不動産投資

人気上昇中の「ペット可」物件 メリット・デメリットは?

日本はペットブームと言われて久しく、ペットと暮らすことは一つの文化としてすっかり定着しています。それを受けて「ペット可」のマンション物件が多くなっていることにお気づきの方も多いのではないでしょうか。

自分自身にペットを飼ったことがある経験があれば「ペット可」の物件の価値がよくおわかりになると思いますが、そうでない方にとっては価値が今ひとつわかりづらいかもしれません。

しかし、不動産投資の成功に「ペット可」が深くかかわっているとなると、話は別です。好き、嫌いにかかわらずペットを飼いたい人たちをマーケットと見るかどうかはビジネスセンスが問われます。ますます多くなっている「ペット可」のマンション物件。賃貸物件のオーナーはどのように考えればよいのでしょうか。

1.ペット可物件のニーズ

一般社団法人ペットフード協会が毎年行っている「全国犬猫飼育実態調査」によると、全国の犬の飼育率は2012年以降減少傾向にあり、2021年の調査でもその傾向は続いています。それに対して猫は飼育頭数、飼育率ともに増加しており「犬低猫高」の傾向が続いています。

一方で、「今後の飼育意向」(飼いたい・飼い続けたい人の割合)を見てみると、犬に関しては、年々意向が低下しているものの、それでも2021年時点では、18.4%の人たちが飼いたいと考えており、依然としてペットとしての高い人気を維持していることがわかります。猫の飼育意向についても2021年のデータでは15%で、こちらもペットとしての高い人気を維持していることがわかります。

また、年代別に「今後の飼育意向」を見ると、20代の意向が他の年代よりも高く、この傾向は犬、猫ともに共通しています。20代の飼育意向を見ると犬が21.6%で猫が16.6%です。ただし、これらの数値は突出しているわけではなく、他の世代と比べると若干多い程度になります。

ペットを飼いたいというニーズの背景には、少子高齢化や、未婚層の増加(単身化)があると言われています。若者が集まる大都市部で、「ペットを飼いたい」というニーズは高まっていると考えられます。

もうひとつ見逃せないのが、2020年から端を発した新型コロナウイルスの感染拡大による影響です。ステイホームが推奨されることによって自宅にいる時間が長くなり、その時間を有意義なものにするためや精神的な癒しを求めてペットの飼育を志向する人が多くなったことも考えられます。

同調査では新型コロナウイルスの影響についても調査結果を発表しており、犬を飼っている人の36.5%の人が「心穏やかに過ごせる日が増えた」と回答、猫を飼っている人の42%が「毎日の生活が楽しくなった」と回答しています。

実に半数近くの人が、コロナ禍にあってもペットがいたおかげでプラスの影響を受けていることがうかがえます。

1-1.ペット可物件にするメリット・デメリット

そうしたニーズの高まりに対応するように、賃貸情報サイトでも「ペット可物件特集」が組まれたり、ペット可物件に強いことを打ち出す不動産会社も出てきたりしています。中にはペットと暮らすことを前提に設計された「ペット共生型」のマンションなども建てられているほどです。

すでにペットを飼っている人が引っ越しをする場合、そのペットを手放さない限りはペットの飼育が認められている物件だけが選択肢になります。この時点でペット可物件にしていることで差別化が図られるわけですが、その一方でペット可物件にすることによって特有のデメリットやリスクもあります。

それでは、物件のオーナーから見た場合、「ペット可」にすることにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

1-2.ペット可物件にするメリット

まず、メリットのひとつとして、空室対策になるという点が挙げられます。
「ペット可」の賃貸物件は全体の10%前後と見られており、飼いたい人のニーズに対して絶対数が不足しています。そのため、空室が出た際に「ペット可」物件として入居者を募集すれば、早期に入居者が付く可能性は高まるでしょう。

また、一度入居した人が長く入居し続けてくれる傾向があるのもメリットです。ペットの飼育が可能な物件が少ないことは入居者自身がよく知っていることであり、せっかく見つけたペット可物件だけによほどの理由がない限り転居はしないと考える人が大半です。

入居した人が長く住み続けてくれることもオーナーにとっては収益の安定性に寄与するので、不動産投資家にとって重要なメリットです。

もうひとつ、入居者が立地をあまり重視しないということもメリットと言えるでしょう。ペットを飼う人は、安心してペットと暮らせることを求めています。駅から遠いなど多少の不便がある立地でも、「ペット可なら」と妥協する傾向が強いのです。また、そうした物件は、購入価格が抑えられるので収益性も良くなります。

1-3.ペット可物件にするデメリット

次に、ペット可物件にすることによるデメリットについても解説しましょう。

実際のところ、多くのオーナーが「ペット可」にすることを避けたがるのは、ペット独特の臭いや鳴き声が、住民同士のトラブルを引き起こしやすいと考えるからです。また、壁や床に傷を付けられたり、部屋に臭いが付いてしまったりすると、リフォームの費用がかさむということもあります。敷金を多めに設定するなどの対策はあるものの、デメリットだと考えるオーナーは多くいます。

また、もともとはペット不可だったマンション物件をペット可に変更すると、既存の入居者からの理解が得にくいという問題があります。ペット不可であるから入居している人もいる可能性があるため、それがある日突然ペット可になったとすると、「話が違う」となってしまいます。

既存の入居者がいるマンションでペット可に変更する場合は、十分な説明をして同意を得てから行う必要があります。

2.ペット可物件にする時のポイント

ペット可物件にする際に、押さえておきたいポイントは5つあります。以下の点を押さえたうえでペット可物件にすることにより、収益性の向上とリスクの抑制を両立できます。

2-1.原状回復条件を細かく設定する

ペット可物件にすると、ほとんどの場合ペットを飼育している人が入居します。つまり、犬や猫をはじめ何らかの動物が暮らすことになります。

猫を飼ったことがある方であればおわかりになると思いますが、猫は壁などで爪を研ぐ習性があります。それ以外の動物についても糞尿の問題など、室内を破損、汚損するリスクは高くなります。

そこで入居前にしっかりと原状回復の条件を設定しておいて、それに同意してもらう必要があります。入居前であれば動物を飼うことによるリスクを承知している飼い主も多いので同意を得やすいですし、しっかりと書面を取り交わしておけばトラブルに発展するリスクを軽減できます。

2-2.最初からペット可の物件を購入する

ペット不可だった物件を購入してからペット可にすると、区分マンション投資の場合は近隣の住人とのトラブルが起きやすくなります。すでにペット可のマンションであれば近隣の住人もペットを飼育している可能性が高く、「お互い様」という意識も働きやすくなります。

また、ペット可の物件は室内が汚損していることもあるため、それを理由に安く購入できる可能性もあります。

2-3.建物の一部がペット可の物件は避ける

上記のポイントと似ている部分ですが、マンション全体がペット可になっている場合と、一部だけがペット可になっている場合があります。前者の場合は近隣の住人もペットを飼っているか、もしくはペットがいることに対して理解がある人がほとんどでしょう。

しかし、一部だけペット可としているマンションだと事情が異なります。すでに述べているように既存の入居者、近隣の住人の全員がペットを容認しているとは限らず、些細なマナーの問題でトラブルになる恐れがあります。

これから物件選びをする場合には、ペット可にするのであればマンション全体がペット可なのか、一部可なのかをしっかりチェックしましょう。

2-4.飼育可能なペットの規定を設ける

当記事ではペットとして犬や猫を想定していますが、「ペット可」と書かれているだけだとどんな動物でもペットなのであれば飼ってもよいとも解釈できます。犬や猫に準ずる動物としてフェレットやウサキなどであれば問題ないかもしれませんが、動物によっては大きな鳴き声を出したり部屋を著しく汚損する恐れがあります。

小動物なので問題がなさそうに見えますが、セキセイインコなどの小鳥は意外に大きな影響が出ます。小鳥の鳴き声は音が響きやすく、鳥かごから出して室内を自由に飛ばせていると糞尿によって人間の目が届かないような場所が汚損したりします。

これを防ぐのに最も有効なのは、入居者と取り交わす規定において飼育可能なペットをあらかじめ指定しておくことです。あまりにも奇抜な動物まで想定する必要はないと思いますが、飼育してよい動物を列挙してそれ以外の動物については不可としておくことで、問題を未然に防ぐことができます。

よくあるのが、「観賞用の小鳥で近隣に迷惑をかける恐れがない動物」といった文言です。これだと小鳥であればすべて問題なしと解釈する入居者もいるので、こういったあいまいな表現はせず動物名をしっかりと記載しておくことをおすすめします。

飼育可能な動物の指定と加えてもう一点、忘れてはならないのが飼育数の指定です。猫を飼ってもよいと規定されていてもワンルームマンションに10匹以上の猫がいる状況を考えると、もはや説明は不要かと思います。飼育可能な動物の指定と、飼育可能頭数の指定をしておくことで常識を逸脱したなペットの飼育問題を回避できます。

2-5.ペット用設備を整える

最近増えているペット共生型のマンションでは、ペットと暮らすことが前提になっているため共用部分の施設が充実しています。犬の散歩から戻ってきたときのために共用部分に足洗い場やグルーミングルームを設置するなど、こうしたマンションはペットと暮らしたい人たちから高い人気を集めています。

そのほかにも壁や床の建材に汚れがつきにくく洗い流しやすい素材を使用していたり、消臭効果の高い建材を使用するなど、ペットと暮らすための仕様にすることは入居者の満足度を高めるだけでなくマンションの資産価値を高める効果もあります。

3.一度「ペット可」にしたら戻れない?

さて、こうしたメリット・デメリットを踏まえたうえで、オーナーとしては「ペット可」という物件をどう考えるべきでしょうか。

まず区分所有の場合は、「ペット可」物件への条件緩和は、同じマンション内の他のオーナーとの兼ね合いもあり難しいといえるでしょう。

また、一棟マンションのオーナーの場合も、一度「ペット可」にすると「ペット不可」には戻しにくいので、安易には決められません。ペットと暮らしたい人のニーズが高まっているとは言え、全体から見れば、飼いたいと思っていない人のほうが多いのです。

最初から「ペット可」を想定して建てられた物件ならともかく、そうでない物件を後から「ペット可」に変える場合は、すでに住んでいる入居者からの反発も考えられます。仮に他の入居者の同意を取り付け、全室「ペット可」にしたとしても、今度はペットと住むつもりのない入居者が物件を避ける可能性も出てきます。

ちなみに、新築分譲マンションの大半はペット可となっています。これは裏を返すと「ペット可にするとマンションが売れる」とディベロッパーが考えているからであり、ニーズをくみ取った結果です。それだけニーズが高いことは明らかなので、空室リスクへの対策として検討する価値はあります。

「ペット可」にするかどうかは、入居者のライフスタイルと大きく関わっており、物件のコンセプトと言えるでしょう。トレンドに流されるのではなく、「投資」という観点からもよく考えたうえで、判断するようにしましょう。

3年以上勤めた会社員へ。
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