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不動産投資
不動産投資とREITの違いは?それぞれのメリット・デメリットを比較
不動産投資とは、アパートやマンションなどを所有して家賃収入などを狙う投資のことです。それに対して不動産を運用している運用会社や投資法人が発行している証券を購入する間接的な不動産投資として、REITがあります。
どちらも「不動産に投資する」という意味では共通していますが、その仕組みやメリット・デメリットなどにさまざまな違いがあります。
本記事では現物の不動産投資とREITの違いを明確にした上で、どちらに投資するべきかを判断する一助となる情報を提供します。
1.REIT(リート)とは
REITとは、「Real Estate Investment Trust」の頭文字を連ねた略称です。日本語では「不動産投資信託」と呼ばれます。もともとアメリカで誕生し、日本市場では2001年に登場しました。
REITは、投資家から資金を集めて不動産を購入し、そこから得られた賃料や売却益を投資家に分配する金融商品です。購入する不動産は、オフィスビル、マンション、ホテル、商業施設など多岐にわたります。
REITには上場している銘柄群と、非上場の銘柄群があります。東京証券取引所に上場しているREITはJ-REITと呼ばれ、厳しい上場基準を満たしていることから運用の透明性や信頼性の高さが魅力です。
なお、ここで解説するREITは、東京証券取引所に上場しているJ-REITのことを指します。
1-1.REITの仕組み
REITの中でも上場しているJ-REITの仕組みは、まず「不動産投資法人」と呼ばれる会社を設立し、株式会社の株式に当たる「投資証券」を発行します。そして投資家は、投資証券を購入することでREITに出資します。またこの投資証券は、証券取引所で株式と同様に売買することができます。
なお、REITでは自ら運用などの実質的な業務を行うことが法律で禁止されているため、資産運用業務は運用会社が、保管業務は信託銀行のような資産保管会社が、一般的な事務は事務受託会社が行います。
投資法人では株式会社と同じように役員会が設置されるほか、投資家は株主総会ならぬ投資主総会で、役員の選任など投資家としての意思を表明することができます。現物投資の場合、自分で投資対象を判断する必要がありますが、REITでは不動産の経営や売買はプロに任せ、収益を分配金として受け取ります。
2.REITのメリット・デメリット
REITのメリットとデメリットについて、それぞれ解説します。
2-1.REITのメリット
REITのメリットは、主に4つあります。
2-1-1.少額から不動産投資ができる
REITは証券化されて売買されているため、少額から購入できます。2024年4月時点でREITには4万円台から購入できる銘柄があります。その他の銘柄についても10万円未満で購入できる銘柄は多数ありますし、最も価格が高い銘柄であっても60万円台です。
現物の不動産をこの価格で購入するのは非現実的なので、少額から不動産に投資したい人にとってREITは大きなメリットがあります。
2-1-2.流動性が高く現金化しやすい
証券取引所に上場していることから、REITは東京証券取引所の取引時間であればいつでも手軽に売買ができます。現物の不動産を売却するには買い手探しなどの売却活動が必要になりますが、REITは売りたい時にいつでも手軽に現金化できます。
2-1-3.現物の管理が不要
現物の不動産を所有すると、管理はオーナーもしくはオーナーが委託した管理会社が行うことになります。しかしREITは投資法人が発行した証券を保有しているだけで物件自体を所有しているわけではありません。そのため、現物の管理は不要です。
「持っているだけ」で利益が発生するので、忙しい人にも負担になりません。
2-1-4.分配金利回りが相対的に高い
REITは家賃収入や売却益を分配しますが、その分配金利回りは株式や債券などと比べると高めです。というのも、REITを運営している投資法人は利益の90%以上を分配すると法人税が免除されるルールがあるため、利益の大半が分配されているという背景があります。
2024年4月時点の分配金利回り平均は4%台で、REITは長期間この利回りで安定的に推移しています。
個人向け国債や定期預金などと比べるとかなり高い利回りですが、その一方でREITは不動産の裏付けがあることから比較的低リスクです。
2-2.REITのデメリット
次に、REITのデメリットについても解説します。REITのデメリットとして考えられることは、主に3つあります。
2-2-1.ローンを利用して購入はできない
現物の不動産を購入する際には金融機関の融資を利用できますが、REITの購入にローンは利用できません。少ない自己資金で大きな投資ができる効果をレバレッジ効果といいます。不動産投資では、ローンの利用によってレバレッジ効果をいかすことができますが、REITにレバレッジ効果はありません。
その一方で現物不動産のように高額ではないため、自己資金が少なくても投資をするハードルはそれほど高くはありません。
2-2-2.投資法人の倒産や上場廃止のリスクがある
投資法人の経営が行き詰って倒産したり、REITが上場廃止になる可能性がある点もデメリットです。上場していることで流動性が確保されているものが上場廃止になってしまうと、流動性の低下によって現金化が難しくなり、価格も大幅に下がってしまう恐れがあります。過去には上場廃止の事例もあるため、意識しておくべきリスクです。
REITの個別銘柄への投資だと上場廃止などの影響を大きく受けることになりますが、上場しているREIT全体への投資であれば、影響を軽微に抑えることができます。東証REIT指数は東京証券取引所に上場しているREIT全体の価格動向を示す指数なので、同指数と連動するETFや投資信託への投資であれば、個別のREITが値下がりしたり上場廃止になるといったリスクを軽減できます。
2-2-3.価格変動リスクがある
株式と同じように売買されているため、REITにも価格の変動があります。買った時よりも値下がりをすれば含み損が発生しますし、含み損が発生している時に売れば損失が確定します。
REITの価格は不動産の運用状況や保有している不動産の価値によって変動するため、運用がうまくいっていない銘柄は値下がりしやすくなります。また自然災害などで運用している不動産の価値が毀損するようなことがあると、それもREITの価格に影響を及ぼします。
ただし、こうしたリスクは現物不動産でも同じです。現物の場合は災害などの影響がオーナーに直接及ぶため、むしろ複数の不動産を運用しているREITのほうが影響を抑えやすいかもしれません。
3.REITを購入する方法
REITは証券取引所に上場しているので、購入する方法は株式と同じです。証券会社の口座を開設し、口座に必要な資金を入金して購入の注文を出すだけです。
東京証券取引所の取引時間は、平日の9時から11時30分、12時30分から15時です。この取引時間に注文が成立すれば、REITの購入は完了です。
4.REITと現物不動産投資の違い
REITと現物不動産投資を比較すると、以下のようになります。
REIT | 現物不動産投資 | |
---|---|---|
投資対象 | 投資法人が発行する証券 | 現物の不動産 |
利益 | 分配金、売却益 | 家賃収入、売却益 |
初期費用 | 少額から投資可能 | 高額 |
ローン利用の可否 | 不可 | 可能 |
流動性 | 高い、容易に売却できる | 低い、売却活動が必要 |
物件の管理 | 不要 | 必要(管理会社に委託可) |
リスク | 価格下落、上場廃止 | 価格下落、自然災害、空室 |
リスク耐性 | 分散性が高くリスクに強い | 自分で分散投資をしなければリスクは高くなる |
REITは証券化されているので、安いものなら10万円単位という少額から投資が始められます。マンションなどの現物を購入する場合は、どんなに安いものでも数百万円以上が必要で、通常は数千万円単位の投資となるでしょう。
また、REITは投資家から資金を集めたファンドで運用され、複数の投資対象に分散投資しています。多額の資金が必要となる現物投資では、所有する戸数にも限度があります。そう考えると、REITは現物投資よりもリスク分散されているといえます。
一方で、現物投資の場合は購入する不動産を担保にローンを利用して、レバレッジを効かせた投資が可能です。REITの場合は信用取引でせいぜい3倍程度と、現物投資ほどのレバレッジを効かせることはできません。
REITは、少額から投資可能で簡単に売買ができるなど、株式や投資信託とよく似た性格を持ちます。ただし、基本的に値上がり後の売却益ではなく、安定的な分配金を期待するものです。一方の現物不動産投資は、「投資」というよりも、購入したマンションやアパートからの家賃収入を、長期にわたって獲得することを目指して「経営」するようなイメージです。
5.現物不動産投資のメリット・デメリット
REITの次に、現物不動産投資についてもメリットとデメリットを整理してみましょう。
5-1.現物不動産投資のメリット
現物不動産投資のメリットとして考えられるのは、主に4つです。
5-1-1.金融機関のローンを利用できる
REITと比較したメリットとしてまず挙げられるメリットは、金融機関のローンが利用できることです。これによって一部の自己資金を活用して収益物件を購入し、家賃収入を狙うことができます。家賃収入でローンの返済ができれば他人資本で不動産を手に入れることになるため、高い資産形成効果が期待できます。
5-1-2.成功すると収益性が高い
REITの平均利回りは4%台であると述べました。現物不動産投資の場合は成功すると5%や10%、もしくはそれ以上の利回りを確保することも十分可能です。「自分で不動産を所有する」というリスクを取っている以上、高いリターンが期待できます。
5-1-3.節税効果がある
REITにはありませんが、現物不動産投資には節税効果があります。不動産を所有していると会計上の経費である減価償却費を計上でき、マンション投資では最長で47年間の経費計上が可能です。また、相続時にも不動産は現金資産よりも低い評価額になるため、相続税の節税効果もあります。
5-1-4.インフレ対策として有効
コロナ禍が終了してから、世界の主要国ではインフレが進行しています。日本でもインフレがじわじわと進行しており、現金の相対的な価値が目減りしている状況です。不動産は現物資産なのでインフレに強く、不動産投資は資産防衛の観点からも有効性があります。
5-2.現物不動産投資のデメリット
メリットの次には、現物不動産投資のデメリットやリスクについても解説しましょう。考えられるデメリットは、4つあります。
5-2-1.空室リスク
所有している不動産が空室になると、家賃収入は途絶えてしまいます。入居者がいたとしても滞納が発生すると、やはり家賃収入は途絶えます。REITであれば考慮しなくてもよいリスクですが、現物不動産投資では投資家自身がオーナーになるため、こうしたリスクと向き合うことになります。
5-2-2.管理の負担
オーナーは、所有している物件を管理する必要があります。老朽化や破損の際には修繕やメンテナンスが必要になりますし、家賃滞納時には督促の業務も発生します。
専業投資家であれば自主管理といって自分で管理することもありますが、多くの場合は管理会社に委託することになるでしょう。その場合の管理費負担も考慮した資金計画をしておく必要があります。
ただし、管理会社に委託することで修繕やメンテナンスだけでなく家賃滞納時の督促なども任せられるため、オーナーの業務負担は軽減されます。
5-2-3.自然災害によるダメージ
現物不動産は、自然災害のリスクを考慮する必要があります。REITでも災害による影響は避けられませんが、現物の場合は所有している物件が倒壊したり大きく破損すると、収益物件として使用できなくなる可能性もあります。そのため、多くの不動産投資家は保険に加入してこうしたリスクに備えています。
5-2-4.金利上昇のリスク
ローンを利用して収益物件を購入した場合、今後予想される金利上昇がリスクになる可能性があります。日銀がマイナス金利を解除したことは大々的に報道されましたが、今後日本は金利が上昇していく見通しです。
変動金利型のローンを組んでいる場合、今後金利上昇に合わせて返済額が増えるかもしれません。購入時の資金計画どおりに返済ができなくなる恐れがあるため、これも現物不動産投資のリスク要因です。
6.それぞれの「いいところ取り」をするのもおすすめ
REITと現物不動産投資、どちらも「不動産に投資する」という点では共通していますが、それ以外はほとんど別物といってもよいほど多くの違いがあります。それぞれのメリットとデメリットを理解し、それらを踏まえた上で投資の判断をすることをおすすめします。
もちろんどちらか一方だけにしか投資できないわけではなく、資金の状況によっては両方に投資をしてリスクを分散するのも有効です。