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資産形成
新NISAにも暴落のリスクはある!そのための備えと有効な防衛策を紹介
2024年1月に制度が大幅に拡充されたNISAは、「新NISA」とも呼ばれ注目を集めています。テレビや雑誌などで新NISAが取り上げられる機会が多くなったため、これを機に資産運用をはじめようと考えている方は多いのではないでしょうか。この記事をお読みになっている方のなかには、すでに新NISAでの資産運用をはじめている方もいるかもしれません。
しかし、新NISAは魔法の杖ではありませんし、新NISAでの運用であっても株価の暴落などでダメージを受けてしまう可能性はあります。事実、2024年8月5日には日経平均株価が1日で4,000円以上も暴落し、この下落幅は「ブラックマンデー」を超える史上最大のものとなりました。新NISAで運用を始めたばかりのタイミングでこの暴落を経験した人も多く、「このまま続けても大丈夫だろうか」といった不安の声も広がっています。
本記事では、新NISAで資産運用をしているときに、2024年8月のような株価の暴落が起きたらどうなるのか、シミュレーションを交えつつ解説します。
1.新NISAにおける株価暴落・下落リスク
新NISAという言葉が独り歩きしている部分もあるため一部で誤解があるようですが、新NISAはあくまでも改正されたNISA制度のことであり、「新NISA」という投資商品があるわけではありません。
新NISAで投資できる商品には、株式に関連する投資信託やETFが多く含まれています。例えば、「オルカン」と呼ばれる新NISAでの人気商品は、オールカントリーといって世界全体の株式に分散投資ができる投資信託です。新NISAで、このような株式関連の商品を運用している人は多いでしょう。
「オルカン」を含むインデックス型と呼ばれる投資商品は市場全体の動向を示す株価指数と連動するため一定の分散効果はあるのですが、それでも株式市場全体が暴落した場合は株価指数も暴落するため、新NISAでこうした商品の運用をしている人も暴落の影響を受けることになります。
当記事の執筆時点で記憶に新しいところでは、2024年7月12日に起きた日経平均株価の暴落があります。以下の黄色丸印の部分です。
出典:TradingView
前日終値から1,000円以上の下落となり、新NISA開始後としてはかなり大きな下落幅となりました。日経平均株価に連動するインデックス投資信託も新NISAの対象商品なので運用している人は多いと思いますが、この暴落でほぼ4万2,000円だったものが4万1,000円になったのですから、含み損を抱えることになった人も多かったことでしょう。
そしてこれよりもすさまじいのが、冒頭で述べた2024年8月5日の大暴落です。こちらもチャートで確認してみましょう。
出典:TradingView
大暴落が起きたのがどの部分か、丸印をつけるまでもないでしょう。しかもこの暴落は8月5日だけでなく、数日前から始まっていました。前週の8月1日から始まった暴落の流れが週末をまたぎ、週明けの月曜日で史上最大の下落幅となりました。
あくまでも新NISAは運用益が非課税になる制度であり、運用している商品の値動きによっては暴落のリスクが直撃することもあるわけです。
2.株価暴落・下落が起きると新NISAはどうなる?
先ほど紹介した2024年7月12日の暴落について、実際に運用していた場合どうなっていたのかシミュレーションをしてみましょう。ここでは、日経平均株価に連動するETFのなかでも代表的な銘柄である「NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信(1321)」の値動きを例にします。
出典:TradingView
日経平均株価と連動する銘柄だけに、前出の日経平均株価と似た値動きとなっています。上の矢印部分から下の矢印部分までの暴落時、同銘柄を100株持っていたら、どうなっていたのかを計算してみます。
前日の4万3,500円のときに100株買った状態で翌日の暴落に直面すると、4万2,500円になった時点で1株あたり1,000円、100株で10万円の含み損です。
次に、2024年8月5日の暴落についてもシミュレーションをしてみましょう。こちらは暴落が始まった前週の8月1日に同ETFを100株購入したケースを想定します。
出典:TradingView
8月1日の終値付近である3万9,000円で100株を買った状態で8月5日の暴落に直面、3万2,000円になった時点で1株あたり7,000円、100株で70万円の含み損となります。これだけの含み損が短期間に発生したとしたら、「新NISA勢」が不安を感じるのも無理はありません。
もっともそれまでの価格推移を見ると長期的には右肩上がりの上昇をしているため、近い将来この含み損が解消されてさらに上昇していく可能性はあります。実際、8月5日に史上最大の暴落が起きた翌日以降は反発し、暴落が始まった時点の水準に近い価格まで戻していることが、チャートからも見て取れます。
しかし、今後さらに上昇をして4万円台に回復するのか、回復するとしてもそれがいつになるのかは誰にもわかりません。
新NISAは税の優遇措置であり、資産運用の安全性を高める制度ではありません。新NISAで人気の運用商品であっても暴落は起こり得るもので、それがあることを前提に運用する姿勢が求められます。
3.投資の3大原則
投資には、3大原則と呼ばれるとても重要な3つの「掟」があります。これは上記の新NISAによるインデックス投資信託への投資であっても同様で、他のどんな投資にも当てはまります。
その3大原則とは「長期」「積立」「分散」です。
3-1.長期
短期的な値動きで一喜一憂するのではなく、投資(資産運用)は長期目線で取り組むのが基本です。
先ほどから紹介している日経平均株価についても、2024年7月12日や8月5日には暴落がありましたが、それまでの長期チャートを見ると何回も暴落と回復、さらなる上昇を繰り返していることがわかります。
引用元:TradingView
2024年8月時点でもすでに2回の暴落が起きているのですから、今後もこうした暴落は起こり得ます。
そのため、一時的な暴落にうろたえることなく、着々と運用を続けることで短期的な価格変動のリスクを抑えるスタンスが重要になります。
3-2.積立
長期に加えて重要なのが、積立です。仮にまとまった資金があったとしても少しずつ投資して時間軸でのリスク分散を図ります。そうすることで価格変動リスクが平均化され、積立投資の期間が長くなるほど価格変動のリスクは抑えられます。
こうした手法は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、長期的な資産運用では有効性の高いリスク管理法です。
3-3.分散
投資のリスクを抑える手法として定番となっているのが、分散投資です。株式や債券、外貨、不動産、暗号資産などさまざまな投資商品がありますが、それらは異なる性質を持っています。
異なる性質の商品に分散投資をしておくと、ある商品で暴落などのリスクが高まったとしても他の商品に投資している資金は安全性が保たれます。
投資の世界には「卵をひとつのかごに盛るな」という格言がありますが、これもひとつのかごにすべての卵を盛ってしまうと、そのかごを落としたときにすべての卵が割れてしまうことに例えて、分散投資の重要性を説いています。
4.不動産投資の安定性
ここまでの解説をお読みになると、新NISAは決して万能なものではないことがおわかりいただけたと思います。もちろんメリットの多い制度なので活用すべきなのは確かですが、分散投資の観点から新NISAの投資対象ではないものにも目を向けたいところです。
ここでは、その選択肢として不動産投資を提案したいと思います。不動産投資をおすすめするのは、以下の3つの理由からです。
4-1.株価暴落時も資産価値が落ちにくい
不動産投資ではマンションやアパートといった現物資産を所有します。株式のように証券化された資産と違って現物資産は景気変動による影響を受けにくく、株価が暴落したとしても不動産市場に直接の影響は及びにくいでしょう。
株式に資金を投じるのと同時に不動産にも投資しておくことで、リスクの分散効果が高まります。
4-2.インフレに強い
2024年時点で世界各国ではインフレが進行しています。日本でもCPI(消費者物価指数)が2024年5月時点で前年同月比の2.8%上昇しており、物価上昇の影響をさまざまなところで実感するご時世です。
こうした傾向が今後も続くと、現金で資産を持っているだけだと相対的な価値が目減りしてしまいます。その一方でインフレになると現物資産である不動産は値上がりしやすくなるため、不動産を所有することが有効なインフレ対策になります。
4-3.値動きが緩やか
不動産は株式市場や為替市場のようにリアルタイムで価格が変動するマーケットで取引されているわけではなく、値動きが緩やかであることがひとつの特徴です。
もちろん景気が冷え込むと地価が下がるなどの影響が生じることはありますが、株式のような暴落は起きる可能性が低く、安定性の高い資産と言えます。
5.今後のインフレに備えて資産防衛にも有効な不動産投資
新NISAによる資産運用は人気が高まっていますが、新NISAだからといって安泰であるわけではなく、暴落のリスクもあることをお伝えしました。
特に新NISAで「資産運用デビュー」を果たした方にとって株価の暴落は未知の世界かもしれず、2024年8月に起きた史上最大の暴落で動揺した方も少なくないでしょう。しかし、株式市場に暴落は付き物です。過去に何度も暴落が起き、そこからの反発を繰り返してきました。株式市場に暴落は今後も起きるという前提で、そのリスクを知っておくことがとても重要です。
また、決して万能ではない新NISAだけに依存するのではなく、リスク分散の観点から安定性の高い投資として不動産投資を組み込むことを提案しました。今後インフレが進行すると不動産投資の有効性はさらに高まるかもしれません。資産防衛のためにも、ぜひ検討してみてください。