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投資の基本
アセットアロケーションの基本と不動産を組み込むことがおすすめの理由
資産運用ではリスク管理が重要であり、そのリスク管理のためには分散投資が有効であると見聞きしたことがある方は多いと思います。
運用対象の金融資産にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴がありますが、それらの特徴を踏まえて適切な組み合わせでリターンを狙いつつリスクに備えるのが理想です。その際の投資配分のことをアセットアロケーションといいます。
資産運用は期間が長くなるほど効果は大きくなりますが、投資期間が長期に及ぶと投資環境も変化します。その変化に応じて常に最適なアセットアロケーションを構築することが、資産運用の成功のカギです。
このようにとても重要なアセットアロケーションについて、本記事ではその基本や必要性、運用資産に不動産を組み入れるメリットなどについて解説します。
1.高まる資産運用の必要性
資産運用の必要性は、今さら言うまでもないでしょう。特にこの記事をお読みになっている皆さんは資産運用や将来への備えに対する高い関心をお持ちなので、資産運用の必要性は十分理解されていることと思います。
しかし、ここにきてさらにその必要性が高まる事態が起きています。それは、世界的に進行しているインフレです。インフレは物価が上昇する一方で貨幣の相対的な価値が低下するため、貯金を持っているだけでは実質的な価値が目減りしてしまいます。
「給料は増えないのに物価だけ上がっている」と感じている人は多いと思いますが、それは単なる肌感覚だけでなくデータから見ても明らかな傾向です。お金を増やして将来や老後に備えるという視点だけでなく、将来に向けた資産防衛の視点でも資産運用の必要性が高まっています。
2.アセットアロケーションとは
アセットアロケーションは、2つの言葉から成り立っている言葉です。アセットは資産、アロケーションは配分を意味します。つまり、アセットアロケーションは資産の配分です。投資対象や保有資産を分散することはリスク管理の意味でとても重要ですが、そのための配分のことをアセットアロケーションといいます。
ここでは、アセットアロケーションに組み込む対象にどんな資産があるのか、そしてアセットアロケーションと似た言葉として用いられているポートフォリオとの違いについて解説します。
2-1.代表的なアセットクラス
アセットクラスとは、類似した性質をもつ資産、投資対象のことです。アセットアロケーションに組み入れる対象となるアセットクラスには、主に以下のものがあります。
- 株式
- 債券
- 不動産
- 不動産ファンド
- 投資信託
これらのアセットクラスにも、国内なのか海外なのかといった分類があります。これらの選択肢から資産運用の目的や資金規模、経済情勢などに応じて適切に組み合わせるのが、理想のアセットアロケーションです。
2-2.アセットアロケーションとポートフォリオの違い
アセットアロケーションと似た言葉として、ポートフォリオもよく用いられています。アセットアロケーションを聞いたことはなくてもポートフォリオなら聞いたことがあるという人は多いのでないでしょうか。
この2つの言葉は似ていますが、ポートフォリオのほうがより具体的な投資対象の配分を意味している点に違いがあります。
例えば、アセットアロケーションで「株式30%、不動産ファンド30%、投資信託40%」といったように配分を構築したとします。ポートフォリオはこれをより具体化したものなので、先ほどのアセットアロケーションに基づいて以下のように配分します。
- 株式(A銘柄)
- 株式(B銘柄)
- 株式(C銘柄)
- 不動産ファンド(A銘柄)
- 不動産ファンド(B銘柄)
- 投資信託(A銘柄)
- 投資信託(B銘柄)
- 投資信託(C銘柄)
アセットアロケーションではアセットクラスの配分を決めただけでしたが、ポートフォリオではそれを具体的な投資先に落とし込んでいます。このように、ポートフォリオはアセットアロケーションで構築した戦略を実践するための配分と理解すると分かりやすいと思います。
3.アセットアロケーションの基本的な戦略
アセットアロケーションには、時間軸によって分類される2つの概念があります。1つは長期的な視点で戦略的アセットアロケーション、もう1つは短期的な視点による戦術的アセットアロケーションです。
この両者には大きな違いがあるので、ここでその違いを明確にしつつそれぞれの考え方を解説します。
3-1.戦略的(長期)アセットアロケーション
戦略的アセットアロケーションは、長期的な目線に立った資産運用の配分です。資産運用は期間が長くなるほど効果が大きくなるので、特に重要な概念です。
中長期的にどのアセットクラスに成長力があるか、逆に資産防衛の観点から価値が目減りしにくいかを検討し、適切な配分を決めます。これは長期的な戦略なので、資産運用そのものの方向性と言い換えてもよいでしょう。
3-2.戦術的(短期)アセットアロケーション
戦略的なアセットアロケーションが中長期的な視点で構築されるのに対して、戦術的アセットアロケーションは短期的な目線で構築します。
金融市場は日々動いており、株式や投資信託といった金融資産の価格も刻一刻と変動しています。この値動きを資産増につなげるために必要になるのは、短期的な目線です。金融市場の状況に応じて柔軟にアセットアロケーションを変動させ、その時の状況に最適な形を作ることを目指します。
最初に長期的な目線で戦略的アセットアロケーションを構築し、その戦略の上で戦術的なアセットアロケーションを構築するのが正しい順序なので、短期目線といっても長期目線で構築したアセットアロケーションから大きく逸脱することはありません。
例えば、長期目線のアセットアロケーションでは全く考慮していなかった暗号資産に対して、短期的に利益が出せそうなので暗号資産をアセットアロケーションに組み入れることはないということです。
4.ポートフォリオに不動産投資を組み入れるメリット
先ほど紹介した主なアセットクラスの中に、「不動産」が含まれていたことにお気づきかと思います。ここでいう不動産とはアパートやマンションといった現物不動産のことで、並列で紹介している不動産ファンドとは別物です。
ポートフォリオを構築する際に重要なのは、異なる性質のアセットを組み合わせることです。株式は景気に敏感なので、景気が悪くなった時には資産目減りのリスクがあります。
その一方で不動産は衣食住の一角をなすディフェンシブな資産なので、不況時にも資産の目減りを防ぐ効果があります。ただし、不動産は株式のように大きな成長力を期待するのは難しいため、この両者はまるで性質が異なります。
このように性質が異なる資産をポートフォリオに組み込むことで、バランスの取れた資産運用が可能になります。特に不動産は他のアセットクラスと違って融資を利用できるなど特有のメリットもあるので、その意味でもポートフォリオに組み込む価値は大いにあります。
5.アセットアロケーションには常に柔軟な目線をもとう
アセットアロケーションは、一度構築したら変えてはいけない、というものではありません。長期的な目線で構築したアセットアロケーションであっても、経済情勢などが変われば柔軟に変えていくのが正しい姿です。
常にその時の状況にアンテナを張って最適なアセットアロケーションを維持することが、資産運用の効果を最大化させます。