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賃貸経営にリノベーションは必要?中古マンション投資をするなら知っておくべきこと

中古の物件に手を加え、プラスアルファの価値をつけることで、賃貸経営は成功しやすくなります

しかし、どこにどのような手を加えればよいのか、どの程度までお金をかけるべきなのかなど、わからないことも多いのではないでしょうか。

本記事では、中古不動産で賃貸経営をする方向けに、物件のリノベーションにどのような価値があるのか、また、リノベーションを行う価値のある物件の探し方などについて、わかりやすくまとめています。

賃貸経営にリノベーションは必要?中古マンション投資をするなら知っておくべきこと

1.リノベーションで賃貸経営がうまくいく7つの理由

物件に手を加える方法には、リフォームとリノベーションがあります。

一般的に、リフォームは劣化した部分を新品に近い状態に戻す工事、リノベーションは現状よりも資産価値を高めるための工事を指します

「中古物件にお金をかけて直すよりも、新築を買ったほうがいいのでは?」と思うかもしれませんが、不動産投資・賃貸経営を行うなら、中古物件にリノベーションを施すほうが成功しやすいケースも多くあります。ここでは、その理由を7つ紹介します。

  1. 新築より低価格で買える
  2. 利回りをコントロールしやすい
  3. 資産価値をアップできる
  4. 購入エリアの選択肢が広がる
  5. エリアに合った物件にリノベできる
  6. ライバル物件と差別化しやすい
  7. 時代に合った設備にできる

1-1.新築より低価格で買える

新築と比べて、中古物件は売買価格が低いため、賃貸経営を始める際に必要な物件購入額を抑えることができます。購入額が下がれば、毎月の返済負担や金利負担も軽くなります。そのため、同じ不動産投資を始めるのであれば、中古のほうが有利だといえるでしょう。

法律上、「新築」とは「新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く)」と定義されています。

つまり、新築物件を購入しても、その価値が「新築」として認められるのは初期段階だけです。
長期的に運営していく賃貸経営においては、新築かどうかが経営成績に直接影響するとは限りません。

すでに築年数の経った物件を所有している場合でも、わざわざ買い替えをしなくても、リノベーションによって以前より資産価値の高い状態から再スタートを切ることができます。

1-2.利回りをコントロールしやすい

賃貸物件にリノベーションを施すと、利回りをコントロールしやすくなります。利回りとは、物件に投資した金額に対して、どのくらいの収益が得られるかを示す、不動産の収益力を数値で表した指標です。

例えば、空室期間が長く利回りが下がっている和室の物件に、畳をフローリングに変更するリノベーションを行うと、「洋室」として募集できます。洋室のほうが和室より人気があるため、賃料を上げても入居が決まりやすくなり、結果的に利回りも改善されます。

リノベーションは、室内全体を改修するフルリノベーションから、部分的な改修まで、予算や経営状況、部屋の状態に応じて柔軟に選ぶことができます。そのため、物件の収益性を自分で調整しやすくなるのです。

利回りには主に「表面利回り」と「実質利回り」があり、それぞれ以下のように算出されます。不動産物件情報には、一般的に表面利回りが記載されています。

表面利回り:年間の家賃収入 ÷ 物件の取得価格 × 100
実質利回り:(年間の家賃収入 − 年間の維持費)÷(物件の取得価格 +諸費用)× 100

いずれも、数値が高いほど投資額の回収スピードが早くなります。

1-3.資産価値をアップできる

中古物件の資産価値に影響を与える主なポイントは、以下の4つです。

A.築年数
B.立地条件
C.機能・設備・間取り
D.管理状態

この中で、人の手によって変更を加えられるのは、Cの機能・設備・間取りと、Dの管理状態です。ただし、Dの管理状態については、不動産管理会社などの専門会社が担当することが多いため、オーナーが資産価値向上に直接関われるのは、Cのリノベーションになります。

中でも、キッチン・浴室・トイレなどの水回りを良くすることは、見た目や使い勝手の向上に加え、物件の寿命を延ばすことにもつながるため、資産価値のアップに直結します。

例えば、1つのマンションに同じ広さの部屋が複数あっても、間取りや設備が新しくなっていれば、「ここに住みたい」と思う入居希望者は多くなるでしょう。このように、リノベーションは賃貸経営においてプラスに働く有効な手段です。

1-4.購入エリアの選択肢が広がる

中古物件は、新築以外のすべての物件が対象となるため、その流通数は圧倒的に多く、購入できるエリアの選択肢も広がります

選択肢が増えれば、人気エリアに絞って探すこともできますし、その中から「駅から近い」「周辺に便利な施設がある」など、条件の良い立地を選ぶことも可能です。

さらに、日当たりや建物のデザインなど細かい条件にもこだわって、自分が納得できる物件を探し出すことができます。そのうえでリノベーションを施せば、好条件がそろった人気の出やすい投資物件に仕上げることができます。

1-5.エリアに合った物件にリノベできる

エリアには、その地域ならではのライフスタイルがあります。

例えば都心部であれば、通勤・通学に便利なアクセスの良さを重視するアクティブなライフスタイルの方が多く住んでいます。一方で、少し郊外に出ると、自然の豊かさや安全性を重視した、子育て世帯向けの落ち着いた暮らしを求める層が多くなります。

このように、エリアには住む人のライフスタイル傾向があるため、リノベーションを行う際にも意識しておくと、入居希望者とのマッチング率が高くなります。

長年所有していて、地域や時代の感覚と合わなくなってきた物件でも、リノベーションによって、現在のニーズに合った物件へと生まれ変わらせることができます

1-6.ライバル物件と差別化しやすい

賃貸物件のオーナーは、より多くの入居希望者に選んでもらいたいという思いから、内装や設備を「無難」なものにしてしまいがちです。その結果、どこにでもあるような部屋になってしまい、入居に結びつかないこともあります。

物件は、古くなるほど個性を出していかないと、周辺のライバル物件との差別化が難しくなります
特に新築や築浅の競合物件があるエリアでは、リノベーションによって特徴や魅力を出すことで、「ここに住みたい!」と思ってもらいやすくなります。

1-7.時代に合った設備にできる

入居希望者の中には、「こんな設備があったら便利」「いつかはこういう暮らしをしてみたい」といった潜在的なニーズを持つ人もいます。

リノベーションでは、そうした希望を取り入れることで、より魅力的な物件づくりが可能になります。

入居者が物件選びで重視する設備は、大手不動産ポータルサイトの「こだわり検索」によく反映されています。気になるエリアで実際に検索してみると、人気の設備や仕様の傾向が見えてきます。

例えば、以下のような設備が挙げられます。

キッチン システムキッチン、IH、2口以上のコンロ
バス・トイレ バストイレ別、追い焚き機能、浴室乾燥機、独立洗面所、温水洗浄便座
冷暖房・その他 エアコン、床暖房、室内洗濯機置き場、省エネ設備など
セキュリティ オートロック、モニター付きインターホン、宅配ボックス
インターネット環境 フリーWi-Fi、CATV、スマホ連動型家電
収納 ウォークインクローゼット、屋外倉庫

ただし、すべてを一度に導入する必要はありません。人気物件の設備を参考にしながら、無理のない範囲で段階的に追加していくのが現実的です。具体的には、リノベーション時にまとめて工事しておくものと、あとから個別に設置できるものを分けておけば、入居者の反応や経営状況を見ながら柔軟に対応できます。

2.リノベーションに適した賃貸物件選びの7大法則

中古物件で不動産投資を始めようと決めたら、次は物件探しです。ただし新築とは異なり、中古物件は一つひとつ状態や条件が異なるため、リノベーションを前提に物件を見る視点を持っていないと、あとでトラブルに発展する可能性もあります。

物件選びは、不動産会社や不動産投資会社などのプロフェッショナルと一緒に進めたほうが、リノベーションに適した良質な物件に出会える確率が高くなります。すでに所有している物件をリノベーションする場合でも、これから購入する場合でも、以下の7つの法則に沿って物件をチェックしてください。

  1. 構造と耐震性の確認
  2. 築年数と設備などの確認
  3. 配管や配線を変えても良い物件か
  4. 適切な平米数があるか
  5. マンションの管理体制をチェック
  6. ライバル物件との差別化ができるか
  7. 頼れるパートナー会社の存在

2-1.構造と耐震性の確認

マンションの本体構造に手を加えることはできないため、リノベーションが可能なのは専有部分、すなわち室内に限られます。また、室内であっても、地域や建物の規制により、希望する工事ができないこともあります。特に耐震に関する問題や、共用部分に影響を及ぼす可能性のある工事は、理論上は可能でも、実際には実施できない場合もあります。

リノベーションの計画は物件ありきで立てるものです。事前に規制の有無を確認しながら、自由度の高い物件を選ぶようにしてください。

耐震性については、1981年(昭和56年)以降の「新耐震基準」に適合している物件に絞るのが安全です。それ以前に建てられ、必要な耐震工事が行われていない物件は、将来的に工事が実施される際に、所有者として費用を負担しなければならない可能性があります。耐震基準を満たしていない物件で賃貸経営を始めた場合、大規模な地震が発生し、入居者に被害が出た際には、所有者が一部の回復費用を負担しなければならないリスクもあります。

こうした理由から、希望するリノベーションが可能かどうかも含めて、プロフェッショナルに相談しながら物件を検討することをおすすめします。

2-2.築年数と設備などの確認

一般的に、建物本体よりも附帯設備のほうが先に劣化します。リノベーションができるのは専有部分のみであり、建物全体や共用部分には自由に手を加えられないため、事前にその状態をしっかり確認しておくことが重要です。

例えば、エレベーターや共用廊下、エントランスなどの設備や、照明、水回りの管理状況もチェックしておきましょう。これらが破損・汚損したまま放置されている建物は、管理不全により将来的に不具合が起こる可能性があります。

共用部分は、所有者や入居者であっても勝手に修理することはできません。管理が行き届いていない建物は、時間の経過とともに敷地内や建物全体が劣化していきます。投資物件の場合、画像や書類だけでは判断が難しい部分もあるため、不動産会社へ確認を依頼することが必要です。

2-3.配管や配線を変えても良い物件か

間取り図や設計図をもとに、配管や配線の位置を確認し、どこまで変更が可能かを見極めることが重要です。主な配管・配線には以下のような種類があります。

  • 給水に関わるもの:給水管、給湯管
  • 排水に関わるもの:排水管、汚水管
  • ガス管
  • 電気配線、インターネット配線

マンションでは、床下の配管のすぐ下に階下の住戸があるため、配管の位置変更には構造上の制約があります。また、配線は主に天井部分にあり、その上には上階の床があります。配管に比べると変更の自由度は高いものの、スケルトン天井にする場合などは、遮音性が下がることもあるため注意が必要です。

このように、配管や配線が変更できるか、またその変更によって住み心地に影響が出ないかをあらかじめ確認することが大切です。

2-4.適切な平米数があるか

物件の広さは、リノベーションの計画を立てるうえで重要な要素の一つです。専有面積の大小によって、可能な工事内容や入居ターゲットが変わってくるため、あらかじめ平米数をよく確認しておく必要があります。

例えば、38〜50平米程度の広さがあれば、間取りの自由度も高く、複数の居室を設けるといったレイアウト変更もしやすくなります。一方で、25平米前後のワンルームや1Kなどのコンパクトな物件であっても、ポイントを絞ったリノベーションによって使いやすさや快適さを高めることは十分に可能です。

重要なのは、平米数に見合った改修内容を選び、入居者のニーズに適した空間に仕上げることです。

また、想定する入居者層によって「広すぎる」「狭すぎる」と感じる基準も異なるため、エリア内の競合物件を参考に、ニーズに合った適正な広さを見極める視点も欠かせません。

物件選びに迷ったときは、不動産会社などの専門家に相談しながら、経営方針に合った平米数の物件を選ぶのが現実的です。

2-5.マンションの管理体制をチェック

せっかく費用をかけてリノベーションをしても、マンションの管理状態が悪ければ、安定した賃貸経営は期待できません。一般的に、賃貸マンションの管理は、所有者から委託を受けた不動産管理会社が担当しています。

管理の行き届いていない建物では、エントランスにチラシが散乱している、共用部にゴミや汚れが放置されている、自転車置き場が乱雑といった状況が見られ、このような物件は、内覧時の印象が悪くなり、入居につながりにくくなります。仮に入居が決まったとしても、住み心地の悪さから、短期間での解約や更新拒否につながる可能性があります。

そのため、管理状態が悪い物件は、リノベーションによる改善効果が発揮されにくく、投資先としては慎重に検討すべきです。管理状況は現地で確認するのが最も確実ですが、不動産会社に敷地内や共用部の写真や動画を依頼すれば、ある程度の判断材料になります。

なお、分譲マンションを賃貸に出す場合には、管理組合による建物管理が行われていますが、実務面は管理会社に委託されていることがほとんどです。また、リノベーションが可能であっても、管理規約によって賃貸が禁止されている場合がありますので、事前の確認が必要です。

2-6.ライバル物件との差別化ができるか

中古物件の選択肢は豊富にあるため、できるだけライバル物件に勝てる要素の多いものを選ぶことが重要です。リノベーション前提であれば、自力で変更できない立地条件や周辺環境などを重視して選定するべきです。

例えば、駅から近い、生活利便施設が豊富、人気エリアに徒歩でアクセスできるといった条件は大きな差別化要素になります。そのような立地条件に合わせてリノベーションを行えば、エリアに根ざしたライフスタイル提案が可能な、魅力的な賃貸物件が完成します。

差別化によって個性を出すことで、万人受けはしにくくなりますが、エリアを気に入り、ライフスタイルに共感する入居者を呼び込めるようになります。その結果、長期的な契約・更新につながりやすくなります。

2-7.頼れるパートナー会社の存在

物件探しを成功させるには、不動産に関する基礎知識と豊富な情報が必要です。賃貸経営者の中には、法人として取り組んでいる方や、個人でもプロ並みの知識を持つ方がいるため、そのような先行者と同じように優良物件を手に入れるのは簡単ではありません。

そこで重要になるのが、信頼できるパートナー会社の存在です。不動産投資や賃貸経営に精通した会社であれば、所有や運営に関する悩みや疑問にも適切なアドバイスをしてくれます。また、多くの会社が自社で優良物件を確保しており、厳選された物件を複数紹介してもらうこともできるため、条件に合ったものが見つかりやすくなります。

本章で紹介したチェックポイントをすべて満たすような物件に出会うには、自分自身で情報を集める努力も必要ですが、それと同じくらい、信頼と実績のある会社によるサポートも欠かせません。

3.【やるならココ!】限られた予算で優先すべきリノベの5リスト

【やるならココ!】限られた予算で優先すべきリノベの5リスト

物件購入のめどがついた、または所有の物件にリノベーションをすることが決まった場合、工事はどこから手を付けるべきなのかを、優先順位の高い順に5つにまとめました。予算の範囲で、工事を上から順番に選択してください。

費用は室内の状態や配管・配線の状況によって変わりますので、複数の施工会社に見積依頼をかけて、費用とプランの比較をしてください。購入前の物件であれば、不動産会社に問い合わせをすれば、工事費の概算を教えてもらえます。

もちろん、予算に問題がなければ、間取りから配管までを変えられるフルリノベーションも検討してみてください。

  1. キッチン
  2. バス・トイレ・洗面台
  3. 収納スペースを増やす
  4. 内装インテリア
  5. 省エネ化・IT化

3-1.キッチン

一番に手を付けるべきなのは水回りですが、水回りはキッチン・バストイレ・洗面所などを含めて範囲が広いため、予算の都合からどれかを選ばなければならないことがあります。その場合、他が壊れていないのであれば、キッチンを優先してください。

部屋探しをする人にとって、キッチンは毎日の生活にダイレクトに関係する場所ですので、キッチンが素敵だと、部屋全体の印象も良くなり、契約につながりやすくなります。大手ハウスメーカーはこのことをよく理解していますので、分譲マンションのモデルルームはどこも、デザイン性と機能性を両立させた、魅力的なキッチンを採用しています。

リノベーションを進める際は、まず部屋全体のテーマを決めてから、それに合わせてキッチンのデザインを選ぶようにします。例えば、室内の内装の色をテーマに沿って2~3色に決め、それに沿ったシンクや扉の色にするなどで、部屋の統一感とおしゃれさを演出できます。

機能に関しては、可能であればシステムキッチンを採用してください。それ以外の選択肢でも、なるべく使いやすいもの、機能が充実しているものを選びましょう。

3-2.バス・トイレ・洗面台

現在の主流はバス・トイレ別の間取りです。そのため、浴室・トイレ・洗面台が一体となった3点ユニット型の設備である場合は、浴室と洗面台の2点ユニットにするか、すべてを独立させるリノベーションを検討してください。

中でも最も重要なのは、トイレを独立させることです。独立洗面台の設置は部屋の広さに影響するため、間取りに無理がある場合は優先順位を下げても問題ありません。

水回りの交換時には配管のチェックも可能ですので、築20年以上の物件では、現時点で問題がなくても交換しておくほうが、将来的なトラブルの予防になります。

浴室には浴室乾燥機を設置しておくと、物件検索の「こだわり条件」に合致しやすくなります。設備のデザインに選択肢がある場合は、部屋全体のトーンと調和するものを選んでください。

3-3.収納スペースを増やす

賃貸の収納の問題は、収納が少ない、または収納が使いづらい、のどちらかです。どちらの場合でも、入居者候補は内見時に住みづらさを連想するため、同じ家賃であれば、収納力が高いほうを選びます。

リノベーション予算が限られている場合は、より重要な場所の工事のついでに、室内のデッドスペースを活用し、横板だけの棚を作るなどで収納力を上げることができます。例えば、トイレや洗面台の上部、キッチンの構造壁の凸凹などが使えます。さらに天井に沿って、壁掛けタイプの吊り戸棚を設置すれば、かなり収納力が上がります。

大掛かりなリノベーションができる場合は、壁一面を収納にするなどで、本格的な収納ができるようになります。和室があった部屋であれば、押し入れを使って奥行きのあるウォークインクローゼットにすることもできます。

どの場合も、使う収納材質のトーンを、室内の色味とそろえることで、統一感のあるおしゃれな印象になります。

3-4.内装インテリア

古い壁と床の張り替えをすると、おしゃれな内装に見えます。まずは部屋のテーマを決めて、そのイメージに合わせた壁紙と床材を選びます。床と壁のどちらか一つしかできないのであれば、直に触れることが多い床を優先してください。

壁は今現在の仕様に合わせ、クロスならクロス、塗装なら塗装にしておくと、下処理の工程が少なくなるため、工費が抑えられます。

多くの賃貸物件ではクッションフロアを使っていますが、せっかくお金をかけてリノベーションをするのであれば、品質の良さをアピールできる、無垢フローリングかフロアタイルを検討してください。無垢材は足元が冷たくなりにくく、すべすべと肌触りが良いので、住み心地の良い物件になります。内覧で入室したときにも、木の良い香りがしますので好印象です。

フロアタイルは見た目こそ木材ですが、実は塩ビのタイルです。壊れたところだけを交換できるので、コストを抑えて長く使えるタイプの床材です。壁と床のどちらであっても、下地・構造・断熱材の点検と補強をしておくことをおすすめします。

3-5.省エネ化・IT化

省エネ化とは、断熱窓や給湯器などによる、住環境改善につながる工事のことです。明らかに住宅としての性能がアップしますので、これもリノベーションです。

例えば、窓リノベとして二重サッシや断熱効果の高い窓、ドア扉に変更すると、室温を一定に保ちやすくなります。また、夜間電力や太陽光でお湯がわかせる給湯器を使えば、電気代やガス代の節約ができます。賃貸物件でも補助金の利用ができますので、積極的に取り入れたいリノベーションのアイデアです。

IT化とは、スマートホーム化とも呼ばれる、スマホを使った利便性の高い暮らし方のことです。例えば、玄関のオートロック・カメラ付きインターホン・エアコンや照明・キッチン家電・給湯器などを、スマホアプリやスマートスピーカーを使って操作します。

外出先でもアプリを使って操作ができるため、仕事先から浴槽に湯をためる、エアコンの温度を操作するなどができます。すべての機能にWi-Fi環境が必要となるため、まずはフリーWi-Fiを導入するだけでも十分な第一歩になります。

4.賃貸経営のリノベーションで注意する5ポイント

より良い賃貸経営とリノベーションを検討している方向けに、あらかじめ注意しておくべきことを5つにまとめました。それぞれの注意点では対策も紹介していますが、間取りと配管をすべて見直すようなフルリノベーションを行えば、ほとんどの問題はクリアできます

  1. 思いもよらない物件トラブルの可能性
  2. 管理規約には神経質になっておく
  3. 融資条件は厳しくなる
  4. コスト管理はシビアに
  5. プロの意見を取り入れる

4-1.思いもよらない物件トラブルの可能性

中古物件では、図面上に問題がなくても、実際にリノベーションで壁や床をはがしてみると、思わぬトラブルが隠れていることがあります。例えば、水漏れやカビ、サビの発生、配管・配線がコンクリート内に埋め込まれている、床下の構造が図面と異なるなどです。

特に、過去に複数回売買された物件では、古いリフォームやリノベーションの履歴が一部記載されていないケースがあり、プロが図面を見ても判断できないことがあります。

4-1-1.対策

過去に自身や家族が使用していた物件であれば、ある程度の状態は把握できているため、こうした問題は起きにくいといえます。それでも念のため、リフォーム履歴を確認し、住んでいた家族にも状況を聞いておくと安心です。

中古で購入した物件に契約不適合責任が付いていれば、発覚した不具合に対し、売主に工事費用の負担を求めたり、売買契約自体を無効にしたりすることも可能です。一方、契約不適合責任が付いていない場合、購入者自身で対処しなければなりません。

このようなリスクのある物件は、他にも問題を抱えている可能性があります。思い切ってフルリノベーションを実施すれば、構造面を含めて状態を一新でき、結果的に安全で快適な物件に生まれ変わります。
その際は、設計力と提案力を兼ね備えた不動産会社および施工会社をパートナーに選ぶことが重要です。

4-2.管理規約には神経質になっておく

分譲マンションを賃貸物件として貸し出す場合、まず確認すべきは管理規約です。管理規約とは、マンション内での生活や建物の使用に関するルールであり、マンションの専有部分や共用部分の使用方法、管理組合や理事会の運営に関する事項などが定められています。

マンションは区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)により、管理規約の作成が義務づけられているため、規約のないマンションは存在しません。リノベーションに関するルールは、通常「専有部分の修繕等」の項目に記載されています。

細則が多い場合、そのマンションでは過去のトラブル経験などから、リフォーム・リノベーションに対して敏感になっている可能性があります。こうした物件では、工事を行う際も細心の注意が必要です。

4-2-1.対策

所有の分譲マンションにリノベーションをする場合は、賃貸として貸し出せるかどうかを事前に確認してください。万が一、賃貸利用が禁止されていれば、いくらリノベーションをしても経営にはつながりません。

これから分譲物件を購入する場合も同様です。仲介業者がリノベーションや賃貸可否の確認を行っていたとしても、必ず自分でも管理規約や細則を取り寄せ、内容を確認することが必要です。

特に注意すべきは「遮音規制」です。規制が厳しい場合、床材や壁材の変更に制限があり、マンション指定の建材以外を使えないことがあります。場合によっては、壁に穴を開けられない、配線の引き込みができない、水回りの位置変更が禁止されているといったケースもあり、自由なリノベーションが難しくなります。

また、マンションによっては、管理組合が指定した施工会社以外は使用できなかったり、工事期間が制限されていたりすることもあります。ただし、すでに所有している物件の場合は、その建物に詳しい施工会社が、現実的かつ効果的なリノベーションプランの提案をしてくれることもあります。

これから物件を購入する方は、できるだけ自由度の高いリノベーションが可能な物件を選ぶようにしてください。

4-3.融資条件は厳しくなる

賃貸物件のリノベーションにもローンは利用できますが、融資条件は決して甘くはありません。特に、旧耐震基準の物件では、建物の老朽化や耐震性がネックとなり、審査が通りにくい傾向があります。物件を選ぶ際は、築年数や建築年度の確認が必須です。

融資審査では、申込者の年齢・職業・年収・勤続年数といった社会的属性に加え、返済負担率も重視されます。返済負担率とは、年収に対する年間ローン返済額の割合で、一般的に20%以内が理想とされています。これを超えるような借入は、属性が良くても審査に通らない可能性があり、たとえリノベーションによって資産価値を高める計画でも、融資は「無理のない範囲」に限られることが前提となります。

また、物件と融資をセットで紹介してくれる不動産会社を通じて購入する場合、リノベーション済みの物件であっても、借りる人に対する審査基準は、リノベーションをしていない物件と変わりません。そのため、借入可能額に大きな差は出にくく、購入できる物件価格にも一定の制限が生じると考えておくべきです。

一方で、物件自体の担保評価については、リノベーションによって上がる可能性があります。特に、物件の収益性を基にした「収益還元法」で評価する金融機関の場合、得られる家賃収入に築年数に応じた利回りを掛けて評価額を算出するため、路線価よりも高い評価がつくことがあります。このとき、リノベーションによって「得られる家賃が上がる」「評価利回りが下がる(築年が若返ったとみなされる)」といった効果が重なることで、担保評価が大きく上昇するケースもあります。

ただし、いずれの場合も、「借入できる金額」には限度があり、資金計画は慎重に立てる必要があります。リノベーションによる価値向上が見込めたとしても、ローン審査はあくまでシビアであるという前提を持っておきましょう。

4-3-1.対策

リノベーションは、物件の資産価値を高めるための投資です。金融機関に融資を申し込む際には、どのような価値が付加される工事なのかを、見積書やプラン書などの書類で明確に示すことが重要です。具体的な工事内容と費用の内訳がはっきりしていれば、審査もスムーズに進みやすくなります。

また、借入額に対する返済計画についても、複数パターンのシミュレーションを行い、無理のない経営計画を組んでおくことが大切です。施工会社にはあらかじめ複数のプランと見積書を依頼し、内容や費用を比較検討しておくと安心です。

もし、旧耐震基準の物件で融資が通りにくい場合は、自己資金で対応できる範囲の小規模なリノベーションを、段階的に進めていく方法もあります。リノベーションのタイミングは、入退去のたびに訪れるため、一度に大きなローンを組んで全面改修を行わなくても、時間をかけて少しずつ価値を高めていくことが可能です。

4-4.コスト管理はシビアに

リノベーションにどのくらいの費用をかけるべきかは、コストから逆算して考えることが大切です。費用対効果を見極めるには、工事後に家賃がどれだけアップするかを想定したうえで、次のような回収シミュレーションを行います。

工事費用 ÷(月あたりの家賃アップ額 × 12ヵ月)= 回収期間(年)

例えば、300万円のリノベーションを行い、家賃が月1万円アップした場合、
300万円 ÷(1万円 × 12)= 約2.5年
となり、およそ2年半で回収できる計算になります。

この計算をもとに、毎月の家賃のうち、何%分を返済にあてるかをシミュレーションし、無理のない返済計画を立てることが重要です。

なお、リノベーションによって物件の資産価値自体が上昇している場合は、家賃アップによる回収期間に加え、評価額アップの効果も含めて「実質的な回収期間」が短縮されるケースもあります。そのため、数字上の損益だけで判断せず、将来的な担保価値や売却価格の上昇も視野に入れてコスト管理を行ってください

4-4-1.対策

上記の試算は、物件にリノベーション費以外の返済がない場合を前提としています。しかし、物件購入のためにローンを組んでいる場合や、すでに所有している物件に返済中のローンがある場合は、それらも含めた総返済額を踏まえて計画を立てる必要があります。

前項で述べた返済負担率(年収の20%以内が目安)を基準に、リノベーションローンとその他のローン返済を合わせた総額が、その範囲に収まるようにシミュレーションを行いましょう。そのうえで、無理なくリノベーションに充てられる金額がいくらかを明確にし、現実的な予算を決めていくことが重要です。

なお、不動産会社からリノベーションの提案を受ける場合は、返済計画を含めたコストシミュレーションを一緒に出してもらえることもあります。活用できるサポートは積極的に取り入れましょう。

4-5.プロの意見を取り入れる

リノベーションをすれば、物件の印象や住み心地が大きく変わり、満足度の高い空間に仕上がります。ただし、それだけ費用もかかるため、「どこまでやるべきか」で悩むオーナーは少なくありません。

間取りや配管といった構造部分に手を加え、物件に新たな価値を付加する経験は、一般の方にとってはなじみが薄く、複数のプランを提示されても、どれを採用し、どれを削るべきか判断に迷うこともあります。

4-5-1.対策

リノベーションで物件の価値を高めるには、「価値が上がるポイント」を的確に押さえた提案ができるプロの存在が必要です。

単なるリフォームであれば、キッチンや浴室の交換だけでも十分な場合がありますが、リノベーションで成功するためには、建築や不動産の知識に加え、投資・金融・デザイン・マーケティングなど、複合的な視点をもつ会社や担当者を選ぶことが重要です。こうした会社は決して多くはありませんが、適切なパートナーを見つけられれば、物件のポテンシャルを最大限に引き出すことができます。

数社からプラン・見積書・施工事例(ビフォーアフター)を集めて比較検討するとともに、資金面については金融機関、税務面については税理士などの専門家にも相談することで、安心して進められる体制が整います。

5.リノベーションで広がる中古物件の可能性

中古物件へのリノベーションは、賃貸経営の幅を広げ、資産価値を高める有効な選択肢です。物件選びや費用・融資・管理面など、検討すべきことは多いものの、しっかり準備し、信頼できるパートナーと進めれば、着実に成果へとつなげることができます。

大切なのは、物件のポテンシャルを見極め、ニーズに合った形でリノベーションを行うことです。そのためには、豊富な実績とノウハウをもつ不動産会社との連携が欠かせません。

リノベーション投資に興味がある方は、数多くのリノベーション実績を持つREISMの不動産投資セミナーにも、ぜひご参加ください。実践的な知識やヒントを得られる機会として、きっと役立つはずです。

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