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不動産投資
不動産投資ローンと住宅ローンの違いとは?融資を受けるメリットや攻略法も解説
不動産投資では初期投資額が大きくなりがちですが、銀行など金融機関の融資を利用すれば必要な資金の調達が可能です。この点は他の「投資」と大きく異なる点で、不動産投資のメリットの1つとして知られています。
しかしひと口に融資といっても、その種類はさまざまです。不動産の購入のために利用できる融資としては住宅ローンも有名ですが、不動産投資に用いるローンとは何が違うのでしょうか。
本記事では、不動産投資のローンについて、住宅ローンとの違いや融資を利用するメリット、審査で重視されるポイントなどについて解説します。
1.不動産投資ローンとは?住宅ローンとの違い
不動産投資の経験がない方には意外に知られていないのですが、不動産投資のためのローンと住宅ローンは全く異なるローン商品です。不動産の購入のために利用するという点では同じなのですが、それ以外には多くの違いがあります。
ここでは、その違いを5つの項目で解説します。
1-1.借入目的の違い
どちらも不動産の購入に利用できるローンですが、両者は借入の目的が異なります。不動産投資ローンは不動産投資、つまり投資物件の購入のために用いるローンです。それに対して住宅ローンは自分や家族が住むための不動産を購入するためのローンです。一般的に住宅ローンのほうが金利は低いため、不動産投資のために住宅ローンを使いたくなるかもしれませんが、それは禁止されています。
過去には投資物件を住宅ローンで購入していてそれが発覚した事例もあります。住宅ローンで投資物件を購入していたことが発覚すると重大な契約違反となり、全額の一括返済を求められる恐れがあります。
1-2.返済原資の違い
返済原資とは、ローンの返済に充てるお金の出所のことです。どちらも毎月返済していく仕組みという点では同じですが、不動産投資ローンは入居者からの家賃収入を返済原資に充てるのに対して、住宅ローンは給与や事業収入などが返済原資です。
ただし、不動産投資ローンの返済を家賃収入だけでまかなえるとは限りません。物件の価格や融資の条件によっては家賃収入を上回る返済額になることもありますし、所有している物件が空室になると家賃収入が途絶えるため、自己資金で返済することもあります。
1-3.融資金額の違い
融資を受けられる上限金額についても、両者には大きな違いがあります。不動産投資ローンは融資の上限金額が高額で、数億円、数十億円になることもあります。それに対して、住宅ローンは数千万円規模が大半で、億単位になるケースはそれほど多くありません。
この理由は簡単です。住宅ローンを利用して購入する不動産は自己居住用なので戸建て住宅やマンションの一室です。それに対して不動産投資ではマンションを一棟丸ごと購入することもあるため、購入価格が数十億円規模になることもあります。そのため、不動産投資ローンでは物件の担保価値や収益性が妥当であると判断されれば、高額の融資を引くことができます。
1-4.金利の違い
それぞれ別物のローンであることから、不動産投資ローンと住宅ローンとでは金利にも差があります。一般的に住宅ローンのほうが金利水準は低く、不動産投資ローンのほうが高めです。
住宅ローンは、融資を引いた人の収入が返済原資になります。審査時には返済能力を入念にチェックしているため、返済不能になるリスクは全体的に低くなります。貸し倒れになるリスクが低いことから、住宅ローンの金利は低めに設定されています。
それに対して不動産投資ローンの返済原資は、家賃収入です。先ほども述べたように、家賃収入は賃貸経営の状況によって変動します。空室が長期化したり賃貸経営の状況が変化したりして当初の目論見通りの家賃収入が得られない事態になると貸し倒れのリスクが高まります。そのため、金融機関は住宅ローンよりも不動産投資ローンの金利を高めに設定しています。
1-5.審査内容の違い
どちらのローンにも厳格な審査があるのは同じですが、その内容には大きな違いがあります。住宅ローンは融資を引く人の返済能力が問われるため、年収や勤続年数など、今後も返済能力が維持されるかどうかが重視されます。
それに対して不動産投資ローンは返済原資が家賃収入なので、今後安定的に家賃収入が入り続けるのかがどうかが重視されます。もちろん融資を引く本人の返済能力も問われますが、それだけではないところが不動産投資ローンの特徴です。
2.不動産投資ローンと住宅ローンの併用でよくある疑問と回答
不動産投資ローンと住宅ローンが別物なのであれば、その両方を利用できるの?という疑問を持つ方もいるでしょう。結論から述べると、両者の併用は可能です。ただし、審査に影響を及ぼすことは必至ですし、返済能力との兼ね合いなど事前に知っておくべきことがあります。
ここでは、不動産投資ローンと住宅ローンの併用に関してよくある疑問と回答を紹介します。
2-1.不動産投資ローンを組むと住宅ローンは組めなくなるの?
すでに述べたように、不動産投資ローンと住宅ローンは返済原資が異なります。返済原資が同じであれば2つのローンを同時に返済していくことが負担になると判断される可能性がありますが、返済原資が別なので、2つのローンを併用することは可能です。
理想的なのは不動産投資ローンを組んで投資物件を購入し、家賃収入を確保した上で住宅ローンに申し込むことです。この順序が持つ意味については、次項で解説します。
2-2.不動産投資ローンと住宅ローンのどちらを先に組むべき?
不動産投資ローンは事業のためのローンなので、その事業がうまくいけば新たな収入源を持てることになります。つまり、年収が高くなります。住宅ローンの審査では融資を引く人の属性として年収が重視されるので、不動産投資ローンを活用して年収が高くなった状態で住宅ローンの審査に臨むのが理想的な順序です。
これが逆だと、状況が変わります。先に住宅ローンの審査に通過して自己居住用の物件を購入したとしても、その物件が収益を生むわけではありません。住宅ローンの返済負担がある分、不動産投資ローンの審査ではそのことが不利になる可能性もあります。
ローンを利用して購入するものが収益を生むのか生まないのか、この点に着目して戦略的にローンを利用することをおすすめします。
2-3.住宅ローンで不動産投資用の物件を購入してもいいの?
先ほども述べたように、住宅ローンで投資物件を購入するのは契約違反になるため、禁止されています。住宅ローンのほうが金利が低いので「バレなければ」とばかりに住宅ローンで投資物件を購入したくなるかもしれませんが、近年ではAIなどを活用して不正な融資を検知する仕組みも採用されているため、高い確率で発覚してしまいます。
不正な融資が発覚すると全額の一括返済を求められる可能性が高く、不動産投資どころではなくなってしまいます。きわめてリスクが高いので、住宅ローンで投資物件を購入しないようにしましょう。
ただし、賃貸併用住宅といって物件オーナー自身が住む住居スペースと賃貸スペースが1つの建物になっている物件であれば、住宅ローンを利用することができます。多くの金融機関では居住部分の面積が建物の床面積のうち半分以上であることなどが条件として定められているので、実際に利用する際にはこうした条件をしっかりとチェックするようにしてください。
3.不動産投資ローンを利用するメリット
不動産投資において、ローンを利用することで得られるメリットは5つあります。
3-1.自己資金が少なくても始められる
不動産投資を始める上で物件の購入費用の全額を自己資金で用意できなくても、融資があれば手が届くようになります。自己資金で全額を用意できない人にとっては融資の利用が前提になるので、金融機関の融資は多くの人に不動産投資の門戸を広げてくれています。
3-2.投資のレバレッジが高くなる
全額自己資金で物件を購入するのと、一部の自己資金で物件を購入するのとでは、投資効率がまるで違います。なぜなら、自己資金が全部であっても一部であってもオーナーが手にする不動産収入は同じだからです。それなら少ない資金で同じだけの収入を得るほうが投資効率は高くなります。
このメリットは不動産投資のレバレッジ効果と呼ばれていますが、レバレッジ効果を発揮するには融資を利用する必要があります。
3-3.他人資本を資産形成に役立てられる
融資を利用して不動産を購入し、そこから得られる家賃収入を返済に充当することができます。返済金の全額を家賃で充当し、そのまま完済することができれば、融資という「他人資本」を用いて不動産を手に入れたことになります。
完済後には返済義務のない不動産が手元に残るため、以後は家賃収入が丸々オーナーのものになります。
3-4.生命保険効果が得られる
不動産投資の資金を調達するために融資を利用すると、団信(団体信用生命保険)に加入することができます。この団信は生命保険の一種で、もしオーナーが融資の返済中に亡くなるなど返済不能に陥った場合には保険金で残債を清算する仕組みになっています。
不動産投資には生命保険効果があるといわれていますが、それはこの団信に加入することで生命保険と同等の効果が得られるからです。保険料は金融機関が負担するため、既存の生命保険の代わりに団信を活用すると保険料の節約になります。
3-5.現金を手元に残して安全性を高められる
仮に全額を自己資金でまかなえる人であっても、多くの人は融資を利用して物件を購入しています。利息分だけ無駄になるように思えるかもしれませんが、それでも融資の利用を優先する人が多いのは手元に現金を残しておけるメリットがあるからです。
不動産投資だけに限らず、人生にはさまざまな「不測の出費」があります。手元に現金を残しておくことでそういったリスクに対応することができるため、融資の利用は資金ショートに対するリスクヘッジになります。
4.不動産投資のローン審査で見られるポイント
金融機関から融資を引き出すには、審査をクリアしなければなりません。その審査ではどういった点に注目し、融資の可否を判断しているのでしょうか。その内側を知れば、適切な対策が見えてくるはずです。
4-1.個人の属性
融資の審査で重視される点は、融資を受ける本人の属性と購入予定の不動産物件の収益性の2つに大きく分けられます。金融機関の立場で考えると、返済能力が乏しい人にお金を貸すことはリスクが高いですし、同時に収益性が低い物件だと返済原資の確保に不安が残ります。
個人の属性として審査に影響を及ぼすのは、年収や現在の勤務先、勤続年数、家族構成、他社借入状況などです。年収が高く、勤務先が上場企業であるなど社会的な信用度が高い人は属性が高いと見なされ、審査では有利になります。
勤続年数は短いよりも長いほうが収入の継続性が見込めますし、金融機関によりますが家族構成は独身よりも結婚をして子供がいる人のほうが社会的な責任を果たすべくこれからも安定的な身分であり続けると見通せるため、いずれも審査では有利になる傾向です。
他社借入状況も返済能力に直結するため、他社での借金が多いと審査に悪影響を及ぼします。
4-2.物件の収益力
融資を受ける本人の属性と並んで重要なのが、購入予定の物件の収益力です。融資を受けたとしても所有物件から期待通りの利益を上げることができなければ返済困難になる可能性が高まるため、金融機関は物件にどれだけの収益力があるかを審査します。
消費者金融などの無担保ローンであれば本人の属性や他社借入状況で審査をするわけですが、不動産投資向けの融資では購入物件でどれだけの収益が得られるかも返済能力に直結するため、この点がひとつの特徴といえます。
5.不動産投資で融資を受けるために必要な書類
不動産投資向けの融資を申し込む際に必要な書類は多岐にわたりますが、おおむねどの金融機関も以下の書類を求めています。
- 本人であることを確認できる書類(住民票、印鑑証明書など)
- 収入を証明できる書類(源泉徴収票、確定申告書の控えなど)
- 保有資産を確認できる書類(預貯金、有価証券、生命保険など)
- 購入予定の不動産に関連する書類(売買契約書、見積書など)
4つめの不動産に関連する書類について、大半の書類は不動産会社が用意します。買主が用意する書類は売買契約書や重要事項説明書、見積書などです。
書類を漏れなく揃えられるかも審査に影響を及ぼすことがあるため、遅滞なく準備できるようにしておきましょう。
6.不動産投資ローンの金利や返済期間はどれくらいが最適?
不動産投資ローンの金利相場は、1.5~4.5%程度です。この幅の中でどの金利が適用されるかは物件の収益性や本人の属性次第ですが、不動産投資ローンで重視したいのは金融機関が提示する金利だけでなくイールドギャップです。
イールドギャップとは、家賃収入で得られる利回りから返済利回りを差し引いた、オーナーの手残り分です。イールドギャップは3%程度を確保するのが目安なので、例えば所有物件から得られる実質利回りが5%なのであれば、融資金利は2%まで許容できるといった具合です。
物件購入時には収支のシミュレーションを行うので、そこで試算された実質利回りから3%を差し引いた金利で融資が引けるかどうかが、購入可否の判断材料にもなります。
なお、返済期間については長いほうが毎月の返済負担が少なくなって手元に資金を残しやすくなるため、30年を確保できるのであればそれが理想です。
7.不動産投資のローン審査に受かるコツ
融資を受けなければ物件を買えない場合、審査をクリアできるかどうかは不動産投資を始められるかどうかとイコールです。少しでも有利に審査を受けられるよう、申込者ができることをまとめました。これらのコツを意識して審査に臨んでください。
7-1.与信をできるだけきれいにしておく
与信というのは、融資を申し込む本人の「信用」のことです。クレジットカードでは一定の限度額が設定され、その金額の範囲内で買い物やキャッシングをすることができますが、この限度額がカード会社から利用者に付与された与信です。カード会社が利用限度額の範囲で利用者を信用することで、利用代金の後払いを認めているわけです。
先ほど融資の審査では他社借入状況が見られると述べました。他社借入が多いと返済能力が疑問視されるため、審査では不利になります。そこで融資の審査に向けて、他社借入がある場合は返済額を減らしておく、使っていないクレジットカードを多数持っている場合は必要なもの以外解約することによって「与信をきれい」にしておくことをおすすめします。
使っていないクレジットカードであってもいつでも使える状態にあるのであれば、与信の枠を減らしてしまうことになるため、解約しておくことで与信がきれいになります。
また、カードの支払いでたまたまでも引き落とし額が足らずに延滞となってしまったケースもマイナスポイントとなります。落とし穴になりがちなのがスマートフォンなどを分割購入し使用料と一緒にカード引き落としをしているケースで延滞になった場合も同じくマイナスポイントとなりますので、支払い時期は口座の残額が足りているか確認を怠らないようにしましょう。
7-2.電話と面談は積極的に
金融機関は主に大手メガバンク、地方銀行、信用金庫、外資系銀行、政府系銀行、ノンバンクなどに分かれ、金利レートや融資条件はそれぞれに異なります。例えば、大手メガバンクといっても、融資に対するスタンスには大きな差があるでしょう。また、同じ銀行でも支店や担当者によって差があります。
こうなると、資金を引き出せるかどうかは相手に直接聞いてみるしかありません。上記の金融機関ごとの特徴、自身の居住エリア、物件の所在地などを考慮して金融機関を選ぶ必要があります。融資の可能性があるところを複数ピックアップし、下調べをしたうえで、直接、電話してみたり、感触のよさそうなところは面談をしてみたりするのもよいでしょう。
自身の属性や検討物件を相談しているうちに、金融機関の評価が分かるようになってきます。本命の金融機関にアタックする前の予行演習になりますし、担当者と目を見て話しているうちに知識も徐々についてくるでしょう。
7-3.仮審査の反応で安心して落ちると希望物件が買えない
金融機関に正式に融資を依頼すると、担当者とのやりとりが始まります。書類に必要事項を書き込み、行われるのが担当者による仮審査です。ここで、はしにも棒にもかからなければ、「融資不可」となりますが、仮審査をクリアすれば、社内の審査部門での本審査に進みます。
ここで知っておきたいのは、現場の担当者は審査部門の基準を正確に把握していないということです。仮審査の時点で担当者が「大丈夫だと思います。ただし、これは正式な回答ではありません」など、あいまいな返答に終始する場合があります。言質を取られて、後でもめることを恐れているというよりも、本当に「知らない」というのが実情でしょう。
しかし、投資家は目星をつけた物件の購入を急いでいるものです。その手続きには時間を要するため、仮審査で好感触を得られたら他の金融機関との融資交渉をやめてしまう人もいるかもしれません。この状態で「融資不可」の回答がきたら、もう挽回できない可能性があるため注意が必要です。
金融機関によっては属性が高く、十分な自己資金があって購入物件の収益力が評価されても、その人が働く業界の将来性に疑問符がつけば、融資審査に通らないこともあります。そのため、本審査の結果が出るまでは、複数の銀行との交渉は継続しましょう。就職活動で「本命」企業との最終面接の感触がよくても、内定が出るまで、「滑り止め」企業の面接を続けることと同じです。
7-4.交渉ではウソをつかない
金融機関の審査では、預金通帳や源泉徴収票の提出を求められるでしょう。このふたつを見れば、あなたがどれだけ稼いでいて、どれだけ使っているかがよく分かります。いくら収入が多くても金遣いが荒ければ、金融機関の印象はよくありません。
また、預金残高を増やすために、借りたお金を入金するという人もいます。しかし、それは見破られる可能性が高いのでやめましょう。そこでウソがばれてしまうと、融資審査をクリアするのは極めて困難になります。
金融機関が重視しているのは、投資家の人間性です。標準的な年収の何倍もの大金を貸すわけですから、貸したお金を返す誠実さがあるかどうかを見ています。これは国内の金融機関だけではなく、外資系も同様です。
下手な小細工をするよりも、正直に話し、狙いを定めた金融機関に口座を作り、少しずつ預金をしてみるのがいいかもしれません。銀行が見ているのは「姿勢」なので、こうした地道な工夫がプラスに評価される可能性があります。
7-5.不動産会社から紹介を受ける
上記までの「攻略法」はいずれも融資を申し込む本人に関する工夫です。それに加えて、物件を購入する不動産会社の信用や実績を味方につける方法もあります。
投資用の不動産を取り扱っている不動産会社の多くには、提携金融機関があります。不動産会社からの紹介を受けると、スムーズに融資を受けられるようにさまざまな便宜を図ってくれるので、このアドバンテージを使わない手はありません。
その意味では提携金融機関の格が高く、数が多い不動産会社は物件を売る力だけでなく不動産会社としての信用力に優れているといえるでしょう。
8.融資の成功は不動産投資の成功に直結
当記事では不動産投資ローンと住宅ローンの違いや、不動産投資ローンの特徴、そして審査を攻略する方法などについて解説しました。
銀行などの金融機関はお金を貸すことが本業なので、もちろん審査にも相応のノウハウがあります。その金融機関の審査に通るということは、返済能力と収益力のある物件であることが認められたということなので、成功に向けたひとつの関門をクリアしたといえます。
本文中でも述べているように、住宅ローンと不動産投資ローンは別物です。金利が低いからといって住宅ローンで投資物件を購入してそれが発覚するとペナルティを受けることになるので、融資は正しく利用しましょう。