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「資本的支出」と修繕費とは何が違うの?

収益物件が老朽化してくると修繕や改修工事が必要となります。そうしたケースでかかる費用は、「資本的支出」と「修繕費」に分かれます。この二つは確定申告での計上の仕方が異なりますので、その違いを理解しておく必要があります。

連帯リノベーションは資本的支出、リフォームは修繕費

最近、中古マンションや戸建てを購入後に修繕をして住む人が増えています。工事の目的と内容によって修繕は「リノベーション」と「リフォーム」に大別されます。

二つの違いを簡単に説明すると、リノベーションとは住む人のライフスタイルを反映させ、間取りやキッチンを変更したり増築したりするなど、物件の価値向上につながるような「アップグレード工事」です。

一方のリフォームは、古くなったり不具合が出たりした部分を原状回復させる「復旧工事」です。アップグレード工事とは異なり、住居として使い続けるために必要な工事といい換えることもできます。

これが、そのまま資本的支出と修繕費の違いになります。アップグレード工事(リノベーション)の費用は資本的支出となり、復旧工事(リフォーム)のために使う費用が修繕費となります。分かりやすい比較例を出してみましょう。非常階段を取り付けたり、壁をモルタルからタイルに張り替えたりする工事は資本的支出となります。他方、壊れたガラスの交換、雨漏りの修理、破損した壁紙やフローリングの張り替え、ひびの入った外壁を埋める工事は修繕費になります。

資本的支出は資産計上で減価償却し、修繕費は経費計上する

資本的支出(リノベーション)と修繕費(リフォーム)は会計処理する際に、異なる勘定科目に仕訳されることになります。資本的支出は資産として計上され、数年に分けて減価償却するのに対し、修繕費は一括で経費(損金)として計上されます。

どちらに仕訳されるべきかの判断は難しく、税理士によっても異なりますが、一般的な目安として以下のケースに該当した場合には修繕費として計上できるとされています。

①資本的支出に該当したとしても20万円未満
②おおむね3年周期で工事が行われている
③明らかに原状回復工事といえるもの(金額は不問)
④区分が不明でも60万円未満または取得価額の10%以下

①~④に該当しない場合、継続適用を条件に支出金額の30%か取得価額の10%のいずれか少ない金額を修繕費、残額を資本的支出として計上するというルールになります。

また、古くなったエアコンや給湯器などの設備を最新式のものに新調するのは復旧工事ではなく、新たな資産を取得する資本的支出になりますので、資産計上して減価償却します。ただし、1個につき10万円未満のもの、青色申告者の場合は1個につき30万円未満のもの(総額300万円まで)であれば、修繕費になります。

基本的に修繕費は全額が経費になるので、支出すればするほどその年度の確定申告の節税効果は高くなりますが、現金の支出を伴うのでキャッシュフローは悪化します。そのため、節税目的だけで必要以上に支出するのは避けるべきでしょう。

資本的支出のためにしっかり準備

築年数の経った古い物件や、間取りや設備がかなり古くなってしまった物件では、リノベーションで空室対策をしなければならない時期が必ずやってきます。

個人で住むために購入したマンションでは、12~15年周期で行う大規模修繕計画に基づき、管理組合で修繕積立金を徴収します。これは賃貸マンションであっても違いはありません。リノベーションを行うタイミングを決めて、逆算して必要な資金を積み上げておきましょう。綿密な事業計画がキャッシュフローの悪化を防ぐことになります。

さて、今回は資本的支出と修繕費の違いについて考えてきました。最終的に経費にされる金額に違いはありませんが、会計上の処理方法が違い、キャッシュフローや短期的な節税効果が変わるため、それぞれの違いについてよく理解した上で支出する必要があります。

個人であれば、サラリーマンとしての給与所得も含めたその年の所得総額によって、修繕費で計上するよりも減価償却で計上したほうが、最終的に高い節税効果が得られることもあります。修繕費は一括計上できる経費が多いため、節税効果が高いと考えるのは早計です。大切なのは、賃貸経営の目的は節税ではなく、不動産投資の収益を得ることだということです。節税ばかりにとらわれすぎると、「木を見て森を見ず」ということになりかねません。資本的支出と修繕費の違いを十分に理解して、適切な会計処理を心がけましょう。

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