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資産形成
いよいよ現実味を帯びてきた「人生100年時代」への備えは大丈夫ですか?
日本の平均寿命は、世界でもトップクラスの長さを誇ります。日本人の寿命はさらに延び、「人生100年時代」に突入すると言われています。もし人生100年時代となれば、標準的な定年退職から亡くなるまで35年もあるということになります。35年の間は年金を受給しながら生活することになりますが、2017年現在で、年金だけで生活していくのは難しい高齢者が多く存在しています。
今回は、退職後に豊かな生活を送るための、老後に向けた資産運用について考えましょう。
1.長生きがリスク?人生100年時代の不安はお金
一般的に長生きは「長寿」と言われるように、誰もが喜ばしいと感じることです。しかし、それは人生を全うするまでに十分なお金があればの話です。多くの人は老後のお金について不安を抱いており、それがさらに長寿命になるということは、「老後のお金が足りなくなるのでは?」と思う人が多くなるのも無理はありません。
そんな潜在的な不安が一気に噴出した出来事がありました。それは、金融庁の諮問機関が発表したレポートに記載されていた「老後2,000万円不足問題」です。このレポート自体は不安を煽るのではなく人生100年、もしくはそれに近い長寿となった場合に老後資金がどれだけ不足するのかを試算したうえで、それを補うための自助努力として資産運用を検討するべきであると述べているだけで、それほど突飛なことを主張しているわけではありません。
しかし、この指摘が大々的に報道され、多くの人が関心を持ったのは、それだけ多くの人の心の中に潜在的な不安があったことの表れでしょう。
1-1.人生100年時代は本当なのか
そもそも、人生100年時代は本当に到来するのでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」では、2010年生まれの女性はその4分の1に相当する人が100歳まで生存する確率が高くなると試算しています。ちなみに同年生まれの男性であっても8.3%の人が100歳まで生存する可能性が高い、とあります。
このデータを見る限り、全員が100歳まで生きるわけではありませんが、すでに100歳まで生きることへの現実味が高まっていることは間違いありません。しかもこの100歳まで生存する割合は年々上昇しているため、いずれ3分の1、2分の1という数値になっていく可能性もあります。
1-2.基本的な退職からの流れを考える(内容アップデート)
モデルケースとして、厚生年金に加入し40年以上会社員として勤め、65歳で定年退職し100歳まで生きるとしても、厚生年金の金額はある程度決まっています。
平均的な厚生年金の受給額は、夫婦2人分で約22万円(令和2年度)です。この金額を見ると、現役時代と比べて目に見えて収入が減少することがわかります。このため、老後に必要な金額は3,000万円とも5,000万円とも言われています。
つまり、国民年金よりも受給額が高いとされる厚生年金の平均的な受給額ですら、今のままの生活を維持するのは難しい状況と言えるでしょう。
1-3.公的年金で生活は難しい
公的年金は死亡するまで給付されるので、長く生きた人は総受給額が多くなります。そのため、長寿の人には有利な制度です。
しかし、人口減少に伴う財源の問題から、支給年齢の引き上げや支給額が減少する可能性が示唆されています。また、年金の仕組み改定は今後も行われると推定されますが、マクロ経済スライドが導入されることを鑑みると、今後年金受給額が増えるとは考えにくい現状があります。
1-4.老後のために貯蓄をしても楽になるとは限らない
老後の生活を豊かにする為に今からできることの1つに、貯蓄があります。しかし、退職時や通常の貯蓄方法で得られる金額には限度があり、老後になって貯蓄を切り崩しながら生活をすることは精神的な負担も相当のものになります。
ここで重要なのは、貯蓄には限りがあるということです。仮に3,000万円もの貯蓄をつくり上げたとしても、それを毎月10万円ずつ切り崩していくと年間で120万円。このペースで貯蓄を切り崩していくと、3,000万円は25年で底をついてしまいます。
65歳で定年退職をした後に3,000万円を毎月10万円ずつ切り崩すと90歳でゼロになってしまうため、人生100年時代が現実になった場合には足りません。
老後のためにとにかく貯蓄を、という考え方自体は誤りではありません。それだけで本当に楽になる、安心が手に入るとは言えないことを知っておいてください。
2.安心して老後生活を送るために必要なお金は?
老後資金のことを考える際、それではいくらあれば安心できるのかというのは定番の疑問です。本当に安心して老後を迎えるには、いったいどれだけの老後資金があればよいのでしょうか。一般的なデータをもとに試算してみましょう。
2-1.ゆとりのある老後生活を送るには5,000万円以上必要
老後の生活費について、公益財団法人生命保険文化センターが月額の試算をしています。これによると最低日常生活費は夫婦2人で平均22万1,000円、ゆとりのある生活をしようと思うなら月額36万1,000円が必要になるとのことです。
それではこの月額36万円に、人生100年を達成した場合に生じる老後期間の35年を掛けてみましょう。
36万円 × 35年 × 12か月 = 1億5,120万円
なんと1億円を超えてしまう老後資金になります。しかしここには公的年金が考慮されていないので、先ほどご紹介した平均受給額である22万円を差し引いてみましょう。
(36万円 - 22万円) × 35年 × 12か月 = 5,880万円
ゆとりのある老後を送るには、やはり5,000万円を超える老後資金が必要になるようです。数字だけを見ると絶望的な気分になってしまうかもしれませんが、どんな方であってもこの問題を克服することができます。以下にその方法を解説してききますので、ご安心ください。
2-2.貯蓄以外にも資産を増やすことは可能
不足する老後資金の対策方法として、1つ目は長く働くスキルを身につけることが挙げられます。定年退職は60歳といわれていますが、再雇用で65歳まで働くことが可能な企業も多く、シルバー人材センターに登録して働くことも可能です。また、スキルを磨いておけば老後であっても目に見える形で給料が変化するため、スキルを常に磨き続けることを意識するといいでしょう。
2つ目にできる対策は、現役時代に給与所得以外の収入源を作ることです。給与以外の収入といえば、副業や投資などの資産運用が挙げられます。FXや暗号資産投資で現在の余剰資金を増やす方法や、ライティング・WEBデザインなど自分の得意分野を生かした仕事をして収入源にすることも可能です。
3つ目は現役時代にキャッシュを生む資産を形成することです。貯蓄していくことも大切ですが、年金と貯蓄の取り崩しだけで老後の生活をまかなうことが厳しいのは、すでにお伝えしたとおりです。キャッシュを生む資産として株式に投資を行うことで配当や利益を得られますが、大手企業だからといってすべての銘柄が安心というわけではない為、見極めが重要です。
4つ目に考えられ対策は、現役時代に売却可能な資産を作ることです。資金を用意し、売買可能なものに変えることも検討するといいでしょう。
例えば、マンションなどの不動産を所持していれば、家賃という安定的な収入が生まれます。特に、不労所得としての家賃収入は経年と共に低下するかもしれませんが、長期にわたる収入が期待できます。しかも、どうしてもお金が必要になったということであれば、売却してまとまった現金を手にすることもできます。
3.人生100年時代で注目を集める不動産投資
人生100年時代に備える方法として、ここまでの解説でだんだん理想像が見えてきたのではないでしょうか。現役世代のうちにキャッシュを生み出す資産を形成して、そこからの収入を老後資金の足しにする考え方はとても有効で、そのための具体的な方法論としては不動産投資があります。
不動産投資であれば資産を切り崩すことなく収入を得ることができるため、人生が仮に100年より長くなったとしても影響を受けにくいのは大きなメリットです。
3-1.老後を見据えた不動産投資のメリット・デメリット
不動産投資には多くのメリットがありますが、それを特に老後を見据えた資産形成という観点から論じてみたいと思います。老後に備えるための不動産投資には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
<不動産投資のメリット>
- 毎月の安定した収入源を確保できる(年齢や体力に関係なく)
- いざとなったら売却して現金を手にすることができる
- 投資件数を増やせば老後の収入をどんどん多くできる
- 貯蓄の切り崩しと違って収入に期限がない
- 節税効果があるため老後に残せる資金額が増える
<不動産投資のデメリット、リスク>
- 空室リスクがある(空室になると収入がゼロになる)
- 建物は必ず老朽化する
- 売却したくても思い通りにならない可能性がある
これらのメリットとデメリットを総合すると、リスクをしっかりと理解したうえでそれを克服できる形であれば、不動産投資のメリットを最大化できるということになります。
4.不動産投資を若いうちに始めるべき理由
不動産投資は若いうちに始めるべき、と言われていることをご存じでしょうか。実はこのことは不動産投資に限らず、資産運用全体に言えることです。なぜ若いうち、早いうちに始めるのがよいのでしょうか。その理由を解説します。
4-1.老後のための備えはできる限り早急に
老後の資産運用のためにマンションなどの不動産を購入している方は、購入時に融資の利用を前提にしていた方がほとんどです。なぜなら、不動産を購入できるだけの資金をすべて自分でまかなうのは難しいでしょうし、むしろ融資を利用した方が他人資本で家賃収入が得られるため、投資効率が高くなります。
このように融資を利用して老後のために家賃収入を得ようと思ったとしても、現役時の融資の審査に通りやすい時期でなければローンを組むこと自体が難しくなってしまいます。
年金生活が始まる10年前から対策を始めても目標金額まではなかなか到達しない可能性が考えられるため、自分に合った方法で老後の資産の確保や運用をできる限り早い段階で計画しましょう。