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不動産投資
区分所有法改正で何が変わる?2026年施行のポイントと投資家がとるべき対応
区分所有法とは、分譲マンションの権利関係と、管理や再生の意思決定ルールを定めた法律です。
2025年5月に成立・公布され、2026年4月1日に施行された改正によって、これまで全員同意に近い高いハードルで止まっていた管理と再生が、多数決で前に進めやすくなりました。
老朽化マンションの「決まらない、進まない」を解きほぐすための見直しだと考えると、全体像がつかみやすくなります。
この記事では、改正で何がどう変わったのかを、投資家の目線で整理します。建て替えの決議要件、所在不明の所有者への対応、そして資産価値への影響まで、条文や公的資料を示しながら解説します。
この記事の要点:
- 改正区分所有法は2025年5月に成立、2026年4月1日に施行された(令和7年法律第47号)
- 建て替え決議は原則5分の4のままだが、耐震性不足など一定の客観的要件を満たす場合は4分の3に緩和された
- 所在等が不明な区分所有者は、裁判所の決定を経て決議の母数から除外できる
- 建て替えや売却が決まると、賃借人に契約終了を求められる(請求から6ヵ月で終了)
- これからは築年数以上に、管理の質と再生計画が資産価値を左右する
目次
1. 区分所有法改正とは?2026年施行で変わったことの全体像
2025年5月に成立し2026年4月に施行された改正区分所有法は、「管理の円滑化」と「再生の円滑化」という二つの柱で構成されています。
老朽化と所有者不明という二つの壁によって動かなくなっていたマンションを、動かせるようにするための改正です。
1-1. いつ成立・施行された?(令和7年法律第47号/2026年4月1日)
改正法は「建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号)として、2025年5月に成立・公布され、2026年4月1日に施行されました。
すでに施行済みであり、これ以降の集会からは緩和後の決議要件が使えます。
以前の解説記事のなかには施行前の見込みで書かれたものもありますが、現在は現行のルールとして運用されている点を押さえておきましょう。出典は国土交通省住宅局および法務省民事局の資料です。
1-2. 改正の目的=「管理の円滑化」と「再生の円滑化」
改正は、日々の管理における決議や運営を効率化する「管理の円滑化」と、建て替えや売却といった再生の実効性を高める「再生の円滑化」の両面を対象としています。
あわせて、管理計画認定制度の拡充も盛り込まれました。以降では、この二つの柱に沿って具体的な内容を見ていきます。
2. 【再生の円滑化】建替え・売却の決議要件はどう緩和された?
建て替え決議の要件は、原則としては従来どおり、区分所有者および議決権の各5分の4以上のままです。
ただし、耐震性の不足など一定の客観的な要件を満たす場合には4分の3以上に、災害などで大きな被害を受けた場合には3分の2以上にと、段階的に引き下げられました。一律緩和されたわけではない点に注意が必要です。
| 状況 | 建て替え決議に必要な賛成 |
|---|---|
| 原則 | 区分所有者および議決権の各5分の4以上 |
| 耐震性不足など一定の客観的要件を満たす場合 | 4分の3以上 |
| 災害で大きな被害を受けた場合 | 3分の2以上 |
(編集部作成)
2-1. 建替え決議:原則5分の4→客観的要件該当で4分の3(災害時3分の2)
緩和が適用される客観的要件は、マンションの再生を円滑にする法律における、いわゆる要除却の認定基準に相当します。
耐震性が不足している、外壁の剥落の恐れがあるといった、専門的に判断できる事由に該当する場合に限り、ハードルが下がる仕組みです。
裏を返せば、要件に当てはまらないマンションでは、原則の5分の4が引き続き必要になります。
2-2. 新しい再生手法:建物更新決議(一棟リノベ)・建物敷地売却決議など
今回の改正では、建て替え以外の再生手法も整えられました。建物を壊さずに一棟まるごと大規模に改修する建物更新決議や、建物と敷地をまとめて売却する建物敷地売却決議などが、それぞれ5分の4以上の多数決で選べるようになっています。
壊して建て替えるだけが再生ではない、という選択肢の広がりです。
この建物更新決議は、REISMが得意とするリノベーションの発想と重なります。既存の建物を活かしながら価値を高めるという考え方は、実際の運用でも成果につながっています。参考として、リノベーションによって家賃が改善した事例を挙げます。
| シリーズ | エリア・築年 | 面積 | リノベ前家賃 | リノベ後家賃 | 改善率 | 施工費 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Brick | 墨田区・1983年築 | 29.15㎡ | 73,000円 | 103,000円 | 約41% | 670万円 |
| Boho | 新宿区・1984年築 | 33.18㎡ | 90,000円 | 128,000円 | 約42% | 560万円 |
築40年超の中古マンションでも、ライフスタイルに合わせたリノベーションにより高い家賃水準を実現(データ出所:リズム)
出所はリズム株式会社の家賃改善事例です。個別の物件によって結果は異なりますが、築古であっても手の入れ方しだいで価値を引き上げられることを示す一例です。
2-3. 建替え・売却が決まると賃借人(入居者)はどうなる?
投資家にとって見落とせないのが、賃借人の扱いです。
建て替えや売却の決議が成立した場合、オーナーは賃借人に対して契約の終了を求めることができ、その請求から6ヵ月の経過で賃貸借は終了します。入居者がいる状態でも再生を進められるということであり、出口戦略の実効性という意味で大きな変化です。
ただし、実際の運用では立退料などの配慮が必要になる場面も想定されるため、個別の判断は専門家に相談するのが安全です。
3. 【管理の円滑化】所在不明者の除外・デジタル化・国内管理人
再生だけでなく、日々の管理も動かしやすくなりました。所在不明の所有者を決議から除外できるようになり、集会のオンライン化や、海外に住む所有者向けの国内管理人の仕組みも整いました。忙しい現役世代のオーナーほど、恩恵を受けやすい改正です。
3-1. 所在等不明区分所有者を決議の母数から除外できる
必要な調査を尽くしても所在が分からない所有者については、裁判所の決定を経ることで、決議の母数から除外して賛否を判定できるようになりました。
連絡の取れない一人の存在が決議全体を止めてしまう、という事態を避けるための仕組みです。すべての決議が対象になりますが、集会の招集前に手続きと費用がかかる点は正直に踏まえておく必要があります。
3-2. 集会のオンライン化・電磁的方法による決議
Web会議による集会への出席や、書面および電磁的方法による決議の規定が整えられました。遠方にある投資物件でも、スマートフォンから議決権を行使しやすくなります。こうした運用は、2025年10月に改正された標準管理規約への反映が前提になるため、自分の物件の規約が対応しているかもあわせて確認したいところです。
3-3. 国外オーナー向け「国内管理人」制度
国外に居住する区分所有者について、国内で連絡や対応を担う国内管理人を置く仕組みも整備されました。海外に住むオーナーが増えるなかで、管理組合の運営が滞らないようにするための備えです。標準管理規約にも関連の定めが置かれています。
4. 投資家の資産価値への影響|「管理の質」が価格を分ける時代へ
決まらないマンションが減ることは、適正に管理された物件の価値が守られやすくなることを意味します。これからは築年数そのものよりも、管理の質と再生計画の有無が、価格を分ける要素として重みを増していくと考えられます。
その裏づけとして、管理の質は数値にあらわれます。リズム株式会社の管理物件では、入居稼働率が2021年の97.4%から2025年には99.2%へと推移しており、高い水準を保っています。
また市場データを見ると、東京23区の平均募集期間は3.81ヵ月、空室率の指標であるTVIは8.91であるのに対し、東京都の市部ではそれぞれ5.14ヵ月、13.29となっており、23区の需要の底堅さがうかがえます。
(リズム作成、出所:株式会社TAS「賃貸住宅市場レポート」2026年2月)
もっとも、決議要件が緩んだとはいえ、建て替えは依然としてハードルの高い選択です。すべての築古物件で実現できるわけではありません。
だからこそ、管理を整え、価値を保つ運用が、現実的な資産防衛になります。数値は調査時点のものであり、市場データと自社実績は出所が異なる点にご留意ください。
5. 投資家が今すぐ確認すべき3つのチェックポイント
改正のメリットを活かすには、待つのではなく確かめることが第一歩です。保有物件について、次の三点を点検してみてください。
一つ目は、管理規約が改正に対応しているかです。2025年10月に改正された標準管理規約を参考に、オンライン決議や所在不明者への対応などの条項が反映されているかを、管理組合や管理会社に確認します。対応の遅れは、将来の管理品質の差として表れかねません。
二つ目は、長期修繕計画と修繕積立金の妥当性です。決議要件が緩和されても、積立金が不足していれば工事は進みません。通常25年から30年を見込む長期修繕計画と積立額を、国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインと照らして確認しておきましょう。
三つ目は、築古物件の出口戦略の再検討です。建て替えや一括売却が成立しやすくなったことで、現状維持、売却、建て替えを待つ、敷地ごと売却するといった選択肢を並べ直す好機になります。すべての物件で建て替えが実現するわけではないという前提のうえで、自分の物件に合う出口を考えておくと安心です。
6. 区分所有法改正に関するよくある質問(FAQ)
Q. 区分所有法改正はいつから施行された?
A.2026年4月1日に施行された。改正法は2025年5月に成立・公布されている(令和7年法律第47号)。
Q. マンションの建替え決議は5分の4から緩和された?
A.原則は5分の4のままだ。ただし耐震性不足など一定の客観的要件を満たす場合は4分の3、災害などの場合は3分の2に緩和される。
Q. 所在不明の所有者がいても決議できる?
A.決議できる。裁判所の決定を経れば、所在等が不明な区分所有者を決議の母数から除外して賛否を判定できる。
Q. 建替えが決まったら賃貸中の入居者は退去になる?
A.決議が成立すると、オーナーは賃借人に契約終了を求められる。請求から6ヵ月の経過で賃貸借は終了する。
Q. 築浅マンションにも改正は関係ある?
A.関係がある。決議の手続きやデジタル化のルールはすべてのマンションに及び、管理規約の見直しが必要になる。
7. まとめ:法改正を「資産を守る武器」に変える
これまで、老朽化や所有者不明という理由で動かなかったマンションが、この改正によって動き出します。
それは同時に、資産価値の測り方が変わりつつあることを意味します。築何年かという一点で価値を測る時代から、どのように管理され、どんな再生の道が描けるかで価値が決まる時代へと、ゆるやかに移り変わっていくでしょう。
その流れのなかで投資家に求められるのは、法改正を受け身で眺めるのではなく、自分の物件にとっての意味へと翻訳していく姿勢です。
管理規約は対応しているか、修繕の備えは足りているか、出口は描けているか。こうした問いに一つずつ答えていくことが、これからの資産価値を守る確かな手立てになります。
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