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事前に確認!マンション経営の前に知っておくべき貸家市況

マンション経営を成功させるには、貸家市況のことに無知ではいられません。8%から10%への消費増税前の駆け込み需要と、相続税の節税需要の高まりから、貸家の着工戸数が急増しています。また、メインターゲットとなる若年層を中心とした人口減少が続く中、供給過多の時代が始まったと指摘する声もあります。今回は、これからのマンション経営を考える上で、知っておくべき貸家市場の状況を見ていきましょう。

消費増税と相続税で貸家が急増

国土交通省の「建設着工統計」によると、ここ最近の住宅着工戸数は、2013年の98万7000戸から翌2014年に88万戸に減りましたが、再び上昇して、2016年には、2013年に迫る97万4000戸まで回復しました。回復した大きな要因は、貸家の増加です。2016年の住宅着工戸数のうち貸家の占める割合は約43%。4年前と比較すると、全体戸数が9%の増加に対して、貸家は33.1%も増加しています。

年別で見ると、消費税が5%から8%に上がった2014年初頭を境に、駆け込み需要とその反動が起きています。いったん落ち込んだ需要が再び上昇したのは、2015年1月に施行された相続税改正が原因です。相続税の課税対象額は、総額から基礎控除額を差し引いた額になりますが、その基礎控除額が約6割に引き下げられたため、高齢地主の節税意識が高まりました。そして、多くの方々が相続税対策のための土地活用に乗り出し、持っている土地に賃貸アパートやマンションなどを建設しました。理由は簡単で、土地を更地で相続するより、借金をして賃貸住宅を建てれば、相続税評価額が大幅に減らせるからです。

2019年10月には再び、8%から10%への消費増税が予定されています。駆け込み需要はすでに始まっているのかもしれません。そうしたことを背景に、貸家の着工件数は大幅に増加しました。しかし、それは実需によるものではなく、むしろ、供給する側の思惑によるものです。

野村総合研究所が発表した2017年6月20日のリポートによると、2017年度の予想総着工戸数は84万戸ですが、「近年見られる相続対策の活発化等に伴って、貸家の積極供給が継続した場合には、92万戸(うち貸家42万戸)まで増える見通し」ということです。ただ、この動きも徐々に沈静化し、2020年度には74万戸(同25万戸)にまで減ると見込んで今す。

貸家を利用する20〜30代が急減

総務省の「住宅・土地統計調査(2013年)」で世帯主の年代別持ち家と借家の世帯数グラフをみると、35~39歳から40~44歳に移るタイミングで持ち家比率は半数を超えます。言い換えると、貸家のメインターゲットは20代と30代ということになります。ところが、人口予測によると、まもなくして、この年代は急減します。国立社会保障・人口問題研究所の資料によると、2016~2020年の20~30代の人口(5年平均)は3009万人です。2011~2015年は3327万人なので、約20万人減少します。メインターゲットの急減は貸家市況に大きな影響を与えることが予想されます。

リスク要因を考慮して慎重な行動を

さらに目前に迫っているのが「2019年問題」です。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2019年の5300万世帯をピークに、2035年には4955万世帯まで世帯数が減少するそうです。団塊世代もいよいよ70歳を迎え、中には自宅を離れて、高齢者施設に入居する人たちの増加が予想されています。こうしたことが貸家の空室増加に拍車をかけるのではないかと懸念されています。

また、2020年に開かれる東京五輪では、選手の宿泊用に建設された選手村の施設が、大会後に約5600戸の住宅として販売される予定で、貸家市場への住宅供給が一気に増えることになります。

これからマンション経営に乗り出す方は、日本全体の人口構造の変化と賃貸住宅市況の動向から「リスク要因」を認識し、適切な選択をすることが求められます。また、世帯数の減少は全国一律で減少する訳ではなく、地方と都心部では異なると予想されており、ますますエリアの選定が重要になってくることでしょう。経営環境は厳しくなりますが、賃貸需要がまったくなくなるわけではなく、減少する人口を補うように、訪日外国人数は年々増加しています。市場ニーズを捉え、的確にターゲットを設定することができれば、勝機は十分にあります。今、不動産投資家としての経営手腕が問われています。

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