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不動産投資
不動産テックでより合理的になる未来の不動産投資
不動産にIT技術を活用した「不動産テック」が、不動産業界で大きな伸びを見せています。これまで不動産テックは、実需の世界で力を発揮してきましたが、最近では不動産投資の分野にも進出してきました。この不動産テックは、今後不動産投資にどのような影響を与えるでしょうか。
不動産テックとは
住まいや投資用物件を買ったり、借りたりするときに、多くの人がインターネットでの検索機能を活用するようになりました。物件情報に関しては、不動産情報ポータルサイトは、その名の通り「玄関」としての役割を果たすようになっています。
一方、不動産業者の業務を効率化させるうえで、不動産テックは大きな役割を果たすようになっています。賃貸借契約を結ぶ際、借り主に対する重要事項説明は、本来、宅地建物取引士が対面で行わなければなりませんでしたが、スカイプなどインターネットのコミュニケーションツールでも可能になりました。
また、人工知能(AI)も活用し、不動産の参考価格を算出できるようにもなりました。業者が勘や経験で判断していた価格を、より合理的に示せるようになったのです。業者と消費者の間に存在していた情報格差を悪用したグレーな取引や、営業マンの知見に頼っていた部分が、不動産テックによって少しずつ透明化されており、今後もその傾向は続くでしょう。
AIを活用した将来賃料や空室率予測サービスが登場
投資の世界では、情報の非対称性が「勝ち組」と「負け組」を分けるといいます。不動産投資においても、当然、不透明な部分がありました。専業大家ではなく、いわゆる「サラリーマン大家」が増えてきた昨今、不動産投資で失敗した人の原因の多くが情報不足によるものでしょう。わかりやすい事例があります。それは、シェアハウスに対する投資を行う「かぼちゃの馬車」の破綻問題です。新聞やテレビでも大きく取り上げられました。
不動産投資で成功するためには、正確な情報収集や、空室リスクの低い物件を購入することが重要になります。また、さまざまなリスク要因に対する先手を打ち、資産価値を保持してキャッシュフローを積み上げて最後に高く売り抜けることも成功の秘訣です。表面利回りの数字に依存した物件探しと、サブリースという安易な空室対策を信じて、リスク予測を見誤った結果が、「かぼちゃの馬車」の問題です。
この事件では、融資を引き出すための書類が偽造されていたという問題も確かにあります。しかし、実際に投資した人たちが、投資対象物件の情報をしっかり入手し、自分自身で判断していれば、ここまで多くの人たちが被害を受けて社会問題化することはなかったはずです。
そんな中、AIを活用し、空き室予測や賃料下落を考慮した将来の収益予測をシミュレーションする不動産分析プラットフォームも誕生しています。「Gate.」というサービスでは、エリア、物件の価格帯、種別、築年数、表面利回りなどの諸条件を入力すると、AIが収益性を予測し、手元に残る金額をはじき出してくれます。
どこか魔法のアイテムのような気がして、半信半疑の人も多いのではないでしょうか。これは運営会社が独自に収集した不動産取引のビッグデータと機械学習を組み合わせた技術によって可能になりました。日々、新たなデータを取り入れて精度は高まっています。不動産テックはこうした予測を可能にしています。
ITに強い若者が参入しやすくなる
不動産テックに先行して、金融業界では「フィンテック」が発展しています。これまで証券会社の営業マンが、一部の富裕層にだけ提供してきた資産運用というサービスが、フィンテックによって、ごく普通のサラリーマンでも可能になってきました。最近、少額から投資信託の積み立てができるサービスが若者の間で広がっていますが、こうしたことも、フィンテックによって、投資や資産運用が身近になったからでしょう。
また、ネット上で年齢や資産状況など簡単な質問に答えるだけで最適な運用プランを作成し、資産形成が可能になる「ラップサービス」が増加傾向です。さらに、購入と管理のみを自分で行う「ロボアドバイザー」などが、若者たちの投資の入り口となっています。企業による終身雇用や年功序列といった働き方、賃金体系が変わりつつある今、ITリテラシーの高い若者にとって、スマートフォンのアプリでも行える投資に対する心理的ハードルはグッと下がっています。
不動産テックの普及により、不動産投資に関する情報が豊富になり、さらに透明性が増すことで、不動産投資に対するハードルもどんどん低くなるでしょう。若者を中心に不動産に投資する人口は拡大するのではないでしょうか。