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不動産投資
マイナス金利解除で不動産投資はどうなる?おすすめの投資戦略も解説
日本は長らく超低金利を通り越してマイナス金利でした。そのマイナス金利が2024年3月に解除され、2016年から続いたマイナス金利の時代は終わりました。「金利のある世界」が8年ぶりに戻ってきたことで、私たちの生活や不動産投資の環境はどう変わるのでしょうか。
マイナス金利が終わり「金利のある世界」になってからの不動産投資のポイントについても解説しますので、これから不動産投資を始めたいとお考えの方もぜひ最後までお読みください。
1.マイナス金利が解除された背景
日本銀行がマイナス金利政策を導入・維持してきた理由は、「2%のインフレターゲット」を達成するためでした。このインフレターゲットとは、物価を安定的に2%程度上昇させることで、賃金と物価が好循環に入ることを目指し、デフレからの脱却を図ることを主目的としたものです。
しかし、コロナ禍による経済の停滞が収束し、世界的なインフレの進行が見られるなかで、日本でも物価が上昇しました。これにより、日本銀行では物価目標を達成できたとの意見が大勢になり、マイナス金利解除となったわけです。
2.マイナス金利解除が私たちの生活に与える影響
マイナス金利が解除されると、私たちの生活にはどんな影響があるのでしょうか。生活者目線で考えられる影響を、6つの項目にまとめました。
2-1.預金・定預預金の金利
これまで銀行預金の金利はほぼゼロでした。マイナス金利解除により銀行の金利も上昇するため、今後さらに金利の上昇が続けば定期預金でもお金が増える時代が戻ってくるかもしれません。
2024年8月、三菱UFJ銀行は定期預金の金利を5倍にあたる0.125%に引き上げることを発表しました。こうした動きは今後、多くの金融機関に波及していくものと思われます。
2-2.個人向け国債の金利
マイナス金利が解除されると、個人向け国債の金利も上昇します。個人向け国債は元本保証の運用商品のなかでは比較的金利が高いことで知られていますが、それでも金利は1%に満たないレベルです。最も金利が高い「変動10」でも0.61%となっています(第173回)。
それでも個人向け国債の金利はじわじわと上昇しており、これはマイナス金利解除による日本の長期国債金利の上昇を受けたものです。元本保証のなかでは比較的高金利な運用商品だけに、今後さらに金利が上昇すると運用方法としての存在感が増していくでしょう。
2-3.生命保険の保険料
生命保険の保険料は、保険会社が支払いの備えとしてプールしておくのと同時に、その資金を積立運用しています。
この運用時の利回りは国の標準利率に準じた水準になっているため、マイナス金利解除で運用利回りが上昇すると、その分保険料を安くしても経営が成り立つようになります。そのため、国の金利が引き上げられると保険料は安くなる関係にあります。
まだマイナス金利を解除して追加利上げを1回しただけで特に大きな影響は見られませんが、今後数%レベルにまで利上げが実施されると、保険料引き下げの恩恵が得られるでしょう。
2-4.住宅ローンの金利
マイナス金利が解除され、さらに金利が上昇していく局面になると住宅ローン金利への影響が考えられます。住宅ローンの金利は、短期プライムレートといって銀行が企業に資金を貸し出す際の金利を参考に決められています。短期プライムレートは政策金利によって決まるため、マイナス金利解除や利上げがあると政策金利が上昇し、短期プライムレートも上昇します。
今後住宅ローンを組む際には適用される金利が以前よりも高くなるのは確実でしょう。この場合は「金利が高いので買わない」という余地が残されていますが、注意したいのは変動金利型の住宅ローンをすでに組んで返済中の場合です。
変動金利型の住宅ローン金利は金利上昇に伴って上昇していく可能性があるため、当初ローンを組んだときよりも高い金利が適用されることがあります。
とはいえ、住宅ローンには5年ルールといって、金利上昇があっても変動金利型の適用金利を5年間は引き上げないというルールがあります。これを採用している金融機関が大半なので、ほとんどの場合は金利上昇の影響をすぐに受けることはありません。
また、仮に5年後に金利の引き上げがあったとしても、125%ルールといって返済額の上昇を元の金額に対して125%までしか引き上げられないことになっています。そのため、今後金利の上昇があって変動金利型の住宅ローンに影響があったとしても、これらの上限以上の影響を受けることはありません。
2-5.債券価格
金利が上昇すると、債券価格は下落します。なぜなら、投資家は現在保有している債券よりも金利の高い債券に買い換えようとするため、手持ちの債権が売られて価格が下落するからです。
そのため、債券型の投資信託などを保有している場合は、その商品の価格が下がる可能性があります。
2-6.株式や為替
金利の変動は、株式や為替にも大きな影響を及ぼします。
金利が上昇すると、一般的に株価は下落します。金利上昇で企業の資金調達コストが上昇するため、経済活動が停滞しやすくなるからです。また、投資マネーもリスクの高い株式よりも債券を好むようになり、株式が売られやすくなります。
為替の世界では、金利が上昇するとその通貨の価値が高くなるのがセオリーです。日本がマイナス金利を解除し、さらに利上げをしていくと円高になる可能性が高くなります。2024年8月には急激な円高進行がありましたが、これには日本銀行の追加利上げも大きく関わっていると言われています。
3.マイナス金利解除が投資用不動産市場へ与える影響
次に、マイナス金利解除が投資用不動産市場にもたらす影響についても解説しましょう。知っておくべきなのは、不動産価格と賃料への影響です。
3-1.不動産価格
不動産は高額商品だけに、融資を利用して購入するケースが大半です。そのため金利が上昇して資金調達コストが上昇すると買い控えの動きにつながり、不動産価格には下落要因になります。
これから不動産投資を始めたいと考えている人にとっては、不動産を買いやすい状況になると考えられます。
3-2.賃料
不動産の賃料は物価の推移との相関性があるため、インフレの進行で物価が上昇すると賃料も上昇傾向になります。
不動産投資のためのコスト(金利や設備費、工事の人件費など)も上昇するため、それを価格転嫁する必要性があるため、市場動向をしっかりチェックしながら適切なレベルで賃料の引き上げをしていくことになります。
4.今後の不動産投資戦略はどうすべき?
マイナス金利解除後の「金利のある世界」での不動産投資には、2つの視点が重要になります。
1つ目は、金利上昇への対策です。今後さらに金利が上昇していく可能性を考慮して、ローン選びには慎重さが求められます。家賃に転嫁することで金利上昇のリスクを管理することができますが、そのためには「家賃が上昇しても借り手がつく物件」でなければなりません。
その意味で重要なのは、2つ目の視点である物件の立地条件です。今後は人口が減少する地域が多くなってくることを踏まえて、将来に向けて人口の減少が起きにくい、その上で賃貸需要が減りにくい物件を選びましょう。
こうした条件が揃っている地域となると、やはり東京の都心部が有力です。しかし、東京では不動産価格の高騰が続いており、簡単に購入できるわけではありません。
そこで目を向けたいのが、中古マンションです。新築マンションよりも値ごろ感がありますし、新築物件と比べると立地条件のよい物件が多いため、将来にわたって資産価値が低下しにくいマンションを見つけることも可能です。
その一方で、中古マンションには「古い」という大きなデメリットがあります。これを克服するために提案したいのが、リノベーションです。リノベーションによって物件の価値観そのものを一新して付加価値を高め、ほかの物件と差別化することによって「好立地で付加価値の高いマンション物件」が出来上がります。
これからの東京では、「都心中古リノベ投資」が優位性の高いビジネスモデルとなるでしょう。
5.超低金利で不動産を購入できるラストチャンス?
マイナス金利解除は「マイナス」だったものが「プラス」になったため大々的に報道されましたが、それでも依然として日本が超低金利であることに変わりはなく、当面はこの状況が続くでしょう。資金調達コストが安いのは不動産投資を始めやすい環境でもあるので、超低金利の今は有利に不動産投資をはじめるラストチャンスかもしれません。
本文中では「都心中古リノベ投資」についても触れました。不動産価格が高騰している東京では現実的かつ将来性のあるビジネスモデルなので、一度検討してみてはいかがでしょうか。