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不動産投資
【2023年】最新データから読み解く投資用マンションの売却タイミング5選
不動産投資では、出口戦略として売却を前提にしているケースが多く、売却に成功してこそ不動産投資を成功裏に終えることができるという考え方があります。この考え方を踏まえると、投資マンションを所有している方、これから購入しようとしている方にとって、不動産投資の最後に控えている「売却」はとても重要なプロセスといえます。
売却の成功とは、「高値(もしくは納得できる価格)で売れること」です。そして売却を成功させるのにとても重要なのが、タイミングの見極めです。不動産の価格は常に変動しているので、最も高く売れるタイミングを見極めることが売却の成功につながります。
そこで本記事では、投資マンションの売却を成功させるために知っておきたい知識や手順、注意点などについて解説します。
1.投資用マンションは今売却しても大丈夫?
現在投資用マンションを所有している方の中には、「今、売却しても大丈夫?」とお考えの方もおられると思います。当記事の執筆をしている2023年2月時点の最新情報をもとに、中古マンション市場の「今」について見てみましょう。
まず、長期的な傾向からご覧いただきます。こちらは国土交通省が発表している「不動産価格指数」の長期推移で、2008年から2022年までのデータです。
出典:国土交通省「不動産価格指数」
緑色の線が区分マンションです。説明の必要がないほど、強い右肩上がりの上昇を続けているのが分かります。2013年頃から中古マンションは値上がりを続けており、今も含めて売却を検討できるタイミングが続いているといえます。
それでは次に、首都圏の中古マンション価格についてさらに直近のデータも見てみましょう。
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「Market Watch(2023年1月度)」
こちらのグラフは、平方メートルあたりの単価がどう推移しているのかを示しています。赤色の棒グラフが、成約した中古マンションの平方メートルあたりの単価です。若干の上下はあるものの、緩やかに上昇している傾向が見て取れます。
直近のデータを見ても中古マンション市場の好調は継続しており、売り時は継続していると考えてよいでしょう。
2.投資用マンションを売却するのに適したタイミング
最新のデータから投資用マンションの売り時が継続していることを知っていただいた上で、投資用マンションの売却に適したタイミングとして「5つのタイミング」を紹介します。これら5つのいずれか、もしくは複数の項目に該当する時は売却を検討するべきタイミングといえます。
2-1.満室で近隣相場より家賃が高い時
満室経営は、不動産投資の理想形です。それは物件を探している人にとっても同じなので、満室の状態で売却すると買い手がつきやすくなります。
また、満室状態だと家賃を引き下げる必要がなく、場合によっては家賃を高く設定することも可能です。家賃を高く設定できるマンションは投資家からも好感を持たれるため、売却のタイミングとして有効です。
2-2.大規模修繕を実施する前
マンションは美観や機能を維持するために、定期的な大規模修繕が必要です。大規模修繕は新築時から想定されており、区分所有者は毎月の修繕積立金を負担する仕組みになっています。
国土交通省の調査では大部分のマンションが12年から15年周期で大規模修繕を実施していることが明らかになっており、マンションの区分所有者はこのことを意識する必要があります。
大規模修繕の費用が修繕積立金で充当できるのであれば問題はありませんが、多くの場合、 修繕費用が不足している実態があります。その場合は不足分を負担しなければなりませんし、費用が不足したことを受けて大規模修繕後に積立金が値上げされる可能性もあります。
こうした事実を踏まえると、大規模修繕の前に売却してしまうのもひとつの手です。
2-3.物件に空室がある時
先ほど満室状態だと売却しやすいと述べましたが、逆に空室になっている時も売却のタイミングと考えることができます。
入居者がいないということは、売却しようとしているマンションの買い手は不動産投資家だけでなく、自身が住みたいと考えている人も含まれます。買い手の候補が多くなることで、売却しやすくなるでしょう。
また、空室になりがちのマンションを持ったままにしていても満足のいく収益が上がらないのであれば、早期に売却して損切りをしてしまうのも投資家として適切な判断です。
2-4.ローンの元金返済額を減価償却費が上回った時
投資用マンションを購入するためにローンを組んだ場合、毎月支払っている利息は経費として計上可能です。その一方で、元金は借りたお金を返済しているだけなので経費にはなりません。
多くの場合、投資物件向けのローンは元利均等返済です。毎月の返済額のうち最初は利息が大半を占め、徐々に元金の比率が高くなっていく仕組みになっています。
この仕組みで返済をしていくと、いつかは元金の比率が高くなって毎月計上できる減価償却費と逆転する時がやってきます。先ほど述べたように元金返済分は経費として計上できないので、返済しているお金なのに経費として計上できないお金が多く発生します。これによって節税メリットが薄れ、税金の負担増につながります。
節税メリットも不動産投資の大きなメリットであると考えた場合、元金返済額を減価償却費が上回るタイミングは売却を検討するべきでしょう。
2-5.引っ越しシーズンの直前
日本の生活慣習により、毎年4月は入学や新社会人の入社時期です。そのため、4月に向けて1月から3月の時期は引っ越しのハイシーズンとなります。
この時期は引っ越しのためにマンション物件のニーズが高まるため、投資目的、自己居住ともに購入意欲が旺盛になります。この需要に応えるのであれば、12月頃から売却活動をはじめるのが得策です。
3.投資用マンションの売却手順
投資用マンションを売却するまでの大まかな流れは、以下のとおりです。1つずつ段階を踏んで行動すれば、決して難しくはありません。重要なのは、信頼できる不動産会社に売却を依頼することです。
3-1.一括査定サイトを活用して複数社に査定を依頼
売却したいマンションがいくらで売れるのかを知るために、まずは不動産会社に査定を依頼することから始めます。1社に査定を依頼するだけだと相場観が分かりづらい上に競争心理も働かないので、ネット上にある不動産一括査定サイトを活用して複数の不動産会社に効率よく査定依頼を出しましょう。
3-2.不動産会社と媒介契約を締結
も現実味のある売却提案をしてくれた不動産会社、信頼できると判断した不動産会社と媒介契約を結びます。媒介契約には「専属専任」「専任」「一般」の3つがあり、この中から不動産会社との信頼関係や売主の事情に応じて選びます。
ちなみに、「専属専任」と「専任」は1社だけに依頼する媒介契約で、「専属専任」は自身で買い手を見つけることもできないので、慎重に選ぶようにしてください。
「一般」は複数の不動産会社に買い手探しを依頼することができますが、それだけに不動産会社も本腰を入れない傾向があり、今すぐ売却できなくても構わない場合に選択する媒介契約と考えておいたほうがよいでしょう。
3-3.売却活動
売却活動が始まったら、買い手候補から問い合わせが入ります。内覧も発生するため、室内をきれいに清掃しておくことをおすすめします。ただし、入居中の物件については生活中なので内覧は難しく、この限りではありません。
3-4.売買契約を締結し、物件の引き渡しと代金の決済
価格や条件などで合意すれば、売主と買主が売買契約を締結します。売買契約の条件に従って物件の引き渡しと代金の決済が行われます。これをもって、マンションの売却は完了します。
4.投資用マンションの売却を検討する時の留意点
投資用マンションの売却を検討する際は、以下の点に留意しましょう。
4-1.マンション投資の本質は長期的な家賃収入
不動産市場が上向いてくると、「物件を売却したほうがいいのではないか」という考えが頭をよぎるかもしれません。かつてのバブル景気の時代には、売却益を目的とする不動産投資が主流でした。ローン金利が高くて赤字経営前提の投資でも、すぐに物件が売れて利益が出せるため、不動産がどんどん売れるような時代だったのです。
しかし、今はそんな時代ではありません。新築・中古にかかわらず、購入直後から物件の価値は少しずつ下がっていくものと考えておくべきでしょう。何十年という長期にわたって安定的に家賃収入をあげること、これが今の時代の不動産投資の基本的な考え方です。
4-2.売却の判断は慎重に
安易に売却するべきではないとはいっても、実際にマンション経営を続けていると、さまざまな要因で空室が埋まらなくなったり、家賃の下落、金利の上昇などによって赤字経営に陥ったり、物件を「手放したい」と考える場面が出てくる可能性もあるでしょう。しかも2023年は依然としてマンション価格の上昇傾向が継続しているので、「今が売り時では?」と思いたくもなるものです。
しかし、仮に購入価格よりも物件評価額が上回ったとしても、単純に売ったほうがよいと考えるのは早計です。購入時には、仲介手数料、登録免許税、不動産取得税などの経費がかかっているので、購入後あまり時間の経っていないタイミングで売却しては、結果的にお金があまり残らない可能性があります。
不動産相場を予測するのは難しいですが、「現在売った場合」と「何年か後に売った場合」を比較して、それぞれ売却益がいくらになるか、何年後まで保有すると家賃収入はいくら入るのか、ローンの残債はいくらになるかなど、よくシミュレーションしたうえで、売却するか否かを判断しましょう。
4-3.手放す前に一度考えてみるべきこと
家賃収入を生み出していたマンションも、売却してしまえば家賃収入はゼロになります。場合によっては、赤字が続けば「損切り」してでも一度ポジションを精算するという経営判断もあるでしょう。急にまとまった現金が必要になった場合などは、やむをえないかもしれません。
しかし、手放す前にリノベーションなどを行うことで、物件価値を高めて空室を埋めたり、家賃を上げたりできないかということも、視野に入れてみるべきです。
5.投資用マンションの売却は慎重に総合的な判断を
投資用マンションを売却するべきか、所有し続けるべきか、その適切な判断をするために必要な情報を、最新のデータも交えて解説しました。好調なマンション市況は今が売り時であることを示していますが、それだけで売却してしまうのは早計です。
売却を検討できるタイミング、それに伴う留意点も踏まえて、総合的かつ慎重に判断するようにしましょう。