.金融資産
金融資産は、企業や国が発行する証券などを通じて利益を得る仕組みです。例えば、株式は企業の業績や成長性、国債は国の財政状況や信用度に応じて価格が変動します。そのため、発行主体の信用が損なわれれば、大幅に価格が下落したり、最悪の場合は無価値になったりするリスクがあります。
1-2-2.実物資産
一方、実物資産はモノそのものに価値があり、その需要と供給によって価格が決まります。例えば、土地を求める人が増えれば地価が上がり、金の供給が限られれば価格が上昇します。特定の企業や国に依存しないため、倒産や財政危機といった信用リスクの影響を受けにくいという特徴があります。
1-3.実物資産が注目されている理由。背景にある3つの要因
実物資産が資産運用の選択肢として注目されている背景には、次の3つの要因があります。
1-3-1.世界的なインフレ懸念
アメリカや欧州に加えて日本でも物価上昇が続いており、インフレは国際的な経済課題となっています。現金や預貯金はインフレが進むと購買力が低下し、同じ金額でもモノやサービスを買える量が減ってしまいます。
こうした局面では、インフレによる物価上昇に対して価値が維持されやすい「実物資産」へ資金を移す動きが強まります。中でも、不動産や金はインフレに応じて価値が上がりやすく、資産の目減りを防ぐ手段として注目されています。
1-3-2.地政学リスクの高まり
ウクライナや中東をはじめ、各地で紛争や政治的な不安定さが続き、地政学リスクが高まっています。こうした状況では、金融市場が不安定になりやすく、国や企業の信用に左右されにくい実物資産へ資金が流れる傾向があります。
特に「有事の金」と呼ばれるゴールドは、安全資産として位置づけられ、地政学的リスクの高まりとともに需要が増すのが一般的です。
1-3-3.分散投資の重要性
金融資産に偏ったポートフォリオでは、相場全体が下落した際に資産価値が大きく目減りする恐れがあります。株式と債券が同じ方向に動く局面では、リスクを分散しているつもりでも、実際には偏りが生じてしまうこともあります。
こうした事態に備えるには、値動きの異なる実物資産を組み合わせて、全体のバランスを整えることが重要です。実物資産を取り入れることで、特定の市場の変動に過度に左右されにくくなり、より安定したポートフォリオを構築できます。
2.【種類一覧】代表的な実物資産8選とそれぞれの「価値の源泉」
実物資産には様々な種類があります。ここでは代表的な8つの実物資産と、その価値が何によって決まるのかを解説します。
2-1.不動産
不動産は実物資産の代表格であり、長期保有による安定的な資産運用手段として広く活用されています。その収益は、「家賃収入(インカムゲイン)」と「売却時の値上がり益(キャピタルゲイン)」という2つの側面から成り立っています。
駅からの距離や周辺環境といった「立地」が価格に大きく影響するほか、建物の管理状態や賃貸需要の高さ、将来的な再開発の可能性なども価値を左右します。物件の種類や地域によって収益性に差が出るため、適切な見極めが重要です。
2-2.金(ゴールド)
金は、その「普遍的な価値」と「希少性」、そして数千年にわたり資産や価値の保存手段として用いられてきた歴史が価値の源泉です。特定の国が価値を保証しているわけではないにもかかわらず、世界中で流通し、価値が認められています。
また、金融危機や紛争といった「有事」の際には、安全資産として買われる傾向が強くなります。インフレや通貨下落時の資産防衛手段としても注目されており、ポートフォリオの一部に組み込む投資家も少なくありません。
2-3.プラチナ・銀などの貴金属
プラチナや銀も金と同様に希少性のある貴金属ですが、その価値は「工業利用などの実需」に大きく影響される点が特徴です。例えば、プラチナは自動車の排ガス浄化触媒や水素エネルギー関連技術に活用され、銀は太陽光パネルや電子機器の部品として需要があります。
つまり、世界経済の動向や産業技術の進化が価格に直結するため、工業分野のトレンドを見ながら投資判断を下すことが求められます。
2-4.太陽光発電設備
太陽光発電設備は、「売電契約に基づく長期的な収益性」が価値の源泉です。特に、FIT制度(固定価格買取制度)によって、一定期間、国が定めた価格で電力を買い取ってもらえる契約を結んでいる設備は、将来の収益が見通しやすく、安定的なキャッシュフローが期待できます。
加えて、設置地域の日照条件やメンテナンス体制、機器の性能、さらには売電期間終了後の自家消費プランなども、資産価値に大きな影響を与える要素です。
2-5.アンティークコイン・切手(投資上級者向け)
アンティークコインや記念切手は、「歴史的価値」や「希少性」、そして「収集家(コレクター)の需要」によって価値が決まる実物資産です。特に、発行枚数が極めて少なく、歴史的事件や王朝、著名人に関連したものは、世界中のマニアや富裕層から高い評価を受けます。
ただし、偽物も多く流通しているため、真贋を見極める力と、流通市場に関する深い知識が不可欠です。長期的な価値上昇を狙う投資として位置づけられます。
2-6.高級腕時計・クラシックカー(投資上級者向け)
高級腕時計やクラシックカーは、「ブランド価値」や「職人技」、「生産数の限られたモデル」などに支えられ、時間の経過とともに価値が高まるケースがあります。
中でも、ロレックスやパテック フィリップ、フェラーリやポルシェといった一流ブランドの人気モデルは、オークション市場でも高値で取引されることが多く、コレクター市場でも根強い需要があります。資産価値の維持には、定期的な整備や保管環境の維持が求められ、購入後の管理にも専門的な知識と費用がかかります。
2-7.アート作品(投資上級者向け)
アート作品は、「作家の評価」や「歴史的・文化的な意義」、「市場での需要」といった多面的な要素により価値が決まります。ピカソやモネなどの巨匠による作品はもちろん、現代アートでも注目作家の代表作には高値がつくことがあります。
美術品市場は価格変動も大きく、一般的な金融資産とは異なる特性を持つため、収益目的での購入には、確かな審美眼と市場に対する継続的なリサーチが不可欠です。
2-8.ワイン・ウイスキー(投資上級者向け)
高級ワインやウイスキーは、「熟成による味わいの向上」と「消費されることによる希少性の上昇」により、時間とともに価値が高まりやすい資産です。特定のシャトーや閉鎖された蒸留所の製品は、供給が限られる中で世界中に熱心なコレクターが存在し、長期保管品には高値がつくこともあります。
ただし、温度や湿度管理を含む適切な保管環境が必須であり、品質が劣化すれば価値は一気に下落するため注意が必要です。
3.実物資産の5つのメリット
金融資産だけに頼らない資産形成の手段として、実物資産をポートフォリオに加えることには、以下のようなメリットがあります。
3-1.物価や通貨の変動に左右されにくい
実物資産は「モノ」そのものに価値があるため、インフレや通貨安といった経済環境の変化に対して比較的強い特徴があります。現金のように購買力が目減りすることがなく、物価上昇時にも一定の価値を保ちやすいため、長期的な資産保全に向いています。
特に不動産や金などは、実需に支えられているため信頼性が高く、インフレや通貨の価値変動にも強い資産とされています。
3-2.市場との連動性が低く、リスク分散の幅が広がる
実物資産は、株式や債券のような金融市場と異なる要因で価格が動くため、他の資産クラスとの相関が低いのが特徴です。
例えば、株式市場が下落しているときでも、金の価格が上昇することがあります。こうした異なる値動きの資産を組み合わせることで、全体のポートフォリオの安定性を高め、市場変動や景気後退などによる資産全体のリスクを軽減する効果が期待できます。
3-3.残存価値が見込める「実体のある資産」
実物資産は物理的に存在するため、たとえ市場価格が一時的に下落したとしても、価値がゼロになることはほとんどありません。
不動産であれば土地そのものが消えることはなく、貴金属にも常に一定の需要があります。金融資産のように突然無価値になるリスクが少ないため、安全性を重視する投資家にとっては、大きな安心材料となります。
3-4.趣味やライフスタイルを楽しみながら資産形成できる
アート作品やワイン、クラシックカーなどの実物資産には、「資産」としての側面に加え、所有そのものを楽しめる「趣味」の要素があります。また不動産であれば、将来的に「貸す」「売る」だけでなく、「自ら住む」といった実用面での活用も可能です。
このように、資産性とライフスタイルの充実を同時にかなえられる点は、金融資産にはない実物資産ならではの魅力といえます。
3-5.税務面での優遇を受けられる場合がある
実物資産は、税務上の取り扱いで有利に働く場合があります。例えば不動産は、相続や贈与の際に評価額が実勢価格より低く見積もられる傾向があり、相続税の節減が期待できます。
また、賃貸用として保有すれば、減価償却によって所得税の軽減が見込める点も魅力です。このように、実物資産は資産を守るだけでなく、長期的な税負担の軽減にも寄与します。
4.実物資産の5つのデメリット・注意点
多くのメリットがある一方で、実物資産には特有のデメリットや注意点も存在します。
4-1.流動性が低く、すぐに現金化しにくい
実物資産の最大のデメリットは、株式のように市場で簡単に売買できず、現金化に時間がかかる「流動性の低さ」です。不動産であれば買い手を見つけて契約・決済まで数ヵ月、アート作品であればオークションの開催を待つ必要があるなど、急な資金ニーズには対応しにくい側面があります。
4-2.取引コストが比較的高くなりやすい
実物資産は、購入・売却時の手数料や諸費用が高額になる傾向があります。不動産であれば仲介手数料や登記費用などが発生し、アート作品ではオークション手数料や鑑定費などが必要です。金融商品と違って、ワンクリックで完結するような取引ではないため、リターンを正確に評価するには、こうしたコストも含めて判断する必要があります。
4-3.管理・維持に手間とコストがかかる
不動産や美術品などの実物資産は、保有中にも継続的な管理が求められます。不動産であれば修繕や清掃、空室対策が必要になり、貴金属やワインなどでは湿度・温度管理や盗難防止が欠かせません。これらには時間や専門知識に加え、一定の費用も伴います。管理が不十分だと資産価値の低下につながるため、「所有する責任」を意識した対応が求められます。
4-4.専門知識や真贋を見抜く目が必要
特に、アート作品やアンティークコイン、高級腕時計といった趣味性の高い実物資産では、その価値を正しく見極めるための専門知識や、偽物を見抜く力が欠かせません。知識のないまま安易に手を出すと、価値の低いものを高値で購入してしまうリスクがあります。信頼できる専門家の意見なども参考にしながら、慎重に判断する姿勢が求められます。
4-5.詐欺や悪質な勧誘のターゲットになるリスクも
実物資産の中には、価値判断が難しいものもあり、それを逆手に取った詐欺やトラブルも少なくありません。「必ず値上がりする」「今しか買えない」といった文句で、実態のない商品を売りつけられる例もあります。特に海外不動産や知名度の低い収集品には注意が必要です。資産を守るためにも、冷静な情報収集と判断力が不可欠です。
5.実物資産投資を始めるための基本ステップ
実物資産に興味を持っても、「何から始めればいいのか分からない」という方も多いかもしれません。金融商品とは異なり、現物を扱うからこそ、事前準備や手続きも慎重さが求められます。ここでは、初心者が押さえておくべき基本ステップを5段階に分けて紹介します。
5-1.ステップ1: 目的設定と対象資産の選定
最初に行うべきは、「なぜ実物資産に投資するのか」という目的を明確にすることです。インフレ対策としての保有か、将来の相続を見据えた資産形成かによって、選ぶべき対象は変わってきます。
また、アート作品やワインなど趣味性の高いものに興味があるのか、不動産や金のように安定性を重視したいのかも整理しましょう。投資の方向性を定めることで、情報収集や比較検討が格段に進めやすくなります。
5-2.ステップ2: 資金計画とリスク許容度の確認
次に、どの程度の資金を投資に回せるのかを具体的に把握します。生活資金を圧迫せず、万が一損失が出ても精神的なダメージを受けにくい範囲を設定しましょう。
不動産のようにローンを活用するケースでは、金利や返済計画も含めて現実的な予算を組むことが大切です。収益性ばかりを追い求めるのではなく、自分のリスク許容度と照らし合わせて、無理のない資金計画を立てましょう。
5-3.ステップ3: 専門家・専門業者への相談と情報収集
実物資産は種類ごとに市場や評価の仕組みが異なるため、信頼できる専門家のサポートが欠かせません。不動産であれば不動産会社や管理会社、金・貴金属であれば老舗の取扱業者、アート作品や時計なら鑑定士のような専門職の意見が役立ちます。
複数の業者を比較し、実績や説明の分かりやすさなども確認しておくとよいでしょう。情報収集は投資判断の精度を左右する重要なステップです。
5-4.ステップ4: 具体的な資産の選定と購入・契約手続き
情報が揃ったら、具体的な資産の選定に進みます。不動産であれば物件の立地や賃貸需要、アート作品や高級品であれば真贋や将来の流通性などを丁寧に確認することが重要です。可能であれば現地での内覧や商品の実物確認を行い、十分に納得してから購入を判断しましょう。
契約時には、費用の内訳や所有権移転の時期など、見落としやすい点も多いため、契約書の内容を細かく確認することが欠かせません。
5-5.ステップ5: 購入後の保管・管理と出口戦略の検討
実物資産は購入して終わりではなく、購入後の保管や管理も重要な要素です。不動産であれば、空室対策や修繕を含めた賃貸管理体制を構築する必要があります。貴金属やアート作品などの場合は、湿度管理や盗難防止といった保管環境の整備に加え、適切なメンテナンスも求められます。
さらに、将来的に売却を目指すのか、それとも相続や贈与を前提とするのかといった「出口戦略」をあらかじめ考えておくことで、長期的かつ計画的な資産形成が可能になります。
6.実物資産を賢くポートフォリオに加え、盤石な資産形成を
実物資産はインフレ耐性があり、金融資産と異なる値動きをするためリスク分散にも役立ちます。また、経済環境に合わせて活用の幅を変えられる柔軟性も魅力です。
例えば不動産であれば、賃貸による収益だけでなく、自らの住まいとして活用することもできます。さらにアート作品やアンティークには、「美しさを楽しむ喜び」や「所有する満足感」など、実用性や収益性だけでは測れない価値が存在します。
こうした実感を伴う資産を、自分の考えやライフスタイルに合わせて組み込むことで、より着実で納得感のある資産形成が可能になります。
7.実物資産投資に関するよくある疑問と回答
Q1. 資産運用が全くの初心者でも実物資産投資はできますか?
可能です。特に不動産投資は、信頼できる不動産会社をパートナーに選べば、物件選びから融資、管理までトータルでサポートを受けられるため、初心者でも始めやすいといえます。まずは情報収集から始め、セミナーなどに参加してみることをおすすめします。
Q2. 少額から始められる実物資産投資はありますか?
例えば、金(ゴールド)であれば、毎月数千円から積み立てる「純金積立」という方法があります。また、複数の不動産に小口で投資できる「不動産クラウドファンディング」も1万円程度から始められるサービスが増えています。これらは、実物資産投資の第一歩として適しています。
Q3. 実物資産投資の利回りはどのくらいが目安ですか?
投資対象によって大きく異なります。不動産投資の場合、物件の立地や築年数によりますが、インカムゲイン(家賃収入)による利回りは一般的に3〜10%程度が目安です。金やアート作品はインカムゲインを生まないため、将来の売却益(キャピタルゲイン)を狙うことになり、利回りを事前に予測するのは困難です。
Q4. 保管や管理が大変そうなのですが、何か良い方法はありますか?
専門サービスを活用するのが一般的です。不動産であれば管理会社に賃貸管理を委託し、金であれば金融機関の保護預かりサービスや純金積立を利用すれば、自宅で保管する必要はありません。アート作品やワインも専門の保管サービスがあります。これらのサービス料はコストになりますが、手間とリスクを大幅に軽減できます。
Q5. 実物資産を売却する(現金化する)にはどうすればいいですか?
資産の種類に応じた売却チャネルを利用します。不動産は不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。金やプラチナは貴金属店や地金商で売却できます。アート作品やアンティークコインは、オークションに出品したり、専門の買取業者に査定を依頼したりします。いずれの場合も、信頼できる専門業者を選ぶことが重要です。


