更新日 :
リノベーション
リモートワーク時代のオフィスリノベーションと「映える」空間づくり
中古物件を再生するリノベーションは、個人用の住居だけを対象としたものではありません。企業のオフィスでもさまざまな効果を期待し、リノベーションを行うケースが増えています。
企業はどのようなメリットを求めて、どのようなリノベーションをしているのでしょうか。リノベーションがもたらす効果やメリット、さらに実際にリノベーションをする際の費用感や工事期間などについても解説します。
1.オフィスリノベーションがもたらす効果
個人宅と同様に、リノベーションを行うオフィスビルが増えています。古い設備を新しくするなど賃貸マンションでのリノベーションと同じような理由から行うケース、物件価値を高めて入居率向上を図るケースや、オフィスの情報化に適した配線工事のためにビルオーナーが行うケース、入居する企業の要望で行うケースもあります。
1-1.業務の生産性向上
最近よく聞かれるのが「ワークプレイス」という言葉です。直訳すれば単なる「仕事場」なのですが、オフィスの内装に関してこの言葉が使われる場合は、空間の使い方や設備の設計によって、社員の行動習慣や業務プロセスなどを変えることで、個人にとってより働きやすく、チームにとってより生産性を高められる場所を造るというような意味が含まれています。
リノベーションで業務効率を高めたり、コストを抑えたりすることを目的とするため、ビルオーナーではなく企業が自らコストをかけて行うわけです。快適で働きやすいオフィスは、従業員の満足度を上げたり、新たに人材を採用する上でセールスポイントになったりするので、人事面での効果が得られることもメリットのひとつといえます。
1-2.企業ブランディング向上
人材の採用や企業ブランディングの目的からも、リノベーションは意義があります。空間の使い道を根本的に変えることでオフィスを単なる仕事場ではなく、遊び心あふれる空間に変えることもできます。
当初はIT企業など遊び心がそのままビジネスに直結するような業種に多く見られた取り組みですが、近年では慢性的な人手不足の解消などを目的に、企業ブランディングを高めるためのリノベーションがさまざまな業種に広がりを見せています。
1-3.オフィス移転コストの削減
オフィスの刷新を図るには、その目的に合致した物件に移転するのが理想的かもしれません。しかし、オフィスの移転には金銭的、時間的、労力的なコストがかかるため、「オフィスのイメージを変えたい」という目的だけで移転をするのはためらわれるという会社も少なくありません。
リノベーションによるオフィスの刷新であれば移転する必要がないため、低コストですし、社員の通勤経路や通勤時間に影響を与えることなく付加価値の高いオフィスを創りだすことができます。
1-4.固定費の削減
オフィスのリノベーションには、移転コスト以外にもコスト削減効果があります。その代表例が、光熱費です。古い建物には空調の効率があまり良くないものが見られますが、オフィスリノベーションでは見た目だけでなく、空調の効率アップや高機能素材への切り替えで毎月の固定費である光熱費の削減も期待できます。
2.オフィスリノベーションするにあたって
実際にオフィスをリノベーションするにあたって、ここでは費用感や工事期間についての目安をつかんでいただきましょう。
2-1.費用の相場は?
オフィスのリノベーションは、リフォーム業者などによる内装工事に該当します。内装工事は坪単価で算出されることが多いので、大まかな目安として「1坪あたり10万円~30万円程度」を見ておくのが良いと思います。
また、スケルトン化といって内装のない状態、もしくはそれに近い状態を作るリノベーションもありますが、この場合はあるものを撤去する工事がメインになるので、リフォーム工事よりも工事費用は安くなります。おおむね坪単価10万円程度の費用感で良いでしょう。
2-2.工事期間はどれくらい?
工事期間についても事例によって千差万別ですが、クロスの張り替えや照明の変更といった簡単なものであれば数日から2週間程度で完了できることが多いでしょう。内装のイメージを根本的に変えるフルリノベーションだと1ヶ月から2ヶ月程度は見ておく必要があります。
2-3.迷ったらプロに相談
リノベーションは既製品を購入する買い物ではなく、それぞれのオフィスにふさわしいものである必要がありますし、そのオフィスを使う人の思いを反映することも大切です。しかし、だからといって予算が無尽蔵にあるわけでもないため、限られた予算や工期、建物の特性などを考慮しながら最適なプランを組み立てていくことになります。
こうした作業にはプロのノウハウが欠かせないので、少しでも迷うことがあればプロに相談するのが確実です。完成してから「こんなはずではなかった」というのが最も避けるべき失敗なので、そうならないためにも構想段階からプロに相談することをおすすめします。
3.リノベーションで「ワークプレイス」を構築
どのようなリノベーションをすれば、良い「ワークプレイス」を創りだすことができるのでしょうか。ここでは、さまざまなワークプレイス構築の事例から、多くのオフィスで取り入れられている考え方や手法を3つのポイントに整理してご紹介します。多くの事例でこうしたアイデアが形になり、快適なオフィス空間が実現しています。
3-1.人気のワークプレイス3つのポイント
①フリーアドレス
フリーアドレスは、社員一人ひとりに固定した席を与えるのではなく、共用の作業スペースを用意し、各自が空いている席を使うオフィス形態のことです。通常ならデスクの引き出しに入れるような書類や備品は各自がロッカーに収納し、必要な時だけ共用のデスクスペースに持ち出して作業をします。
当初は、コスト削減を目的に、フリーアドレスを導入する企業がほとんどでした。しかし、現在は、部署の垣根を越えたチームでの作業がしやすくなったり、社員同士のコミュニケーションが活性化して、スピード感をもって仕事が進められたり、そのメリットが注目されています。なお、周りの雑音を気にせず、一人で集中して作業をしたい人のために、共用の個室や半個室を設けている事例もあります。
②リフレッシュスペース
個人での作業や小さなグループでの簡単なミーティング、休憩など、さまざまな目的で使える大きなオープンスペースがつくられることがあります。大小さまざまなデスクと椅子を用意して、目的に応じて自由に使える空間です。
単に共用の作業スペースを設けるというよりは、ソファなどを置いてリフレッシュできる環境を用意し、社員同士のコミュニケーションを促してリラックスできる状態の中で、新しいアイデアが浮かぶようにする意味合いが大きいようです。
③効率を高めるスタンディング・デスク
一日の業務の中で、会議にかかる時間が長いという方も多いでしょう。生産性を高めるためには、会議で効率よく物事が決められなければなりません。ダラダラと会議をしないように、中には、スタンディング・デスクを設置するオフィスもあるようです。
また、会議室の壁一面をホワイト・ボードにすることで、参加者全員がアイデアを書き出しやすくしたり、壁や天井の配色を変えることで、創造力を刺激したりという事例もあります。
4.オフィスの発想を住宅に活かす
これらの考え方は、あくまでもオフィスで効果が高いものではありますが、もし個人住宅に活かすとしたら、どんなものが考えられるでしょうか。
4-1.リモートワークの普及で高まる「自宅オフィス」の必要性
新型コロナウイルスの感染拡大によって社会にさまざまな影響が及んでいますが、その中のひとつにリモートワーク(テレワーク)の普及が挙げられます。
ウイルスによる影響が収束してもリモートワークを導入する企業が増えてくることは確実で、自宅で仕事をする時や、勉強をする時のために「集中できる場所」を想定して、空間設計をすることがますます重要視されていくでしょう。
4-2.映える背景空間の創出
リモートワークの普及が住宅の空間づくりに及ぼした影響が、もうひとつあります。それは「ZOOM映え」などの言葉に象徴される、背景の写り込みです。リモートワークでは自宅と会社がオンラインでつながり、リアルタイムでビデオ通話をする機会が多くなります。女性からは画面に映った時のメイクに気を遣うとの意見が多く聞かれますが、その背後に写り込んでいる風景にもこだわりを持つ人が多くなっています。
書斎のような空間を演出するために本棚の前でリモートワークに参加する人や、観葉植物やお気に入りの絵画を背景にする人など、今やリモートワークの背景は個人の思いを主張できる空間となってきています。今後、住宅のリノベーションではリモートワークに参加するスペースの確保だけでなく、ふさわしい背景の創出も意識されていく流れは加速していくと見られます。
4-3.見た目だけでなく人の心に訴えかけるリノベーション
リノベーションは見た目の美しさや洗練された空間を創りだすことだけが目的ではなく、そこで生活や仕事をする人にとって快適な空間を創りだすという大切な使命もあります。
例えば、間仕切りを多くして部屋を小分けにするよりは、多目的に使える大きめのリビングスペースを確保したほうが、家族とのコミュニケーションも生まれやすくなるでしょう。また、一人暮らしの場合でも友人を招きやすくなる効果が期待できます。
リノベーションがもたらす物件価値の向上は、「見た目のかっこよさ」だけでありません。オフィスにおける業務効率や、個人の生活の質まで変えるのです。
5.まとめ
オフィスをリノベーションすることにより、実に多くの効果が期待できることをお伝えしてきました。大まかな費用感の目安についても解説しましたが、費用対効果を考えると意外に安いとお感じの方も多かったのではないでしょうか。
その費用で多くの効果が手に入るのであれば検討したいとお感じなのであれば、まずは構想を練るだけでも大いに価値があると思いますので、「理想のオフィス」を思い描くことから始めてみてください。