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不動産投資
金利上昇で不動産価格が下落する理由は?インフレや円安との関係も解説
2024年3月に日銀がこれまでの金利政策を転換し、マイナス金利を解除しました。17年ぶりのことで、これからは「金利のある世界」が戻ってくる公算が高くなっています。大方の見方どおりに金利が上昇すると、不動産価格にはどんな影響があるのでしょうか。
本記事では、金利上昇と不動産価格の関係について紹介し、金利上昇にどう備えるべきなのかについても解説します。
1.金利と不動産価格の関係
金利が上昇すると不動産価格が下落するというのは、一般的に言われている相関関係です。
ほとんどの場合、不動産の購入時にはローンを組みます。個人がマイホームを購入する際に住宅ローンを組むのはよくあることですが、不動産投資家も同様に収益物件を購入するためにローンを利用するのが一般的です。
金利が上昇すると資金調達コストが上昇するため、予算の見直し(縮小)をする人が増えます。すると不動産が売れにくくなるため、全体的に不動産価格は下落します。
2.金利上昇で不動産価格が下落する理由
先ほどは金利上昇と不動産価格の相関関係について、最もシンプルな理由を解説しました。実は、金利が上昇すると不動産価格が下落しやすくなる理由はこれ以外にもあります。
ここでは、3つの項目で金利が上昇すると不動産価格が下落する理由を解説します。
2-1.ローン審査の厳格化
金利が上昇すると、借り手の返済コストが増大します。その分返済負担が大きくなるため、返済が困難な状態に陥る人が増えることが懸念されます。金融機関は貸し倒れのリスクをより強く意識するようになるため、ローンの審査が厳格化されます。
これまで審査に通っていたのと同じ属性の人が申し込んでも審査に通らないことも考えられるため、買い手の購買力が低下します。購買力の低下は需要の減衰につながるため、不動産価格を低下させる要因となります。
2-2.投資利回りの低下
不動産投資の利回りは、以下の計算式で求めます。
この計算式のうち、ローンの利息返済は「諸費用」に含まれます。金利が上昇すると諸費用が増大し、投資家の手残りが少なくなります。収益性が低下すると投資家の投資意欲が減衰するため、不動産価格に下落圧力がかかります。
2-3.資金が他の投資先に流れる可能性
不動産投資家が不動産に投資をしているのは、「儲かるから」という極めてシンプルな理由があるからです。金利が上昇すると利益が圧迫されて収益性が低下するため、投資家には「特に不動産でなくてもよい」という心理が働きやすくなります。
投資家にとって不動産は投資対象のひとつに過ぎず、リスク管理に長けている投資家ほど多様な商品に資金を分散しています。分散投資の内訳のことをポートフォリオといいますが、金利上昇で多くの投資家が不動産に魅力を感じなくなると他の投資商品に資金が流れるようになり、結果として不動産価格は下落します。
3.インフレや円安と不動産価格の関係
金利上昇と同時に現在の日本経済で進行しているのが、インフレと円安です。この両者は私たちの生活だけでなく、投資環境にも大きな影響を及ぼしています。
今後もインフレや円安が続くと仮定すると、不動産価格にはどんな影響があるのでしょうか。
3-1.インフレが不動産価格に与える影響
インフレとはインフレーション(Inflation)のことで、貨幣の価値が相対的に下落し、その一方でモノの価値が高くなることをいいます。モノの価値が高くなるため、インフレが進行すると物価は上昇します。
不動産は実物資産の一種なので、インフレが進行すると不動産の価格も上昇しやすくなり、特に不動産は高額商品であることからインフレの影響が顕著に表れやすいと言われています。
このことは投資家にも広く知られているため、インフレになると資産防衛の一環で不動産を買うという投資行動が活発になります。
3-2.円安が不動産価格に与える影響
円安は輸入コストが増大するため、多くの物資を輸入に依存している日本では物価上昇の原因となります。しかし、逆に海外から見ると円安は「日本で安く買い物ができるチャンス」となります。
もちろん不動産についても同様で、近年は円安を背景に海外からの日本不動産への投資意欲が高まっています。しかも、日本の不動産にはまだまだ割安感があります。
こちらは、一般社団法人日本不動産研究所が調査・発表したレポート「第 22 回国際不動産価格賃料指数」に掲載された高級マンション価格の国際比較です。
出典:一般社団法人日本不動産研究所 第 22 回 国際不動産価格賃料指数
東京を100として世界各地の高級マンション価格を指数化すると、まだまだ日本の不動産に割安感があることがわかります。ニューヨークやロンドン、香港が2倍以上の価格水準であることを考えると、海外の投資家が東京や大阪など日本の大都市圏の不動産に注目しても不思議なことではありません。
こうした海外勢の旺盛な投資意欲により、東京や大阪など大都市圏ではマンション価格の高騰が起きています。あくまでも海外の投資家が注目しやすい大都市圏の不動産に限定されますが、円安は日本の不動産価格を押し上げる要因です。
4.今後、金利はどう動くのか?
日銀がマイナス金利を解除したとはいえ、政策金利の上限は0.1%です。依然として日本は超低金利と言えるわけですが、今後は日本も金利が上昇していくとの見方が大勢です。債券市場では長期金利の上昇が起きており、2023年10月には日銀の思惑を超えて1%に迫る局面もありました。つまり、多くの市場参加者は日本の金利が今後上昇していくと見ているわけです。
ただし、米国などのように強いインフレが進行しているわけではないため、日本の金利上昇は緩やかなペースで進むでしょう。そのため、当面は不動産価格を大きく下落させるようなダイナミックな動きが起きることは考えにくく、インフレや円安による不動産価格の高止まり、もしくは上昇という局面が続くというのが筆者の考えです。
5.不動産投資で金利上昇リスクに備える3つの方法
不動産投資で金利上昇の影響を最も強く受けるのは、資金調達のために利用するローンの金利です。金利上昇は返済利息の負担増につながるため、不動産投資の収益性に直結します。この金利上昇に備えるには、主に3つの方法があります。
1つめは、返済期間の長いローンを組むことです。返済期間が長くなると毎月の返済額が少なくなるため、キャッシュフローの悪化を防ぎやすくなります。
2つめは、自己資金の比率を高めることです。融資を受ける金額を少なくすれば、金利が上昇しても影響を抑えられます。
そして3つめは、固定金利型のローンを利用することです。金利上昇の影響を受けるのは変動金利型のローンであり、固定金利型は日本の金利が上昇しても最初に契約した金利のまま返済を続けることができます。ただし、金融機関も金利上昇リスクを取りたくないと考えるため、長期の固定金利型ローンはあまり選択肢がないかもしれません。
6.不動産投資の有望性は、金利上昇でも変わらず
今後考えられる金利上昇と不動産価格の関係について解説し、金利上昇に備える方法についても紹介しました。金利上昇による影響を考慮しても不動産投資が有望な投資であることは変わっておらず、インフレ対策としてもおすすめです。